南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

日登美の新社長にお会いしてきた話

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 今日は日記みたいな感じで。

先日、久しぶりに日登美の展示会にお邪魔した。
日登美は百貨店向けのメンズパジャマとシニアメンズカジュアルのメーカーだ。

驚いたのが昨年10月に日登美の図師雅文・前社長が急逝されたことだ。
その半年くらい前に大阪展示会でお会いしていたので、ちょっと驚いたのだが、業界紙の報道によると交通事故とのことだった。

もうかれこれ、20年前から断続的にお付き合いしていただいていたのだが、それは突然終わってしまった。

50歳手前になると人を見送ることが多くなり、自分の番もそう遠いことではないと改めて実感する。

そういえば、図師社長の身内を会社で見かけたことがなかったので後継をどうするのだろうと思っていたら、女性が新社長に就任したという記事を業界紙で見かけた。

メンズのパジャマとカジュアルウェアの会社で、社内も男性社員の方が多いから、女性が新社長になるというのは意外だった。


業界紙を読むと、ご息女ということだが、前社長には実子がいなかったため、姪御さんを後継として養子縁組をしたのだそうだ。
証券会社出身とのことで、ビジネスの仕組みやカネの流れについての理解は明るいのではないかと想像した。


古株の副社長、常務はご健在だから、いきさつをお聞きすると、事業を後継するために前社長の亡くなる何か月か前に養子縁組し、本来ならそこから数年間でアパレル業務を勉強してから後継する予定だったが、前社長の急逝で前倒しとなってしまった。


そんなわけで、いざ、新社長の図師綾さんにお会いしてみると、予想外にお若かった。
初対面の女性に年齢を尋ねるわけにもいかないので、20代後半から30代前半くらいだろうと思う。
50歳手前になると20代後半も30代前半もそんなに違いがわからない。

10代、20代の若者が47歳と52歳を区別できないのと同じである。

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(図師綾新社長)


年配の男性社員ばかりの中に若い女性社長というのはちょっと奇異な印象も受けるが、実際に展示会場で見ていると、それなりに溶け込んでいたようで、文字通り「男くさい(笑)」社風がこれからは少し変わるのではないかとも思った。

新社長とお話した感想をいえば、まだ半年なので業界のことに対しては不慣れな感じがあるが、古株の役員がサポートしておられるので、そんなに手ひどい失敗はないと思われるし、おいおいと業界のことには慣れていくのではないかと思う。

前社長の急逝、新社長の急登板という状況なので、事業内容そのものには大きな変化がない。

需要が急増もしない代わりに急減もない百貨店パジャマを基盤にしつつ、メンズカジュアルを展開する。

この展示会訪問で、以前にもこのブログで紹介した谷野美智雄・副社長のコメントを聞かせてもらった。

そう、「物作りが上手い同業他社が、得意とする物作りに注力して売り場変化に対応できず消え去っていった」という内容のあのコメントだ。

カジュアルのVUMPS(ヴァンプス)では、色落ちしにくいデニム生地を使ったパンツとジャケットが提案されていたのが印象に残った。

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(ヴァンプスの色落ちしにくいデニム製品)


これが提案されたのは、通常のデニム生地を使った商品を着用して白いシートの自動車に乗ると、シートにブルーが移染したというクレームがあったことがきっかけとなった。
まあ、その色落ちこそがデニム生地本来の魅力ではあるのだが、それをデメリットに感じるという人も確実にいるということだ。

ちょうど同じ時期に2017秋冬展示会が開催されたジョンブルでも色落ちしにくいデニム生地を使ったGジャンとジーンズが提案されており、こちらは「濃色が気に入っているのでこれ以上色落ちしてほしくない」というファッション的な要望があったことが製造するきっかけとなっている。

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(ジョンブルの色落ちしにくいデニムブルゾン)


デニム関係者やジーンズ業界人の多くは、「デニムは本来色落ちするもの」「色落ちするからこそデニム」という考え方を多かれ少なかれ持っている。
デニムの本来の定義からするとそれはその通りなのだが、色落ちしないでほしいという需要は確実に存在する。

筆者もそのうちの一人で、リジッド(ノンウォッシュ)やワンウォッシュなどの濃紺ジーンズを買った場合、できるだけ色落ちしてほしくないと思う。
なぜなら、その「濃紺」という色を気に入って買っているからだ。色落ちするのは仕方がないとあきらめてはいるが、可能ならばできるだけ色落ちしてほしくない。

筆者のように「色そのもの」が気に入って買っている人間からすると、3年後か5年後に「色が変わってしまう」とそれは別の商品になってしまうからだ。

濃紺のパンツを買ったのに、5年後には薄ブルーのパンツへと「変色」してしまうのなら、その商品を買う理由、所有し続ける理由がなくなってしまう。
それなら、デニムほど色落ちしない濃紺のパンツを買って所有し続けるという選択をする。

あらかじめ色落ち加工を施されたデニムでも同じで、その色落ち具合が気に入って買ったのに、5年後はさらにブルーが薄くなってしまうのなら、無邪気には喜べない。

色落ちしにくいデニムへの要望が少なからずあるということは、デニムが「特別で独立した」な生地ではなく、数ある色の中での一色に過ぎないと見ている消費者が相当数いるということではないか。

需要を作る、消費者を啓蒙するというのも一つのビジネススタイルだが、需要のある商材を供給するというのも一つのビジネススタイルである。色落ちしにくいデニム生地を欲しいという層があるなら、そこへ商品を供給するのも立派なビジネススタイルだといえる。個人的にはデニム業界はその需要を取り込んだ方が良いと思う。

「本物のジーンズとは」「本物のデニムとは」と、作り手のこだわり・マニアのこだわりばかりを押し付けていても仕方がない。

そうそう、日登美がAmazonへの出品ということでごく少数の型数からネット通販を始めたので、ここにアフィリエイトをいくつか貼っておく。(笑)












製造加工業者は「物作り」と同じ熱量を「販促」にも費やせ

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 下請け受注の減少から、自社オリジナル製品の開発を始めた製造加工業者は少なくない。
今では産地企業のブランドも珍しくない。

しかし、その多くはなかなかうまく離陸しない。

その理由は大雑把にいって2つある。

1、商品自体のデザインが良くない
2、商品は良いが売り方・見せ方・伝え方・パッケージが良くない

この2つある。

1が起きる背景には、デザインという「形のない物」に金を払いたくないという製造加工業者特有のメンタリティが働くことがある。
デザイナーへの支払いをケチるあまりに、社内や身内の素人にデザインさせてしまうことがある。
それが成功する場合もあるが、多くの場合は素人は素人であり、売り物のレベルには達していない。

物そのものが良くないのだから、売れなくて当然である。

問題は2の場合だ。
物そのものはそこそこの出来であるのに、売り方・見せ方・伝え方・パッケージが良くないため、期待したほど売れないという状況だ。
最近は、製造加工業のオリジナル企画も向上しているので、こちらの場合の方が多くなっている印象がある。

例えば、ラグジュアリーブランド「〇〇」と同じ素材を使って、それよりも形状も工夫したという商品がある。
しかし、ラグジュアリーブランド「〇〇」ほどは当然売れない。
なぜなら、売り方・見せ方・伝え方・パッケージのレベルが全く異なるからだ。

先日、ある業者から新ブランドについての相談を受けた。
その際、一人の同席者がおられた。

商品自体の出来は及第点を越えていた。
だから「物」だけで勝負できるなら、そこそこの売れ行きが十分に期待できる。

そこで、同席者がこう指摘した。

ハイクラスブランドとの競合を目指すなら、例えばお買い上げいただいたときの「箱」と「ショッパー」は必要ですし、値札や下げ札のデザインにも工夫を凝らす必要があります。ハイクラスブランドはそれらも含めて顧客から支持されているのです。

この指摘は納得である。
同席者は12歳くらい年下と若いが、最先端ブランドで展示会やブランディング、ウェブ、印刷物などのディレクションを行っておられ、その指摘はさすがというほかない。

若くて、いわゆる「クリエイションガー」とだけ無責任に叫んでいるような輩とは一線を画している。

日本人には「ボロは着てても心は錦」を美徳とする部分がある。
小銭にシビアな関西人や地方民はとくにそれをよしとする。

パッケージや見せ方、伝え方などは些末な問題で、「物」そのものの品質やらデザインが良ければ、それでいいじゃないかと考える人は日本人には多い。

「ボロいけど安くて美味い飲食店」が支持されるのもそういう理由がある。

これは一面、たしかにそうなのだが、食品にせよ、ファッション用品にせよ「物」そのものの良し悪しだけで判断できる消費者というのは実際はそれほど多くない。
やっぱり、店構えや箱、ショッパー、ディスプレイ、販売員の態度、ステイタス性などにその判断は大きく左右される。

話は少しそれるが、昨今の店頭の同質化問題の一因は、プロであるバイヤーやマーチャンダイザーまでもが、「物」ではなく、店構えやディスプレイ、ステイタス性で商品を判断してしまっている点にあり、プロの素人化が進んでいるともいえる。

「外装ばかり立派で中身は大したことない」という批判は間違ってはいないが、逆にいえば、「大したこともない商品を高値で売ってそれで消費者を納得させられる」というのは大した手腕だともいえる。
それは単に、小手先のキャッチコピーを付けたり、きれいな外国人モデルを使った広告を出稿するだけでは到底なしえないことである。

しかし、商品自体の出来が良いなら、見せ方・売り方・伝え方・パッケージを工夫すれば売れる可能性が格段に高まる。それをやらないことは非常にもったいない。

しかも昨今は低価格ブランドでも商品自体のデザインやクオリティは水準点に達している。
一昔前のように「安かろう悪かろう」という商品は分野を問わず、かなり減っており、「安かろうそこそこ良かろう」が標準といえる。

そうなると、「物」自体の優劣はそれほどなくなってくるから、見せ方・売り方・パッケージなどの工夫が勝負を左右することになる。

時々、お会いするセメントプロデュースデザインの金谷勉社長から、以前こんな話を聞いた。
大阪の石鹸メーカーをブランディングした際、それまで普通の長方形の石鹸を作っていた地味なメーカーだったが、これを五角形に形状を変更し、パッケージをリニューアルしたところ、かなり売り上げが増え百貨店などからもオファーがあったという。
石鹸の成分そのものは変わっていないにもかかわらずである。

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http://cocoon-soap.com/index.html

製造加工業者はどうしても「作ること」を重視し、それの工夫と改良に邁進する特性があるが、それと同等の熱量を見せ方・売り方・伝え方・パッケージ作りに振り分ける必要がある。
「ボロは着てても心は錦」ではなく、心が錦なら着飾るべきなのである。








入店客数の増減によって売上高を増やす施策は全く異なる

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 今日は、基本的なことを復習がてら。
そんなこと言われなくてもわかっている方は時間が無駄なので飛ばしていただきたい。

4月からまた月に何度か専門学校へ講義に行くことになったが、計数管理の授業で、入店客数について説明したとき、ふと、基本的なことを思い出した。

入店客数の減少はその店、ブランドから顧客が離れているという状態であるということを。

だから、売上高の減少に対して、入店客数の減少が伴っている場合と伴っていない場合では対策がまったく別物になるということである。

入店客数が減少して売上高が減少している場合は、ブランドそのものや店が顧客から見放されているので、根本的な施策を変える必要がある。

一方、入店客数は増加ないし維持されているのに、売上高が減少している場合は、店やブランドそのものは支持されているから、比較的小手先の改善で持ち直す可能性が高い。

多くの方々からすれば、「そんな基本的なことは分かっている」内容だろうが、実際の業績推移や決算会見などを見ていると、自社がどちらに属するのかを分析せずに、場当たり的・泥縄的に対応している企業やブランドが少なからずあると感じる。

岡目八目とはよく言ったもので、外野から見ていると冷静にいろいろなことがわかるが、いざ自分がプレイヤーになると冷静さを欠いてしまう。人間だれしもそうだろう。

多くの苦戦店や苦戦企業を見ていると、入店客数の増減を分析せずに、

1、とりあえず商品価格をやみくもに下げる
2、品ぞろえのラインナップを思い付きで変えてみる
3、とりあえず(深い考えや狙いもなしに)広告を出稿する
4、意味もなく販売員に声掛けを増やさせる

ようなやり方が多いように感じる。

入店客数が減少しているならこういうことをやっても効果が出るまでに時間がかかる。

広告や告知を盛んにすることは効果が期待できるが、狙いや考えがなければ、単なる無駄な出費に終わる。
ファッション雑誌にブランド名と外国人モデルだけを掲載した純広告を出稿してもまったく何の効果もないのは、各ブランドが知っている事例だろう。

まあ、都市伝説の類だろうが、こんなうわさを聞いたことがある。

ユナイテッドアローズの重松理会長は人一倍、入店客数を気にしていたといううわさだ。

入店客数が多いと店の入り口の足拭きマットの傷みが早い。
たくさんの人間に踏まれるからだ。

それとは逆に入店客数が少ないとマットはなかなか傷まない。

足拭きマットは、ダスキンなどの業者からレンタルしている場合が多く、定期的に交換される。
傷みが早いと交換のペースが速くなるし、傷まないと交換のペースは遅くなる。

そこで、うわさによると、重松会長は商業施設内の同業他社の入店客数動向を探るために、出入りのレンタル業者に声をかけ、どの店が傷みが早いかを探っていたといわれる。

あくまでもうわさに過ぎないと思うのだが、それほどに入店客数の増減を重視していたから、そういううわさができたのではないかと考えられる。

入店客数を増やす施策と、買い上げ客数を増やす施策は異なる。
これをプレイヤーであるが故にごっちゃにしてしまっているブランド、企業が多いのではないか。

一度、基本に立ち返ってみることもたまには必要なのかもしれない。



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