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南充浩 オフィシャルブログ

年配層へのスニーカー の浸透は日本特有ではなく世界的な出来事っぽい

2024年7月22日 トレンド 0

以前にも書いたが、2023年夏、ちょうど1年くらい前に突然「スニーカーブームは終わった」と言われ始めた。

しかし、23年夏以降もスニーカーを履いている人は消滅していないし、スニーカーをメイン商材として販売しているABCマートの決算は好調である。

この時に言われた「スニーカーブーム」というのは、正確には「希少(レア)スニーカー転売ブーム」であり、それが2023年くらいに全世界的に突然終わってしまったという話である。

 

 

たしかに昨年秋くらいから国内ではファッションが好きそうな若い男女のカジュアルスタイルはスニーカー一辺倒ではなくなり、厚底ローファーやワークブーツなどのトラッドなレザー(合皮含む)シューズ類が復活し始めている。厚底ローファーだとかワークブーツ類がこんなに復活するなんていうのは、だいたい20年ぶりくらいのことなのではないかと思って、なつかしさすら感じる。

何せ、当方が大学生だった30年前は、若い男性はワークブーツ類を履いていた。

ただ、若い男女のファッションスタイルがスニーカー一辺倒ではなくなったとはいうものの、依然としてスニーカーは高い着用率を誇っており、特に老若男女全世代に変わらず着用者がいる。むしろ、老人層のスニーカー着用率の高さは今でも驚くほど高い。逆にワークブーツや厚底ローファーを履いている老人は、よほど気合の入った少数のファッション老人くらいしか見たことがない。

それほどに老人層へのスニーカー普及率は高い。

理由は様々あるだろうが、半分老人になりかかっている当方からしてみれば、老人は鍛錬を続けないと足腰が弱ってしまう。その弱った足腰に最も適した靴はスニーカーである。ストレートチップやプレーントゥなどのドレスシューズはもう履けないだろうし、アイリッシュセッターやエンジニアブーツのようなワークブーツも相当にしんどい。

となると、スポーツメーカーのスニーカー、そこから派生した介護シューズくらいが最も適した履物ということになる。

老人層にスニーカーが浸透普及しているのはファッション面というよりは機能面が重視されてのことになるだろうと思う。

国内老人層は現在のところ人口が多いから、転売目的のレアスニーカー以外の通常のスニーカーにとって、老人層というのは、今後かなり重要な市場になり続けるのではないかと当方は考えている。

 

 

 

以前にも書いた通り、当方は長時間移動するのが嫌いなので旅行には行かない。ましてや海外旅行にも行かないから、海外市場の実態というものを実体験していない。

同じくレアスニーカー転売ブームが終わった海外でのスニーカー市場というのはどうのだろうかと思っていたら、クーリエジャポンにこんな記事が掲載された。

失墜のスニーカー王者ナイキ 新CEOの経営再建が“失敗”続きの理由 | ナイキが見逃したトレンドとは?

 

最近、ナイキの業績が世界的に停滞しており、よく話題に上る。この記事では

 

5月を終え、ナイキの四半期売り上げ高は前年同期比2%減で、消費者への直接販売は8%減となった。ナイキの2025年度の売上高は、「1桁台半ば」の増収率となる見込みだ。

 

とまとめている。「危機的」と見出しで謳われているが、依然としてナイキの世界的売上高は大きく、黒字は続いている。ただ、成長性が無くなってきたという話である。

まあ、無限に成長し続けられる企業は無いし、そういう停滞期に突入したという感じにしか当方は受け取れないが、熱烈なナイキファンやナイキ信者は停滞期に突入したことすらが「予想外」「想定外」ということでの驚きなのだろう。

その原因の一つに、数年前に行った直販を重視して卸売りを減らしたことが挙げられている。

 

ナイキ失墜の問題はほかにもある。消費者への直接販売(D2C)に特化すべく長年の卸売りパートナーから撤退したことで、ホカやオン、ニューバランスなどの競合ブランドがシューズ・チェーン店でナイキの市場シェアを奪ったのだ。

半年に一度、10代の消費者を対象に実施される調査では、この4月、ナイキが好みのシューズブランドのトップの座を奪われはじめていることがわかった。半年間でナイキの人気が2%以上減少している一方、ニューバランスがもっとも増加していたのだ。

 

とある。これはナイキに限らず、全てのジャンルに付きまとう問題といえる。利益率を考えるなら直販を伸ばすべきだが、規模を追求するなら卸売りも不可欠になる。要は直販と卸売りのバランスをどう定めるか、という話で、ナイキはこの点で卸売りを軽視し過ぎたと指摘されている。

 

 

そして、この海外の記事はこう続く。

オンなどのブランドは若い消費者だけに受け入れられているだけでない。スポーツブランドの成長を支える顧客層の大半は年配の人たちであり、ナイキはこのトレンドを見逃していると、とダッフィーは指摘する。

「従来は、15~35歳の年齢層がスイートスポットでした。しかし、いまでは多くの年配者がスニーカーを履いて出勤し、旅行しているのです」

と。

ここで気になったのが、中高年層へのスニーカーの浸透・普及は何も日本国内だけのことではないというところである。もちろん国によっては内戦やら戦争で老人層が少ない国もあるだろうが、多くの国では老人層の人口は多く、現在の老人層はスニーカーを積極的に活用しているということになる。

そして老人層の足腰が弱るのは人種に関係なく、等しく起きる避けがたい現象である。

コロナ自粛明けから、またインバウンド外国人が増えた。彼らの足元を見ているとスニーカー着用率が高い。これは年配層、老人層もそうである。

また今の中高年層は20年前の中高年層とは好みも変わっており、10年後・20年後の中高年層はもっと嗜好は変わるだろう。我々世代もそうだが、若い頃からの嗜好をそのまま持ち上がっている人も少なくない。

20年前くらいまでは「スニーカー=若者」というイメージだったが、この図式は今は実は崩れ去っており、ナイキはそのイメージを上書きできていないともこの記事からは読み取れる。

今後は世界的に老人層の取り込みがスニーカー市場にとっては重要な施策になるのではないか。

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