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南充浩 オフィシャルブログ

失われ続ける糸・生地の知識

2012年7月27日 未分類 0

 素材のことは奥が深いことを思い知らされた。
先日、糸メーカーの65歳になるベテランの方にお話を伺う機会があった。
この方は現在嘱託なのだが、糸のこと、生地のことをよくご存知である。

不勉強な筆者は知らなかったが、綿と麻とウールでは糸の太さを表す番手が同じでも、実際の糸の太さはそれぞれ違う。それを換算する公式がある。

例えば綿糸の1番手は
ウールでは1×1.693365となる。
麻では1×2.80001

またウールの1番手は
綿では1×0.5905413
麻では1×1.65352

となる。

麻の1番手は
綿では1×0.357142
ウールでは1×0.604772

となる。

だから綿の20番手糸をウール番手に変更すると
20×1.693365=33.9番手 となる。

こんな初歩的なことすら筆者は知らなかったのだが、ベテランはここから派生して生地を構成するための数式をビッシリと暗記して普段の業務に活用しておられる。
しかし、こうした知識は、件の糸メーカーのスタッフにしろ、その糸を使う織布メーカーにしろどんどんと失われているという。

ベテランの言葉で印象的だったのが
「日本はこういうきっちりとした公式を積み重ねて糸、生地を開発してきた。それらの知識が無くなってしまえば人件費の安いアジア諸国にやられてしまう。日本人は、もう一度知識を身に着けなおす必要がある」
というものだ。

同席していたデニム生地メーカーの部長によると、織布メーカーといえども最近の現場担当者は感覚で商談してきて、製造設定は機械任せだという。
ブランド側は当然、織布メーカーよりも糸メーカーよりも知識が無いから無責任な発注を行う。
例えば「経7・2番手×緯6・8番手で織ったデニムを作ってよ」というふうにである。
この場合は、デニムなので経緯ともに綿糸である。

織布メーカーの現場担当者は馬鹿正直に7・2番手と6・8番手の糸を用意しようとするが、これなどは経緯ともに7番手を使ってしまえば良い。0・2番手の違いなど本来は誰に分からない。
そもそもブランド側も0・2番手の違いを分かって発注しているとは到底思えない。

今、繊維産業に飛び込む若者は、親の事業継承を除くと、相当に衣料品や繊維・生地が好きなはずである。
「好きこそ物の上手」というくらいなので、当然、ファッションに関する知識や感度、関心も高いだろう。
興味の無い人がファッションに関する知識や感度を磨くことは大変だが、逆はそれほど難しいことではない。
感度の高い人が数式や公式を覚えることは比較的容易だろう。要は本人のやる気次第ではないか。

ファッションに感度の高い人が、数式や公式を覚えれば鬼に金棒なのだが・・・・・・。

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