月別: 9月 2013 (1ページ / 2ページ)

道は険しい

 生地メーカー、染色・加工場、縫製業などの製造業が、自社オリジナル製品を立ち上げるケースが増えている。
それは歓迎すべきことなのだが、残念ながらこれまでの自社の仕事のやり方のままで臨んでいることが多く、今のままでは成功はおぼつかない。

先日、某先輩から聞いたが、某縫製業者がOEM企業と組んでオリジナルでレディースウエアのブランドを立ち上げたという。
開始する前は、社内で大いに盛り上がっていたそうだが、合同展示会に出展したところ受注が一件もなく、酷く落ち込んだそうだ。何件かには自作のカタログを手渡したそうだが、満足に名刺交換もしなかったので、渡した先の連絡先もわからないままである、とも。

いろいろな意味で取り組む姿勢が間違っている。
まず、合同展示会に出展するのは構わない。しかし、この衣料品不況の状況下で、ポッと出の新ブランドを仕入れようかという小売店がどこにあるのだろうか。
洋服ブランドなど世の中には掃いて捨てるほどある。
いわゆる実績のある人気ブランドだって掃いて捨てるほどある。
そういう中で、わざわざ海の物とも山の物とも知れない新ブランドを仕入れる小売店があるはずがない。

次にカタログを渡した先と名刺交換していないことが問題である。
合同展示会で1000枚の名刺を集めたところで実際の取り引きに結びつくのは1%程度だろう。
展示会に手なれたブランドですら、必死で名刺集めをしているのに、まったくのルーキーが名刺すら交換しないことはどういうことだろうか。

この話にはさらに続きがあって、リベンジを果たすために小規模合同展示会への出展を模索中だという。
しかし、彼らは、その小規模合同展示会に出展するメンバーを調べていない。
これも考え方が間違っている。レディースウエアはテイストが細分化されており、あまりにかけ離れたテイストのブランド同士が同時に出展しても、小売店は自店に合ったテイストのブランドのみを仕入れて、違うテイストのブランドには見向きもしない。
例えば、ナチュラルテイストのブランドが、セクシーカジュアル系ブランドばかりが集まった合同展示会に出展したところでまるで意味がない。

そもそもオカシイのが、ブランドを立ち上げる際に、ターゲットとなる売り場を設定してないことである。
実現するかどうかは別にして「ビームスに卸したいなあ」とか「ユナイテッドアローズと取り引きしたいなあ」というターゲット設定をして、それに合うようにブランドのテイストや商品構成を考えるのが通常である。
そういう設定をしていてもなかなか取り引き先に恵まれないのに、何の設定もしていないブランドなど売れるはずもない。

こういう事例を見ると、製造業者が自社ブランドをそれなりに成功させるのは至難の業だと思える。

個人的に不思議なのが、この業者は新人ばかりが集まったユニットではないというところである。
メンバーは40代・50代らしいのだが、カタログを渡した相手と名刺交換するというようなことは、ビジネスの基本中の基本であり、その年代のメンバーがどうしてそれができないのだろうか。

また、彼らも縫製業などでレディースアパレルに携わっているわけで、40代・50代になるまでの期間の耳学問もあるだろうから、どうして20代の新人のような考え方をしているのかも疑問である。

逆に言えば、多くの製造業者はこういう考え方のままでオリジナル製品化、オリジナルブランド作りに取り組んでいるのだろう。製造業者の考え方や意識を変えないことには、ほとんどの取り組みが徒労に終わり、負債が残るだけの結果になってしまうだろう。

そんなにお手軽にはできません

 生地を販売するよりも製品化して販売した方が利益を取りやすい。と言われる。
デザイン、縫製などにコストはかかるものの、その通りなので、昨今は生地メーカーや染色工場などがオリジナルの製品を開発する。

一番取り組みやすいのはストールだが、ここではストールについて繰り返さない。
その他はバッグや雑貨類が多く、衣料は比較的少ない。

そういう製造工場のオリジナル製品だが、大きく2つに別れる。
1つはキチンとデザインされた物、もう1つはデザイン的にアレな物。
キチンとデザインされた物の多くは、デザイナーなり企画担当者が携わっており、デザイン的にアレな物は工場の社長あたりが自分の感性で製造している場合が多い。

先日、製品の企画・製造・販売に乗り出した生地関係の会社のサイトを拝見した。
その会社の経営者は生地販売よりも製品販売を強化したいとおっしゃっていたのだが、デザイン的にはかなりアレな感じで、売れるとは到底思えない。
その割にはやたらと型数があり、その自信はどこから来るのか理解に苦しむ。
自信がないからこそ「下手な鉄砲も・・・・・」でやたらと型数を増やしているのかもしれない。

おそらく、企画デザインは経営者あたりがやらかしておられるのだと思われる。

正直申し上げると、この企業の取り扱う生地はすごく良いので、製品販売はお遊びやサンプル程度にチャレンジされて、生地販売に注力する方が良いと思う。
もしくは製品のデザインをデザイナーや企画会社に有料で依頼されるかである。

それにしても、製造業者の「安易」な物作りは後を絶たない。
某産地のオジサマ方が「自分らの感性でデザインすればええねん」と気炎を上げていらっしゃっと聞くが、そんなにお手軽にデザインできるのであれば、世間のアパレル企業は苦労しないだろう。

産地企業のソフト力への無頓着は相変わらずである。
デザイン、広報宣伝、コーディネートなどなどは無料で当然と考えている産地企業は多い。
例えば、某生地産地の総合展示会では、製品のサンプルを展示するにあたって、デザインを専門学校生に依頼する。理由は無料だからである。
プロに依頼した場合は、当たり前だが幾ばくかの費用が発生してしまう。

また某産地で最近、新製品が開発され、広報活動の甲斐もあって有名雑誌に4ページに渡って記事掲載され、表紙にもその商品が掲載されたが、担当者は社内であまり評価されていないと聞く。
もちろん、広告出稿ではなく、純粋に取材記事であるから掲載料は無料である。
おそらく、優に1000万円分くらいの広告価値があったと考えられる。

悲しいかな、これが産地製造業の現実である。

ソフト力に関して、身の丈に合わないほどの投資をする必要はもちろんない。
しかし、まともな製品を企画製造するなら、デザインその他のソフト力は不可欠である。
いくらコスト削減とはいえ、製品のデザインまでもを工場のオジサマがやらかしているようでは「売れる商品」なんて到底できっこない。

自らの価値を棄損している

 近頃、国内の生地産地でも製造ロットが小さくなり、中には「1反からでもオリジナル柄を織ってあげるよ」という生地メーカーもチラホラと見かけるようになってきた。

ビジネス規模の小さい独立系デザイナーにはうれしい限りではないだろうか。

しかし、中にはデザイナーと取り組んで完成したオリジナル柄を、勝手に色合いを変えて、デザイナー版よりも安価に販売するという生地メーカーも存在する。

例えば、デザイナーが赤×黄色×紫のチェック柄をオリジナルとして作ったとする。
それが完成すると、この生地メーカーは無許可でまったく同じチェック柄をピンク×グリーン×ブルーで作って、それを安価な量販店価格で販売してしまう。
性質が悪いことに、それが「商才」だと思っている節があり、勘違いも甚だしいと言わざるを得ない。

そんなものは「商才」でも何でもなく、単なる劣化コピーの安売り屋である。

まともに「商才」のある生地メーカーなら、同じ柄の色違いなんて物を無許可には作らないだろうし、それを廉価で投げ売ることもない。
もし、色違いで作りたい場合は、せめてデザイナーに一声かけるだろうし、その生地を廉価で投げ売りはしない。

まともなオリジナルの色柄が作りたければ、デザイナーと正式に幾ばくかの金銭で契約を結ぶべきだろう。
この生地メーカーはソフト開発を甘く見ており、ひいては納入先から自身のソフト力も低く見られているということに気が付いていない。

こんな生地メーカーばかりとは言わないが、この手の生地メーカーが各産地内に存在するのもまた事実である。

そういえば、先日こんなこともあった。
また違う産地のことなのだが、仮にAという生地メーカーが、同産地内のBという生地メーカーに生地を卸売りした。
いわゆる仲間卸である。
例えばその際、1メートル800円で卸売ったと仮定しよう。

ところが、そのA社は何を思ったのか、ちがうお客であるCに同じ生地を1メートル600円で販売してしまった。

しかしCはBからも同じ生地を購入しており、しかもその値段は1メートル1000円である。

当然CはBにもAにも抗議したわけだが、まったくもってA社の商道徳には疑問を感じる。
Cに直接販売するのであれば、せめてB社への卸価格と同じにすべきである。これはA社の信用を自らが棄損している行為だといえる。

このA社も先に挙げた劣化コピーの投げ売り屋も根本的な考え方が間違っているといえるが、本人たちはその間違いに気が付いていない。なんともはや・・・・・・・である。

ここ数年来、地場産業や日本産という切り口が注目されており、あちこちの売り場で「地場産フェア」や「日本産フェア」が毎週のように開催されている。
この降って湧いたようなブームが手放しで良いとは思えないが、この手の産地企業が各産地にそれなりの数存在するということは、現在のブームにも水を指すことになるし、さらには消費者の物作り企業への信頼感も損ねることになる。

ストール市場は飽和しつつあるのでは?

 24日が最終日ということで、難波の高島屋大阪店に出かけた。
若手デザイナーブランドを集めた「New Creators meet Takashimaya」を見るためである。

めでたく、目当てのデザイナー氏にはお会いできた。

で、帰りがけにエスカレーターを下っていたら、京友禅の老舗がオリジナルストールの期間限定販売会を行っていた。

実は先日、某企業の依頼で、ストール市場に関するレポートを書いた。

ストールというアイテムが看板になっている有名ブランドはあまりない。
一方、産地を拠点とする生地製造工場や、高島屋で見かけたような和装業者がストールというアイテムに参入するケースはこの数年増えている。

極言するとストールを看板とするブランドはほとんどが産地企業か和装企業であるといえる。

これは何故かというと、ストールというアイテムには複雑な型紙は必要ない。
生地を細く裁断してからほつれないように四方を縫製するだけで完成する。
生地の風合いと色柄のみで勝負できる要素が多いから生地メーカーや和装業者にとっては、オリジナル企画に挑戦しやすい。
一時期、西陣の業者が盛んにネクタイに参入したのと同様の理由である。

しかし、産地企業や和装業者が見落としがちなのは、生地の風合いと色柄のみだけでは売れないという点である。
全長を180センチにするのか、150センチにするのか、120センチにするのか、はたまた2メートルにするのか。
フリンジを付けるのか付けないのか。そのフリンジの長さは1個あたり5センチなのか3センチなのか。
というディティールが売れ行きの勝敗を分ける。
産地企業や和装業者はこのディティールを企画することを苦手としている。

それはさておき。

レポートの内容には、産地企業と和装業者の相次ぐ参入によりストール市場は飽和しつつあることを書いた。また、ストールというアイテムはトータルブランドやセレクトショップも多く扱うようになっており、そういう総合的なショップやブランドで買うことが増えており、ストール単体で超有名なブランドはほとんど存在しないことを指摘しておいた。

筆者にレポートを依頼した企業は、そこで、「ファッションを切り口としたストール開発を後発組である弊社が手掛けても仕方が無い。同じストールでも機能性に代表されるようなファッション以外の切り口で取り組んだ方が良い」との結論に達した。筆者はこの意見には賛成である。

それにしても、産地企業と和装業者によるストール参入はまだまだ終わりそうにない。
しかし、一口にストールと言っても、無印良品には2000~3000円くらいの価格でそこそこに見た目の良いストールが販売されている。オリヒカだって、ユニクロだって、ビームスだってストールを販売している。
1000~数千円程度でそれなりの表情のストールがふんだんに手に入るご時世に、産地企業や和装業者が製造した1万円オーバーのストールがそれほど売れるとは思えない。

一部の産地企業や和装業者がストールという新アイテムに着手し始めたという状態ならそれでも売れたかもしれないが、これだけ産地企業・和装業者の手掛けるストールが増えてしまうと、過当競争に陥ってしまう。
そういう凝った高価なストールが欲しい層は一定数存在するだろうが、それはあくまでも少数派である。
大多数の一般大衆は無印良品とかビームスとかのストールで十分満足するわけである。

少数派と目される消費者を多数の産地企業・和装業者が奪い合うというのが今の状況ではないか。

ましてや昨年までのストールブームは一旦落ち着きを見せている。
代わりにセーターの肩かけスタイルがトレンドに浮上している。セーターを肩にかければ首元にストールを巻くことはない。セーターの肩かけとストールは並立できない宿命にある。

もともとの市場規模が小さい上にトレンドが落ち着いたのに、参入企業数ばかりが増えているのが今の産地・和装系ストールブランドである。

ストール製造を先行していた産地・和装系の企業はそろそろ次の商材開発を積極的に進めるべきではないか。すでにストール市場はレッドオーシャンになってしまっている。
よほど上手くブランディングをしないと産地・和装系の高額ストールという分野では生き残れないだろう。

お役立ち情報の提供は効果的

 昨日までの6日間、阪急百貨店うめだ本店10階で生地の切り売り販売会「テキスタイル・マルシェ」を開催させてもらった。阪急での開催はこれで3回目となり、12月に4回目を開催する計画だが、詳細はこれから決めることになる。

6日間のほとんど、売り場に立っていた感想をいうと、百貨店の売り上げ不振の原因の一つは整然としすぎた売り場作りではないかと思える。整然としすぎるとお客の印象に残りにくい。

百貨店は手書きPOPを原則認めていない。
しかし、マネキンボディやハンガーラックのみのディスプレイをいくら工夫したところで、お客の関心を引くのは難しい。手書きPOPが一番手軽に実行できるのだが、禁止されているとなるとほかのことを考えないといけない。
売り場を観察していると「音」や「映像」「動画」などはやりすぎない限り禁止されていないようだ。
その中でも「音」は一番有効かもしれないが、他テナントに迷惑がかかることも多いので、少し使いにくい。

以前に百貨店と手書きPOPのことを書いたら、シナジープランニングの坂口昌章さんから
「昔、百貨店は手書きPOPを許可していたが、各テナントが手書きPOPを乱発したため売り場が汚くなって禁止した背景がある」とのご指摘をいただいた。
何事にもメリットとデメリットは表裏一体で存在するものである。

反対に現在の売り場は整いすぎて逆効果になっていると感じられる。

今回、メガネフレームのアセテート素材をアクセサリーに流用した「ディロッカ」に出展をいただいた。
通常、メガネフレームを「セルロイド」だと認識していらっしゃる方が多い。恥ずかしながら筆者もその一人だ。
ところが最近は発火点が低くて危険なセルロイドよりも、発火しにくいアセテートがメガネフレームの主流となっているそうだ。
そして、アセテートはなんと「綿」から出来ている。

綿(cotton)である。

綿花を砕いてパウダー状にして、それを固めて着色して板状にするのだそうだ。
その板からメガネフレームを切りだすわけである。

筆者はあの素材が綿花から生まれているとはまったく知らなかった。おそらく多くの方が知らないのだろうと想像する。
売り場で綿花からできていることを説明すると驚くお客が多かったことが印象に残っている。

そこで今回はこんな手書きPOPを作って展示してみると、なかなか反応が良かった。
前半の3日間撤去されなかったということは百貨店のお目こぼしもあったのかもしれない。(笑)

IMG_3945

(お客にお役立ち情報を提供したPOP)

これは筆者が指導して作らせたのではなく、他のスタッフが自分で工夫したのだが、なかなかうまくできている。
このPOPを見たお客が何人か、アセテートを曲げて作るブレスレットのワークショップを希望したからそれなりに効果があったといえる。

写真

(綿花から作られたアセテートを曲げた「ディロッカ」のブレスレット)

筆者は汚くならない程度の手書きPOPは百貨店でももっと活用すれば良いのではないかと考えているが、先に挙げた坂口さんの指摘が事実であるなら、その方針を転換するのはちょっと難しそうだと感じる。

こういう「知っていましたか?」というお役立ち情報を提供してお客の関心を惹くPOPはかなり上手な部類に入るし、これを見たお客も「売り込まれている」とは感じないから素直に販売員に質問できる。

POPというと「○○%オフ」とか「セール!」とか「激安!」とかいうような一言のみの物を連想しがちだが、あの類のPOPはあまり効果はない。手書きでなくても売り場は汚く見えるし、「セール」とか「激安」なんて一言をお客に提示したところで、セールも激安品も巷に氾濫している現在の状況では、お客はそこに関心を寄せることは少ない。ましてや「Tシャツ1990円」なんて商品名と価格のみのPOPなんてほとんど意味が無い。

アパレル・ファッションブランドはこの20年間で卸売り業態から直営店業態へと大きく移行してきた。
しかし、POPの扱いにかけては20年前とさほど変わっておらず、多くのブランドが効果のないPOPを掲げ続けて現在に至っている。
業界はもう少しPOPの製作手法を真剣に学んでみても良いのではないだろうか。

(*親切な読者から、アセテートは木材パルプ(セルロース)を原料にしており、綿花・綿の木のみを原料にしているわけではないとのお知らせがあった。ディロッカが原料としているマツケリー社のアセテートが綿花を原料にしているとしても、他のアセテートも綿花が原料とは限らない。アセテートという素材自体はセルロース系繊維であることを付け加えておきたい)

同質化しているから当然なのかも

 先日から、廃墟と化しながら営業し続けるショッピングセンター、ピエリ守山(滋賀県)が話題だ。
フロアマップを見ると現在、運営しているテナント店舗は10ほどしかない。これほどの惨憺たる有様で営業を続けている商業施設は稀である。

その廃墟っぷりは様々伝えられているが、今から紹介するピエリ守山が寂れた原因のまとめ記事はなかなか良くできている。

なぜ存続?「ピエリ守山」が生ける廃墟モールと化した経緯と理由
http://matome.naver.jp/odai/2137883156022734201

2008年9月にオープンしたというから今からちょうど5年前である。
たった5年でここまで寂れるかということである。
理由はいろいろとあるだろうが、上に挙げた記事で指摘されているのは、この商業施設のオープン後に近隣に続々と大型商業施設ができたことである。

2008年11月14日 草津エイスクエアがリニューアルオープン
2008年11月21日 フィオレ大津一里山開業
2008年11月26日 イオンモール草津開業
2008年11月28日 アル・プラザ堅田開業
2010年6月8日   イオンモール京都開業
2010年7月8日   三井アウトレットパーク滋賀竜王開業

となっている。
京都駅前のイオンモールが影響したという指摘は、関西圏以外の地域からするとピンとこないかもしれないが、滋賀は京都に近く、京都圏に属する。
滋賀出身の親族によると、若いころは必ず京都に買い物に出かけていたそうであり、それくらい京都に属しているといえる。

その後、2010年10月に開発企業である大和システムが民事再生法を取得したのも追い打ちをかけた。

さて、こんな流れなのだが、いくら「コンセプトガー」「ブランドのラインナップが」「差別化ガー」と叫んで見たところで近隣にこれだけ大型商業施設が作られれば、どこかが淘汰されざるを得ない。
人口は無限に湧いてくるわけではないから、どこかが顧客を獲得すれば、どこかが弾き飛ばされる。そういうことである。

それに加えて、入店テナントのブランドラインナップが各商業施設とも同質化しているから余計にそうなる。

同じラインナップの商業施設なんて近隣に3つも4つもあっても仕方がないわけである。

ショッピングセンターのラインナップはたいていが同質化しており、ユニクロか無印良品があって、フラクサスとチャオパニックティピィがあってローリーズファームシリーズがあって、ライトオンとかアースミュージック&ナンチャラとかがあるといった具合だ。

極言してしまえば、どの商業施設もほとんどが同じブランドラインナップなのだから、隣に複数の大型商業施設ができて過当競争にならない方がおかしい。
ピエリ守山は負けるべくして負けたといえるだろう。

このピエリ守山はオープン初日には5万人の来場者があったと伝えられているが、わずか5年後には生ける廃墟と化している。これだけを見てもオープン初日に「○○万人来場」とか「○○人が行列を作った」なんてことは事業を継続する上においてはあまり重要なことではない。
最近さっぱり評判を聞かない「アバクロンビー&フィッチ」銀座店ですら、オープン当日には行列ができている。
オープン当日の行列とか○万人来場なんていうのは、その後の商業施設の売れ行きに対して何の保証にもならない。

業界新聞や経済誌、一般紙は「オープン当日に○○万人の行列ができた」「初日は○○万人来場」なんてことを嬉々として天真爛漫に報道するのも結構だが、その後の追跡取材を行ってもらいたいと強く望む。
これだけ話題沸騰しているピエリ守山についてもその敗因と廃墟っぷりを特集解説してもらいたいものである。

胸ポケットの大きさは同じ

 先日、お洒落な男性百貨店バイヤーから、ドレスシャツの胸ポケットについての意見を伺った。

筆者はドレスシャツの左胸にポケットがあろうとなかろうとどうでもええじゃないかと思っており、個人の好みに応じてポケット付きでもポケットなしでも選べば良いと考えている。

そのバイヤー氏は、胸ポケットのないドレスシャツを買うようにしているのだという。
また、「欧米デワー」とか「イタリアガー」というような理屈かと身構えていたら、そうではなかった。
彼は162センチで男性としては小柄である。

彼が言うには「シャツの胸ポケットはLサイズもMサイズもSサイズも同じ大きさであるため、Sサイズを着用する自分から見ると、ひどく胸ポケットが大きく感じられてバランスが悪いからだ」とのことだった。

これは予期せぬ答えで、非常に勉強になった。

以前に日経ビジネスオンラインにそのあたりのことを書いた。

さて、つい先日、知り合いの展示会に出向いた。
デザインカジュアルシャツのイージーオーダーを展開し始めたごく小さなブランドである。
展開している彼が「胸ポケットの大きさの記事が参考になりました」という。

彼は記事を読んでくれていて、実際にいくつかのブランドのドレスシャツの胸ポケットの大きさを測ったそうだ。
そうすると、LサイズもMサイズもSサイズも胸のポケットの大きさは同じだったという。
そこで彼が作るシャツはLサイズ、Mサイズ、Sサイズで胸ポケットの大きさを変えるようになった。
もちろんLサイズが一番大きく、Sサイズは小さくなっている。

今回は記事が役に立ったようで、これはなかなかにうれしいものである。

それにしてもポケットの大きさのバランスというのはあまり気付かない。
このバイヤー氏がそれだけファッションが好きだということだろう。

しかし、男性のファッションというのはけっこう自己満足の世界だとも改めて感じる。
ありていに言えば、そこらのオッサンのシャツの左胸のポケットが1センチ大きかろうが、小さかろうが他人はあまり気にしていない。というより気が付かないことが多いのではないか。

スーツにしてもパンツにしても、その他アイテムにしても「丈を1センチ短くしました」とか「丈を2センチ長くしました」ということも多いが、実際他人からそれほど変わって見えるのだろうかと思ってしまう。
もちろん、幾分かは変わって見えるのだろうということはわかるが、頭の半分では冷ややかに見てしまっている。

そういえば、かなり昔、10年以上前のファッション雑誌か新聞かで、
ビームスのスエットの着丈が「従来品よりも1センチ長くなりました」という記事を読んだことがある。
ただし、かなり前なのでいつごろに掲載されたのか、どんな紙面だったのかは記憶にない。

記事の内容は、「その1センチで売れ行きが良くなりました」という内容だったはずなのだが、「ほんまかいな?」と思いながら読んだことを記憶している。

もちろん、時代のトレンドに応じた丈の長さや各部パーツの大きさがあってしかるべきだが、そんな1センチ単位の丈変化で売れ行きが大きく変わるのだろうかという疑問をいまだにぬぐえずにいる。

まあ、しかし、そういう1センチ単位の丈変化にこだわることがメンズファッションの真髄なのかもしれないが、ファッション音痴の筆者にはちょっとわかりにくい境地でもある。

産地展の現状

 各生地産地の展示会の多くが2月末から3月半ばに集中する。
記者時代は疑問に思っておらず、「商売のサイクル上そういうものなのかな~」なんて漠然と考えていた。

自分もいくつかの産地展を手伝うようになると様子が違うことがわかってきた。
3月に展示会を開催していたのでは、売り先であるアパレルやブランドなどの新規商品投入時期に間に合わないことが多くあるという。

じゃあ、3月展示会じゃなくて前年の11月ごろに展示会をしてみては?

素朴にそう思った。
仮に2014年3月に展示会が予定されていたとして、それを2013年11月に前倒しすれば良いのではないか。
ということである。

その分、準備期間も前倒しする。

理論上では十分可能である。

筆者が手伝ったことのあるいくつかの展示会だと、毎年9月から活動し始めて、翌年の3月に展示会を開催してその期間のプロジェクトが終わる。
これを4カ月前倒しにすれば11月展示会開催は可能である。あくまでも理論上は。

出来ない理由を組合事務局に尋ねてみたことがある。
答えは助成金である。

お役所は4月スタート、3月締めのサイクルで動いており、助成金もそのサイクルで支給される。

産地の助成金が支給されるかどうかは、筆者が尋ねた組合によると、だいたい7月に決定されていた。
その決定を待たないと活動が開始できないので、9月スタートにならざるを得ないわけである。
まあ、早くても8月スタートである。

4カ月前倒しして6月スタートで11月展示会開催というわけにはいかない。
あくまでも助成金で開催することを前提にしている限りは。だ。

助成金という制度を定めた以上、その運用については一定の規則を定めるべきである。
「性善説」を前提としてオールフリーにすべきものではないとも思う。

それでも商売の実状にそぐわない展示会を、毎年惰性のように開催することが果たして地域産業振興に役立つのかは疑問である。

そんなこんなでめでたく年も明けて3月に展示会開催となるが、展示会は展示会で問題が山積している。
個人的に問題だと感じるのは、産地合同展での出展社の姿勢である。

1、パクられる恐れがあるから新規素材は出品しない
2、当社の既存顧客が他社に取られる可能性があるので、既存顧客を会場に積極的に招待しない

だいたいこんな感じである。
新規素材もなく、既存顧客も招待しない展示会では盛り上がるはずがない。
そういう展示会はサラーっと、シラーっとしている。

幸い筆者が3年に渡ってお手伝いさせていただいた産地は、出展社はそれなりに協力態勢があり、新規素材も出品していたし、自社の既存顧客も積極的に招待していた。
そのおかげもあって手伝っている3年間は毎年盛況だった。その後は会場に足を運んでいないので実状はわからないが噂に聞くと変わらず盛況だという。

さて、前段では助成金サイクルに応じた展示会開催に疑問を呈したが、後段では産地企業各社による「囲い込み」姿勢に疑問を呈したい。

2000年代前半には商業施設やアパレルブランドの会見では「顧客の囲い込み」という言葉がよく使われていた。
かなりの頻度で登場しており、聞くたびに「またか」と鼻で笑うほどだった。
しかし、2000年代後半からは、商業施設やブランドの発表会で「顧客の囲い込み」なる言葉はほとんど使われなくなっている。反対に今では「回遊性」という言葉が使われ始めている。
激しい顧客争奪戦を繰り広げている近隣の商業施設同士が協力してイベントを開催したり、勉強会のようなものを開いているケースも増えてきた。
ブランド同士のコラボイベント・コラボ企画なんていうのもある。

商業施設やブランドの姿勢がこの10年で大きく変わったのに、生地製造メーカーの集積体である産地がいまだに「囲い込み」志向を打ち出しているのはいかがなものだろうか。

パクられるのが嫌で、顧客を奪われるのが嫌なら、産地合同展に出展せずに自社で単独展示会を開催すれば良いのである。ただし、それでもパクろうと思えばいくらでもパクれるわけだからあまり意味はないと感じるのだが。

観測気球を打ち上げたというところか

 先日、ユニクロが9月27日からカスタマイズサービス「マイユニクロ」を始めると報道された。
「ユニクロ銀座店」、「ビックロユニクロ新宿東口店」、「ユニクロ池袋東武店」の3店舗だけの展開なので、ユニクロ側もそれほどビッグビジネスになるとは見込んでいないのだろう。
まあ、観測気球を打ち上げたというところか。

この3店舗では「デコレーション加工」と「お直し・リフォーム」の2つのサービスを提供するという。

まず、デコレーション加工について流通ニュースから内容を引用する。
記事を読む限り、デコレーション加工=リメイク加工と理解して差支えなさそうだ。

http://ryutsuu.biz/topix/f091318.html

「デコレーション加工・部材販売」では、ユニクロの3店舗でデコレーション部材を販売。手芸専門店のユザワヤの協力を得て、あらゆるお客様のリクエストにお応えできるよう、さまざまなデコレーション用の部材、全170種類以上を集めた。部材の価格は390円~790円。

デコレーションした商品は、最短、即日渡しも可能。ラインストーンやレース、リボン、ボタンなどのデコレーション部材のみだけでも購入できる。お客ならではの「1点もの」を作成でき、自分らしい着こなしで、毎日の生活を楽しく彩ってもらいたいという。

とのことである。

お直し・リフォームはその名の通り、パンツの裾上げや丈詰めや巾詰めなどのお直しである。

高い技術を必要とする着丈つめや肩巾つめ、ダブル仕上げなどの幅広いお直しサービスを導入。サービス料は300円~2,000円で、対象商品は、パンツやスカート、ワンピース、ジャケット、コート、シャツとした。

とのことである。

こういうものは開店してみないとわからない。
開店してからでもしばらく時間が経過してみないとその結果は検証できない。
現段階では外野として予想ができるのみである。

個人的にはお直しはそれなりの需要があるが、リメイクはあまり需要がないのではないかと予測する。

もっとも需要があるのがパンツの裾上げだろう。
これはある程度繁盛すると考えられる。
自分の物を買ったが、何らかの事情でその場では裾上げしてもらえなかったということもあるだろうし、ジーンズやチノパンはお直ししたが、ウールのパンツがお直しできなかったというようなお客もいるだろう。
また家族に頼まれて買ったが、家で試着させたところ丈が長すぎたということはよくある話である。

シャツは袖丈を詰めるという要望があるかもしれないが、問題はその加工賃である。
もし仮に袖丈詰めが2000円もするなら、ちょっと抵抗がある。
ユニクロのシャツの定価は1990~2990円が多く、定価と同じだけの加工賃を払う意味がないからである。
それなら4990円の他社ブランドでサイズがピッタリ合う物を買う方が良いと考える人も多いだろう。
このあたりの需要が増えるかどうかは価格設定次第だろう。

一方、デコレーション加工(リメイク)はあまり需要が伸びないと予測する。
部材の平均価格は500円前後ということになるが、4つ買えば2000円である。
例えば定価990円のカットソーに2000円分の部材を付けるというようなリメイク加工を行うだろうか。
筆者なら行わない。それなら2990円で他社ブランドのカットソーを買う。
別に定価1990円のセーターでも同じで、2000円分の部材でリメイクするなら、最初から3990円の他社ブランド製品を買った方が手間が省けるわけである。しかも他社ブランドならデザイン自体がユニクロとは異なるし、生産ロットも格段に小さいので、他者と「被る」ことはあまりない。

そんなわけで「リメイク」の需要は少ないだろう。

そもそもユニクロ製品に「マイユニクロ」というほど愛着を持つ消費者が存在するのだろうか。
残念ながら筆者は持ったことがない。そういう方もいらっしゃるとは思うのだが多数派ではないと考える次第だ。

もともとユニクロは「洋服は部品」と標榜している会社である。
ベーシックデザインだから、他社ブランドとのミックスコーディネイトを邪魔しないというのがそのスタートだった。
そのような設計思想に基づいた洋服をリメイクカスタマイズしたいと考える人はそう多くないだろうし、価格面から見ても先ほど考えたようにちょっとアホらしい。

仮説→実行→修正が得意な会社である。

一度試してみて芽がないとわかるとすっぱりやめてしまうだろう。

吸水速乾よりも汗ジミ防止加工

 先日、フェイスブック上でのお友達がこんなことをアップしておられた。
「ユニクロの吸水速乾肌着エアリズムを着用すると、たしかにサラっとして気持ち良いが、その上に着たシャツに大量の汗が染みだしてきて困る」と。

このところ何だか夏に戻ったように暑い。

そんなわけで、筆者も先日試供品としていただいたグンゼの「YG」を着用してその上からカジュアルシャツを着てみた。ちなみに来春夏用の商品で、「夏季専用吸水速乾」品番ではなく、「年間定番吸水速乾」という品番である。
だから「夏季専用」はもっと違う着心地・機能性なのかもしれない。

たしかに綿100%肌着よりも吸水性が良いのか、大量の汗をかいても肌着が張り付くような不快感はない。
けれども、FB友達がアップされたように大量の汗染みがシャツに出来てしまった。というより、シャツ全体がずぶ濡れになったみたいに見える。これではまるでシャツを素肌に着たみたいじゃないか。

以前にも書いたように筆者は大量に汗をかく。
少し厚着をして、20分ほど歩くと12月でもジンワリ汗をかく。
真夏ならどれほど汗をかくかお分かりいただけるだろう。

吸水速乾肌着という商材の機能性は素晴らしいが上からシャツ(カジュアル、ドレスを問わず)を羽織るなら、不適格な商品なのかもしれないと思うようになった。

吸水速乾肌着は通常の綿100%肌着よりも大量に吸水し、それを素早く蒸発させ乾燥させる。
おそらく吸水量が綿よりも優れている上に、蒸発乾燥させる機能も綿よりも優れている。
素早く大量の汗を蒸発乾燥させる機能が優れているが、上からシャツを羽織っているとその蒸発作用が邪魔される。そのため、シャツに大量の水分が吸収されてしまうのではないかと考えている。

逆に綿100%肌着なら蒸発乾燥機能がそれほどではないため、上から羽織ったシャツに水分が吸収されることが少ないのではないか。ただし、肌着はいつまでも濡れたままなのでひどく冷たい思いを長時間するのだが。

筆者のように汗っかきのオッサンに対しては、どうやら、吸水速乾肌着on綿100%シャツという着用法は適切ではない。

汗っかきのオッサンが肌着の上から羽織るべきは、吸水速乾シャツが適切だろう。
シャツが吸水速乾でも着用者としてはさほどの快適感があるわけではない。しかし、肌着からの大量の汗シミを素早く蒸発させるには、上から羽織るシャツにも吸水速乾機能があるのが最適ではないか。しかもとびきり強力なのが。(笑)

アパレル各社のようにドレスシャツを着用しなくて済む職種の方なら、汗っかきの筆者は「吸水速乾」Tシャツやポロシャツよりも「汗ジミ防止加工」を施したTシャツやポロシャツをオススメしたい。

大量の汗をかいても、なかなか表面ににじみ出してこないという優れモノだ。

筆者は昨年、たまたま無印良品で夏のバーゲンの残り品のポロシャツを格安で1枚購入した。
多分、1000円くらいだった記憶がある。

何度か着用してみて、かなり汗をかいても表に染みだしてこないので、これは良いということで、今年Tシャツを4枚購入した。もちろん値引きされてである。
無地のVネックTシャツ2枚は今年物で、それぞれ1240円である。
ボーダーのVネックとクルーネックを買ったが、これはそれぞれ1000円とか750円であり、昨年夏の残り物である。

今年物と昨年物のどこが異なるかというと、昨年物の方がタイトなシルエットでピタッとしている。今年物の方がシルエットにゆとりがある。

シルエットは異なるが今年物も昨年物も大量の汗を吸収してもあまり表面には染みだしてこないので、汗っかきの筆者としては大変に助かった。人並み程度にしか汗をかいていないように見える。

無印良品のタグを見ると、オーガニックコットン100%使用と書かれており、具体的にどのような加工なのかはわからないが、そこに「汗ジミ防止加工」を施している。加工を施すのならオーガニックコットンを使用する意味があまりないのだが、筆者としてはこの商品は重宝するので来年以降もぜひ製造を続けてもらいたいと思う。

http://t-f-n.blogspot.jp/2013/08/t.html

によると、今夏は「ナノ・ユニバース」も汗ジミ防止加工のTシャツを発売し、なかなかの売れ行きだったそうだ。

そんな体験を通して、筆者は夏向け衣料にもっとも必要な加工は、吸水速乾よりも汗ジミ防止加工ではないかと思い始めているところだ。

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