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猛暑到来も在庫処理の意味合いが強いクールビズ商戦

 梅雨明けしたのが7月16日ごろ。
少なくともこの時期まで今夏のクールビズ関連商品は不振だった。
7月20日付の繊研新聞には紳士シャツメーカー各社の動向をまとめた記事が掲載されているが、ネット上でクールビズ不振を伝えるニュースはあまり報道されていない。
なぜだろうか?まさかネットメディアが手心を加えたとは思えないのだが。

記事から引用すると

フレックスジャパンは、半袖を早期投入したこともあり、初回投入は順調だった。出荷のピークもゴールデンウイーっくから4月中旬に前倒しした。3~6月の出荷量は前年を超えたが、店頭の動きが鈍く、6月はリピートもなかった。半袖はセールでの在庫処分次第で、返品の増加も予想される。

とのことである。

また山喜も

ビジネス向け平場は前半戦は低調だった。6月までは半袖シャツの不振が目立つ。

とあり、東京シャツも

「強気で前年よりも2割増産した分、在庫コントロールをシビアにして9月まで全店(193店)での消化を徹底する」という。

これ以外でもクールビズ不振の声は聞こえてくる。
某メンズトータルブランドもクールビズ商戦の不振に頭を抱えているし、某低価格メーカーも保冷剤を首に巻きつける雑貨がさっぱり売れないという。
また某素材メーカーもクールビズ用に企画したチノ素材が昨年ほど動いていないと嘆く。

今回のクールビズが7月20日ごろまで不振だった要因として

1、昨年は特需だった。今年が平年並み
2、クールビズが提唱されて7年が過ぎ、ある程度のタンス在庫がある
3、7月の3連休まで比較的涼しかった
4、一部地域を除いて昨年夏ほどの節電が叫ばれなくなった
5、クールビズ商戦に多数のメーカーが新規参入して、購入先がバラけた

くらいが考えられるのではないか。

7月の3連休が過ぎてから猛暑が続いている。
今からクールビズ商品が動き出すことが予想される。しかし、バーゲン時期に突入しており、売れたとしても3~5割程度値引きされての販売であるため、利益が少なく在庫処理の域を出ない。

クールビズが最初に提案されたのは2005年だったと記憶している。
当時のブームもすごくて、半袖シャツの在庫がなくなってしまい、各メーカーは在庫の長袖シャツの袖をカットして販売したという逸話が残っている。
昨年はその当時と同じか、それ以上の盛り上がりを見せたが、やはり特需だったと見るべきだろう。

来年以降は、季節商材として一定量は必要とされるが、よほどの事態が無い限り2005年や2011年のような特需が生まれることはないと考えられる。
さんざんクールビズを特集で取り上げたメンズファッション雑誌各誌も今年は沈黙を守ったままだ。おそらく今後も沈黙を守り続けるに違いない。

もうブームはこないものと考えて、地に足のついた着実な販売計画で臨むべきである。

「高島屋が購入窓口となったユニフォーム」と呼ぶのが正しい

 先日、今回のロンドンオリンピックの日本選手団の公式ユニフォームが高島屋だという発表を基に記事を書いたらものすごい反響だったのでいささか慌てふためく今日この頃。(((( ;゚д゚)))

オリンピックを誤変換すると「織りんピック」と出てきて、「これって生地メーカーとか産地組合が使いそうなコピーやなあ(もう使用済かもしれないけれど)」と思ったりもした。

単純に考えて百貨店である高島屋が洋服のデザインをする機能は持っておらず、「なんで高島屋に?」と疑問しか残らないのだが、先日、シナジープランニングの坂口昌章さんの発言をお読みしてなるほどと膝を打った。

「ユニフォームを百貨店に任せたのではなくて、百貨店を通して購入​するという商慣習なんです」

とのことである。

それとほぼ同時に、ブログの読者からお便りをいただいた。

件のユニフォームは、高島屋がデザインコンペを開いて、その結果決まったデザインであるとのこと。
坂口さんがおっしゃるように高島屋は単なるJOCの窓口だったということになる。
自前でデザイン機能を持たない百貨店は知り合いの複数の業者に声をかけてデザインコンペを開き、デザインを決定したということになる。ノ( ̄0 ̄;)\オー!!ノー!!!!

しかし、これなら「ユニフォームは高島屋」ではなく「ユニフォーム購入窓口は高島屋」ではないのか?
もしくは、「高島屋を通したデザインコンペで決定したユニフォーム」ではないのだろうか?

決してユニフォームを製造した方々の努力を否定しているのではない。
発表のやり方がおかしいのではないかということである。

さらに言うなら、先日も書いたように、欧米諸国では自国のデザイナーもしくはアパレルブランドにユニフォームデザインを発注している。
出来栄えがどうこうという部分もさることながら、自国のファッション産業の知名度を高めるための一つの手法である。
そのデザイナーやアパレルブランドを選定するまでがいろいろと苦労があるのだとは思うが、百貨店が購入窓口という締まらない結果を全世界に報道するよりは、よほど骨の折り甲斐があるのではないだろうか。

国内のキチっとしたデザイナーズブランドやアパレルブランドを起用すべきだという思いは今も変わらない。

JOCのおえらいさんが、デザイナーズブランドやアパレルを知らないのだったら、知名度の高いユニクロでも無印良品でも構わないのではないか。
世界に与える印象は「百貨店を通じた購入」よりもよほどマシである。

失われ続ける糸・生地の知識

 素材のことは奥が深いことを思い知らされた。
先日、糸メーカーの65歳になるベテランの方にお話を伺う機会があった。
この方は現在嘱託なのだが、糸のこと、生地のことをよくご存知である。

不勉強な筆者は知らなかったが、綿と麻とウールでは糸の太さを表す番手が同じでも、実際の糸の太さはそれぞれ違う。それを換算する公式がある。

例えば綿糸の1番手は
ウールでは1×1.693365となる。
麻では1×2.80001

またウールの1番手は
綿では1×0.5905413
麻では1×1.65352

となる。

麻の1番手は
綿では1×0.357142
ウールでは1×0.604772

となる。

だから綿の20番手糸をウール番手に変更すると
20×1.693365=33.9番手 となる。

こんな初歩的なことすら筆者は知らなかったのだが、ベテランはここから派生して生地を構成するための数式をビッシリと暗記して普段の業務に活用しておられる。
しかし、こうした知識は、件の糸メーカーのスタッフにしろ、その糸を使う織布メーカーにしろどんどんと失われているという。

ベテランの言葉で印象的だったのが
「日本はこういうきっちりとした公式を積み重ねて糸、生地を開発してきた。それらの知識が無くなってしまえば人件費の安いアジア諸国にやられてしまう。日本人は、もう一度知識を身に着けなおす必要がある」
というものだ。

同席していたデニム生地メーカーの部長によると、織布メーカーといえども最近の現場担当者は感覚で商談してきて、製造設定は機械任せだという。
ブランド側は当然、織布メーカーよりも糸メーカーよりも知識が無いから無責任な発注を行う。
例えば「経7・2番手×緯6・8番手で織ったデニムを作ってよ」というふうにである。
この場合は、デニムなので経緯ともに綿糸である。

織布メーカーの現場担当者は馬鹿正直に7・2番手と6・8番手の糸を用意しようとするが、これなどは経緯ともに7番手を使ってしまえば良い。0・2番手の違いなど本来は誰に分からない。
そもそもブランド側も0・2番手の違いを分かって発注しているとは到底思えない。

今、繊維産業に飛び込む若者は、親の事業継承を除くと、相当に衣料品や繊維・生地が好きなはずである。
「好きこそ物の上手」というくらいなので、当然、ファッションに関する知識や感度、関心も高いだろう。
興味の無い人がファッションに関する知識や感度を磨くことは大変だが、逆はそれほど難しいことではない。
感度の高い人が数式や公式を覚えることは比較的容易だろう。要は本人のやる気次第ではないか。

ファッションに感度の高い人が、数式や公式を覚えれば鬼に金棒なのだが・・・・・・。

「コト」への取り組みで存在感を増すベティスミス

 ジーンズ専業メーカーの中では、ベティスミスの独自路線が光り始めている。

ジーンズ専業メーカー各社は、減産に次ぐ減産を繰り返しており、ライトオンなどの大型チェーン店の壁面をがっちりと抑えているエドウイン、ブランドの高い知名度があるリーバイスの2つは何とかかつての隆盛の一端を偲ぶことができるが、その他は新しい方向性を模索したままである。

ジョンブルのようにトータルブランド化したり、ドミンゴのように従来ラインをパンツ専門ブランドにし、新たにトータルラインを立ち上げるという取り組みをする企業もある。

ジーンズ専業メーカーの中では比較的地味な存在だったベティスミスだが、雑貨への取り組みがヒットを生みつつある。

予想の20倍の売れ行き 山陽新幹線限定のデニムバッグ大人気
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120411/rls12041121000002-n1.htm

JR西日本が昨年10月から新大阪-博多駅の山陽新幹線車内限定で販売を始めたデニムバッグが人気を集め、好調な売れ行きが止まらない。国産ジーンズの発祥地・岡山県倉敷市児島産の限定品で、第1弾商品のウエストバッグは約1カ月で1500個が完売した。

 第2弾のトートバッグも次々と売れ、JR西は「予想をはるかに上回る売れ行き」と驚く。第3弾商品も開発中で、児島の魅力発信をさらに加速させる。

 地域の特産品に触れ、ジーンズの聖地に来てもらおうと、児島地区のジーンズメーカー「ベティスミス」と協力し、昨年10月20日から車内限定商品としてウエストバッグ(2500円)を発売した。

 すると、「半年間で500個」の予想を大幅に上回り、約1カ月で1500個が完売。生産が追いつかないため販売を打ち切った。JR西の担当者は「予想の20倍といえるレベルだった」という。

とのことである。

三陽新幹線の車内販売限定のデニムバッグが、予想の20倍も売れており、現在は第4弾モデルを開発中だという。
またこの新幹線限定バッグに先駆けて、高速道路の各サービスエリアにもデニムバッグやデニムの小物入れ、Tシャツ類などを販売しており、雑貨類を強化したことによって、ベティスミスの知名度は徐々に高まりつつある。

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(サービスエリアで販売されているベティスミスの商品群)

先日、児島を訪れた際に、久しぶりにベティスミスの大島康弘社長にお会いすることができた。
電話やメールでは断続的にやりとりさせていただいているものの、実際に拝顔したのは3年ぶりくらいになる。

今回お会いできたので、新幹線デニムバッグやサービスエリアでの雑貨類販売について尋ねてみた。

「新幹線限定バッグやサービスエリアでの販売は社長のアイデアですか?」

大島社長は素朴な方なので「違うよ。いろんな先からいただいた話の中に含まれていたもの。我々が思いついたアイデアではない」と誠実に答えていただいた。
しかし、新しい話を持ち込まれてもなかなか腰を上げないブランドが多い中で、疑念を感じながらも挑戦する姿勢は大いに評価できるのではないだろうか。

大島社長はこうも付け加えた。「新幹線バッグがそんなに売れるなら、いっそのこと取り引き先全部に卸売りすればええじゃないかと思ったが、やっぱり結果的に限定品にして正解だった」と。
傍から見ていると岡目八目というやつで、限定品は「限定」だからこそ効果があり、どこででも購入できる商品ならわざわざ新幹線内で買う必要もないことくらいすぐに分かる。

けれども当事者となるとやはりその辺りは大いに迷うものらしい。

ジーンズ専業メーカーは打開策を衣料品に求めることが多い。
大雑把に言うと「さらなる高価格商品の開発」や「トータルアイテム化」や「新ラインの開発」などである。
しかし、ベティスミスのように雑貨類と売り場の変更に活路を見出すやり方が効果的ではないかとも思う。

ベティスミスの本社横には自社が建設した「ジーンズ博物館」がある。
オープンしてからもう10年になる。
今では年間に3万人~4万人の来館者がある。
単に過去のジーンズを展示しているだけではなく、リベット打ちや中古加工などを無料で体験できる。
本社には小規模な縫製工場もあり見学もできるし、在庫のアウトレット販売コーナーもある。

正直、デザインや内装が垢ぬけているとは思えないが、総合的な取り組みで着実に訪問者を増やしている。

この博物館は大島邦雄会長の着想で建設されたものだが、オープン当初筆者は「何という酔狂な取り組みだろうか」と感じていた。
それでも10年間続けてきた効果が表れ始めている。継続は力なりを思い知らされる。

「ジーンズ」という「モノ」だけを販売したり卸売りするのではなく、「博物館の展示」や「ジーンズ製造無料体験」「新幹線限定商品」などの「コト」を組み合わせた手法は他の衣料品業界も大いに参考にできるのではないだろうか。

低調な7月度売上速報

 7月の商況であまり良い話を聞かない。

恒例のライトオンとジーンズメイトの7月度売上速報が発表された。

ライトオンは

既存店売上高が前年比7・2%減
既存店客数が同9.4%減
既存店客単価が同2・3%増

だった。

ジーンズメイトは

既存店売上高が前年比9・5%減
既存店客数が同14・2%減
既存店客単価が同5・5%増

だった。

6月度まではそれなりに堅調だったライトオンも7月度は厳しかったようだ。
ジーンズメイトの客数減は継続中である。

今夏のセール分散化はほとんどの店舗に良い影響をもたらさなかった。
都合1ヶ月間にも渡って散発的に各商業施設がセールに突入してしまい、まとめ買いやついで買いが無くなっていると推測される。
消費者は目当てのブランドだけしか買っていない。

ある小規模アパレルによると「消費者は店に足を運ぶことすらしていない場合もある」という。
こんな状況にありながら、来年冬のセールもルミネと三越伊勢丹は遅らせると言っているのだから、正月の初売りも盛り上がりに欠ける結果になるだろう。

産地企業への助成金も考えものである

 先日、驚かされたことがある。
某繊維産地の人と話していたのだが、イベントに参加するための費用5万円を商工会議所に補助金申請したというのだ。

大がかりなイベントの一つに合同展示会への出展というものがある。
例えばIFFやルームス、東京ギフトショー、フランスのプルミエールヴィジョンなどなど。
この場合の出展料というものは、国内の展示会だと1コマで30万~40万円くらいする。
フランスのプルミエールヴィジョンはもっと高い。

そこに備品やら装飾品やら専用什器やらを用意すると、国内展示会への1コマの出展でも数十万~100万円くらいにはなる。
その際の費用の補助金を、産地企業が行政に申請することはよくある話だ。
認可されれば全額とはいかなくても半額くらいは支給してもらえる。

経営状態の良くない産地企業も多いので、このくらいの金額なら補助金申請することは理解できる。
自分が経営者でも補助金申請はするだろう。

しかし、某産地の5万円には驚かされた。
売上高が億の単位がある企業活動をしていて5万円の費用が捻出できないはずがない。
自社内で展示会や受注会を開催しても、備品やらなんやらで5万円くらいは軽くかかってしまう。

それと、この産地に5万円の補助金を支給した商工会議所の姿勢もどうかと思う。

それに言ってしまえば身も蓋もないが、5万円くらいは産地のオッサンが一晩で酒を呑む程度の金額である。
宴会には5万円でも10万円でも支払うことには痛痒を感じないが、イベント参加の5万円は支出できないとは企業経営者として行動規範が逆ではないだろうか。

一方、別の産地企業は、自社の生地を使っての製品化を検討し始めた。
これに助成金を申請した。
デザイナーと契約しなくてはならないので、年間に100万円程度は最低でも必要になる。
3年間の認定が受けられたので、デザイナーや企画マンへの支払いを助成金で済ませることができるようになった。
出来上がった商品の在庫は自社で抱えるつもりである。

デザイナーへの仕事の発注のやり方に不安はあるが、本来の補助金・助成金の使い方とはこういうモノだろう。
この産地企業を持ち上げるわけではないが、先ほどの産地企業との意識は雲泥の差である。

産地企業の意識改革がスローガンに掲げられることが多いが、この程度の意識のままでは、到底自立化も体質改善も無理であることを産地企業も行政側も思い知るべきだろう。

欠け続ける完全分業の歯車

 先日、久しぶりに岡山県の児島に出かけた。

洗い加工場社長とロープ染色会社社長とお話をする機会をいただいたのだが、6月末の兵庫県西脇のダイイチの倒産が予想以上のダメージだという。

信用交換所によると

地区老舗の染色整理加工業者で、デニム加工を中心に、チーズ・ビーム染色を手掛け、織物メーカー・紡績筋に受注地盤を築き、昭和56/8期には年商46億6500万円を計上していた。

とのことである。
いわゆるデニムを含む綿厚地織物の染色整理加工業者だ。

彼らによると、大量のデニム生地の整理加工ができる業者は、このダイイチしかなかったという。
ダイイチが無くなると、規模でやや劣る業者が児島に1社あるだけで、あとは小ロット対応の企業が福山や井原にいくつかある程度になる。

洗い加工場社長もロープ染色会社社長も「この先、デニム生地が思うように作れなくなる事態もあるかもしれない」と危機感を隠さない。

岡山・広島のデニムは世界的にも知名度が高く、衰退する国内生地産地の中では比較的「有望」と見られている分野である。その分野でさえ、こういう有様だ。
一般紙がもてはやしているように「ジャパンデニムがすごい」と浮かれた状況ではない。
両社長とも開口一番が「今、デニムは悪いじゃろ~(岡山弁・福山弁)」だった。
今秋からデニムにやや復活の兆しがあるとはいえ、明るいムードは微塵もなかった。

今回の件からもわかるように、日本国内の生地製造は各工程ごとに完全分業で行われている。
綿花を糸にする紡績、糸を撚る撚糸、染色、織布、整理加工という具合に。
その各工程を担当する企業数が年々減っている。今回のように整理加工業者が1社なくなるだけで、「もう思うようにデニム生地が製造できなくなるかもしれない」事態となる。

これはデニム以外の他の生地産地も同じである。
いや、デニム以外の生地の方がもっと深刻かもしれない。

最近「モノ作りニッポン」というムードが、自然発生的にか意図的にか醸成されつつある。
しかし、製造工程各社が1社欠け、また1社欠け、という状況は止まる様子がない。
このままでは「モノ作りニッポン」が絵に描いた餅のままで終わってしまうように感じられてならないのだが。

オリンピック公式ユニフォームのデザインを高島屋に任せるナンセンス

 何だか全然盛り上がっていないように感じるロンドンオリンピックだが、日本代表の公式ユニフォームのデザインが高島屋だと聞いて、笑ってしまった。

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(高島屋がデザインしたといわれる日本代表の公式ユニフォーム)

先年の男子サッカーワールドカップの際の移動用オフィシャルスーツでもそうだったが、日本は何故か自国のデザイナーズブランドや自国のアパレルブランドを起用したがらない。不思議である。
あの時の日本チームのスーツは「ダンヒル」だったのではないだろうか。

ワールドカップのドイツチームの監督は自国のブランド「ストラネス」を着用していた。
以前はコロネット商会が輸入しており、よく展示会で見かけたブランドだが近年は取り扱いを止めていた。現在は三喜商事に移っているはずだが、トレンドに浮上することはあまりないブランドである。
ドイツチームの監督が着用しているのを目にするまで、申し訳ないがすっかり存在を忘れていた。

今回のオリンピックの公式ユニフォームだが、アメリカはラルフ・ローレンが、イタリアはアルマーニが、イギリスはステラ・マッカートニーが手掛けることが発表されている。
日本は高島屋である。うーん。(-_-メ)

そもそもなぜ高島屋なのか理解に苦しむ。
百貨店に衣料品デザインの部門はない。独自企画の商品はほとんどないし、もしあったとしてもそれはOEM・ODM企業に丸投げか、他社ブランドのネーム替え(商品そのものは同じで、襟ネームとタグだけ付け替える)で対応している。
で、そんな企業になぜ公式ユニフォームのデザインを発注したのだろうか。

使い古された例かもしれないが、日本にはコム・デ・ギャルソンもあれば、ヨウジ・ヤマモトもある。
もっと若手のデザイナーもいる。
ワールドのタケオ・キクチや、レナウンのダーバンなどのスーツブランドもある。
だのにどうして高島屋なのだろうか。

今、日本はクールジャパンの発信に力を入れているといわれている。
アニメや漫画、コスプレなどがその対象だが、本来はファッションも入っているはずである。
で、その大事な(名目上だけでも)コンテンツのひとつを、重要な国際大会で使用しないのはなぜだろうか?
今回のオリンピックだけではなく、先の男子サッカーワールドカップでも同じである。
クールジャパンは「経産省が言ってみただけ」ということだろうか。

どうやら我が国のお偉いさん方は、日本のファッションなど世界に発信するつもりは毛頭ないらしい。
いっそのこと、経産省もクールジャパンの中から「ファッション」を外してみてはどうだろうか?

物作り機運が高まっているが・・・・・

 2年くらい前からだろうか、繊維業界で「国内の物作りを見直そう」という動きがある。
それに向けていくつかの有志団体というかサークルのようなものが立ちあがっている。どの団体も傍から見ているとまだまだ組織作りの途中にあるように見えるため、具体的な名前を挙げることはあえて避けたい。

これらの団体に共通するのは、産地企業と一部の製造寄りの国産アパレルを中心にしているというところである。

平たく言うなら「産地と国産アパレルの首脳が集まって交流と親睦を深めて、より良い商品開発を行おう」と、そういう主旨である。

これらの主旨には大いに賛同するものの、疑念もいくつかある。

しかし、どの団体も主要企業は共通しており、例えばAという産地企業が3つも4つもの団体に参加しているという形となっている。
これなら、団体が林立する必要はなく、全団体を集めて一本化させる方が分かりやすいのではないかと感じる。
極端な言い方をするなら、参加企業はどの団体を見ても同じで、違うのは主催者や事務局だけということになる。

さらに個人的にもっとも気になるのが、どの団体にも流通の参加企業がいない。もしくは、いたとしてもものすごく少ないというところだ。

某団体は活動開始から2年くらいになり、参加企業数は増えているが、どれもが産地企業やアパレル、デザイナー、OEM事務所の類である。
流通企業は参加していない。

彼らは「物作り」の相談ばかりしているが、もしそのプロジェクトが進んで商品が出来上がったら、一体どこで販売するつもりなのだろうか?
勉強会での講師として大手流通企業の経営陣を招聘することはある。しかし、それ止まりである。
嫌な言い方をするなら、講師として招聘するくらいならある程度のツテがあれば難しいことではない。
招聘される側も時間さえ合えばOKしてくれる。
でもそれでは、主催者は単なるセミナー屋さんと変わりない。

百貨店でもセレクトショップでもSPAでも通販でも構わないから、せめて数社くらいは参加させる必要があるのではないだろうか。そうでなくては、プロジェクトを通じて出来上がったものを売る場所がない。
実際に物が出来上がったら、彼らはどうするつもりなのだろう?

技術開発は重要である。
これがなければ物作りも技術革新も立ち行かない。
しかし、あまりに「物作り」にこだわりすぎるのもどうだろうか。
繊維業界に置き換えてみるなら、合繊メーカーや紡績は常に技術開発している。
日本の機能性繊維は世界でトップクラスだろう。

吸水速乾、発熱、保温、湿潤、軽量、防臭などなど様々な機能性繊維がある。
ここでの技術開発は不可欠であるが、その糸を使って生地を織り、製品を作る側が同じように「物作り」の相談ばかりしていて良いのかというと、それは疑問を感じざるを得ない。

織り組織や編み組織、縫製、加工のテクニックだけを追求していても良いのか?ということである。
色柄やデザイン、シルエットなどの工夫も必要だろうし、プロモーション、告知も必要となる。

こんなブログがあるので参考資料として考えてもらいたい。

ものづくり日本って・・・いつから言っている?
http://ameblo.jp/ex-ma11091520sukotto/entry-11305261250.html

『ものづくり日本』って、ずいぶん昔から言っていますよね。
それが日本経済、復活の鍵だって。

でも、全然復活にならない。

あまりにも「モノ」にこだわりすぎると、逆効果になる。
どんなにいい製品でも、乱暴な言い方をしたら所詮「製品」です。
劇的な個性的な差はない。
だからコモディテイ化が起きやすい。

たとえば薄型TV。

とのことである。

現在の衣料品も大量生産を背景とする工業製品である。
工業製品なのでコモディティ化しやすい。昨年ステテコが売れたと聞けば、今年はユニクロが大量生産販売を行う。そういうことである。(ステテコに関してはユニクロの状況分析と予想は誤っていたと感じるが)

現在の店頭で流通する衣料品は「伝統工芸品」とか「民芸品」ではない。

ところが、繊維業界の物作り団体の活動を眺めていると、売り場のない「伝統工芸品」や「民芸品」を開発しようとしているのではないかと感じられて仕方がない。

今回は期待も込めて、あえて懸念材料を書き連ねたがお許し願いたい。

飽和点に達したユニクロ

 国内のユニクロが不振だとされている。
個人的には不振というよりは伸び悩みではないかと感じているのだが、原因は

1、規模的に飽和点に達している
2、大量生産によるコスト引き下げでベーシック品を安く売るというビジネスモデルの限界

の2点にあるのではないかと考えている。

この2点についてメディアではあまり触れられたことがないと記憶している。
指摘すると何か不都合なことが起きるのだろうか?

それはさておき、先日、この2点と客数減の深刻さについて言及した記事が掲載された。
もう読まれた方も多いかもしれないが、念のためご紹介したい。

国内不振のファーストリテ、1億総ユニクロ化で曲がり角
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE86B02820120712?pageNumber=1&virtualBrandChannel=13848

ロイターの記事である。
以下に引用する。

日本人のほぼ全員がユニクロ製品を着るようになった今、定番服を安く売るビジネスモデルは曲がり角に来ている。同社は銀座に続き、国内で旗艦店を増やす方針だが、客数の減少に歯止めがかからない中での大型店の展開は、経営に致命傷になりかねないとの指摘も出ている。

<日本人の90%超がユニクロユーザー>

「成長市場として海外に軸足を移しており、国内ユニクロの月次に一喜一憂しないで欲しい」。
同社幹部はそう不快感を示すものの、このところ月初に国内ユニクロ既存店売上高の不調が発表されると、翌日の株価が下落するというパターンが繰り返されている。
ファーストリテイリングの営業利益は国内ユニクロ事業が約80%を占めており(2012年8月期計画)、国内の不振を受けて市場がネガティブに反応するのはやむを得ない。

苦戦の最大の要因は客数の減少だ。12年8月期は10カ月が過ぎた時点で、客数が前年同月を上回ったのは2カ月しかない。あるアパレル関係者は「(ユニクロの)特徴はベーシックな服。すでに国民の約90%超が何らかのユニクロ製品を保有しているとも言われており、目立つヒット商品が出ない中で、購入する客が減っているのは当然」と指摘する。

とのことである。

筆者もそうだが、肌着・靴下・雑貨を含めてユニクロ製品を持っていない日本人はほとんどいないのではないか。一説には96%の日本人が何らかのユニクロ商品を所有しているという。
これだけ行き渡れば、需要は落ちて当然である。しかも、ユニクロは2年ほど前からベーシック路線に回帰しており、商品に目新しさがない。

これに対して記事は

マーケティングを専門とするコア・コンセプト研究所の大西宏CEOは「消費は回復しており、今ままでのユニクロのビジネスモデルが合わなくなっている」と語る。「ユニクロのビジネスモデルは消費者が求めるこまかなトレンド変化には対応できない。この病は根深い」と指摘する。

とのことであり、まったく同感である。

以前にも書いたことがあるが、2009年春にユニクロは「UJ」と銘打ってジーンズを大幅強化した。
ジーンズのトレンドが終わって1年半以上が経過していたにも拘わらずである。
当然、UJは失敗し、路線変更を余儀なくされた。
2009年からはジーンズではなく、チノパンがトレンドアイテムに浮上していた。
原料の買い付けから製造を行うのでリードタイムが長いユニクロだが、半年後には修正できるだろうと当時考えていたのだが、2009年秋になってもチノパンの強化は実現しなかった。

通常のアパレルなら半年あれば製品の路線変更は可能である。
ユニクロがチノパンを強化したのは2010年になってからだったと記憶している。
ユニクロの小回りの効かなさが白日のもとに晒された一件ではないだろうか。

ユニクロは今後も大型店化を進めるというが、5層以上の大型ビルを埋めるほどの商品ラインナップはないのではないか。個人的には現在の心斎橋店(地下1階、地上4階)の規模が適度だと感じる。

新しい銀座店は12層だが、どのようにしてフロアを埋めているのか疑問だったが、各フロアの面積がそれほど大きくないと聞き、納得した次第である。

記事では最後に大西氏が

「活路は海外に求め、行き着くところまで来た国内は縮小均衡で、効率化を求めたほうが良い」と、戦略の転換を促す。

と提案しておられるが、適切だと思う。

筆者は企業規模が無限に成長することはありえないと考えている。
当然、ユニクロが無限に成長することもありえないと見ている。

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