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南充浩 オフィシャルブログ

8~10月も高温が継続するという3カ月予報 

2024年7月25日 天候・気候 1

先日、恒例の3カ月天気予報(8月~10月)が発表された。

アパレル業界においては、8月・9月は秋物の立ち上がり時期、10月下旬は防寒着の立ち上がり時期なので非常に重要な時期になる。

最近では、天候情報の取得に力を入れているアパレルや小売業が増えていると聞いているので、そういう人たちはもうとっくにご存知のことかもしれない。

ザックリと言ってしまうと、8月~10月も高温傾向で推移するという予報になっている。

3か月予報 8月は猛暑に警戒 秋も残暑が厳しい 太平洋側は秋の大雨にも注意(気象予報士 佐藤 匠 2024年07月23日) – 日本気象協会 tenki.jp

気象庁は今日23日、8月~10月にかけての3か月予報を発表しました。平均気温は10月にかけて、全国的に平年よりも高い予想です。

とのことである。

 

 

この予報が的中したなら、今秋冬の防寒着立ち上がりもかなり厳しい商況になるだろう。

最近はそこまで統一されなくなってきてはいるが、業界的には昔から10月20日か10月21日に防寒アウター類が大量に店頭入荷するというスケジュールが確立されている。

当方も約30年前に販売員と店長をやっていた時代、毎年10月21日になると、大量の防寒アウター類が店頭に入荷して検品・陳列・保管に苦労した。

なにせ、防寒アウター類は生地が分厚くてかさばる。Tシャツなら20枚くらい保管するなんて造作もないことだったが、分厚いメルトンコートを20枚保管するとなると相当なスペースが必要になる。

今回の予報では10月も高温傾向が続くとなっているため、この21日の防寒着立ち上がりは、よほどの人気商品でない限りはほとんど動かないだろう。

 

 

毎月発表される3カ月予報だが、3カ月予報を見るようになって、「平均」という数値の恐ろしさを認識するようになった。

1か月平均でも3か月平均でも同様なのだが、例えば「前半気温が高く、後半は気温が低めになる」という場合でも平均すると「例年並み」という答えになってしまう。

3か月予報でも8月、9月、10月の個月に傾向がどうなのかということまで見てみないと正確な分析はできない。

これは他の分野の「平均値」にも言えることで、たしか、花巻東高校のOBの平均年収が異様に高額になっていたが、これは大谷翔平選手の年収が何十億円もあるので、平均値自体が高くなってしまうためである。

 

 

それはさておき。

個月の気温傾向を見てみると、8月は高温、9月も高温、そして頼みの綱の10月も高温傾向となっている。どの月も高温なので平均も高温になるというすごく真っ当な結果である。図を先のサイトからお借りする。

 

 

次に降水量だが、8月は平年並み、9月は関東と西日本では多め、10月も同様とのことである。秋の長雨が起きそうである。

 

別の解説動画では10月に台風が多発する可能性も指摘されている。

ということは10月は高温な上に多雨傾向で下手をすると台風が多発するかもしれないということになり、実店舗型の小売業にとっては厳しい商況になりそうだし、そこに商品を納入するメーカーにとっても厳しい商況になりそうである。

 

 

 

先日、個人経営のブティックオーナーと話す機会があった。

このオーナーによると「防寒着がプロパー(定価)で売れるためには、11月に冷え込む日が無いと難しい」という。

これは確かにその通りで、2010年代前半までは11月に真冬並みの寒波が訪れることがあった。もっと以前の記憶をたどると、自分の学生時代には11月に寒くてたまらない日が何日かあった。また昼間は比較的暖かくても夕方から防寒アウター無しでは過ごせないほど冷え込む日は珍しくなかった。だから11月にも防寒着類は結構売れた。

それが2010年代半ば以降、要するにこの10年間は、11月にそこまで寒いと感じる日が無い。昨年11月なんて日が暮れても暖かくて、月のほとんどを長袖Tシャツで過ごせたほどである。スエットトレーナーは暑くて着ていられない。

そして、販売計画でいうと、12月に入ると「プレセール」「会員向けプレセール」「クリスマスセール」「年末セール」などが始まり、正月明けのバーゲンほどの値引き率ではないにせよ10~30%程度の値引き販売が始まる。

10月21日に大量入荷した防寒着類が定価で売れるのは11月しかないわけである。ただ、最近ではその11月にも下旬に「ブラックフライデー」という販促キャンペーンがあり、値引き販売されるから、実質的にはプロパー販売の期間はもっと短くなる。

だから11月に寒波が来るのと来ないのとでは防寒着類の販売に大きな差ができてしまう。

 

 

恐らくほとんどのアパレルやSPAブランドは今秋冬の防寒着類も抑えめな数量で発注しているはずである。10月の高温傾向予想でもさほど問題ないのではないかと思われる。

しかし、ラニーニャ現象が起きた場合「寒冬」になることが予想されており(既報)、その場合、防寒着類が店頭でショートしてしまう可能性もある。

ただ問題は、この「寒冬」の始まりが何月になるのか?である。11月から気温が下がるのか、それとも年末になるのか、はたまた正月明けになるのか、である。

そういう意味では来月に発表される11月~1月の3カ月予報は業界的にも大きな注目が集まるのではないかと思う。11月の気温次第では「秋物衣料」が飛んでしまう可能性も高い。

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 comment
  • 偽ずんだもん より: 2024/07/25(木) 12:46 PM

    冬物とか単価高いのにプロパー売り出来る期間が短くて、すぐセール時期に入ります。
    お客さんもそれがわかってますから、初期に店頭で品定めしてからセールになってから買い始める感じですね。
    冬物アウターなんて、そんなに毎シーズン買い換える物でも無いですし。
    もう個人店アパレルなんてやってられないですね。

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