産地展の現状
2013年9月18日 未分類 0
各生地産地の展示会の多くが2月末から3月半ばに集中する。
記者時代は疑問に思っておらず、「商売のサイクル上そういうものなのかな~」なんて漠然と考えていた。
自分もいくつかの産地展を手伝うようになると様子が違うことがわかってきた。
3月に展示会を開催していたのでは、売り先であるアパレルやブランドなどの新規商品投入時期に間に合わないことが多くあるという。
じゃあ、3月展示会じゃなくて前年の11月ごろに展示会をしてみては?
素朴にそう思った。
仮に2014年3月に展示会が予定されていたとして、それを2013年11月に前倒しすれば良いのではないか。
ということである。
その分、準備期間も前倒しする。
理論上では十分可能である。
筆者が手伝ったことのあるいくつかの展示会だと、毎年9月から活動し始めて、翌年の3月に展示会を開催してその期間のプロジェクトが終わる。
これを4カ月前倒しにすれば11月展示会開催は可能である。あくまでも理論上は。
出来ない理由を組合事務局に尋ねてみたことがある。
答えは助成金である。
お役所は4月スタート、3月締めのサイクルで動いており、助成金もそのサイクルで支給される。
産地の助成金が支給されるかどうかは、筆者が尋ねた組合によると、だいたい7月に決定されていた。
その決定を待たないと活動が開始できないので、9月スタートにならざるを得ないわけである。
まあ、早くても8月スタートである。
4カ月前倒しして6月スタートで11月展示会開催というわけにはいかない。
あくまでも助成金で開催することを前提にしている限りは。だ。
助成金という制度を定めた以上、その運用については一定の規則を定めるべきである。
「性善説」を前提としてオールフリーにすべきものではないとも思う。
それでも商売の実状にそぐわない展示会を、毎年惰性のように開催することが果たして地域産業振興に役立つのかは疑問である。
そんなこんなでめでたく年も明けて3月に展示会開催となるが、展示会は展示会で問題が山積している。
個人的に問題だと感じるのは、産地合同展での出展社の姿勢である。
1、パクられる恐れがあるから新規素材は出品しない
2、当社の既存顧客が他社に取られる可能性があるので、既存顧客を会場に積極的に招待しない
だいたいこんな感じである。
新規素材もなく、既存顧客も招待しない展示会では盛り上がるはずがない。
そういう展示会はサラーっと、シラーっとしている。
幸い筆者が3年に渡ってお手伝いさせていただいた産地は、出展社はそれなりに協力態勢があり、新規素材も出品していたし、自社の既存顧客も積極的に招待していた。
そのおかげもあって手伝っている3年間は毎年盛況だった。その後は会場に足を運んでいないので実状はわからないが噂に聞くと変わらず盛況だという。
さて、前段では助成金サイクルに応じた展示会開催に疑問を呈したが、後段では産地企業各社による「囲い込み」姿勢に疑問を呈したい。
2000年代前半には商業施設やアパレルブランドの会見では「顧客の囲い込み」という言葉がよく使われていた。
かなりの頻度で登場しており、聞くたびに「またか」と鼻で笑うほどだった。
しかし、2000年代後半からは、商業施設やブランドの発表会で「顧客の囲い込み」なる言葉はほとんど使われなくなっている。反対に今では「回遊性」という言葉が使われ始めている。
激しい顧客争奪戦を繰り広げている近隣の商業施設同士が協力してイベントを開催したり、勉強会のようなものを開いているケースも増えてきた。
ブランド同士のコラボイベント・コラボ企画なんていうのもある。
商業施設やブランドの姿勢がこの10年で大きく変わったのに、生地製造メーカーの集積体である産地がいまだに「囲い込み」志向を打ち出しているのはいかがなものだろうか。
パクられるのが嫌で、顧客を奪われるのが嫌なら、産地合同展に出展せずに自社で単独展示会を開催すれば良いのである。ただし、それでもパクろうと思えばいくらでもパクれるわけだからあまり意味はないと感じるのだが。