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南充浩 オフィシャルブログ

ストール市場は飽和しつつあるのでは?

2013年9月25日 未分類 0

 24日が最終日ということで、難波の高島屋大阪店に出かけた。
若手デザイナーブランドを集めた「New Creators meet Takashimaya」を見るためである。

めでたく、目当てのデザイナー氏にはお会いできた。

で、帰りがけにエスカレーターを下っていたら、京友禅の老舗がオリジナルストールの期間限定販売会を行っていた。

実は先日、某企業の依頼で、ストール市場に関するレポートを書いた。

ストールというアイテムが看板になっている有名ブランドはあまりない。
一方、産地を拠点とする生地製造工場や、高島屋で見かけたような和装業者がストールというアイテムに参入するケースはこの数年増えている。

極言するとストールを看板とするブランドはほとんどが産地企業か和装企業であるといえる。

これは何故かというと、ストールというアイテムには複雑な型紙は必要ない。
生地を細く裁断してからほつれないように四方を縫製するだけで完成する。
生地の風合いと色柄のみで勝負できる要素が多いから生地メーカーや和装業者にとっては、オリジナル企画に挑戦しやすい。
一時期、西陣の業者が盛んにネクタイに参入したのと同様の理由である。

しかし、産地企業や和装業者が見落としがちなのは、生地の風合いと色柄のみだけでは売れないという点である。
全長を180センチにするのか、150センチにするのか、120センチにするのか、はたまた2メートルにするのか。
フリンジを付けるのか付けないのか。そのフリンジの長さは1個あたり5センチなのか3センチなのか。
というディティールが売れ行きの勝敗を分ける。
産地企業や和装業者はこのディティールを企画することを苦手としている。

それはさておき。

レポートの内容には、産地企業と和装業者の相次ぐ参入によりストール市場は飽和しつつあることを書いた。また、ストールというアイテムはトータルブランドやセレクトショップも多く扱うようになっており、そういう総合的なショップやブランドで買うことが増えており、ストール単体で超有名なブランドはほとんど存在しないことを指摘しておいた。

筆者にレポートを依頼した企業は、そこで、「ファッションを切り口としたストール開発を後発組である弊社が手掛けても仕方が無い。同じストールでも機能性に代表されるようなファッション以外の切り口で取り組んだ方が良い」との結論に達した。筆者はこの意見には賛成である。

それにしても、産地企業と和装業者によるストール参入はまだまだ終わりそうにない。
しかし、一口にストールと言っても、無印良品には2000~3000円くらいの価格でそこそこに見た目の良いストールが販売されている。オリヒカだって、ユニクロだって、ビームスだってストールを販売している。
1000~数千円程度でそれなりの表情のストールがふんだんに手に入るご時世に、産地企業や和装業者が製造した1万円オーバーのストールがそれほど売れるとは思えない。

一部の産地企業や和装業者がストールという新アイテムに着手し始めたという状態ならそれでも売れたかもしれないが、これだけ産地企業・和装業者の手掛けるストールが増えてしまうと、過当競争に陥ってしまう。
そういう凝った高価なストールが欲しい層は一定数存在するだろうが、それはあくまでも少数派である。
大多数の一般大衆は無印良品とかビームスとかのストールで十分満足するわけである。

少数派と目される消費者を多数の産地企業・和装業者が奪い合うというのが今の状況ではないか。

ましてや昨年までのストールブームは一旦落ち着きを見せている。
代わりにセーターの肩かけスタイルがトレンドに浮上している。セーターを肩にかければ首元にストールを巻くことはない。セーターの肩かけとストールは並立できない宿命にある。

もともとの市場規模が小さい上にトレンドが落ち着いたのに、参入企業数ばかりが増えているのが今の産地・和装系ストールブランドである。

ストール製造を先行していた産地・和装系の企業はそろそろ次の商材開発を積極的に進めるべきではないか。すでにストール市場はレッドオーシャンになってしまっている。
よほど上手くブランディングをしないと産地・和装系の高額ストールという分野では生き残れないだろう。

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