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1800年代後半のデニム生地を実際に触った人ってどれくらい存在するの?

 筆者自身にはまったく興味がなかったが、先日こんな記事が各メディアで発表された。

ここは繊研プラスから引用したい。

コートジボワール綿ジーンズ発売
http://www.senken.co.jp/news/ivory-coast-jeans/

ジャパンブルー(岡山県倉敷市)は19日、メンズ「ジャパンブルージーンズ」で、コートジボワール産の手摘み綿花を使ったコートジボワールコットンジーンズを26日から世界同時発売すると発表した。

 コートジボワールコットンは「国内では初めての採用」になる。体になじみやすい風合い、自然な色落ちが特徴だ。売り上げの1%はコートジボワール大使館を通じて公共施設の建設などに寄付する。初年度は5000本の販売目標。

とのことである。

業界外の人には耳慣れないジャパンブルーという社名だが、

同社は11月1日、デニムを中心とした生地卸販売のコレクトと、ジーンズ製造卸の藍布屋が経営統合して新会社として発足した。15年2月期売上高は37億円の見込み。「桃太郎ジーンズ」を主力ブランドに国内外で販売するが、ジャパンブルージーンズも今回の提案などで成長させる。製品事業を強化し、19年2月期に売上高を50億円とする中期計画を立てている。

という背景で成り立っている企業である。

アフリカの新興国との結びつきを強めることは、国益から照らし合わせてみても妥当であり、筆者は商品自体にはさっぱり興味はないが取り組み自体は発展することを願わずにはいられない。

さて、この試みに対して、与党の某議員がこんなツイートをしている。

「ジーンズでコートジボワールを支援。デニム生地・ジーンズ製造販売の倉敷市児島の「ジャパンブルー」。アフリカは綿の原産地。コートジボワールの綿はデニム生地にすると、1800年代後半の米国のジーンズに似た風合い、肌触りとか。アフリカ議連会長の私としては、本当に嬉しい。買いますよ」

これに対して、多数の賛成の声があるのだが、個人的には疑問を感じる。
こういう見方が一般的になればなるほど、生地製造も含めた日本のジーンズ製造業は競争力を失うのではないか。

まず、「1800年代後半の風合い・肌触り」という部分なのだが、現在のジーンズ業界で1800年代後半のデニム生地の風合いや肌触りを明確にイメージできる人間が何人存在するのだろうか?
1800年代後半というのはジーンズという作業ズボンが初めて製造された頃である。
その当時のジーンズというのはほとんど残っておらず、たまたま発見された物がリーバイスで保管されている程度だ。

120~130年前のジーンズなんてそんなに残っていないから、一部の生地製造業や老舗メーカーにはその当時のデニム生地を触ったことがある人が幾人か存在するかもしれないが、大多数は触ったことも実物を見たこともないだろう。むろん、筆者もその一人である。

さらにいうなら綿の繊維長の長短で生地の風合いは左右される部分はあるが、それだけではない。
製造する糸の太さによっても大きく左右されるし、糸の撚り合わせ方(撚糸)によっても、生地の織り方、生地の経糸と緯糸の密度の高低でも生地の風合いは変わる。

要するに綿花そのもののみで生地の風合い・肌触りがすべて決まるわけではない。

生地が織り上がったあとの整理加工によってもまた風合い・肌触りは変化する。

こういう見方が一般的になり、「伝統を受け継ぐ日本のデニム生地」という風潮がさらに蔓延すると、ただでさえ「匠」化しがちな国内デニム産業がさらに伝統工芸化してしまうのではないかとの危惧を抱いてしまう。
筆者は正直現在でもそういう風潮には辟易している。

以前にも書いたことがあるが、現在のファッション市場において、ビンテージ感覚あふれる凹凸感があって肉厚なヘビーオンスデニムは求められていない。

現在のファッション市場で求められているデニムは、ストレッチ性があるとか、肉厚だけど軽量だとか、肌触りがソフトだとかいう一部に合繊を混紡・交織した機能性デニムである。
これは国内だけではなく、欧米市場でも変わらない。

ファッションのトレンドなんて未来永劫続くことはなく、どこかで大転換期が訪れるのだが、そのまま昔に戻ることはない。
それこそ、パルグループの井上英隆会長ではないが、「一旦少し戻ってまた進むという『螺旋状』に進む」というのが実情に沿っているだろう。
例えば、ツイード生地だが、いくらツイードがトレンドだと言われても、昔のような重くて硬いツイード生地で作ったジャケットやコートを欲しがる人が世の中にどれほど存在しているだろうか。
そういうマニアも存在するがそれはニッチな市場であり、大多数は現代風にアレンジされた軽量・ソフト・ストレッチ性のあるツイード生地を求める。

一旦快適な機能性を持つ衣服を着用すれば、その機能を外したものをわざわざ着たいとは思わなくなる。

デニムも同じである。
ストレッチデニムに慣れた人が今から雪崩を打ってノンストレッチデニムに戻るとは到底思えない。

もちろん、いずれ、ビンテージ感覚のデニム生地がトレンドに浮上することもあるだろうから、その製造技術は絶やすべきではないと思うし、そういう物を後生大事に継承し続けていくのが日本の特色でもあると思う。
けれどもその時に浮上するビンテージデニム生地は、今までのとは異なり「螺旋状」に進化したストレッチビンテージとか軽量ビンテージ、色落ちしにくいビンテージなのではないかと個人的には考えている。

そして、技術力に優れたといわれる国内デニム生地メーカーだからこそ、それの開発を進めるべきではないかと思う。
従来型製法の墨守のみではジリ貧に追い込まれるだけであろう。

政治家や行政が地場産業の振興育成に力を注ぐのはまことにけっこうなことだと思うが、匠化・伝統工芸化を助長するような示唆はミスリードにつながるのではないか。

11月に購入したお買い得品

 今日はすご~くお気楽に。

今年に入ってめっきりと洋服を買うことが減ったが、今月に買ったお買い得品を晒してみる。(笑)
1つは、ライトオンで買ったショートステンカラーコートである。
元値8900円が1900円(税抜)にまで値下がりしていた。

写真 11

綿100%の一重なので、これからの季節はちょっと寒くて着られないが、少し暖かい日ならウールのセーターの上から羽織ればちょうど良い具合だろう。

筆者が買った赤と、鮮やかなグリーンの2種類だけが残っており、筆者は赤が好きなのでそちらを購入した。
ライトオンはこういうお得品があるので定期的に店頭をチェックしている。

もう一つは、ユニクロのスエットシャツ(トレーナー)である。
定価は1990円だが、先日は期間限定で990円(税抜)で販売していたので、このネイビーを購入した。

写真 21

現在、ユニクロのサイトではスエットシャツが2種類ある。
どちらも無地の定番だが、使用素材が異なる。
スエットシャツCと、スエットシャツである。

スエットシャツCは綿100%で、リブ部分は綿82%・ポリエステル18%
スエットシャツは綿81%・ポリエステル19%、リブ部分は綿87%・ポリエステル13%

となっている。

購入したのは綿100%だったので、このスエットシャツCという方である。

着用した感想をまとめてみる。
昔の裏毛トレーナーは肉厚なものが多かったがが、昨今は綿花高騰の影響による原料の節約なのか、トレンド傾向からなのか、肉薄のものが多い。
ユニクロのトレーナーも肉薄の部類に入るが、それでも編み地はかなりしっかりしている。
そう簡単には伸びない。
価格帯を考慮するとこの編み地はかなりコストパフォーマンスに優れているといえる。

またシルエットはかなりタイトである。
昔のトレーナーを想像して着用するととまどうだろう。
Mサイズでちょうどタイトシルエットになる。
アームホールも狭い。

価格の割に品質に優れると言われるユニクロ製品だが、アイテムごとにばらつきがある。
ここ2,3年の夏の半袖Tシャツ類やポロシャツ類は、なんだか素材がうすっぺらいなと感じた。
また、昨年や一昨年のこのスエットシャツはポリエステルの配合率が多くて、微妙な光沢感があった。

そういうアイテムの中ではこのスエットシャツCはかなりクオリティが高い。
定価1990円(税抜)でこの編み地と縫製なら十分に品質が高い。
ましてや990円なら破格値である。

さて、来月もこれらのようなお買い得品に巡り合えるかどうか。

20年間でのメンズファッションの変化の有無は?

 そういえば、今年の夏に一冊の古い雑誌をいただいた。

1990年7月15日号の「ブルータス」である。
価格は380円とある。
うん、安い。

24年前の雑誌で、ジーンズ特集である。
題して「25歳からのジーンズ」。

写真 11

24年前は筆者はまだ働いていない。
大学生である。
ちなみに何度も書いているのでご存じの方も多いが、この頃、筆者はファッションに興味がない。
しかし、当時の風俗は記憶に残っているから懐かしいなあという気持ちになった。

写真を見てもらえればわかるように、この当時のジーンズは「ヒゲ」加工がなされていない。
のっぺりと全体的に色落ちをさせている。

写真 21

また、この当時の洋服は全体的にオーバーショルダーである。
現在もオーバーショルダーが復活しつつあるが、決定的に違うのはアームホールの広さである。
現在のオーバーショルダーはアームホールが狭いが、この当時はアームホールが異様に広い。
袖が異様に太い。

写真 3

どうしてこの当時はこれほど袖が太かったのだろうか。

これほど袖が太いと、逆に動作に支障があるのではないかと思えてくる。

ここに並んでいるジーンズは懐かしいブランドばかりである。
シェビニオン、クリークス、ケンゾー、ゲス、シピー、ボブソン、リベルト、ソヴィエトなどなど。

ただし、オーバーサイズのシルエットを除くと、アイテム的には今とほとんど変わらない。
メンズのファッションというのは基本的にはこの30年ほどはほとんど変わっていないと言える。

以前、1970年ごろのメンズファッション雑誌を拝見したことがあるが、男性がまとっているカジュアルアイテムは今とほとんど、色柄・デザインが同じである。
セーターにダウンベストにジーンズといった具合だ。

違うのはシルエットやディテールなど細かい部分だけだ。

話はガラッと変わるが、おととい、ようやく衣替えを済ませた。
暑がりなのでつい最近まで夏物を着ていたのだ。

安物ばかりだが、シャツなんかはかなりの枚数を持っている。
きっと50枚くらいはある。
同じような形で色柄と細かなディテールが違うだけの商品をよくもこれだけ所有しているなと感心するのだが、
メンズの洋服はバリエーションが少ないため、仕方がない側面もある。

最近、筆者は服を買う枚数がグッと減っているが、これは懐が寒い以外に、似たような商品をすでに持っているからという理由もある。

年を取って、手持ちの洋服が増えてくると、よほどのトレンドやシルエットの変化がない限り、改めて服を買い足そうという欲求がなくなってくる。
以前に買った服を破損していないのに捨てるのももったいないし。

なんだかそんなわけで最近とみに、自身の老いを感じ始めている。
まさに、日暮れて道遠しである。

東京と地方のファッションの差

 首都圏以外の地方に住んでいると、ファッション雑誌で「これが流行っている!」なんていう特集を読んでも、身の回りでそのものズバリのファッションをしている人間をそれほど見かけないから、「そんな奴おらんやろ~」と、ベテラン漫才師のギャグのようなツッコミを思わず入れてしまう。

関西圏ではファッション雑誌で特集されているアイテムやファッションはときどき見かける程度で、たしかに流行しているのはわかるのだが、とてもじゃないが「熱い!」なんて感覚はあまりない。

例えば、つい最近までニューバランスのスニーカーが超人気だと雑誌では特集されていた。
たしかに店頭でも売り上げが伸びたとか、特定の品番は完売したという情報も耳にした。

けれど梅田や心斎橋で道行く人の足元をジッと見ていてもそれほどニューバランスの着用者はいなかった。
もっとも、現在はニューバランスブームは終わり、ナイキブームが来ているらしいのだが、関西だとブームの有無にかかわらずずっとナイキを履き続けている人が多かったので、いつからブームが始まっているのかまったく判然としない。

ときどき、東京から関西に帰省するファッション業界人とお茶を飲みながら雑談することがあるが、彼らが異口同音に「東京とは道行く人のファッションが違うね」と言う。
ニューバランスの件も「東京ではあれだけ見かけるニューバランス着用者がほとんどいない」と口をそろえていた。

つい先日も東京からの帰省者と雑談をしたのだが、「東京じゃニット帽が流行していて帽子売り場ではニット帽が大半になっていますが、大阪ではいまだにハット着用者も多いし、売り場にもハットが多いですね」と感想を述べていた。
そう、なぜかわからないが関西ではいまだにハット着用者は多い。
ニット帽の愛用者はこれまでもそれなりにいたから、ブームなのかそうでないのかが判然としない。
最近だと、色柄も豊富でしっかりしたツクリのハットが、天神橋筋商店街あたりでは1000円均一で売られていたりするし、天王寺MIOやヨドバシカメラ梅田店の帽子店では1900円くらいでハットが色柄豊富に取り揃えられている。

関西以外の地域で居住したことがないので、他地域の状況はわからないのだが、ファッション雑誌の特集通りの消費行動があるのは東京を中心とした首都圏だけではないのかというふうに感じる。

そういえば、岡山の郊外や福山に出張することがあるが、
その際、大阪都心でもあまり見かけなくなったヤンキースタイルを目にすることがある。
今話題のマイルドヤンキーどころではなく、ハードヤンキースタイルである。

そう思うと、その他地域も首都圏ほどトレンドに集中しないのかもしれない。

老舗ジーンズブランドの「ブルーウェイ」が来春からメンズでジーンズを再強化する。
なんと今のトレンドとはまったく異なる「立体ヒゲ加工」「ハードビンテージ加工」を施したジーンズを打ち出す。
シルエットは当初、トレンドのスキニーと細身ストレートの2型だけだったが、そこに急遽ブーツカットがプラスされた。
立体ヒゲ加工のブーツカットジーンズなんて「一体何年前の流行だよ!」とツッこまざるを得ないが、郊外店からはこういう「ジーンズらしい商品」の要望があり、ブルーウェイのブランド売り上げ規模からするとバカにならない本数がまとまるのだそうだ。

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(立体ヒゲ加工のブーツカットジーンズ)

関西圏の街頭や郊外のハードヤンキー達を見ていたり、ブルーウェイへの要望などを考えると、衣料品の市場ではこういう非トレンド層というのも相当数存在し、各社はその売上高を取りこぼしているのではないかと思えてくる。

帰省者たちの言葉を信じるなら、東京でトレンドを体感し、それに向けた商品開発をすることはとても重要だと思うが、その市場にどっぷり身を沈めすぎると日本全国が首都圏と同じようなトレンドに埋め尽くされていると錯覚してしまうのではないか。

そのあたりが東京一極集中のデメリットもあるのだろうなと感じてしまう。

アドバンテージがなくなりつつあるジーンズナショナルブランド

 今秋は繊研プラスでよく「マウジー」の記事を見かける。
「マウジー」についての企業戦略記事なんて繊研新聞以外ではあまり見かけないから、毎回読んでいる。

バロック「マウジー」復調
http://www.senken.co.jp/news/baroque-moussy/

アズール・バイ、スキニー7万本計画
http://www.senken.co.jp/news/azul-by-moussy-skinny/

という具合である。

とくに、マウジー復調の記事はこんな一節がある。

ブランドのアイデンティティーであるデニムを素材から開発することで、ブランドの顔を明確にした。

とのことである。

マウジーのブランドアイデンティティーはデニムだったのだ。
ジーンズと言い換えても良いだろうというか、この内容では本来、ジーンズもしくはデニムパンツと書くべきであろう。

3年ほど前になるが、阪急百貨店うめだ本店のレディースジーンズ売り場の取材をしたことがある。
その際、バイヤーからこんな言葉が出た。
「今の30歳の女性は、18歳くらいからマウジーを愛用していた層。彼女らにとってジーンズとはマウジーなのです。ナショナルブランドではないのです」。

これには当時衝撃を受けた。
44歳のオッサンからすると、マウジーなんて最近出てきたブランドという感じだが、よく考えてみると初期に愛用していた層は30代になっているのだ。

また、マウジーのセカンドラインと位置付けられる「アズール・バイ・マウジー」では今秋7万本のスキニーパンツ販売計画が立てられた。
デニム素材は使用しておらず、カラーパンツとしての商品群に分類されるが、これだって並みのジーンズナショナルブランド以上の販売計画である。

こう見ると、ナショナルブランドの座はレディースに限ってはすでに何年も前から崩れていたといえる。
気が付かなかったのはナショナルブランド各社と業界メディアだけではなかっただろうか。
もしかしたら気が付かないふりをしていたのだろうか。

ジーンズナショナルブランドはメンズの方が人気が根強いが、リサーチしてみると、メンズだってこういうブランドが存在するのではないだろうか。

もうすでに言い尽くされているが、ジーンズナショナルブランドはマウジーのようなレディースブランドや他のメンズブランドと競争せざるを得ない状況になっている。
もう何年も前からそういう状況になっていた。

ジーンズナショナルブランドのジーンズ作りに関するノウハウはまだアドバンテージはあると思われるが、それとていつまで維持できるかは不透明だ。
すでにジーンズナショナルブランドのノウハウを持ったOB・OGがOEM/ODM企画事務所を無数に立ち上げており、ここに依頼すればナショナルブランドとそん色のないジーンズを製造することができるというのは、これまで何度も書いてきたとおりである。

これまで書いてきたことの繰り返しのようになってしまったが、マウジーに関する記事を読んでいると、改めてジーンズナショナルブランドというカテゴリーは存続の危機に瀕していると感じた次第だ。

熱い思い「だけ」を語るのはディレクションではない

 SNS上で幾人かから流れてきた「デザイナーあるある」の漫画が秀逸だ。
ファッション業界でも深く肯くデザイナーも多いのではないか。
とくにこのエントリーが素晴らしい。

http://www.aruaru.unsung.jp/2014/07/13/188/
「デザイナー探しの旅」

あらすじをまとめるとこうなる。

とある経営者飲み会にて、経営者が
「いいデザイナーがいないんだよね。ビビッと表現してくれるデザインが欲しいんだけどね~」

主人公のディレクター
「どうやってデザイナーに依頼してるんです?」

経営者
「俺の熱い思いを説明しているんだよ」

主人公
「ディレクターはいるんですか?」

経営者
「もちろん


主人公
「具体的なイメージはあるんですか?」


経営者
 それを考えるのがデザイナーでしょ? 

そして絶句。

という展開である。

まあ、この繊維・衣料品業界でもこういう謎な会話は多い。

最近では産地企業が自社でオリジナル製品の開発に乗り出すことが増えた。
一部は成功しつつあるものの、大半は製品化すらできずに終わる。
中には単に助成金を費やしたのみで何のノウハウも蓄積できずに終わる場合もある。

要因はさまざまあろうが、その一つには上のような経営者の考え方がある。

はっきりいうと、上のような考え方をする経営者では百万年かけても良いデザインの製品なんてできない。

なぜなら、

1、ディレクションとしての体をなしていない
2、自称ディレクター(経営者)の脳内に製品やデザインの具体的イメージがない

この二つの理由でデザインは永遠に完成しない。

デザイナーが自分で自分をディレクションする場合は往々にしてある。
しかし、それができるデザイナーは能力として優れており、当然、ギャランティーも高額になる。
一人二役を兼ねているのだから当たり前である。

繊維製造業に限らず、世の中の製造業者はデザイナーに高いギャランティーを払いたがらない。
そこに価値を見出していないからである。
勢い、低価格のデザイナーに依頼することになる。低価格のデザイナーはデザイン作業のみを請け負う。

ディレクションがなくてデザイナーに丸投げするとどうなるか、それはデザイナー個人の感性でデザインを完成させる。

製造業経営者はきっとこういうだろう。

「俺の熱い思いを長時間説明したじゃないか(ビールを呑みながら)」

と。

しかし、「熱い思い」なんて何時間語られたってデザインの具体化にはほとんど役に立たない。
それはディレクションではなく、コンセプト作りという作業である。

筆者が業務として経験したことのある雑誌ページの編集作業を例にとってみようか。
「黒を背景にして、バッグを手前に大写しにして、その奥に、置き撮りしたジーンズの切り抜きを4本横に並べてみよう」
と指示しても、誌面デザイナーにはまったく具体的イメージがわかない。

バッグってどんなバッグ?
大写しってどれくらいの大きさ?
ジーンズを横に4本並べるって、その大きさは?並べる間隔は?
黒の背景は分かったけど、それ以外の部分の色は?

これらのことが一切不明である。

こんなことを何時間しゃべったところで時間の無駄である。

それよりも手描きのラフスケッチを渡した方が早い。
さらにイメージを具体化させるなら、自分が理想とするイメージに近い雑誌のページを見せた方が確実である。

衣料品や繊維製品に置き換えると、
手描きのラフスケッチと、理想とする他社製品のサンプルを見せた方が早くて確実である。

デザイナーはテレパシー能力者ではないから、製造業経営者が自分の脳裏に描いている理想的デザインなんてものを直接受信はできない。
それは製造業経営者が自分で具体像をある程度示して見せる必要がある。
それがディレクターの仕事であり、熱い思い「だけ」を語るのはディレクターの仕事ではない。

まあ、そんなわけで今日も繊維業界は平常運転である。

合同展示会の延命策は一般消費者参加型にするしかない

 衣料品をメインにした卸売り型の合同展示会が全般的に苦戦している。
繊研新聞社が主催する大型合同展示会IFFの今年7月の入場者数は2万人と発表された。

2万人も来ればかなりの来場者数だが、ピーク時は3万5000人あったのだから、1万5000人の来場者減である。

アパレル合同展は新規で立ち上げられる場合も多いが、昨今の情勢では、数年以上前から長らく続いている合同展示会の来場者数は苦戦傾向にある。
これはIFFのような大型展示会だけではなく、10社前後の規模で開催する小規模合同展も同じである。

その最大の原因として、仕入れ型専門店の減少が挙げられるだろう。
現在、隆盛を誇っているのは、SPA形式の自社企画品を直営店舗で販売するというスタイルである。
その中には外見は同じでもフランチャイズ形式で販売している場合もある。
しかし、どちらの場合でも、特定の単独ブランドのみを販売するのはまったく変わらない。

もう一方で隆盛を誇るのが大手セレクトショップである。
セレクトショップとカタカナ呼びしても元は仕入れ型専門店である。
しかし、チェーン展開し、資本力が増すにつれ、自社企画品の比率を高めている。
逆に、資本力を増すために自社企画品比率を高めたという側面もある。
とくに衣料品は8割~9割が自社企画品で、残りの1割~2割はディスプレイ用途や店舗の味付けように著名ブランドをいくつか仕入れるという形になっている。

大手セレクトショップはビジネスモデルとしては限りなくSPAに近い。

この2つに向けて卸売りすることはほぼ不可能に近い。
両者が探しているのは、自社企画の製造を請け負ってくれるOEM/ODMメーカーである。

そして個人経営に近い小規模専門店はオーナーの老齢化や売り上げ不振、資金繰りの悪化などが原因で、毎年続々と廃業倒産している。

百貨店の現状はほとんどファッションビルと同じで有力ブランド直営店がテナント入店しており、わずかに残った平場は大手アパレルに寡占化されている。百貨店の「委託」と言う名の消化販売形式では、大手しか付き合いきれないというのが実情だろうか。

こうなると卸売りアパレルの販売先は年々減少するばかりである。

卸売りメーカーの販売先が減少しているから、来場者数が減少している。
来場者数が減少しているから活気がなくなり、出展者数も減る。
出展者数が減るとさらに来場者数が減るという悪循環スパイラルに陥る。

廃業した専門店の代わりに、「俺が専門店として参入してやるぞ」なんて個人や企業なんてほとんど現れない。
仮にAという専門店が廃業したらその市場を狙って、新規で専門店を立ち上げるなんていう人はほとんど存在しない。

いくら展示会主催者が声を大にして叫ぼうと来場者は増えない。分母が減り続けているからである。

こう考えると、展示会主催者が展示会を盛り上げるためには一般消費者を呼び込むほかないのではないだろうか。

例えばバイヤーデイと一般消費者デイを分けて、
バイヤーデイは従来型の受注会、一般消費者デイは在庫処分セール、というように日によって出し物を使い分けてはどうだろうか。

また一般消費者は大概がにぎやかなお祭り好きだから、
バイヤーが商談している会場で、同時に一般消費者が楽しめるようなアトラクションを開催するという手段も有効なのではないだろうか。

今は賑わいを見せている新規の合同展示会も回数を重ねるといずれ停滞期が来る。
来場して仕入れる小売業は年々減少しているわけだから、ある程度の規模にまで達するとIFFがそうであるように来場者数を増やすことはできなくなる。

そう考えると一般消費者も呼び込む「何か」を考える必要がある。

「需要がないなら合同展示会なんか廃止すれば良い」という意見も聞こえてきそうだが、それはその通りである。
どうしようも無くなったら廃止するほかない。

主催者が延命を図りたいなら、という前提で今回は考えてみた。

国産デニム生地を伝統工芸品にしないために

 今日はWWDの日本製デニム生地に関する記事が割合に面白かったのでご紹介したい。

http://www.wwdjapan.com/focus/column/denim/2014-11-17/2493

ここではこれまでの国産デニム生地生産大手だったカイハラ、日清紡、クラボウの現状と、最近のデニム生地の潮流が書かれているが、何となく尻切れトンボで終わっている感がもあるため、私見を加えてまとめてみたい。

まず、カイハラの現状である。
押しも押されぬ現在の国産デニム生地工場最大手である。

年間3600万mの生産能力を持つカイハラは、日本製のデニム生地では圧倒的なシェアを占めていると見られている。貝原良治・代表取締役会長は「日本の雇用は当然守るという前提」というものの、海外では年産1億mを超えるなど有力デニム生地メーカーが巨大化しており、海外進出は国際競争を勝ち抜くためにも避けては通れない道とも言える。

とのことであり、これは以前にもこのブログで書いたことがあるように、国内最大手といえども海外の大手とは生産数量が格段に落ちる。
それは抱える織機の数が少ないためである。
海外大手に追いつくためには織機の数を増やさねばならないが、それを国内でやるのかアジアでやるのかとなった場合に、カイハラはアジアでやると決めたということになる。
また、噂にしかすぎないが、某大手ブランドが東南アジアに大規模工場を作る計画があり、それへの生地供給を見込んでいるのではないかという指摘もある。

次は日清紡とクラボウだ。

紡績大手の日清紡は11年、繊維事業の構造改革に伴い、国内でのデニム生産を縮小し、大半をインドネシアに移管した。同社の撤退前の生産能力は日本で年産600万メートルで、3番手。昨年4月には長く日本のデニム生地開発を牽引してきた紡績大手のクラボウが香港の自社工場を売却し、香港の有力デニム生地メーカーの合弁会社にデニム生地の生産および販売を移管。同社がコントロールするデニム生地の生産能力は1.5倍の年2500万〜2600万mに増加したものの、実質的に自社生産からは撤退した。

とのことである。

さて、この記事は最近のストレッチデニム需要の高まりについてこんな事例を挙げている。

東レインターナショナルが躍進している理由は、大きなトレンドの変化にある。つい数年前までは重くてゴワゴワしていたデニムが正統派と見られていたが、デニムらしいユーズド感のあるルックスはそのままに、快適性や着やすさが求められているのだ。素材もコットンにレーヨンやポリエステル、スパンデックスなど化学繊維をミックスし、柔らかさとストレッチ性が不可欠になっている。

とのことであり、今後は東レインター以外の合繊メーカーにも商機があるかもしれないとして文章を結んでいる。

この指摘は正しい。

ただ、今でも正統派デニムは重くて凹凸感のあるビンテージタイプのデニム生地だと考えられている。
少なくともデニム・ジーンズ村の大多数の住人の間では。

しかし、2008年にスキニージーンズが流行したときから、消費者はストレッチデニムを求め続けており、その潮流に対してデニム・ジーンズ村の多くの住人は「邪道だ」と言い続けたが、結局のところ消費者需要を覆せなかったというだけのことである。

もちろん、旧来の凹凸感のあるビンテージタイプのデニム生地は今後も一定数の需要はあり続けるし、その製造技法も維持され続ける必要はあると個人的には考えている。

しかし、一度、ストレッチ素材のラクさに慣れてしまうと、それが標準となってしまう。
また夏冬の気温に対応した吸水速乾のライトオンスデニムや、防風・発熱デニムなどは今後も季節の必需品として一定の売れ行きを維持し続けるだろう。
また、肉厚軽量デニムの需要も増えるかもしれないし、昨今では「色落ちしにくい」デニム生地の需要も高まっている。

こうした機能がなくとも、単純に「デニムに見えないデニム生地」の需要すら高まっている。

先日、クロキで多くの欧米ブランドに好評だったという生地を見せていただいた。
ストレッチ混であることは言うまでもないが、一見するとデニムには見えず、濃紺のカツラギのように見える。
平均的なデニム生地は、インディゴ染めの経糸3本に白い緯糸1本の割合で織られている。
表地は経糸と経糸の間からところどころに緯糸の白が見えている。
これによってデニム生地を、のっぺりとした単なる紺色の生地に見えさせないキモの部分である。

欧米ブランドに好評だったデニム生地はこのところどころに見える白い部分を極力見えないようにしたため、カツラギ素材のように見えるというわけだ。

これが現在の欧米ブランドが考える最先端トレンドということになっており、デニムに見えないデニム、ドレスアイテムと組み合わせても溶け込むデニムが注目されているといえる。

トレンドなんて常に揺り戻しのあるものなので、今のトレンドがいつまでも続くわけではないし、何年か後にはビンテージタイプのデニム生地が最先端トレンドに躍り出ていることも十分に考えられるが、それでも機能性デニム生地の需要はなくなることはなく、残り続けるだろう。

と、なると、次なるトレンドはビンテージ感と機能性の融合ではないだろうか。

例えば、スーパーストレッチ性のあるセルビッジデニムとか、色落ちしにくいセルビッジデニムだとか、そういう素材が求められるのではないかと考えている。

従来からの技法は伝承する必要はあるが、同時に固定概念は捨て去らないとファッションの潮流からは取り残される可能性が高い。そうなると日本製デニム生地は伝統工芸品と同じような位置づけになってしまうのではないか。

「フリーズショップ」と「ザ・ファースト」の廃止と運営会社の解散

 11月14日、TSIホールディングスから、来年2月末日での「ザ・ファースト」ブランドの廃止とそれを展開する子会社フィット(本社・大阪市)の解散が発表されて驚いた。
少し前から解散の噂は耳にしていたが、ついにそれが実際に公にされた。

TSI側からするとフィットの解散とザ・ファーストの廃止は不採算ブランドの廃止の一環であり、これ以外にも4つのブランドが廃止されるし、フリーズインターナショナルも解散となって「フリーズショップ」も廃止となるし、「レベッカミンコフ」ブランドも東京スタイルからサンエー・インターへ移管することになる。

流通ニュースから引用する。

TSI/子会社再編、不採算ブランド廃止で10億円の利益改善
http://ryutsuu.biz/strategy/g111425.html

TSIホールディングスは11月14日、グループ再編を実施し、不採算ブランドを廃止すると発表した。

事業運営の最適化を図るため、FREE’S INTERNATIONAL(FRI)が運営するフリーズマート事業を、主にファッションビルやショッピングセンターをマーケットとした製造小売事業を営むサンエー・ビーディー(BD)へ吸収分割により移管する。

フリーズマート事業は2009年9月からファッションビルやショッピングセンターを主販路とするセレクトショップ事業で、現在31店を展開する。

東京スタイル(TS)が運営するレベッカミンコフ事業は、海外ライセンスブランドを多数扱うサンエー・インターナショナル(SI)へ同じく吸収分割により移管する。

レベッカミンコフ事業は、2012年3月から百貨店やファッションビルを主販路として運営する米国ブランドのライセンス事業で、現在16店を展開する。

FRIで運営するフリーズショップ事業、フィット(FIT)の全事業、TSが運営するナネット レポー、ココフク、ツールフェイス、アリスミューは、収益低迷が続くなか抜本的な採算改善が困難であると判断し、今年度末をもって、各ブランドを廃止する。

これに伴い、業績が回復基調にあるTSを除く子会社2社(FRIとFIT)は解散する。ブランド廃止により、来期は10億円の利益改善を見込む。

とのことである。

整理すると、フリーズインターナショナルが展開する「フリーズショップ」は廃止となり、もう一つの「フリーズマート」はサンエー・ビーディーに移管され事業自体は継続する。

また、東京スタイルが運営していた「ナネットレポー」「ココフク」「ツールフェイス」「アリスミュー」の4ブランドは廃止。同じく東京スタイルが展開していた米国ライセンスブランド「レベッカミンコフ」はサンエー・インターへ移管される。

そして、3年前に東京スタイルの子会社になった「ザ・ファースト」を展開するフィットはブランド廃止の上に会社そのものを解散する。

ということになる。

数年前から中小ブランドのM&Aに積極的に乗り出していたが、フィットもその一環として2011年3月に東京スタイルに買収された。

買収される前年のフィットの2010年1月期決算は、

売上高21億1300万円
営業利益3900万円
経常利益3000万円
当期利益2300万円

だった。

この当時は33店舗あり、現在はアウトレットとオンラインストアを除くと23店舗なので、売上高は良くても横ばい、悪ければ減収となっていると推測できる。

さて、よくアパレル業界では「20億~50億円くらいの売上高の企業経営がもっとも苦しい」と言われることがある。
100億を越えると資金的に安定するが、20億~50億くらいの規模だと小規模ではないが、大規模でもない。
経営陣からすると非常に資金繰りに苦労する規模なのだそうだ。

それならいっそ、大企業の傘下に収まった方がメリットが大きいと考える経営陣は多い。
その通りで、自力で100億円を突破できないのであれば、どこかの大企業の傘下となった方がメリットは多いだろう。

しかし、大企業の傘下になることにもデメリットがある。
親会社の意向でブランドを廃止させられることもあるし、子会社化した企業そのものが解散させられることもある。
今回のフィットの解散もその一例といえるのではないか。

フィットは買収後も大阪に本社を置き続けた。

大阪に本社を置き続ける著名アパレルは年々減っている。
本社そのものを東京に移転する企業は毎年後を絶たないし、登記上の本社は大阪のままだが機能はすべて東京へ移転するという企業も数多い。

そんな中でまた1つ大阪本社の企業が消えるのは残念である。

また、フィットと取引していた在阪ブランドや在阪OEM/ODMメーカーが受けた衝撃ははかり知れないだろう。

大阪のアパレルビジネスはますます衰退しそうだと感じられる。

クイックレスポンスシステムは時代に合わなくなってきた?

 繊研プラスによると「マウジー」が復調しているそうだ。

バロック「マウジー」復調
http://www.senken.co.jp/news/baroque-moussy/

その理由の一つとして

QRやODM(相手先ブランドによる設計・生産)による商品調達を大幅に減らし、ブランドのアイデンティティーであるデニムを素材から開発することで、ブランドの顔を明確にした。

とのことで、90年代後半から2000年代前半にもてはやされたQR(クイックレスポンス)という商品供給システムは完全に時流に合わないシステムとなりつつあるのではないだろうか。

そういえば、昨日はワールドの2015年3月期中間連結決算発表だったが、赤字幅を拡大している。

http://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/201411/0007500962.shtml

アパレル大手のワールド(神戸市中央区、非上場)が13日発表した2014年9月中間連結決算は、純損失が前年同期の23億6600万円から32億3600万円に拡大した。消費税増税やバーゲン時期の分散化などで売上高が減少したことが影響した。中間決算での最終赤字は3年連続。

 売上高は前年同期比3・1%減の1437億900万円。増税前の駆け込み需要による反動減に加え、台風による天候不順などで苦戦した。増税の影響は「アンタイトル」など高価格帯ブランドで大きかったという。

 営業損益は2億500万円の黒字から22億2700万円の赤字に転落し、中間決算で2年ぶりの営業赤字となった。経常損失も11億4500万円から29億9800万円に拡大した。

ワールドといえば、90年代後半に業界に先駆けてQRシステムを確立しており、それで好調を維持してきた。
2000年代半ばまでは。

今回の各社報道によると、反省点として「商品企画」が挙がっているが、10数年間熱心に導入し継続してきたQRが却って商品企画の能力を下げたのではないかと感じられる。

売れた物をすぐに供給するというQRシステムは販売側にとっては機会ロスが減るので夢のシステムだといえる。また在庫を抱えるリスクも極端に軽減される。
何しろ、ほとんど在庫を抱えず売れた物を売れただけすぐに供給されるわけだから。

POSレジデータを読み解けば先週に何が売れたのかがすぐにわかる。
そして、売れた商品を発注すればすぐに補充される。

ざっとこんな仕組みである。
理論上は夢のシステムといえる。

しかし、大きな欠点がある。
POSレジデータを基にするため、売れたという実績のある商品ばかりが追加補充されることになる。
売れた商品でランキングトップの枚数を誇るアイテムは大概が「ド」が付くほどベーシックなアイテムである。

例えば黒無地のVネックTシャツとか、白無地のクルーネックTシャツとかだ。

POSレジデータを素直に読めば読むほど、追加補充される商品は、「ド」ベーシックな商品ばかりとなり、何の変哲もないベーシックアイテム店のようになってしまう。
そんな店舗は無印良品だけで十分であろう。
実際、筆者の見る限りにおいてワールドの各ブランドの店頭も何度かそういう「ド」ベーシック店となっていたように映った時期がある。

また売れた商品がドンドン補充されるので店頭の新鮮さはなくなるし、個々のアイテムに対しても「今買わなければなくなる」という危機感を持たれなくなる。
どうせ、少し待てばまた補充されるのだ。バーゲンまで待ったって残っているだろう。

次に商品企画の独自性が限りなくなくなることである。

理想論から言えば、自社の企画スタッフが考え抜いて商品企画を定め、それをQRすることが理想である。
しかし、QRに頼り切ったブランドの商品企画は往々にして他社の売れ筋のパクリに陥ることが多い。
さらにそこでOEM/ODMに頼ると、OEM/ODM企業は複数のブランドの企画を請け負っており、勢い請負先の商品企画すべてがある程度似たり寄ったりになってしまう。
企画の大元がパクリなうえに、OEM/ODMでさらに似たり寄ったりの仕上がりになるため、ブランド間の同質化は避けられなくなる。
これで同質化しない方がおかしいといえる。

QRとODMの多用でマウジーが一時期低迷したことは無理からぬといえる。

ワールドの苦戦の要因は様々あろうが、今回反省点として挙がった「商品企画の悪さ」については強固に確立されたQR体制もその一因だったといえるのではないかと筆者個人は見ている。

蛇足ながら、ワールドの決算報道において「のれん代の償却」が義務付けられたことから、これを除いた場合を試算している記事があるが、それはあまり意味がないといえるだろう。
なぜなら、「のれん代の償却」はワールドのみに課せられたハンディではない。全社共通である。
償却しつつ黒字決算の企業も存在するわけだから、それは特殊要因でもなんでもない。

ブランドも時代によって変遷する。
システムも当然時代の変化に沿って変遷する。
QRを過剰に重視し、その上でOEM/ODMを多用するというシステムはそろそろ時代に適合しなくなってきたのではないかと思えてならない。

ツラツラとそんなことを考えてみた。

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