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南充浩 オフィシャルブログ

「衣料品の品質」とは一元的に判断できるものではないという話

2024年7月26日 商品比較 2

「衣料品の品質」という言葉はよく耳にするが、実際は一言でまとめるのはかなり難しい。焦点を当てるべき点がいくつもあるからだ。

よくあるのが、製造加工業者は生地のクオリティ、縫製のクオリティに目を向けることが多い。パターンが分かる人はパターンやシルエットを重視する傾向が強い。色や柄を重視する人もいれば、全体的なデザインを重視する人もいる。当方なんかは多分、機能性を重視しているのだろうと思う。

なので、某ユーチューバーのように単純に縫製だけを比較して「〇〇ブランドの闇」とかいうのは、本気でそう思っているなら製品ビジネスには全く向いていないし、売らんがためなら炎上商法としかいえないので当方は全く評価していない。

 

 

そんな中、比較的手短に言語化されている記事があったので、今後、業界の人の考え方の整理に役立つのではないかと思ったので紹介したい。

拝借スペックのPBでは生き残れない!GMS衣料品は自前開発を決意せよ _流通・小売業界 ニュースサイト【ダイヤモンド・チェーンストアオンライン】 (diamond-rm.net)

アパレルの品質に言及する時に着目されるのは、1番に「縫製品質」、2番に「素材クオリテイ」、3番に「仕上がり姿」だが、思い込みや偏見で語られることが多いし、消費者の目が行く順序は逆だと思う。

とあり、これは簡略にまとめて言語化した中では最も適切ではないかと感じられる。

「思い込みや偏見で語られることが多い」というのは全くその通りだが、この記事の筆者とてそれからは免れていないし、もちろん、当方とて同様である。思い込みや偏見のない人間はいない。

 

で、当方は個人的には「仕上がり姿」というのを色・柄・デザイン・シルエットを総合したものだと捉えている。何なら、着用した人が似合うか似合わないか、シュッと見えるかどうか、もここに含まれるのではないかと思う。

「仕上がり姿」は一見して商品の品質感を左右するものだが、実際の品質とは必ずしも一致しない。

 「縫製品質」が高くても、プレス仕上げが雑だったりパターンと食い違えば(専用ボディの高価なプレスマシンが必要)、あるいは物流工程が雑で畳みじわが生じたりヨレてしまえば、一格二格下の商品に見えてしまう。自社のパターンが確立されているなら外注工場にプレス仕上げを任せず、「ZARA」のドレスアイテムのように自社専用のプレスボディで成型仕上げするべきだ。

とあるが、前半はまさにその通りであり賛同する。特に1行目はまさにその通りで、縫製が多少粗雑でも着用して見たらカッコヨク見える服なんていうのはそこら辺にある。「〇〇ブランドの闇」動画でも取り上げられているグッチの服なんていうのも同様であり、欧米ラグジュアリーブランドにはそういう物が多い。

 

 

業界人が言及することが多い「素材クオリティ」だが、これも一言にまとめるのは難しい。上質で希少な高級素材が必ずしも扱いやすい物、耐久性に優れた物ではないからである。

極細のウールを使った高級毛織物、高級シルクの織物などは特殊な加工を施されていない限りは、ポリエステル生地に比べて随分と扱いにくい。洗濯にも保管にも気を使う。

当方はめんどくさがりなので、その手の素材が良いことは知っているが欲しいかと問われると答えはNOである。一人暮らしの当方からすれば、洗濯と保管に気を使うのはめんどくさくてたまらないからである。それなら扱いやすい素材の方がありがたい。

また着用するにしても気を使うのなら、合繊の機能性素材の方が当方にとってはありがたい。

さらにいうと、合繊機能素材の中にも各種あり、値段もまちまち、機能性の高低もまちまちなので、高機能素材は高額になる場合が多い。

 

 

縫製品質についてだが、これもまちまちであるが、冒頭でも記事に書かれているように縫製品質が高いから服としての品質が全て高いかというとそうではない。筆者の言葉を借りると「仕上がり姿」が良くない服、ブランドというのは少なからずある。逆もある。

 

アパレルの縫製仕様はアイテムごとにほぼ確立されており、各工程を担う専用工業ミシンと冶具と工員の熟練度が揃う限りは「縫製品質」は担保されるが、納期やコストが折り合わないとこれらが揃わない工場に発注されることもあるし、揃っていても納期やコストに無理を言えば仕事が荒れて始末が粗雑になることがある。それが一般消費者に判るかというと疑問で、「仕上がり姿」や「素材クオリテイ」の方に目が行くのではないか。

 

とあるが、ここも半分くらい賛同という感じだ。確かに国内企業が製造している製品のほとんどはキッチリとした縫製がなされている。ただ、やっぱり価格帯に応じては工程を省いたりすることは珍しくない。例えば、アダストリアの製品で、当方が持っている物でいうと、シャツやシャツジャケットの前立ての裏側が上と下だけが縫製されてその中間はペラペラしているという物がある。

まあ、表からは見えないし、着用していてさほど不便を感じることは少ない。しかし、製造コストでいうなら、こういう部分を省略しているからコストを抑えているということがわかる。これを気にするかしないかは個人の価値観で大きく変わるだろう。当方の立場は「多少気にするけど、表から見えず着用していて不便が無いならまあいいかな」というものである。

逆に当方が買ったり売り場で見たりした物でいうと、ZARAの縫製品質は決して高くない。シャツの前立てがねじれている、シャツの袖の折り返し幅が左右の腕で異なるというのがあった。また、当方の知人ではZARAで買ったズボンは左右で太さが異なっていたとのことである。

ただ、それでもZARAはユニクロよりオシャレだと一般的に思われている場合が多いので、やはり縫製品質だけで洋服全体の品質を評価することは適正ではないのだろうと思う。

 

自分なりに思うところを書いたが、ここで提示された3つの条件というのは、比較的分かりやすく簡略にまとめられているので、業界人が衣料品の品質について考える時には大いに参考になるのではないかと思った次第だ。

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2024/07/26(金) 12:57 PM

    縫製の品質とか、私みたいなド素人だと比べたって良く分からんと思いますw
    素人からしたら、ほつれてこなくて縫い目がひどくグチャグチャになってなければ特に気にしないんじゃないかと。
    私の父親は製本業(印刷された紙を裁断して最終的に本にする工程)をやってましたが、私が本を買ってくると、よく開いて造りをチェックしてたりしました。「そんなの普通の人は気にしないんだよ~」とか言っても、いつも本の造りをチェックして「これはよく出来てるな」とか言ってましたが、モノ作る人はちょっと視点がズレちゃうのがあるのかも?w

  • 別のとおりすがり より: 2024/07/26(金) 4:47 PM

    某ユーチューバーの「〇〇ブランドの闇」マジでいらないです。

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