欠け続ける完全分業の歯車
2012年7月23日 未分類 0
先日、久しぶりに岡山県の児島に出かけた。
洗い加工場社長とロープ染色会社社長とお話をする機会をいただいたのだが、6月末の兵庫県西脇のダイイチの倒産が予想以上のダメージだという。
信用交換所によると
地区老舗の染色整理加工業者で、デニム加工を中心に、チーズ・ビーム染色を手掛け、織物メーカー・紡績筋に受注地盤を築き、昭和56/8期には年商46億6500万円を計上していた。
とのことである。
いわゆるデニムを含む綿厚地織物の染色整理加工業者だ。
彼らによると、大量のデニム生地の整理加工ができる業者は、このダイイチしかなかったという。
ダイイチが無くなると、規模でやや劣る業者が児島に1社あるだけで、あとは小ロット対応の企業が福山や井原にいくつかある程度になる。
洗い加工場社長もロープ染色会社社長も「この先、デニム生地が思うように作れなくなる事態もあるかもしれない」と危機感を隠さない。
岡山・広島のデニムは世界的にも知名度が高く、衰退する国内生地産地の中では比較的「有望」と見られている分野である。その分野でさえ、こういう有様だ。
一般紙がもてはやしているように「ジャパンデニムがすごい」と浮かれた状況ではない。
両社長とも開口一番が「今、デニムは悪いじゃろ~(岡山弁・福山弁)」だった。
今秋からデニムにやや復活の兆しがあるとはいえ、明るいムードは微塵もなかった。
今回の件からもわかるように、日本国内の生地製造は各工程ごとに完全分業で行われている。
綿花を糸にする紡績、糸を撚る撚糸、染色、織布、整理加工という具合に。
その各工程を担当する企業数が年々減っている。今回のように整理加工業者が1社なくなるだけで、「もう思うようにデニム生地が製造できなくなるかもしれない」事態となる。
これはデニム以外の他の生地産地も同じである。
いや、デニム以外の生地の方がもっと深刻かもしれない。
最近「モノ作りニッポン」というムードが、自然発生的にか意図的にか醸成されつつある。
しかし、製造工程各社が1社欠け、また1社欠け、という状況は止まる様子がない。
このままでは「モノ作りニッポン」が絵に描いた餅のままで終わってしまうように感じられてならないのだが。