「コト」への取り組みで存在感を増すベティスミス
2012年7月26日 未分類 0
ジーンズ専業メーカーの中では、ベティスミスの独自路線が光り始めている。
ジーンズ専業メーカー各社は、減産に次ぐ減産を繰り返しており、ライトオンなどの大型チェーン店の壁面をがっちりと抑えているエドウイン、ブランドの高い知名度があるリーバイスの2つは何とかかつての隆盛の一端を偲ぶことができるが、その他は新しい方向性を模索したままである。
ジョンブルのようにトータルブランド化したり、ドミンゴのように従来ラインをパンツ専門ブランドにし、新たにトータルラインを立ち上げるという取り組みをする企業もある。
ジーンズ専業メーカーの中では比較的地味な存在だったベティスミスだが、雑貨への取り組みがヒットを生みつつある。
予想の20倍の売れ行き 山陽新幹線限定のデニムバッグ大人気
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120411/rls12041121000002-n1.htm
JR西日本が昨年10月から新大阪-博多駅の山陽新幹線車内限定で販売を始めたデニムバッグが人気を集め、好調な売れ行きが止まらない。国産ジーンズの発祥地・岡山県倉敷市児島産の限定品で、第1弾商品のウエストバッグは約1カ月で1500個が完売した。
第2弾のトートバッグも次々と売れ、JR西は「予想をはるかに上回る売れ行き」と驚く。第3弾商品も開発中で、児島の魅力発信をさらに加速させる。
地域の特産品に触れ、ジーンズの聖地に来てもらおうと、児島地区のジーンズメーカー「ベティスミス」と協力し、昨年10月20日から車内限定商品としてウエストバッグ(2500円)を発売した。
すると、「半年間で500個」の予想を大幅に上回り、約1カ月で1500個が完売。生産が追いつかないため販売を打ち切った。JR西の担当者は「予想の20倍といえるレベルだった」という。
とのことである。
三陽新幹線の車内販売限定のデニムバッグが、予想の20倍も売れており、現在は第4弾モデルを開発中だという。
またこの新幹線限定バッグに先駆けて、高速道路の各サービスエリアにもデニムバッグやデニムの小物入れ、Tシャツ類などを販売しており、雑貨類を強化したことによって、ベティスミスの知名度は徐々に高まりつつある。
(サービスエリアで販売されているベティスミスの商品群)
先日、児島を訪れた際に、久しぶりにベティスミスの大島康弘社長にお会いすることができた。
電話やメールでは断続的にやりとりさせていただいているものの、実際に拝顔したのは3年ぶりくらいになる。
今回お会いできたので、新幹線デニムバッグやサービスエリアでの雑貨類販売について尋ねてみた。
「新幹線限定バッグやサービスエリアでの販売は社長のアイデアですか?」
大島社長は素朴な方なので「違うよ。いろんな先からいただいた話の中に含まれていたもの。我々が思いついたアイデアではない」と誠実に答えていただいた。
しかし、新しい話を持ち込まれてもなかなか腰を上げないブランドが多い中で、疑念を感じながらも挑戦する姿勢は大いに評価できるのではないだろうか。
大島社長はこうも付け加えた。「新幹線バッグがそんなに売れるなら、いっそのこと取り引き先全部に卸売りすればええじゃないかと思ったが、やっぱり結果的に限定品にして正解だった」と。
傍から見ていると岡目八目というやつで、限定品は「限定」だからこそ効果があり、どこででも購入できる商品ならわざわざ新幹線内で買う必要もないことくらいすぐに分かる。
けれども当事者となるとやはりその辺りは大いに迷うものらしい。
ジーンズ専業メーカーは打開策を衣料品に求めることが多い。
大雑把に言うと「さらなる高価格商品の開発」や「トータルアイテム化」や「新ラインの開発」などである。
しかし、ベティスミスのように雑貨類と売り場の変更に活路を見出すやり方が効果的ではないかとも思う。
ベティスミスの本社横には自社が建設した「ジーンズ博物館」がある。
オープンしてからもう10年になる。
今では年間に3万人~4万人の来館者がある。
単に過去のジーンズを展示しているだけではなく、リベット打ちや中古加工などを無料で体験できる。
本社には小規模な縫製工場もあり見学もできるし、在庫のアウトレット販売コーナーもある。
正直、デザインや内装が垢ぬけているとは思えないが、総合的な取り組みで着実に訪問者を増やしている。
この博物館は大島邦雄会長の着想で建設されたものだが、オープン当初筆者は「何という酔狂な取り組みだろうか」と感じていた。
それでも10年間続けてきた効果が表れ始めている。継続は力なりを思い知らされる。
「ジーンズ」という「モノ」だけを販売したり卸売りするのではなく、「博物館の展示」や「ジーンズ製造無料体験」「新幹線限定商品」などの「コト」を組み合わせた手法は他の衣料品業界も大いに参考にできるのではないだろうか。