
「接触冷感機能だけしか表示されていない服」は猛暑対策にはあまり役立たないという話
2024年7月24日 素材 0
7月の3連休以降、猛暑日が続いており、汗っかきの当方はもう綿100%Tシャツを着られなくなっている。
トップスはポリエステル100%もしくはポリエステル主体の吸水速乾Tシャツ、ポロシャツしか着用できない。これが恐らく9月末まで続く。
暑さ寒さも彼岸まで、と昔から言われているが、最近では秋の彼岸を越えても暑さが続く。今年はラニーニャ現象が起きているらしいので、もしかすると秋の彼岸で涼しくなる可能性はあるのだが。
そんなわけで、今着用する服は吸水速乾Tシャツのみで、今買う服も吸水速乾素材だけなのだが、吸水速乾と言っても汗で全く湿らないわけではない。それどころか、そこそこの期間湿っている場合もある。これは多分、糸や折り方、編み方の問題なのだろううと思う。
とは言っても、綿100%のTシャツに比べるとそれでも乾燥するのは速い。
洗濯して干してみればわかるが、吸水速乾を謳っているTシャツは綿100%Tシャツよりも明らかに速く乾くので、それだけでも便利である。
なんのかんのと言われても、吸水速乾素材はだいたいその効能が実感できる物がほとんどである。
だから、個人的には猛暑に最適な衣料品は吸水速乾素材で作られたものだと思っている。
一方、効能がわかりにくいもの、わかりにくいというよりも効能が感じられないものが「接触冷感素材」だと感じる。
吸水速乾機能を目当てに買ったら、接触冷感機能も付いていたというTシャツを何枚か持っている。吸水速乾機能が発揮されれば当方は満足なのだが、接触冷感機能については当方の肌でほとんど感知できない。
業界の人はそうではないだろうが、一般消費者の多くは接触冷感素材を「涼しい素材」だと誤解しているのではないかと最近強く感じる。
そもそも、接触冷感という名前からして示しているように「接触したら冷感がある」素材なのである。平たく言うと「触れた瞬間だけヒヤっとする素材」である。そしてその「ヒヤっと感」は長続きしない。
特殊な素材もあるだろうが、接触冷感を謳っている素材のほとんどは、「触った瞬間だけヒヤっとする」素材なのである。
そのため、当方からすると接触冷感素材は「猛暑にさほど役立たない素材」という分類になる。
今回は久しぶりに山本晴邦さんのブログから引用する。
先日もとある商談中に「この商品、接触冷感って書いてあるのに全然涼しくないよの〜」と他社製品の体感を伴わない訴求に憤慨されていらっしゃる方がおられた。
接触冷感の測定に関する詳しいことは試験やってる人の方が詳しいのでそちらに問い合わせしてもらうのがいいと思うけど、簡単に言うと、室温を一定にして熱もった棒を布に当てたら棒から何度熱が動いたかその瞬間時間の熱量を調べる、だった気がする。最大熱流束って言うらいし。
要は触った瞬間に手から布へどれくらい熱が動いたかってことで、その数値が大きいほど人は触った瞬間に冷たいと感じると考えられている。考えられている。一般的には。
つまり、その瞬間はヒヤッとするかもしれないけど、熱は動いたあと、熱源(ひと)が発熱を続ければ布もずっと暖かいままなので、涼しさキープが保証されているわけではない。
とのことだ。
実際に当方も体感したが、触った瞬間にはヒヤっとするものの(これも生地によって差がある)、ものの20秒でも触れ続けると当方の体温で生地も温まってきて普通の綿100%生地と変わらない触感になる。
これが特殊な例外素材を除く大多数の接触冷感素材の実態である。
だから、暑がり・汗っかきの当方からすると「接触冷感素材」としか明記されていない服は、猛暑対策として買う物・着るべき物のリストには入っていない。というか、一般消費者もそのように認知した方が熱中症対策にも有効なのではないだろうか。
今のところ、猛暑対策としては「吸水速乾素材服」を選ぶほかない。
そういえば、先日「着用していたら温度が下がる生地が開発されたという記事」を拝読した記憶があるが、仮に本当だとしてもそれが普及するまでには最低でも数年間くらいはかかるので、しばらくの期間は吸水速乾素材服しか有効な猛暑対策は存在しないだろうというのが当方の結論である。
余談だが、この後、山本さんのブログでは「竹繊維」「夏のウール」などにも話が及ぶのだが、竹繊維については以前、当方も滋賀県の湖東産地を取材した際に何度かお目にかかっている。
その際の竹繊維は、リネンっぽい生地として織られていたが、「それなら普通のリネン生地でええんとちゃうの?」と思ったことは内緒である。
しかし最近では「ドレープ感のある竹繊維」というのも出回っているようだが、山本さんが指摘されているように「それはレーヨンと同じ」である。恐らく加工方法もレーヨンと同様なのだろう。
竹をそのまま繊維利用している糸もあった気がするけど、それは麻混糸みたいな、ベースの原材料に茶色っぽいケンピ風のそれが一緒に入ってるやつ。100%で紡績するには繊維長が短すぎて糸にならないので、流通している竹100%繊維は木材パルプとして溶融し捻り出す、ユーカリ由来のテンセルと同じ、セルロース再生繊維。
とある。竹の繊維を使って糸にすれば、麻っぽい糸になる。これは以前に当方が湖東産地で拝見したのと同じである。
一方、溶かしてそれを繊維にするのはレーヨンと同じである。というかそれは竹レーヨンでしかない。ドレープ感が出るのも当然なのである。
つまるところ結論はこれである。
繊維の知識が一般認知レベルで満遍なく周知されてるわけじゃないし、販売者もサプライヤーから提案受けた内容の受け売りだから深く考えてない場合も多い。
そんなわけで「接触冷感機能だけしか表示されていない服」は猛暑対策・熱中症対策にはほとんど役に立たないので一般消費者には気を付けてもらいたいと願うばかりである。