アパレルブランドの広告が失敗する理由

アパレルブランドにとって広告は必要不可欠なもので、ブランド側はもう何十年も出稿し続けているわけだから、本来はすごく広告に詳しいはずである。
しかし、業界紙、編集プロダクションで勤務した経験上でいうと、そういうブランドはほんの一握りしかない。

多くのブランドは、惰性とお付き合いと「何となく」で出稿している。
そしてそれらは広告代理店にお任せである。

例外的な少数を除くと、アパレルブランドの広告担当者のお仕事というのは広告代理店と親しくすることが8割くらいを占めている。
各ブランドにはそれぞれお抱えに近いような代理店が存在する。
1社の場合もあれば、それが複数の場合もある。
要はそれら「お抱え」と親しく付き合って、リサーチからプランからすべてお抱えに丸投げし、出てきたものに対して判断を下すだけであり、その判断自体も担当者の好き嫌いやその上司の好き嫌い程度しか基準がない。
広告担当者か上司(社長である場合も多い)が「これ、ええやん」といえば、それで終わりなのである。
その「ええやん」の基準は好き嫌いだ。

だからアパレルブランドの広告は成功しにくい。

いくつか失敗例を提示する。
当方が広告に携わったのは雑誌媒体なのでそれがメインになる。

以前、某中堅ジーンズメーカーに雑誌「Begin」の広告を相談されたことがある。
このジーンズメーカーに限らず、アパレルブランドの勘違いは、そこそこ人気のあるファッション雑誌に1度広告を掲載すれば、売上が即座に増える・回復すると思っている点である。

で、相談をされたのでこれまた、ファッション雑誌広告に強い某中堅代理店を紹介した。

ジーンズメーカーの予算は年間1000万円、代理店はこの予算で、Beginの年4回掲載を獲得してきたと記憶している。
単なる純広告(綺麗なイメージ写真とブランド名だけの広告)ではなく、タイアップ記事広告だったので、1回あたり200万円以上した。
通常、雑誌では純広告よりもタイアップ記事広告の方が高額になる。

これで決まるかと思った矢先に、メーカーが「以前から懇意にしている地域密着の小規模代理店から出稿したいと言い出した。
これは本来は厳禁な行為である。
なぜなら、その料金プランはその中堅代理店が掛け合って実現したもので、お抱え代理店が作ったプランではない。
お抱え代理店が本来すべきことは、己らも掛け合って独自のお得感のある料金プランを作成することである。

しかし、お抱え代理店の甘えとそれを許したメーカーの不見識が相まって、結局はそのプランをお抱え代理店からやることになった。

こうなると、次からはその中堅代理店はメーカーには協力しなくなる。当たり前だ。先に不義理をしたのはメーカー側である。

結果からいうとこの広告はさほど効果がなかった。
年4回というのは無名ブランドにとっては掲載回数が少なすぎるし、Beginという雑誌がそれほどの「大部数」を抱えているわけでもないからだ。モノに対する記事や写真での見せ方に定評のある雑誌ではあるが、読者数はそれほど多くないし、読者層とブランドの相性も考慮しなくてはならない。
これはBeginに限らずどのファッション雑誌でも同じだ。
読者数の多寡も重要だし、読者層との相性がさらに重要となり、どんなに大部数のある雑誌でも読者層との相性が悪ければ、まったく反応はない。
ブランドの広告担当者はそこをよく考え、リサーチを自身でし、判断しなくてはならないが、それができている広告担当者は知っている範囲でいえば見たことがない。

結局はこのタイアップを1年か2年でメーカーはやめてしまった。効果もさることながら1000万円の広告費が捻出できなくなったからだ。できなくなったというのは表向きの理由でもしかすると、もったいないと感じたのかもしれない。

これはもっとも非効率的なカネの使い方である。
無名のブランドが年4回ちょろっと広告を掲載したところですぐさま認知度が上がるわけでもない。
もっと回数を多く、長期間にわたって掲載しないと実はファッション雑誌広告には意味がない。
年6回以上で、3年~5年間の広告掲載は必要だろうと思う。

1年や2年でやめてしまえば、その広告費は無駄になる。
このメーカーでいえば、2000万円をドブに捨てたようなものである。
これで従業員を雇うとか、従業員のボーナスを増やすとか、従業員と豪勢な食事を楽しむとか、に使った方がずっと社内の士気が上がる。

こういう失敗をするブランドは本当に珍しくない。アパレルブランドのありふれた日常風景である。

じゃあ、中小代理店を使わずに大手代理店を使えば成功するんじゃないかと考えるのが、アパレルブランドの浅はかさである。

また別のジーンズメーカーが20年くらい前まで10年間、電通を使っていた。
このメーカーはかつて「大手」と呼ばれており、ピーク時の年商は130億円くらいあった。

結果的にいえば、このメーカーの売上高は現在はピーク時の6分の1以下にまで低下している。
完全なる「ドブ金」だったといえる。

年間予算は毎年5000万円~1億円だったと聞いている。

これだけ多額の予算を払えばさぞかし効果があると、アパレル業界では考えるが、結果はまったく逆だ。
それがこのメーカーの凋落が証拠といえる。

アパレル業界からすれば広告宣伝費5000万~1億円というのは多額だが、電通からすれば鼻くそである。
だから電通はこの程度の予算では身を入れて仕事をしない。

例えば、当方とは比べ物にならないほど著名人で広告業界ともかかわりの深い永江一石さんもご自身のブログでこう述べられている。

東京都の豊洲市場における、スーパーお馬鹿なインフルエンサーマーケティングが草ボウボウ
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=37864

電通で5000万というのは鼻くそですので、わたしの推測ではPR会社に丸投げしたものと思います。

とのことで、年間5000万円程度の予算では電通にとっては「どうでも良い」依頼なのである。

文中で述べられている事例は、大手広告代理店ならやらかしそうなウェブマーケティングでの失敗例といえる。
アパレルも行政も理解していないのは、広告代理店には各社それぞれ得意分野と不得意分野があるということで、電通でいうならファッション雑誌やらウェブは苦手で、芸能人のブッキングやビッグイベントやテレビCMは得意なのである。
分野によって代理店を使い分けるのが得策で、大手に少ない金額で丸投げするのが最愚策といえる。

かつての大手ジーンズメーカーも東京都もその最愚策を採用している。
5000万円はまさしく「ドブ金」だ。

かつての大手ジーンズメーカーなんて総額10億円以上を使って、売上高を6分の1以下にまで低下させたのだから愚の骨頂としか言いようがない。

まあ、付け加えておくと、今現在も電通とか博報堂を何十年間も使い続けているのに、中高年以外の層にはまったく知名度が上がらない大手
肌着メーカーというのもある。知名度が上がらないどころか、知名度は下がっているのではないかと思う。
これも現在進行形の「ドブ金」の一つの代表事例といえる。

アパレル業界が広告で成功したいのなら、

1、広告というのは多額のカネが必要と強く認識する(節約のために年1回の掲載なんて効果なし)
2、広告代理店にはそれぞれ得手不得手があり、それを見極めて事案ごとに代理店を使い分ける
3、大手に少額のカネで頼めば、必ず手抜きされる

これを徹底的に頭に叩き込まないと、ドブ金事例はさらに積み上がることは間違いない。

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「安さ」だけでは衣料品は売れない時代 ~投げ売りの最前線を見て~

大阪市内の都心を歩いていると、ティッシュやら割引チケットやらさまざまなものが配布されている。
もちろん、東京都心だともっと多い。

そういうものはだいたいがアルバイトのオニイちゃん、オネエちゃんが配布しているから、極力受け取るようにしている。
しかし、たまにこちらの善意に付け込んだような、受け取るだけでなく何かを答えさせようとするものも多いから注意が必要だ。
そういうのは断固として断る。

先日、御堂筋沿いを歩いていたら、赤い法被を着たオネエちゃんが道行く人に声をかけて何かを配布していた。
最初、赤い法被なのでジャンカラなどのカラオケボックスの店員なのかと思ったが、受け取ったチラシを見て驚いた。
ウィゴーの販売員だった。
受け取ったチラシが驚異的だったのだが、「全品390円セール」というものだったからだ。
ちなみに単品だと「全品390円」(格安居酒屋か)だが、袋に詰め放題で中サイズ3000円、大サイズ5000円とも書いてある。
なんという投げ売り!本当にバッタ屋並みである。
もしかしたら生半可なバッタ屋よりも安いかもしれない。

バッタ屋の聖地と化している天神橋筋商店街を歩くとさまざまなバッタ屋があるが、一律500円とか1000円という店が多く、それらよりも断然に安い。

とりあえず、チラシだけを受け取って、その日の仕事先に向かった。

仕事が終わって、先ほどのチラシを思い出して覗いてみようと思った。
18時半ごろだったので日は暮れていた。

通常の正規店ではなく、別会場を借りてのセールだったが、それでも驚異的な投げ売りといえる。
その日が最終日でなおかつ閉店まであと1時間半くらいだったので、チラシに書かれてあった袋詰め放題も3000円と5000円が2000円と4000円に値下がりしていた。
ざっと袋の大きさを見ただけでも、2000円コースですら10枚は優に洋服が詰め込めるくらいの大きさはあった。

会場は、洋服が台の上にごちゃっと山積みにしてある。
たしかにこれしか、やり方はないだろう。
390円の投げ売りセールで、しかも数日間の限定売り場で、正規店のような陳列は非効率極まりない。
台の上に、当初は畳んであったのだろうが、ごちゃっと山積みにするしかない。

帽子、バッグ、マフラーのコーナーと、レディースコーナー、それからメンズコーナーに分けてある。

商品を見てみると、帽子やバッグ、マフラーは秋冬物だがメンズの衣料は春夏物である。
レディースコーナーで商品をほじくり返すことは通報されそうだったのでやめておいた。
女性客に交じって50歳手前のオッサンがレディース商品をあさっている風景を想像するとヤバすぎて通報されてもおかしくはない。

遠目からざっと見ただけだがレディースも春夏物が主体だったと思う。

最終日で閉店まであと1時間半ほどだというのに商品は各コーナーともまだまだ残っていた。

売れ残りの春夏物なんて10枚も20枚も要らないから、単品で買うことにした。
商品をほじくり返してみたが、半袖シャツとか半ズボンとかそういう商品がほとんどで、寒さを一層掻き立てた。
失望しながらほじくり返していると、ちょっと春先から使えそうな商品をいくつか発掘でき初め、気分は上向きになった。

とは言っても、生地自体は薄手や麻混だったので明らかに初夏・盛夏物だったが。

その中から、去年か一昨年くらいに流行したボタニカル(植物柄)のジャケットと、薄手の杢グレーパーカを発掘した。
ボタニカル柄のジャケットは、去年か一昨年くらいにパンツとのセットアップで各ブランドから発売されていた。
そういうトレンドだったのである。それにウィゴーも乗っかっていた。まあ、洋服商売なら当然なのだが。

綿100%のプリペラ素材で、黒と白があった。
Tシャツの上に羽織ることを考えると、襟首の汚れが目立ちにくい黒にしようと思ったが、紺色やネイビーのズボンの手持ちが多い当方なので、黒ではなく白を選んだ。

しわが目立ちにくい素材であるうえに、白と言っても黄味がかっているから、小まめに洗濯機に放り込めば汚れの首輪も気になりにくいだろう。
定価6900円が1900円に値下がりして、それが390円に投げ売られていた。
明らかに原価割れだろう。

もう一つの薄手パーカは綿・モダール混素材で、裏毛でもミニ裏毛でもなく天竺である。
こちらは定価1900円の値札が付いている。まあ、390円ならお買い得だ。
これもTシャツや長袖Tシャツの上から羽織れる。

2枚合計で税込み842円だった。

盛夏でTシャツ一枚で様になるためには、顔と体型が良いことが必須になり、顔と体型が悪ければどんなにデザインを凝らしたTシャツでも格好が悪い。逆に顔と体型が良ければ、そこらへんで買ってきた390円のTシャツだって格好良く見える。
これが夏服の恐ろしさである。
ライザップはここの部分を狙えば良いのである。

だから顔も体型もアレな当方としてはTシャツ+1枚という工夫を凝らさねば人前に出ることすらかなわない。
着るまでにはあと2か月は寝かしておく必要があるが、2枚合わせて842円ならお買い得といえる。

実は、以前から手伝っている天神橋筋商店街のバッタ屋「ラック・ドゥ」も2月1日から18日まで全品100円セールを行っている。

本日よりBIGイベント開催!

4日間ほど店を手伝ったが、ここも春夏物がほとんどで、今年の2月は寒いが100円なら半袖ブラウスを買う人がこんなに多いのかと驚かされた。

で、店作りは今回のウィゴーと一緒で、台の上に服が山積みにされてある。これしかやりようがないというのがウィゴーの別会場セールを見て改めてわかった。

ちなみに「ラック・ドゥ」では在庫が少なくなっているので、新たな仕入れ先を募集しているそうだ。
過剰在庫を抱えているメーカーやブランドは一度連絡してみてはどうか。

それにしても、正規ブランドの在庫処分もバッタ屋と変わらなくなってきたと感じた。

実は先日、某メーカーのサンプルセールに招待され、1品100円で購入してきたが、それは完全メンバーズ制で、会期は1日間で営業時間はわずか2時間しかない。本来の意味でのサンプルセールだが、このウィゴーのは道行く人々を誘致しているのだから、これとは異なる。
不特定多数の人に広く売ろうとするものだ。

それだけ在庫を抱えていたともいえるし、ウィゴーに限らず、今後は在庫を抱えたメーカーやブランドはバッタ屋並み・バッタ屋を下回る値段で広く販売するケースも出てくるのではないかと思う。
販売方法、価格もバッタ屋との線引きがなくなりつつあるともいえる。
最早、割安感だけでは衣料品は売れない。そういう時代を象徴しているのではないか。

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ジーンズメイトの赤字継続は当然

ジーンズメイトが18年3月期決算の下方修正を発表した。
案の定だ。

これまで、売上高115億5000万円、営業利益3億円、経常利益3億300万円、当期利益4億円と発表してきたが、これを

売上高95億9000万円、営業損失5億5000万円、経常損失5億4000万円、当期損失7億3000万円とした。
見事な赤字継続である。

個人的にいえば、当初の見通しが甘すぎただけのことで、赤字継続には何の驚きもなく、むしろ当然だと感じる。

ジーンズメイトの発表によると

また重点販売商品と位置づけた新しい商品群の販売や新しいマーケティング 手法により新規顧客を獲得することを企図していたものの、計画値には届いておりません。

と売上高減少について述べている。
24時間販売の廃止での減少とも書かれているが、果たして24時間販売の売上高がどれほどあったのかは疑問である。
また、引用した部分については、新PB「メイト」の不発や他のPBの刷新が上手く行かなかったということを示している。

赤字については

今期計画は、商品回転率の向上と値引き率の抑制に取り組むことで売上総利益率を 50.0%(前 期比 5.3 ポイントの改善計画)としておりましたが、上述の通り売上が計画を下回り値下げ・値 引が徐々に増大していったことや、シーズン末の大幅値下げを伴う在庫処分が増加した事などに より、売上総利益率は 46.1%の見通しとなりました。

とのことで、要するに売れ行きが悪くて値引きセールをしたのでその分利益が削られたということである。
まあ、たしかにいくつかのお買い得品はあった。
先日、春に向けてPB「ブルースタンダード」のボートネックボーダー柄カットソーを買ったが、これは以前にも1490円に値下げされていたのが、ほぼ1年ぶりに店頭投入され990円に値下げされていた。持ち越し在庫である。
ただし、綿100%の生地は肉厚で、品質はそれなりに高く、定価は2990円である。
裾にスリットがないのがちょっと疑問な作りだが、それ以外に不満はない。
990円なら割安感がある。

リリースで述べている在庫処分セールとはこういう種類の商品を指している。
また先日、このブログで紹介したローゲージウールニットパーカも7990円が1990円にまで値下げされており、大変なお買い得品だった。

ジーンズメイトがライザップ傘下になって、変わった部分はあまり見えない。
唯一変わったのは、これまでよりも商品の店頭投入量が減ったところくらいしかない。

店頭と、店頭に並ぶ商品を見ていると、以前とはそんなに大きく変わっていない。
店作りも商品も変わらないなら、よほどの上手い販促・プロモーションがない限りは、業績が急回復することはない。
これはアパレルに限らずどの分野においても同じ理屈である。そしてジーンズメイトにはその「よほど上手い販促」は今に至るまで存在していなかったから、結果は火を見るよりも明らかだった。

にもかかわらず、メディア系著名人、経済系著名人などのいわゆるインフルエンサーはもろ手を挙げて「ライザップの手法」とやらを誉めそやした。
で、同じ人たちが今、800SKUという超細分化されたサイズピッチの既製服のZOZOを「完全オーダーメイド」だと誉めそやしているのである。この輩の評価はまったく当てにならない。

そもそもこれまでライザップは手あたり次第にアパレルを買いまくってきた。
そこに何か戦略があったとはとても思えず、瀧定大阪同様に場当たり的に買ったとしか見えない。
なぜなら、買ったアパレル各社に何ら共通項がない上に、買収後もまったく各社が連動する気配もない。
ジーンズメイトは1年にしかならないからまだしもそれ以外だと4~5年になる会社もあるのに、いまだに何も変わっていないし、それらが連動・連携する気配もいまだにない。

ライザップ傘下のアパレル各社を見てみよう。

・エンジェリーベ 2012年4月グループ入り
・馬里邑 2013年9月グループ入り
・アンティローザ 2014年5月グループ入り
・夢展望 2015年3月グループ入り
・三鈴 2016年4月グループ入り
・マルコ 2016年7月グループ入り
・ジーンズメイト2017年2月グループ入り
・堀田丸正2017年6月グループ入り

となっており、雑貨小売り系だと

・イデアインターナショナル 2013年9月グループ入り
・パスポート 2016年5月グループ入り

となっている。

2016年、2017年にグループ入りした各社はあまり変貌していなくても仕方がないと思うが、それ以外の会社はどうだろうか。あまり変貌していないことは問題ではないか。2015年にグループ入りしたネット通販の夢展望もそろそろ変貌が顕在化しないとちょっと今後の芽はないだろう。
また、それらの企業やブランドはまるでいまだに連携していない。
連携・連動できない傘下企業を増やしたところで意味はなく、ライザップは何のためにアパレルを買いあさっているのか理解に苦しむ。
優良企業を買うならまだしも優良でない物件が多く、本当にその目的はわからない。
単にメディア系・経済系インフルエンサーの期待値を上げるためだけとしか思えない。

ジーンズメイトに限らず、健康食品・スポーツジムのライザップがアパレルを買ったシナジー効果は全く現れないままに6年になろうとしている。
考えうるシナジー効果としては、健康食品・スポーツジムのライザップがプロデュース・ディレクションをしたというスタイルで、各ブランドから「単なる従来型衣料品」ではなく、「スタイルを美しく見せるパターン作りやカッティングに工夫を凝らしました」という触れ込みで新商品を投入することである。

ジーンズメイトでいうなら、ユニクロを辞めた人、しかも企画職でもなかった人を起用して、ユニクロと同じテイスト・同じターゲットで、ユニクロより価格の高いカジュアルウェアを作るなんて何の意味もなく、ユニクロに勝てるはずもない。
ユニクロに勝つ必要なんてないが、その商品では、ユニクロではなく、メイトを選んでもらう理由すらない。

それよりもライザップがプロデュースして、本当に美脚に見えるスキニーパンツだとか、細マッチョに見えるTシャツだとかそういう「価値作り」をすべきなのである。
ユニクロと同じ土俵でライザップが戦う必要性なんてまるでなく、むしろ自ら望んで負け戦に飛び込んでいるにすぎない。

しかし、ライザップがそこに向かわないということは、個人的にはライザップにはアパレル再生のノウハウが存在しないと見ている。

皮肉にもライザップとの提携でもっとも効果的な商品を開発したのは、傘下のアパレル・雑貨企業各社ではなく、ライセンス契約したに過ぎないグンゼである。
これなどはその最たる例である。

着るだけでバイタルデータを取得
グンゼ×RIZAPによる最先端衣料「筋電WEAR」が誕生

http://www.gunze.co.jp/corporate/news/2017/09/20170925002.html

これが本来、ライザップに期待されるアパレルブランドとのシナジー効果といえる。
ライセンス契約のグンゼ以外にその方向性を指し示せない限り、ライザップが傘下のアパレル企業を経営再建することは、ほぼ不可能に近いと当方は見ている。

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現状と原因を正しく認識していないブランドは有効な施策を打ち出せない

販売員のための「Topseller.style」なんかに参加している割には洋服店で接客されるのが嫌いである。
もちろん、ラグジュアリーブランドの接客なんて受けたことがないから、もしかしたらそういう店の常連になれるほど金持ちになれば、接客マンセーするようになるかもしれない。

異論もあるだろうが、個人的にはユニクロや無印良品のセルフ形式の売り場の方がずっと気が楽であり、居心地が良い。
仕事としては誰かと話すことは別に苦ではないが、誰かと話すのがすごく好きなわけでもない。
だから仕事以外では見知らぬ他人とはまったく話したいとは思わない。

それ故、客としては販売員と話したいとは思わないし、必要以上の会話は避けたい。
こちらの質問にキチンと正しい内容で答えてくれればそれで良い。

2月に入って、初めて店を回った。
1月の下旬に回って以来だ。

自分が買えるレベルの各店頭を見て回ったが、2月の売れ行きはやっぱり厳しそうだし、売り場は荒れている。
今年の1月、2月は暖かい日と強烈に寒い日が交互に訪れるという気候で、ときどき暖かい日があるとはいえ、まだ春物を着る気分ではない。かといって、2月もあと2週間で終わるから、今更、いくら安くなっていても冬物を買うのも抵抗がある。1000円とかの投げ売り品は別として中途半端に半額とか60%オフ程度の防寒アウターは特に買う気にもならない。

寒いので春物を買う気にもなれない。

おしゃれな人は先物買いで、とはよく言われるが、今買って1か月間も寝かせておくほど心にゆとりはないし、そこまでして「おしゃれな人」と思われたくもない。

今月と3月上旬の当方のスタンスは

「破格値に値下がりしていて、3シーズンは使えるような服を探す」

である。

そんな中、たまたま立ち寄ったGAPは店内が空いていたので、ちょっと長居していろいろと物色してみた。
ジャパン社の社長が「投げ売りはやめます」と宣言したからか、以前よりは投げ売り品が減っていてセールコーナーも以前に比べると整然としていた。

以前のような赤い値札シールの商品が山盛りになっている状態ではなくなっていた。
ただし、その分、店内が空いているような気がした。

いろいろと物色していると、中には投げ売り品もあって、その中に、キャメルとかブラウンに近い濃いベージュのチノパンがあった。
ストレッチ混素材を使っている。
この商品以外でもズボン類にストレッチ混素材が増えた。
ほんの4年ほど前まではかたくなにストレッチ混素材を使わなかったGAPだがいよいよ抵抗できなくなったのだろうか。
逆に5年前から大々的にストレッチ素材を使用していればGAPはここまで苦戦しなかったのではないかと思う。
細身シルエットが全盛のころ、なぜあそこまでかたくなに綿100%素材にこだわったのだろうか。まったく意味がわからない。

それが売上高5億円程度の「こだわりブランド」ならまだしも世界規模のブランドがなぜ市場ニーズを無視し続けたのだろう。
GAP苦戦の一因はこういう「わけのわからないこだわり」もあると思う。

余談だが、当方は薄い色のボトムスを穿くのが苦手で、黒か濃紺を穿くのが一番落ち着く。
とくにベージュ系はだめだ。白でもなく濃色でもないあの中途半端さが嫌いだし、着用した姿を見ても似合っていると思えない。
ベージュのズボンを穿くくらいならグレーを選ぶ。
それほどにベージュのズボンは苦手だ。

それでも克服しようとときどき買ってはみるもののやっぱりなんだかしっくりこない。

そこで今回、このストレッチチノパンを買ってみようと思い立ったわけだ。
価格は定価7900円が1990円まで値引きされている。
さらにレジにて20%オフで、メンバー会員はそこからさらに5%オフされる。
税込み1512円にまで値下がりした。

1512円で買ったストレッチチノパン

これくらいの値段なら、試すにはちょうど良い。
そんなわけで一応、試着してサイズ感も確かめて買った。

しかし、今回はGAPの販売員の接客が以前にも増して丁寧になっており、ちょっと薄気味が悪かった。

物色中に、ホテルウーマンみたいな感じのプロっぽい熟女店員が声掛けをしてきて、まあ、それはそれでやりすごせた。
以前から、GAPではこういう声掛けはよくあった。

で、しばらく物色してからこのチノパンを試着しようと、近くにいた別の販売員に声をかけて、試着室へ行った。
扉を閉めて、穿き替えていると、扉の外から声がかかり、「担当が私に代わりました」と言われた。
声の主は先ほどのプロ販売員っぽい熟女である。

いやいや、1512円のチノパンに「担当」とか付けられても困るよな~。

ここまで丁寧にする必要があるのだろうか。甚だ疑問だ。
GAPの販売員の接客は以前から割合に丁寧な感じだったので、可もなく不可もなかった。
最初に声掛けはあるものの、それ以降は必要があるまでは声もかからなかったし、「担当」なんてつくこともなかった。

元来、接客されるのが好きではないので、たかが1512円のチノパンでここまで丁寧にされると、良い気分になるどころか逆に薄気味悪ささえ感じた。

ここからは完全なる推測だが、GAPは不振を克服するために接客をより丁寧にしようとしているのではないかと思う。
しかし、それは逆効果とは言わないまでもあまり意味がない。
なぜなら、GAPの販売員は以前からそれなりに丁寧だったからだ。

GAPが売れない原因は間違いなく接客ではない。

しかし、先日のジャパン社の社長の「これからは投げ売りはしません」という発言を見てもわかる通り、自分たちの不振の原因が何なのかさっぱりわからないのではないかと思う。
投げ売りをしているから売れないのではなく、商品の定価設定が高すぎるから投げ売りしないと売れないのである。
認識の順番が逆なのである。

この1512円で買ったチノパンだって1512円にしては良い商品だが、7900円出す商品かと問われたら即座にNOと答える。
それならエドウインの7500円パンツの方がバリューがある。

だったら、定価を4900円とか5900円に最初から設定すべきだろう。

もしくは、高値で売りたいなら高値で売れるような商品作りをするか、ブランディングをするか、である。
接客のより一層の丁寧化とか、投げ売り廃止とかそういうことが求められているのではない。

現状認識が正しくできない間は、有効的な施策は打ち出せない。
マーケティングの基本である。

GAPは米国本社もジャパン社も、自分たちが思い描いている自画像を一度捨てて、外野の人間になりきって自社を見つめなおしてみてはどうか。それができて初めて有効的な施策が打ち出せるだろう。

まあ、投げ売りされてて良い商品があればこれからも買いますけどね。(笑)

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低価格商品に最高峰品質は必要ない 

先日、神戸のレディース靴工場、ロンタムの神農社長と遅めの新年会をした。
実は、1月中に5人くらいで新年会をするはずだったのだが、前日にぎっくり腰を発症されて、欠席になってしまったので、今回はその挽回戦となったわけである。

当方も含めたオッサンの身体は漏れなく傷んでいる。(笑)

神農社長と知り合ったのは、2015年に当方がブログセミナーを開催した際、出席してくださったことがきっかけだった。

それから神農社長はずっとブログを書き続けておられる。

http://blog.livedoor.jp/masamichirontam/

ブログの効果としては、ブログを読んだと言って受注があることがチラホラ出てきたことだという。
何事も継続は力なりである。

とは言っても、工場の現実は厳しく、神農社長によると長田にあるケミカルシューズ工場は全般的に厳しい状況にあるという。

そうそう、ケミカルシューズという言葉だが、当方にはあまり違和感がないが、まれにその言葉を聞いたことがないという人もおられるそうだから、簡単に説明しておくと、本革の靴ではなく、合皮やビニールというような化学的な素材を使って作る靴のことである。
だから、元々は低価格向けとして作られていた。
低価格ということは大量生産・大量販売が前提である。

しかし、中国やアセアンなどでさらなる低価格ケミカルシューズが作られて、日本に輸入されるようになると苦境に転じた。

低価格ではアジア製には勝てない、かといって品質や機能性では高額靴メーカーには勝てない、というサンドイッチ状態に陥ってしまっている。

また、靴業界そのものも苦戦傾向にあるらしく、いわゆる品ぞろえ型「靴専門店」がかなり厳しいそうだ。
神農社長に言われてみると、パッと思いつくのは「ABCマート」やチヨダくらいで、「ダイアナ」「マリング」などの靴専門店は店舗数を減らしているし、店としての明確なイメージが思い浮かばない。
ABCマートだと「スニーカー」というイメージが思い浮かぶが、ダイアナ、マリングあたりになると一応、レディースのパンプスとかハイヒールが思い浮かぶが店舗に行くと、スニーカーはあるしワークブーツもあるし、で何が得意な店なのかがわかりにくい。

それ以外だと、ブランドの直営店やオンリーショップばかりが思い浮かぶ。
例えば、オッサン的発想なら「リーガル」だ。

そうなると、新規取引先の開拓といっても限られるので、必然的にロンタムはアパレルや大手セレクトショップの別注品やOEM生産が増えているという。
これは他の靴工場も同じなのではないだろうか。

そんな状況を打破すべく神農社長は奮戦しておられるが、上記のような理由で、いわゆる新規卸先を開拓するのはかなり難しい状態になっている。

神農社長にヒントを求められたのだが、そんなものを提示できるなら当方はとっくに金持ちになって、スーパー万代で定価で食材を買っている。
具体的なヒントは差し上げたくても差し上げられないからひどく原則的なことをお答えした。

オリジナル製品を作って拡販を図るとして、

1、品質、機能性以外の価値を提供できること
2、工場の背景や歴史をストーリー化すること
3、消費者に「欲しい」「買ってみようかな」と思わせる「価値」を作ること

を挙げた。
あくまでも原則論なので、これをもとにどう組み立てるかは、大手アパレル並みに相手に丸投げしておいた。

神農社長は「真面目」な性質で、「オリジナル製品を作るにしても僕らの商品はまだまだ品質的には最高峰には程遠く・・・」と常に言われ、その職人としての求道精神には本当に敬服しているが、それではなかなか進まない。

こういう職人の求道精神は大切にしたいと思いつつも、ビジネスを進める上ではどこかで割り切る必要があるとも思う。

最高峰の品質を実現した暁には、その商品の販売価格はいくらにするのだろうか?
最高峰の品質だから10万円では、よほどのブランド力やステイタス性がないと誰も買わない。
ましてや新参ブランドでは絶対に買わない。

また、神農社長ご自身でも、婦人のパンプス類の店頭販売価格は13000円くらいが限界だとおっしゃっている。
普通に考えても安いパンプスなら2000円くらいで売られているご時世で、よほどの何かがないと2万円を越えるパンプスは買わない。

そうなると、紳士靴ならまだしも婦人靴で2万円を越える高価格を付けることはちょっと現実的ではない。

どこかの部分で値段相応に品質を割り切る姿勢が必要だろう。
1万円だからこの品質、最高峰品質だから5万円という具合に。

これは以前に、初著書「小さな企業が生き残る」(日経BP)を紹介したセメントプロデュースデザインの金谷勉社長も同じ主張である。
金谷社長の場合は伝統工芸に対して、

最高峰のハイエンドモデルだけではなく、一般人でも手に取りやすい価格の入門編を作るべきだ。その入門編は簡略化した技法で作れば良い

と提言しておられ、まさにそれが必要ではないか。

例えば、オール手塗の漆器があったとして、それが10万円くらいするなら買う人・買いたい人は限られる。
しかし、漆塗りの技法を簡略化して5000円くらいにして発売したらどうだろうか。プロモーションの手法や商品デザインにもよるが、多くの人が買いたい、買ってみても良いとなる。

ロンタムのオリジナル靴もこの割り切り方が必要ではないかと思う。

さらにいえば、機能性や品質とは別の価値提供という部分では、スタートトゥデイのプライベートブランド「ZOZO」を参考にすべきだろう。あのTシャツとジーンズの品質や機能性は値段相応に過ぎないのに、多くの人がそこに「価値」を見出している。
正確に言えば、価値を見出したと錯覚しているだけなのかもしれないが、そう思わせる手法はブランド運営には必要になる。

神農社長の悩みを聞きながら、アパレルブランドも同じ部分で悩んでいるのではないかと思った。

もうすでに、服という単品での品質と機能性、デザイン性では差別化できない状況になっている。
もちろん、そういう部分にフォーカスするマニア客は存在するがそこの人数は多くない。
仲間と数億円程度の売上高が稼げて利益率が確保できれば良いなら、そのマニア層を狙っても良いが、何十億円・何百億円の売上高を目指すならマス層に向けて売るしかない。

しかし、マス層に「品質ガー」「機能性ガー」「デザインガー」ばかり唱えていても仕方がない。
デザインはさておき、もうすでにユニクロや無印良品の商品に品質も機能性も負けているアパレルブランドが多数あるから、その土俵で戦ってもさらに負けるだけのことである。
だったら違う価値を提示するしかない。
その価値を作れたブランドだけが生き残れるだろう。

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プライベートブランド「ZOZO」の生産システムは、現時点では「完全オーダーメイド」ではない
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物性のみでは低価格品との差別化は不可能になってきた

寒さのピークは1月~2月で、この時期、毎年右耳に霜焼けができる。
なぜか右耳だけで左耳はいつも無傷だ。
年明けまではできていなかったので、安心していたら2月の寒波でまた右耳に霜焼けができてしまった。
昔からできていたわけではなく、3年くらい前からできるようになった。
今回で3年連続3回目の出場ということになる。

原因の一つは駅まで自転車に乗っていることだと思う。
その際、耳当てをすれば良いのだが、めんどくさくてしていない。
ユニクロで190円に値下がりした耳当てを2つ買ったのだが、未使用である。
自転車に乗る際は耳当てをしたとして、下りて歩いているときも耳当てをするのは格好悪い。
で、その着脱がめんどくさいというのが言い訳である。

そこで思い立って、ウールのニット帽を買った。
これなら被ったまま歩いても変ではないだろうから。
あとは髪が伸びてきてペタっと寝るので、禿隠しでもある。
くせ毛なので短いと立たせて禿をごまかすこともできるが、髪が伸びてペタっと寝ると、隠そうとしても隠し切れない禿になってしまう。特に強風の日は禿丸出しだ。
上手く隠し切れない場合はニット帽をかぶるしかない。
嗚呼、悲しき禿。

当然、当方が買うなら値下げ品しかあり得ない。
しかもニット帽は「好みの商品」ではないから、できるだけ安い方が良い。
でも粗悪品は嫌だ。

まあ、はっきり言って単なるわがままなのだが、そういうのが無印良品にあった。

「おでこのチクチクを抑えたワイドリブニットワッチ」である。

元値は1900円だったと記憶しているが(違っていたらごめん)、店頭では500円に値下げされている。
しかも税込み。本体価格は450円くらいということになる。
ネットではなぜか1000円のままなのが謎である。(笑)

本体はウール100%で、切り替え部分が綿100%と表示されてある。

1900円でも安いとは思うが、税込み500円は魅力的な価格だ。
迷わず買った。

店頭では残り少なくなっており、ライトグレーとメランジ調の水色が残っており、迷わずライトグレーにした。
他の店舗だと白も残っていたが、オッサンにはライトグレーが一番マシに見える。
さすがに黒とか紺は売り切れていた。

最初に、商品の表示を見て、どこに切り替え部分があるのかわからなかった。

画像で見てもらってもわかる通りに、切り替え部分がないように見える。

でも、よく目を凝らして見ると、ほとんどわからないほどに色も編み目も同じにした綿部分が帯状に差し込まれている。
裏面から透かして見るとより分かりやすいだろう。

真ん中の濃くなった部分が綿ニット部分である。
これを額に当たる部分に差し込むことでウール特有のチクチク感を抑えるという設計である。

 

こんなに細かい作業をした商品が1900円でも十分にすごいのだが、500円に値下げできるというのはすさまじいと感じる。
しかも材質はウール100%で、アクリル100%の他の低価格ニット帽に比べると格段に素材の値段も高い。
ウールは値上がりし続けているからだ。

あからさまに綿とウールを切り替えるのは技術的には簡単である。
まったく違う編地をつないで「デザインっぽく」すれば済む。
しかし、違う素材で同じような編地を作って、それをほぼ継ぎ目が見えないほどスムーズにつなぐのはすごい技術だと思う。

従来、衣料品では、低価格品との差を「品質」とか「素材」とか「縫製仕様」などで説明してきた。
素材にしろ縫製にしろ、一概に「〇〇だから高い」とは言えない部分はあるが、ある程度はそれで説明ができた。
ウールにもさまざま等級があるし、合繊にも高額なものもある。
しかし、アクリル100%のニット帽は安物でウール100%はそれよりは高い値段が付けられていても多くの消費者は納得できた。

ところが、このニット帽はどうだ。

ウール100%素材もすごいが、ウールの編地と綿の編地を見わけがつかないほどスムーズにつないでいる。
ウール部分から綿に切り替えるだけならまだしも、もう一度ウールとつないでいる。

ウール・綿・ウール

という具合に編地を2回つないでいるのである。

1900円でも十分に安いが、500円は破格値だ。

品質の高さと値段の安さではちょっと他のブランドは太刀打ちできない。

もう「ウール100%だから」とか「ニット地を切り替えて手が込んでいるから」なんていうだけでは、高値を付ける言い訳にもならない。
これまでなら、「デザイン性が」なんてことも言えたが、無印良品やユニクロの商品のデザイン性も上がっている。上がっているというか、デザイン性は業界的に平準化されてきている。

こうなると、価格競争に巻き込まれたくない衣料品や服飾雑貨は別の「価値づくり」をすることが求められる。
これまで通りの「品質」「素材」「デザイン」だけでの差別化はまったくできなくなっており、そこにフォーカスすればするほど価格競争に巻き込まれるし、場合によってはユニクロや無印良品に「品質」「素材」面で負けてしまう。

現に、大手セレクトショップの中途半端なセーターなんてユニクロや無印良品のセーターに素材面でも品質面でもボロ負けしているではないか。おまけに価格だけは一人前以上に高い。
そういう部分にだけフォーカスしたら、買ってもらえる理由なんてまったくなくなる。
お分かりだろうか?

となると、違う部分での「価値づくり」が必要になる。
日本国内のブランドや企業はこの「価値づくり」が下手くそである。
とくに90年代までは繊維製品に限らず、高機能性を追求すればある程度は売れたから、それが今も染みついているといえる。
衣料品や服飾雑貨だって、良い品質で割安ならある程度は売れた。
小難しいブランディングやらマーケティングやら販売戦略やらはさほど必要なかった。

好き嫌いは別にしてそこが上手いのが欧米ラグジュアリーブランドだろう。
塩化ビニールの鞄を高値でも欲しい商品に感じさせてしまう手法は大いに見習うべきだろう。

こういうことを書くと、「日本の技術は通用しない」という極度の悲観論が出てくるが、そうではなくて追いつかれる部分も追い越される部分もあるということだ。
例えば、ドイツは機械類や自動車が得意だと評価されているが、鉄道の運行はゴミ屑で遅延は当たり前である。
キッチリしているなら鉄道運行もキッチリできそうだが、そうではないらしい。
ここが面白いところだが、どんな国や国民でも得手不得手はあるということで、スーパーマンがそろっているような国はない。

日本だって、ある分野の技術は追いつかれたり追い越されたりすることもあるだろうが、依然としてトップを守っている分野もある。
生地製造でいうなら、生地の風合いの良し悪しなんて追いつかれたり追い越されたりしやすいし、好き嫌いにも左右される。
しかし、不良品率の低さは日本が断トツに高い。国内工場でありながら、カイハラのデニム生地がユニクロに評価されているのは不良品率の低さという部分がある。

自社の優れた部分とそうでない部分を冷静に冷徹に見極めて、それに対処するのがマーケティングの基本である。
何ができて何ができないのか、それを認識する。

知るを知るとなし、知らずを知らずとなす、これ知るなり

「論語」の孔子の言葉である。
自分が知っていることと知らないことを区別して認識することが「知る」ということで、知っていることと知らないことの区別ができていない状態は単なる混乱状態だという意味であり、マーケティングの基本にも通じるものがある。

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繊維の製造加工業の基本は大量生産・大量販売

クラウドファンディングの大成功で一躍知名度を上げたオールユアーズのスーパー企画マン、原康人さんに久しぶりにお会いした。
会って何をしたかというと業界の裏話をネタに雑談しただけである。

その中で、原さんの企画で、某国内生地産地が大手ブランド(ユニクロじゃないよ)からの受注が決まり、2019年春夏物として、4万メートルの生地を生産することになり、非常に産地の士気が高くなっているという話が出た。
その商品が上手く売れれば、さらに受注量が増え、翌年は40万メートルくらいの生産が見込めるらしい。

ちょっとでも衣料品の生産に携わったことがある人ならだれでも知っているが、生地1反の長さは何メートルでしょうか?

答えは50メートルである。

国内の繊維・アパレル業界は製造加工と商品デザインと販売とで分断されており、包括的な知識を得ることが難しいと以前にも書いたが、生地1反の長さが50メートルということを知らないデザインや販売関係の人は多い。

50メートルというと、けっこう長いと感じるが、服の用尺は平均で2メートルなので、そう考えると25着分しかない。
服と言っても様々ある。半袖のTシャツだと用尺は1メートル未満で、だいたい70~80センチが標準であり、ジーンズやワイシャツなら2メートルくらいである。
またロングコートやロングドレスは3メートルや4メートルは必要になる。

で、4万メートルというと、800反ということになり、これくらいの分量があると産地企業は俄然やる気を出す。
40万メートルはそれの10倍なので8000反となり、これで産地全体が幾分か好況になる。

国内の産地企業はこの20年間くらいで減り続けてきた。

今は激減はないが、毎年パラパラと倒産・廃業がある。

こういう状況なので、危機感を持った人たちが「産地を守ろう」とか「産地を支援」とか「産地復興」みたいな取り組みを掲げることが増えている。
個人的にはその意図するところは賛同する部分が多いのだが、最近では幾分、疑問も感じるようになってきた。

産地を守ろうと声を挙げている人は、小資本、零細、個人事業主みたいなのが多い。
当然、その取り組みは啓蒙活動を含めたソフト部分に重点が置かれてしまう。
まれに「独立系デザイナー」などが産地の生地を使うコラボ商品を発表したり、そういう小規模ブランドとのマッチングに成功したりする。

それらの取り組みは、まったく無意味ではないが、産地企業の業績はそれによって大きくは左右されない。
産地側がそういう「ソフト」を積極的に取り入れ、意識改革してくれるのが最も望ましい結果だが、残念ながら現実はそうではない。
産地側の意識改革はあまり進まない。

これは自身が産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」の主催事務局に身を置いてから、さらに痛感するようになった。

中には少数ではあるが、産地企業の中でもすでに自立化に成功しているところもあるし、それに独自で乗り出し始めているところもあるが、残存する大多数の産地企業の腰は相変わらず重い。

産地企業の重い腰を動かせるのは、啓蒙活動ではなく、ある程度まとまった数量の受注なのである。

だから原さんは「産地を動かそうと思ったら4万メートルくらいの仕事とマッチングさせるしかない」との意見で、これには深く賛同する。
繊維の製造加工業の根本は、大量生産・大量販売なのである。

いくら、イシキタカイ系が「10年使える服ヲー(ユニクロや無印良品の服は10年使えるけど)」とか「大量生産は悪だ」とか、そういうことをブチあげたところで、生産システムは基本的には大量生産なのである。
生地を1メートルだけ織ってもそれは、非効率的作業で赤字を積み上げるだけにしかならない。
1枚だけTシャツを染めたところでそんなものは赤字が増えるだけである。

採算ベースに乗せようと思うなら、種類によっても違うが、生地は最低でも5反以上織る必要があり、もっといえば10反以上が望ましい。
とくに、織物の場合は経糸をセットするのに時間と労力がかかるため、経糸を50メートルごとに取り換えていたら大きなロスになってしまう。経糸は長ければ長いほど効率的だから、1反よりは5反、5反よりは10反、10反よりは100反が採算が良くなる。反対に緯糸は10メートルおきに変えてもさほどの手間にはならない。

だから、この考え方を元にして、小規模ブランドをいくつか集めて、共通の経糸で、緯糸をそれぞれのブランドごとに20メートルから50メートルおきに変えて、生地を作るという「経糸バンク」という企画を構想した会社があったが、結局構想倒れになっており、実現すれば面白かったのではないかと今も思っている。

それはさておき。

染色加工場でもリサイクルを掲げて、古着の染め直し事業を考えたところもあったし、現に今やっているところもある。
しかし、染め直された商品はひどく高く、値段だけで考えるなら、新品を買いなおしたほうがよほど安いのが実態である。

ところが、無印良品は自社の古着を無料で回収して、紺色に染め直して「ReMUJI」として販売している。
価格は2900円で、まあ、古着の平均相場価格だから、気に入れば買いやすい。

 

どうしてこういう価格設定ができるかというと、無印良品という大規模ブランドだから、回収する古着の枚数も多い。
何千枚も集めることができ、これは無料回収だから仕入れ代金はタダということになる。
そして、それを一気に染めるので、染め工賃を枚数で割った1枚当たりのコストは安く抑えられる。
しかも、色は紺色のみだから、染料代も安く抑えることができ、結果的に店頭販売価格2900円にできるというわけで、無印良品というマスブランドならではの組み立てだといえる。

そこら辺の零細ブランドがチマチマと1枚や2枚を染め直すと、最低でもこれの3倍や5倍くらいの販売価格になってしまって、割が合わない。
よほどのストーリー性やデザイン性がない限り、ReMUJIには対抗できない。
当方なら安さと品質の安定で間違いなくReMUJIを買う。

これも染色加工の基本は「大量生産・大量販売」ということの実例である。

産地にある程度の活況をもたらしたいのであれば、そういう大規模な受注に結び付くような先とマッチングさせないと意味がない。
精神論や啓蒙活動だけでは産地の重い腰は動かないし、やる気も出ない。

だから、大手ブランドと結びつけられるような企画マンやプランナーこそが産地に幾分かの活況をもたらすことができる。
もう、花畑満載の精神論や啓蒙活動は食傷気味だから、個人的にはオールユアーズの原さんに続くような人が登場してもらいたいと願ってやまない。

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繊維・ファッション業界に必要なマーケティングの考え方とは?

USJを再生した森岡毅氏のダイヤモンドオンラインの連載が最終回を迎えた。

USJ再生の森岡毅が語る「マーケティングの知識、経験、予算がない企業がすべきこと」
http://diamond.jp/articles/-/158739

今回は具体的な施策ではなく、原則論を述べておられるが、原則論の方がどんな分野に対しても応用が効く。
中華には兵法書があまたあったが、最高の評価は孫子である。
「孫呉の兵法」と孫子と並んで評される呉子は現代ではそれほど評価されていない。
なぜなら、当時の具体的な施策についての言及が多く、現代には応用できないからだという研究者の意見を読んだことがある。
一方、原則論が多い孫子は現代にも応用できるという評価を受けている。

それでは見てみたい。

本質的にはもっと大事なことがあります。そのポイントをここでお伝えするのですが、大前提として、高いギャラを払ってマーケターを雇ったり、マーケティング部を作ったりすることができないなら、社長自身がマーケターになるしかありません。
 といって、高度なマーケティング技術や知識が必要なのではなく、まずは次の3つについて考えてみてください。

(1)貴社は自分が戦っている市場を理解していますか?
(2)貴社の消費者を理解していますか?
(3)貴社の強みを理解していますか?

まず、ここだが、どうだろうか。
このブログを読んでくださっているのは繊維・衣料品業界の人が多いと思うが、苦戦している企業やブランドはこれができているだろうか?

例えば、(1)については理解を間違えていることがよくあるのではないかと思う。
繊維・衣料品の市場については、よくあるのはこのどちらかではないか。

1、とにかく低価格商品が強い
2、二極化で高い物か安い物しか売れない

1の場合は、価格競争に自ら追随して疲弊する企業やブランドが多いし、2の場合は、価格競争を避ける目的からむやみな高価格化を図る。

当方が見てきた繊維・衣料品業界の企業・ブランドにはこの2つのケースが多かった。

多くの経営者は「今、売れるものは何か」を必死に考え、商品を考えることで頭をいっぱいにしてなんとか経営を成り立たせていますが、もっと大事なのは自社の商品を考える前提となる「市場の構造はどうなっているか?」あるいは「消費者は本質的に何を買っているのか?」を掴むことです。

とのことだが、「今、売れるものは何か」しか考えていない企業・ブランドは繊維・衣料品業界には本当に多い。
ユニクロ商品への追随しか考えていない大手総合スーパーの商品施策はこれしかない。
1900円のフリースが売れれば1900円のフリースを、ヒートテックが売れればホットナンチャラという名前の保温下着を、ウルトラライトダウンが売れれば軽量ダウンを、ジーユーが990円ジーンズを発表すれば980円ジーンズを、という具合に常に半年から1年遅れで追随してきた。
しかし、見た目と価格をまねることに精いっぱいで、肝心の商品クオリティはユニクロよりも低い場合が多く、いくら価格が同じでも「粗悪品」は売れないので、ことごとく失敗に終わっている。

そうはいっても、低価格というのは大きな武器だからそれは活用すべきだが、ユニクロと同じような見た目の商品を発売しても意味がなく、それとは異なる機能、デザイン、品質の商品を発売するべきである。
しかし、衣料品業界は長らく「トレンド」を体現することが「売れること」だったから、それと同じ感覚で「ユニクロ商品」に追随してきたのではないかと思う。

スキニージーンズがトレンドだから細身のジーンズを発売するということと、ユニクロのフリースが売れているからそれを真似ることは、似ているようで大きく違う。
お分かりだろうか?

ドリルを作ったり売ったりする前に、消費者が本当に欲しいのはドリルではなく「穴」であることを明確に理解しておかなくてはならない。howを考える前に、whoやwhatを突き詰めて考えて明確にするということ。

繊維・衣料品業界は「ドリル」に目を奪われてしまう企業やブランドがあまりにも多い。
穴を開けることが必要なら、ドリルでなくても千枚通しでもピンバイスでも構わない。だから千枚通しを発売しても構わないのに、みんなで一斉に「ドリル」を発売する。手段のためのドリルがいつの間にか目的に代わり、ドリルのデザインやら機能性を極限まで追求し、そして売れずに在庫の山を築く。これがここ20年間の繊維・衣料品業界の姿といえる。

その上で

戦略とは「選ぶこと」です。つまり、「何をやって、何をやらないのか」を決めるのです。

「変えてはいけないもの」「変えてもいいもの」の見極め方

マーケティングにおいて大事なのは「本当に消費者が買っているものは何か?」を突き詰めることです。私は「what」と表現をしますが、消費者が買っている本質的な「what」を考えることが重要なのです。

 もともとUSJは「映画のテーマパーク」という面にこだわって運営してきました。それがUSJであり、それを変えてはいけないと、誰もが思い込んでいたのです。
 しかし、お客様がテーマパークに求めている、本質的なwhatとは何か。そんな問いに真正面から向き合ったとき、違った景色が見えてきます。
 人がテーマパークに求めているのは、忙しく、ストレスフルな日常から離れ、エキサイティングな体験をすることです。つまり、ドキドキ、ワクワクを求めてやって来るのです。それは昔も今も変わりませんし、「変えてはいけない部分」です。
 しかし一方で、ドキドキ感やワクワク感を満たす方法論は必ずしも“映画”でなくても、アニメでも、ゲームでもいいわけです。そこに行き着いたとき、USJにとって「変えてはいけないもの」と「変えてもいいもの」が見えてきました。

とのことで、USJが本来はユニバーサルスタジオと何の関係もない少年ジャンプの漫画「ワンピース」とのコラボをした理由もここにあったと推察される。

とはいうものの、「変えるものと変えないものの見極め」というのは本当に難しく、一歩間違えると大失敗を招く可能性がある。
このフレーズを聞いたときに、真っ先に思い出されるのが、三越伊勢丹ホールディングスの大西洋・前社長である。

2016年に断続的にインタビュー取材する機会に恵まれたが、その際に盛んに登場したのがこのフレーズだった。
凋落する百貨店を再生するために変えるものと変えないものの見極めが重要だということで、大西・前社長は「ファッションの伊勢丹」が変えないものの1つだという認識だったが、それは果たして正しかったのかという疑問は今でも個人的には感じている。
新宿本店はその通りだと思うが、他の地方店はどうだろうか。
地方はそういう「最先端ファッション」「高級ファッション」を強く求めているだろうか?

当方がファッションに疎く、高級ファッションなんて買えない貧民だから余計にそう思うのかもしれないが、そういうものを求める層は本当に少ないのではないかと思う。

低価格な粗悪品は論外として、そこそこの値段でそこそこに見えるファッションという需要がマス層の需要ではないかと思う。
じゃあ、「最先端ファッションの伊勢丹」というイメージの固定化は三越や他の地方店にとってはそれほど必要ではないのではないか。
逆にそのイメージが強くあったから、ブランドラインナップがショボかったJR大阪三越伊勢丹は失敗してしまったと個人的には見ている。

今回の森岡毅氏のマーケティング原則論は、他の繊維・衣料品企業も大いに参考になるのではないか。
「目的」ではなく「手段」にばかりこだわり、手段を目的化してしまっている企業やブランドがあまりにも多すぎる。それが繊維業界の苦戦の一因といえる。

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プライベートブランド「ゾゾ」のすごさは商品ではなく、そのプロモーション手法にある

プライベートブランド「ゾゾ」が発表され、各報道を見ると、矛盾した言説・受け答えが溢れており、読めば読むほど整合性がなくなる。
長らく交流している方から、ゾゾ商品のサイトが完成していると教えていただき、直接自分の目で確認することにした。

http://zozo.jp/pb/

基本的に、ゾゾという商品はフルオーダーではなく、パターンオーダーだということがわかる。
ゾゾスーツでの採寸によって、サイズを合わせるという「仕掛け」によって、「一からその人に合うサイズの服を作る」と思っている人が多いように感じる。
とくに、衣料品業界外のイシキタカイ系ジャーナリストや経済紙関係者にはその嫌いが多い。

採寸によって、一から型紙を起こすというのは、「フルオーダー」でこれは何十万円もする。
何せ、ゼロから形を作り上げるのである。

一方、近年、3万円前後で「オーダースーツ」が売られるようになっているが、これはフルオーダーではなく、パターンオーダーないしイージーオーダーと呼ばれる手法で、厳密にいうとパターンオーダーとイージーオーダーは別らしいが、ここではほぼ同じとして取り扱わせてもらう。

あらかじめ決まったパターン(型紙)があり、採寸したデータをもとにそれを微修正するのがパターンオーダーである。

A6サイズのスーツがあったとして、採寸したデータをもとに、袖を短くしたりウエストを広げたりと微修正する。
襟の形やボタンの種類を選べるようなオプションを付けることができるが、それもゼロから作り上げるわけではない。

これによって、製造期間は短縮できるし、製造コストも抑えることができる。
だから3万円前後でオーダースーツが作れるというわけだ。

受注して即日~2週間で納品できると謳っているゾゾは取りも直さずパターンオーダー商品だといえる。
また「即日納品」が可能だということは、あらかじめ標準商品を何枚か作りおいていて、その標準商品に適応した体格の人から受注があれば、それを即座に送り出すということになり、これなどはパターンオーダーですらなく、単なる既製服販売と同じということになる。
既製Tシャツ1200円というのは、果たして「破格値の安さ」といえるだろうか?

標準商品で満足できない人には、採寸データをもとにした「微修正」が加えられる。
裾丈の長さ、袖の長さ、袖幅などなどを微修正する。

これはジーンズでも同じである。

型紙の微修正なんていうのは、現在ではパソコンのCADCAMを使って行う。
袖丈や袖幅を変更した際に最適なように全体を自動的に微修正してくれる。

ジーンズで限りなく、ウエストのデカい人(150センチくらい)がいて、それ用にウエストを広げた場合、グレーディングと呼ばれる各部の比率変更が必要となる。これを今ではパソコンソフトでできる。
ウエスト150センチに広げた場合、それに比例して各部を広げると、ジーンズの裾幅なんてめちゃくちゃに広くなって袴みたいなジーンズになってしまう。
それではさすがにおかしいので、裾幅はあまり広げずにウエストだけを広げる。
これがグレーディングという作業で、標準とされるS~Lサイズだって同じグレーディングが行われている。

例えば、アダストリアのレイジブルーの商品で見てみよう。

http://www.dot-st.com/rageblue/disp/CSfGoodsPage_001.jsp?ITEM_CD=780048

このズボンのサイズは

Sサイズ ウエスト74センチ・もも周り62センチ・裾幅31センチ

となっている。また、

Lサイズ ウエスト89センチ・もも周り64センチ・裾幅34センチ

となっている。

見比べてみてどうだろうか?
ウエストは15センチ拡大しているのに、もも周りは2センチしか違わない。
裾幅も3センチしか大きくなっていない。

これはウエストに比例して各部を広げていないという証明で、このサイズ比率の変更がグレーディングであり、これは既製服でも普通に用いられている。

ゾゾのオーダーとはパターンオーダーと採寸によるグレーディングを合わせた手法で、「完全オーダーメイド」ではなく、イシキタカイ系が夢想するような「フルオーダー」でもないということである。

商品そのものについてはどうだろうか。
Tシャツとジーンズの画像と説明文を見た限りでは、はっきり言って「普通」である。
恐ろしくかっこいいわけでもないし、恐ろしくダサいわけでもない。
あくまでも「普通」であり、それ以上でもそれ以下でもない。

素材も普通だが、ちょっと奇妙なこともある。

メンズのTシャツの使用素材は40番手双糸なのに対して、レディースのTシャツは20番手単糸なのである。(ウェブサイトにそう書いてある)

ちょっとでも生地や糸の知識がある人にはその可笑しさが伝わると思うのだが、そうではない人のために蛇足ながら説明をする。

この二つの生地は一見するとほぼ同じに見えるだろう。
生地の厚さも同じだ。

しかし、どちらが高品質な素材かというとメンズである。

20番、40番とは糸の太さを表す「番手」であり、数字が大きい方が糸は細くなる。
40番より20番の方が糸が太い。

ところが、糸というのは1本だけで生地を織ったり編んだりせずに、2本を撚り合わせて使うこともある。
1本の糸で織ったり編んだりすると「単糸使い」といい、2本撚り合わせた糸で生地を構築すると「双糸使い」となる。
当然、糸を2本使っているので、材料費は「双糸使い」の方が高くなる。

じゃあどうしてそんなめんどくさい「双糸使い」なんていう生地があるのかというと、単糸使いの生地は総じて、洗濯をすると斜行しやすくなるからだ。とくにTシャツやカットソーの単糸生地は斜行しやすい。これを防ぐために「双糸使い」という生地がある。

そういう意味でメンズTシャツ素材の方が圧倒的にレディースよりも高品質である。

またなぜ生地の厚さが同じかというと、細い40番手の糸も2本撚り合わせると、太さは倍になる。当たり前だ。
40番手2本で、20番手単糸と同じ太さの糸になるため、それぞれを使って編んだ生地は厚さは同じになる。

だから、見た目はメンズもレディースも同じ生地に見えるが、中身は別物だ。

通常、レディースの方の生地クオリティをメンズより落とすことは考えにくく、これは恐らく、同じ生地が手配できなかったための代替措置ではないかと思う。
それでも当方なら20番単糸生地をメンズに使うが、あえてそれをレディースに持ってきたスタートトゥデイは本当に生地に興味がないんだと思う。

プライベートブランド「ゾゾ」の商品自体は限りなく「普通」で、レディースのTシャツ生地のクオリティはあまり高くない。
ジーンズも普通だし、デニム生地も綿99%・ポリウレタン1%の12・75オンスデニム生地なので、ありふれている。

ゾゾの「物」自体は大したことがない。現段階では。

ゾゾのすごいところはその「仕掛け」「販促の手法」にある。
アパレル業界が見習うべきはこの部分である。

まず、採寸できるゾゾスーツの開発に投資するという「仕掛け」。

そして、そのスーツを無料配布するという手法。
それで期待感を煽り、商品の発表ということになるが、期待感で煽られている人が多数いるため(特に経済系インフルエンサーやメディアなど)、メディアに大量に記事掲載される。

従来からあるパターンオーダーと場合によっては既製服販売に過ぎないものが、最新鋭テクノロジーで作られた服かのように報道される。

商品自体はあくまでも「普通」だし、その供給システムも従来型パターンオーダーの域を何一つ出ていないのに、最新テクノロジー服という「イメージ」だけが醸成され続けていく。

この「イメージ戦略」は正直なところ、海外ラグジュアリーブランドにも匹敵するといえる。
単なる塩化ビニールの鞄をさも「良い物」というイメージを与えているルイ・ヴィトンと同じ手法といえる。

そういう意味では、この「仕掛け」「販促手法」「見せ方」は見事だというほかない。

そもそも、今の衣料品でだれもが驚くような画期的な商品なんてものは出現しない。
もしかしたら、未来においては1ミリ秒で蒸着できるようなコンバットスーツが開発されるかもしれないが、そういうものでない限りは、驚くほど画期的な服なんてものは出現しない。

そういうものが現れるとしたら、ハイテクノロジーを詰め込んだウェアラブルだったり、ハイテク機能を満載した機能素材で作られた服くらいしかない。

洋服という商品においては「物自体」での差別化や革新は生まれにくくなっており、「普通の物」と「従来型パターンオーダー」という手垢にまみれた供給システムを再編集して見せなおしたというスタートトゥデイの手腕はすさまじいものがある。
国内のアパレル業界に足りないのはこの部分であり、そこは大いに見習うべきである。

ただし、個人的にはこの商品を買おうとは思わない。
ユニクロで1990円に値下がりしたジーンズを無料で裾上げしてもらった方がコスパが高い。

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プライベートブランド「ゾゾ」に関する報道は矛盾が多くてさっぱり理解できない

スタートトゥデイによるプライベートブランド「ゾゾ」の概要は様々な記事を読んでもさっぱりつかめない。
どうしてつかめないかというと、価格帯と納品までのリードタイムと製造の仕組みがそれぞれバラバラで矛盾しているからだ。

一般紙の記事はもちろんのこと、業界紙の記事も同様でサッパリわからない。
業界紙の場合は、製造などについて一般紙よりも詳しいはずなのだが、そのところへの言及はなく、発表時の文言のみで報道しているとしか思えない。

WWDを例に出す。

https://www.wwdjapan.com/515448

この記事によると、

“ぴったりな”サイズを注文できる受注生産体制をとる。しかも、袖丈や着丈などのサイズ感は自分で調整でき、注文後は即日〜2週間で商品が届く。

とある。

これはいわゆる、パターンオーダーの考え方でその都度の受注生産だと考えられるが、通常、この生産方法だとフルオーダー(フルオーダーとパターンオーダーは生産構造自体がまったくの別物)ほどの高価格にはならないが、ユニクロに並ぶ低価格には抑えられない。
さらに注文後は「即日~2週間で納品」とあるが、ここも良くわからない。

衣料品業界は製造と商品企画と売り場がそれぞれ分断されていて、包括的に知識を持つことが難しい業界であり、それこそ誰でも知っているような著名なデザイナーや企画マンですら製造のことはあまり知らない。
大手セレクトショップの社長なんて製造のことを知っているはずもない。

だから、この「即日~2週間」という文言を見たとき、消費者はもとより、業界の製造に携わらない人たちだってまったく何がおかしいのかわからない。
現に、普段から当方と頻繁に行き来しているスタイルピックスの深地雅也社長だって、ピンとこなかった。

ここでの疑問点は、「生地はどうしているのか?」という点である。
当たり前だが生地が無くては服は作れない。

当然のことながら、生地を用意する必要があるが、即日~2週間という短期間で納品するためには、生地をその都度作るのでは到底間に合わない。

おわかりだろうか?
生地をそんな短期間で製造することは不可能なのである。

この場合、ゾゾは2つの方策で生地を手配すると考えられる。

1、商社・生地問屋または工場が備蓄する、またはゾゾが備蓄する
2、業界に常に流れている定番生地を使う

この2つである。
即日納品なんて看板を掲げているので、その都度注文が入ってから生地を作ることは絶対にできない。

これ以外に短納期で洋服を作ることは不可能で、もしかすると、一般メディアやイシキタカイ系経済関係者は「ゾゾが画期的なシステムを構築したかもしれないだろ」と反論しそうだが、ゾゾが生地の背景まで買収やら業務提携したという話は聞かないし、いまだに発表もされていない。

縫製段階までは何らかの手を打って投資したと発表しているが、生地製造に関しては何の発表もない。

90年代後半にワールドがクイックレスポンス体制(QR体制)を構築し、市場を席捲したが、これは「売れ行きが良かった商品をクイックに(2週間~3週間)で追加生産して店頭に並べる」ということが目的だった。
しかし、同じ生地がない場合も多く、その場合、どうしていたかというと、「似たような生地」もしくは「まったく別の生地」を用意して同じデザインの商品に仕上げて対応していた。

それほどに生地を一から作るのは時間がかかる。追加発注から3週間で店頭に並べるのに、一から生地を製造している時間はないのである。

一概に生地を製造と言っても、さまざまな段階がある。大きく分けて

1、綿(わた)から配合して生地を作る
2、糸を交撚や加工する段階から生地を作る
3、完成した糸は備蓄してあり、生地を織る(編む)

の3つがあるが、まったく完成までの時間が異なる。
もちろん、1がもっとも時間がかかる。

糸の成分組成や生地の組成のレシピが残っている場合よりも、そういうものが残っていない方が時間がかかる。
試織・試編みを繰り返さなければならないからだ。

もっと細かく言えば、染色堅牢度や引き裂き強度も試さなくてはならない。

こうした作業で普通に完成まで何か月かかかる。
一から生地を作った場合、最低でも3か月くらいは生地の製造が完成するまでかかり、場合によってはもっとかかる。

東レという合繊メーカーと提携しているユニクロがどうして1年前とか1年半前から商品企画にとりかかるのかというと、生地の開発・製造の時間を考慮している部分もある。

どこぞの商社経由で在りものの生地をどこかから仕入れてくるという体制ではないからだ。
逆にユニクロ以外のアパレルブランドはそういうケースが多い。
とくに中小・零細アパレルは生地開発までやっている時間も体力もない。

生地問屋で買ってくるか、商社経由で手配してもらっているかのどちらかで、生地工場と直接開発しているブランドなんて業界全体から見たらホンの一握りしかない。

こういう背景を知っていると、ゾゾは生地をどうやって手配するのだろうと疑問しか感じない。
スタートトゥデイのこれまでの記事を読んでいると、前澤友作社長自身も生地にはあまり思い入れや思い込みがなく、話題にも上らない。

当方は別に生地にこだわれとは思っていないし、産地ガーなんてこれっぽっちも思っていないが、生地が変わると同じデザインでも商品としての見え方が変わるのも事実である。
ワールドがQR体制を構築したものの、経営不振に陥った原因の一つには、生地を変えて同じデザインを並べても、それは初回生産分ほど売れ
なかったということも挙げられる。
いくら形が同じでも生地が変わると消費者は「別の商品」と見なすから、改めて追加補充分を買おうとは思わなくなる。

生地にこだわりすぎるのも危険だが、こだわらなさすぎるのもまた危険でもある。

安易に「生地変え」しての対応なんてしても往年のワールドよろしく、不良在庫の山を築くことにもなりかねない。
それにしても読めば読むほど、プライベートブランド「ゾゾ」の詳細は分からなくなる。
これを手放しで「スゴイ」なんて褒めちぎれる人はよほど純粋かおめでたいか、のどちらかだろう。

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