南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

産地ブランドが単なる「思い出作り」で終わる理由

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 繊維産地の「産地総合展」の多くは、サンプル製品を見せ球として展示しながら、実際はそのサンプルを作った生地の受注を取るというのが目的だが、近年(といっても10年以上前から)産地の生地を使った独自製品、産地オリジナルブランドの展示会も増えてきた。

しかし、概して「産地ブランド」の多くは3年くらいで活動を停止したり、「恒例の行事」的に毎年、展示会を繰り返したりしている。

生地の場合は、各社はそれぞれに専門なので「納入条件」とか「掛け率」とかそういうものが設定されている。だから、生地展で受注があってもそれで対応ができる。
けれども、製品の場合は、各社とも手探り状態であり、「価格設定はこれでよいのか?」「生産数量はどれくらいなのか?」なども全くわかっていない。それどころか、そもそも「ターゲットはどこに設定しようか?」「コンセプトはどうしようか?」ということも少なくない。

当然、この手の展示会は、製品ブランド展示会とは名ばかりの「見せるだけ」の展示会で終わってしまう。
「見せるだけ」だから収益化もできず、行政の補助金や助成金に頼ることになる。そして補助金や助成金は3年間で終わることがほとんどなので、必然的に活動も3年間で終わる。

それでもあきらめきれない場合は、違う行政組織から補助金や助成金を引っ張ってくることを画策し、実行する。
県がだめなら市、市が終わったら町、ナンタラ省の●●課が終わったら隣の課、というような具合である。
もちろんそれも3年間で終わるから、3年ごとに「助成金ジプシー」となってしまうわけである。

「継続は力なり」とはいうが、見せることだけを「継続だけ」していても何の力にもならないし発展することはない。
結局、「通常の展示会」として売らないと何も始まらない。

多くの産地ブランドが長続きしないのはこのためだ。
生産されたサンプルや少数の商品は「記念品」として産地組合事務所に展示されるのが関の山である。助成金ジプシーをやって、成しえたことは「思い出作り」だけなのかと呆れるほかない。

先日、それに異議を唱える若き産地企業の経営者に偶然会うことができた。

まだ全国的には無名だが、「見せるだけ」に終始して満足している産地製品展示会を強く批判し、いかにして受注を取るかということを真剣に考えている。

組合の取り組みがダメなら、自社オリジナル製品を開発してどのようにして卸すかを考えている。

いわゆる国内ファクトリーブランドの多くは、「格安品」は製造できない。
だが割安品なら製造は可能だ。

多くのこの手のブランド、国産押しのブランドの問題点は、その安くはない商品をマスの売り方で売ろうとするところにある。
1足1500円の靴下は決して安くはないが高すぎるわけでもない。

しかし、マスで売ろうとすれば、1足1500円では無理だろう。
グンゼや無印良品の機能性に優れた靴下が3足990円以下で販売されている。

じゃあ、つまるところ、それはニッチ市場、マニア市場へ売ることを考えなくてはならない。
この手の商品をマスに売ろうとするから、経済誌や業界紙ならいざしらず、一般の「モノ雑誌」にまで「原価率50%」という大見出しを付けたタイアップ記事を載せなくてはならなくなってしまうのである。

この経営者は、自らの商品をニッチ向けだと分析し、そのニッチ向け店舗へのみ卸すことを始めている。
その冷静さは、繊維・衣料品業界でも得難いし、産地ではもっと得難い。

いずれ、もう少し取材を重ねたらご紹介したいと思う。

それにしても、マス化させたいなら、衣料品でいえば、ユニクロがありジーユーがあり、無印良品が市場を席捲している時点で、格安でなければマス化できない。もはや、バッタ屋商品ですら「特別には安い」と感じられないほど安い商品が日常に溢れている。

それでいて品質は最低限以上の水準はある。

となると、繊維業界人がいうような「価値ある高額な物をマスに買ってもらう」なんてことはほとんど実現不可能である。

そこそこに高い物は、特定の愛好者に向けて売るべきで、その愛好者に売るにはどのようにすればよいのかということを考えるのがマーケティングであり、販売戦略である。

業界で話題のあの「原価率50%」ブランドでさえ、この「価値ある高額な物をマスに買ってもらう」幻想に取りつかれているのではないかと感じる。
あんなニッチな商品を売っておきながら。


繊維業界人・衣料品業界人は根本から考え直す必要があるのではないか。


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ユニクロより優れた商品は確実に存在する
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地方創生大全
木下 斉
東洋経済新報社
2016-10-07



ルクアイーレの地下1階をユニクロとジーユーが2分割

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 9月15日に大阪梅田のルクアイーレ地下1階にユニクロとジーユーがオープンした。

こう書くと、地下1階に2店舗が入ったと感じるが、実際は地下1階フロアはユニクロとジーユーで2分割されたのである。

この2店舗以外は、カフェが1店舗、小規模な生活雑貨店「ナチュラルキッチン アンド」が1店舗あるだけで、地下1階は実質的にはファーストリテイリングの占有フロアといえる。
2店舗合わせて約1000坪の広さがある。

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(ルクアイーレ地下1階のフロアガイド 3がユニクロで4がジーユー)



ちなみに地下1階にあった店舗はほとんど撤退し、オリエンタルトラフィックは他のフロアに移転し、三崎商事のゲラルディーニは撤退した。

これで、JR大阪駅周辺のユニクロ大型店は4店舗目となった。

大丸梅田店、ヨドバシカメラ梅田店、それから茶屋町の路面店である。

これに対して、「他の3店舗は苦戦するのではないか」という声がネット上では聞かれたが、それは現場を見ていない空想でしかないといえるだろう。

オープン当日の夜、8時過ぎにこのルクアイーレ店を見に行った。
ユニクロ店舗なんて腐るほど見ているし、夏秋の端境期でどうしても買いたい商品なんてないから、本当に雰囲気を見に行ったのである。

実際に見に行って驚いた。
地下1階のユニクロ、ジーユーは満員なのである。

はっきり言って、オープン当日に満員になる意味がわからない。
他のファッションブランドなら、希少性だとか物珍しさとかそういうことがあって、「長らく行きたかったが地元に店がなかったからオープン当日に足を運んだ」なんていうファンがいるのは当たり前だが、ユニクロなんて各都心にも複数店舗があり、自宅の近所にも職場の近くにも店がある。

多くの人にとっても、腐るほど見ている店舗だ。
ジーユーはまだユニクロほどの店数はないが、それでも大幅に増えて、都心にも地元にもあることは珍しくない。

また、オープン記念で、ルクアイーレ店だけの珍しい洋服が売っているわけでもない。
特に価値あるノベルティが多数配布されたわけでもない。

なぜ、オープン当日のしかも閉店まであと40分ほどしかない時間帯に満員になるほどに客が足を運ぶのか理解に苦しむ。

当日、ヨドバシカメラ店と大丸梅田店は足を運べなかったが、この後、茶屋町の路面店に移動した。
時刻は8時半前である。
閉店まであと30分強。

にもかかわらず、どんどん入店していくし、外から見えるエスカレーターはどの階層にも人が乗っている。

あと30分ほどしかないのに、これだけ入店するのかと驚かされた。

この日より1か月前のお盆ごろにヨドバシカメラ梅田店7階のユニクロにも足を運んだことがあるが、そのときは、それなりの客入りでにぎわっていた。
決して閑散とはしておらず、レジにも10人くらいは並んでいた。

閑散としていたのは同じフロアのコムサイズムである。
なるほど閉店セールになってしまうはずだと納得した。

ヨドバシカメラ店が今後苦戦するかというとそれはちょっと考えにくい。

というのは、JR大阪駅とついにヨドバシカメラが陸橋でつながったし、現在はグランフロント大阪とも陸橋でつながろうとしている。

つながっていない状態でもそれなりに集客していたヨドバシカメラだから、陸橋がつながればさらに集客は増えるといえる。
7階のユニクロに足を運ぶ人も減ることはないと思う。

大丸梅田店のユニクロの売り場には最近立ち寄っていないので何とも言えないが、大きく売上高を落とすことはないのではないか。

これだけの大型店4店舗がそれぞれ徒歩数分内に共存しているユニクロへの支持というのは、ちょっと想像を絶する。

もはや、そこら辺の旧態依然としたアパレル大手が束になっても勝てない。
そこまで支持される大手アパレルがあるのか?そこまで支持されるブランドを所有しているのか?

「ファッションでは俺たちに一日の長がある」と自負してきただろうが、それとても、ルメールとコラボした「ユニクロU」と「イネス・ド・ラ・フレサンジュ」とのコラボラインに加え、JWアンダーソンとのコラボラインも始まる。

従来のベーシック、トラッドなユニクロ商品に満足できなかった層も取り込みかねないラインナップをそろえつつある。

最近国内ではH&Mが不振になりつつあるといわれている。
H&Mの商品デザインが奇抜だとか商品品質が低いだとかそういう理由はあるにせよ、最大の理由はユニクロとジーユーが我が国市場を押さえているからではないのか。

ベーシック、トラッドはユニクロ
質は落ちるが安いトレンド品はジーユー

で、ある程度は事足りる。

コレクションブランド的なデザイン性の服はZARAで事足りる、となると、H&Mの入る隙間はほとんどない。
フォーエバー21はもっと存在スペースがないだろう。

ユニクロが伸び悩みだとか凋落傾向にあるだとか、昨対の増減のみで語る記事が増えているが、これほどの支持を受けているユニクロの国内基盤はむしろ鉄壁で1年や2年でどうこうなることは考えにくい。

9月15日、夜8時すぎのルクアイーレ地下1階でユニクロのすごさをまざまざと見せつけられた。


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洋服が安値でも売れない4つの理由

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 先日、天神橋筋商店街のバッタ屋の顔見知りのおニイさんと立ち話をした。

「最近売れ行きが悪い。安くても服を買わない」

とのことで、安値販売でも洋服が売れにくい店もある。

これには様々な理由が考えられる。

1、安い服が市場に溢れていて安さに慣れてしまったから
2、タンス在庫を誰もが大量に抱えていて、服なんて買う必要がないから
3、可処分所得が減っているから、または伸び悩んでいるから(またはそう感じるから)
4、衣料品に対する興味が薄れているから

ざっとこんなところではないかと思う。

1から考えて行こう。
バッタ屋の店頭を見ると、驚くほど安い商品もあるが、そうではない商品も多い。
例えば、国産タオル1枚100円とか、国産タオルハンカチ1枚50~70円なんていう商品は安くて目を引くが、じゃあ、Tシャツ1枚700円とかだったらどうかというとそれほど安いとは感じない。

有名ブランド品が700円なら安いと思うが、無名ブランド品なら普通だ。
例えば、ユニクロに行けば790円とか590円とか500円に値下がりした半袖Tシャツが山のように積まれている。ボディのカラーやグラフィックの好みで選り分けても妥協できる商品はある。

そういう商品を選べば、場合によっては500円でTシャツが手に入る。

今年8月に、ユニクロでビッグシルエットポロシャツを1枚買った。
理由は500円に値下がりしていたからだ。

生地は綿100%だが、通常の鹿の子編みではなく、ミニワッフル編みである。
おそらく、同じ生地でビッグシルエットTシャツも発売していたから、コスト削減の一環として使用生地を統合したのだと考えられる。

ポロシャツとTシャツでそれぞれ違う生地を使うより、同じ生地を使用すれば、その分、生地の使用量が増え、1メートルあたりの生地値を安くすることができるからだ。

余談だが、ユニクロの店頭を見ていると、このテクニックを使っている商品がけっこうある。

Mサイズの紺色が残っていたので迷わず買った。
ブランドやディテールにこだわるなら、こういう買い方はなしだが、ベーシックに見えるポロシャツでよければ何でもよいと考えるならこういう買い方はありだ。

当方はそういう買い方しかしない。

500円のポロシャツといえば、バッタ屋の価格と同じだ。
場合によってはバッタ屋の方が高いこともある。

じゃあ、わざわざバッタ屋で買う必要はないということになる。

2についてだが、おそらく、多くの人が1シーズン服を買わずに過ごせるだけのタンス在庫を抱えているのではないかと思う。
当方は、たぶん3年間くらい服を買わずに過ごせるだけのタンス在庫を抱えている。
長袖のカジュアルシャツだけで70枚以上タンス在庫がある。

それでも服を買うという人は当方も含めて「趣味」だといえる。

趣味の一品だから、毎日売れなくても当然だし、だれもが買うものでないのも当然といえる。

世の中の全員がガンダムのプラモデルを買うわけではないし、自動車に改造パーツを付けるわけでもない。

洋服はそういうものと同じ「趣味の一つ」となったといえる。


3については、様々な見方があるが、さらなる経済成長を遂げ、富の再分配の方法を見直す必要があるだろう。しかし、いつ、どんな好景気だった時代でもリアルタイムで「好景気だ」と感じる人はほとんどいない。
バブル期に働いていた人だって当時「好景気だ」と感じていたわけではあるまい。
不況になって初めて「あの当時は景気が良かった」とわかるのである。

だから今後どのように経済成長を遂げようと、富の再分配法が変わろうと、絵に描いたような「好景気感」を人々が感じることはない。

4については、洋服以外に身を飾る方法や自己表現する方法が様々現れたからといえる。

それにどこで買っても今の洋服は「それなり」に見える。

あえてブランド物を買う必要はないし、バッタ屋で格安品を探す必要もない。
通常店頭だってバッタ屋並みの価格で投げ売りをしている。

それだけ選択肢が広がったのは社会が成熟化したからだといえるし、多様性が実現されたといえる。
まことに喜ぶべきことではないか。


そういうわけで、バブル期までのように服が売れなくなるのは当然であり、それには価格の高低は関係ない。


こういう状況下で「売る」にはどうすれば良いのかということを売る側が考えねばならない。

そもそも業界関係者こそ服をあまり買わない。
関係者で最も服を買うのは販売員だろう。
一部の有名人を除いては本部系・企画系は本当に服を買わない。

自分たちが買わない物を消費者が大量に買うはずもない。
買わない人たちがああだこうだと言ったところで、消費者の心理はわからない。

そういう人たちが企画や販促をしているからピントがズレるのも当然ではないか。


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ユニクロより優れた商品は確実に存在する
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