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機能性素材に見た目と触感が加わった

 今日で2011年が終わるのだが、日本の生地メーカーでもっとも注目度が高い分野は機能性素材であろう。

業界外の方に「機能性素材」と言っても、「何やそれ?」と思われるだろうが、涼しいとか、暖かいとか、すぐ乾くとかそういう類の生地である。

おなじみのユニクロだと、ドライとかヒートテックとか防風ジーンズだとかそういう商品だ。

この直接的な機能だけでなく、肌触りが素晴らしく良いとか、見た目が今までにない変化をする、という素材も「機能性」を謳って開発を続ける生地メーカーもある。

先日、日清紡テキスタイルでレーヨン綿混のソフト&ハイパーストレッチデニム素材を見せていただいた。
通常のレーヨンデニムと似たソフトな肌触りでありながら、レギンス並みの強力ストレッチ性があるというもので、アメリカ西海岸の某プレミアムジーンズブランドに採用されている。
日清紡や輸出に携わる総合商社によると「西海岸のプレミアムブランド向けのソフト&ハイパーストレッチデニムは、ほぼ独壇場」だという。

日本の生地開発もまだまだ可能性を秘めていると思えてくる。

そういえば、先日、高野口産地の岡田織物で、新素材として、発熱するファーを見せていただいた。
太陽光を吸収して衣服内温度を2度~8度高める機能があるという。
三菱レイヨンの開発した「コアブリッドサーモキャッチ」という糸を使って作ったファーである。
肌触りも「もふもふ」と毛足が長く気持ち良いし、カラー展開も数色以上ある。

ご興味のある方はこちらに詳しい説明がある。

http://okadatx.shop-pro.jp/?mode=f20

これまでの機能性素材は、とかく「機能」が優先され、見た目や肌触りなどは二の次とされてきた印象がある。
しかし、日清紡のソフトハイパーストレッチもこの発熱ファーも、見た目と肌触りとを両立させている。

機能を開発するのは日本メーカーに一日の長がある。
ここに見た目と触感を加味すれば、活路はまだまだ開けるはずである。

来年も日本の生地メーカーに期待したい。

三越伊勢丹が夏セールの7月後半開始を検討

 さて、福袋なのだが、今年はクリスマス明けから販売する店が出現した。
また別の店では、12月31日から販売するという。

これならいっそのこと、通年で福袋を販売すれば良いと思うのだが、それだけ在庫が余っているのだろう。

今年は、3月の東日本大震災があり、繊維アパレル業界にとってもなかなか厳しい年だった。
震災の影響もあり、今年は6月16日から夏セールが始まった。
これまで、セールはずっと早期化が進行してきたが、6月半ばという日程は異例に早い。

もっとも、6月下旬から「プレセール」が半ば堂々と開始されていたので、実際はあまり変わらないのかもしれないのだが。

一方、冬のセールも年々早期化していたが、現在は、量販店型ショッピングモールが元旦から、百貨店・ファッションビルが1月2日からと、もうこれ以上の早期化は不可能である。
その苦肉の策として、12月10日過ぎからの「プレセール」「フライングセール」「シークレットセール」などが活発化してきた。

今回の「福袋の年内販売開始」はセール早期化の一つの新しい形態だと感じる。
新しい形態だが、これについてはまったく賛同できないのであるが。

そうした中、12月21日の繊研新聞の1面に
「夏セール、7月後半へ」という記事が掲載されている。

これは、三越伊勢丹の大西洋社長のインタビューである。
「盛夏物の需要ピークにクリアランスをして、販売機会を自分たちで失わせている」と指摘。
そこで2012年の夏セールを7月後半~8月に実施する検討を始めた。
という。

その心意気には賛同するが、これはまだ「検討を始めた」段階である。
もし、実際に7月後半からセールを開始した場合、2012年の7月販売状況は間違いなく、前年実績を割ると予想する。
これに、経営陣が耐えられるかどうかである。
百貨店に限らずだが、日本の小売り・流通業は前年実績主義に囚われている。
これを断ち切らないとセール時期をずらすという施策は難しい。
2012年7月の状況を見て、「やっぱり背に腹は代えられないよねえ」と言って、
2013年から「セールは7月1日に戻します」と宣言する可能性は非常に高いと思う。

そんなわけで「検討が終わった」後の三越伊勢丹の発表を待ちたい。

セール用・福袋用にも製品が製造されている

 この間までクリスマスでにぎわっていたが、もうすぐ正月である。
先日、アウトレットには「アウトレット用商品が製造されて並べられている」と書いたが、もちろん、セールにも「セール用商品」が製造され、福袋には「福袋用商品」が製造されて並べられていることをお伝えしたい。

アウトレットに「アウトレット用商品」が製造されて並べられるのは、悪いことばかりではない。
アウトレットといえども商品が足りなくなることがあり、その場合、店頭のスペースを埋めるためには新しい商材を製造してならべるほかない。
これはセールについても福袋についても同じことが言える。

しかし、である。

アウトレット用に製造された商品の方が構成比率が高いというのはいかがなものか。
もちろん、セールについても福袋についても同じだ。
セール用に作られた商材は、店頭販売価格に応じた原価設定で作られている。

なんだか、手段と目的が逆転してしまっているのではないか。

もっとも、セール用に製造された商品は、アウトレットと同様に値札が異なるので店頭で見分けることは難しいことではない。
気を付けて商品を選んでもらいたい。

福袋には値札が付いていないから、これは判別することは難しい。
ただ、自店に多数の在庫を抱えるブランドやショップは、実際にその在庫を福袋に詰めている。
逆に、自店が売れに売れている場合は、福袋用の商品が製造されている。

それにしても、福袋用商品というものは、だれも得をしていない。
製造業者は安い商品を作らされ、出荷させられている。売る方だって決して儲かっていない。
販売店の従業員はヘトヘトになる。
「消費者は儲かってるじゃないか」という声が聞こえてきそうだが、消費者だって必要以上の数量を所有するハメになり、保管場所を確保するのに難渋する。
ネットオークションで上手く売れれば儲かるのかもしれないが、それとても面倒な手続きを行わなくてはならない。

ここ数年ですっかりと正月の風物詩となった「セール」と「福袋」だが、衣料品業界には問題点が山積している。

ローカルトレンド、大いに結構じゃないか

 先日、ナイキの人気スニーカー、エアジョーダンの入手を巡って米国で暴動が起きたというニュースを聞いて驚いた。

「エアジョーダン」新製品に客殺到し米各地で騒動、発砲も
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111224-00000012-cnn-int

日本では95~96年の「エアマックス95追剥事件」を最後に、
スニーカーを巡る大規模な事件は起きていない。

95年にナイキから発売された「エアマックス95」があまりの人気のため、入手困難となり、偽物が出回ったり、法外な価格で取り引きされたりと様々な事件が起きた。
その極めつけの事件の一つが「追剥事件」である。
不良グループがエアマックス95の着用者に暴行を働き、着用していたそれを奪って逃げるという事件が多発した。
知り合いの少年事件関連雑誌の編集長は、当時、「スニーカー人気が現代に追剥を蘇らせたか」と驚きを隠せない様子だった。

しかし、それ以降、日本ではハイテクスニーカー人気は沈静化し、目立った事件は起きていないほど秩序ある消費行動が保たれている。
現在でも一部に人気商品はあるものの、95年当時の過熱ぶりには遠く及ばない。

けれどもアメリカは違ったようだ。
ハイテクスニーカーへの人気は根強かったようだ。
そして、スーパースター、マイケル・ジョーダンへの人気も日本とは比べ物にならないほど定着しているようだ。

さて、「トレンドのグローバル化」とか「日本のローカルトレンドは捨ててグローバルトレンドを見ろ」という主張が国内のアパレル業界にはある。
しかし、この主張には疑問を感じる。

その一例がエアジョーダンである。
日本ではそこまで人気ではないが、米国では暴動が起きるほどの人気。
世界各国の情報を網羅していないので恐縮だが、おそらくヨーロッパでも中国でもそこまでの人気ではないのではないだろうか?
これはアメリカ限定のブームといえる。
ということは、アメリカのローカルトレンドではないか。

ナイキ本社は、当然、このエアジョーダンを日欧よりも米国に多く販売するだろう。
もっと言うなら、ハイテクスニーカーはいまだにアメリカで人気のファッションアイテムである。
しかし、日本や欧州ではそこまでの人気ではない。日本だと今、ハイテクスニーカーはファッション用というよりもマラソン用やジョギング用、トレッキング用などのギア需要の方が多いと感じる。
この「ハイテクスニーカー人気」もアメリカ特有の「ローカルトレンド」であろう。

国々での嗜好や好みは様々であるから、
中国にもヨーロッパにもそれぞれ「ローカルトレンド」がある。
その「ローカルトレンド」を上手くキャッチして流通させることがアパレル・ファッション産業の一つの役割である。
当然、日本にも「ローカルトレンド」が存在する。

中国やヨーロッパ、アメリカに「ローカルトレンドを捨てろ」と言わずに、なぜ自国に「ローカルトレンドを捨てろ」と声高に叫ぶ必要があるのか皆目わからない。
別に日本女性がモード系の服装よりもナチュラル系の服装を好んでも構わない。それは好き嫌いの問題であり正誤の問題ではない。

彼らが中国やヨーロッパ、アメリカをメインとして商売するなら日本のローカルトレンドを持ちこむべきではないが、日本をメインに活動する人々が、日本人に「ローカルトレンドを捨てろ」と主張するのは噴飯物でしかない。

アドヴェンチャーグループの凄さ

 先日、アドヴェンチャーグループの大阪展示会にお邪魔した。
繊維アパレル業界にいながら、ほんの3カ月ほど前までアドヴェンチャーグループを存知あげなかった。

その存在を知ったきっかけはいつものように
HAKATA PARIS NEWYORK
のブログであった。

アドヴェンチャーグループは福岡を拠点にする低価格レディースアパレルで、
レディースカジュアルウエア全般と傘、靴、ストール、マフラー、インテリア小物まで幅広く展開する。
グループ全体の2011年5月期売上高は215億円であるという。

繊維アパレル業界でも規模の割に、一部の方を除いてあまり知名度がないのだが、
販売先は多岐に渡っており、ほとんどのレディース売り場に商品が入っている。
同社のタグをそのまま仕入れる場合と、商品はそのままでタグだけ相手方ブランドに付け替える場合がある。
同社の商品をそのまま仕入れているのは、スーパーマーケット系の量販店全般であり、
タグを付け替えて導入しているのは、元DCブランドで現在SPAに転換したブランドや、元ニットアパレルでSPAに転換したブランド、石津さんの頃のVANと並び称された後にSPAに転換したブランド、などを筆頭に多数である。

この会社の概略をいろいろとご説明いただいたのだが、驚くことばかりであった。

まず、全社員が300人在籍するのだが、そのうち80人がデザイナーであること。
昨今、企画を外注に丸投げするのが当然のような風潮があるが、同社はあくまでも「企画が命」としてデザイナーを採用し続けている。昨年まで70人だったが、今年4月に10人新規採用して80人になったということである。

他社の店頭製品や、ストリートスナップの画像をメール転送して、「これと同じのを作ってくださーい」と指示するだけのブランドとは雲泥の差である。

また、製造は中国とインドの協力工場で行われる。これだけなら普通だが、取り組んできた年月がすごい。
中国は40年前から、インドは38年前からである。
今でこそ、「中国の次の生産地はインド」と言われ始めているが、38年前からインドの工場と物作りを開始した行動力に驚かされる。
さらに2008年にはインドのカルール県に学校を寄贈している。(同社のパンフレットによる)

これだけでも一般紙や経済誌に「社会貢献」ネタで大々的に報道されても良いくらいだと思う。
93年にはインド政府からも現地の雇用拡大の功績から感謝状が贈られている。

「バングラディシュの銀行と社会貢献の取り組みが云々」と大々的に報道されたものの、その続報がさっぱり聞こえてこない企業とはだいぶ違うと感じさせられる。

先述のブログでこの会社の存在を知ったときには「福岡にできた新しいイケイケの企業かな?」と思ったのだが、創業47年だということにも驚かされた。
そして47年間毎年黒字決算だというからさらに驚く。

このほか直営雑貨店「地球文化屋」「流行雑貨屋」の2つの屋号で計80店舗を展開し、SPA業態も開始している。

派手さはないが、堅実で地に足の付いた企業である。

アパレルブランドはややもすると「広告、告知してナンボや」という姿勢で、針小棒大に自社をアピールする傾向が強い。それも悪くはないが、大半は内容が伴っていなかったり、途中でその事業がとん挫したりする。
アドヴェンチャーグループのように、告知は一切しないけれども着実に利益を上げ、自社の企画力アップに取り組んでいる企業の方が好感が持てる。
この企業が広報告知活動に注力すれば、まさに鬼に金棒だと思うのだが、そればかりは経営者の判断である。

記者を始めて14年、販売員の時代も入れると17年この業界におり、少しは知識も増えたのではないかと感じていたが、まだまだ勉強が足りないことを思い知らされた。

既存店が増収に転じたライトオン12月度売上速報

 12月度のライトオンとジーンズメイトの売上速報が発表された。
今回の期間は11月21日~12月20日までである。

ライトオンは
既存店売上高が前年比5・5%増
既存店客数が同4・9%増
既存店客単価が同0・5%増

だった。

ジーンズメイトは

既存店売上高が前年比3・2%減
既存店客数が同17・9%減
既存店客単価が同17・9%増

だった。

今回の期間では通常よりも気温が高い日が多かったが、12月10日過ぎから冷え込んだため、防寒アウターが動き始めたようだ。
とくにライトオンは既存店が増収に転じており、先月までの推移と合わせると、完全に下げ止まりとなり、上昇傾向が顕著になったといえる。
今月は客数も増加し、客単価も前年を維持しているのでなかなかの好成績である。

ちなみに昨年12月度のライトオンの売上速報を見ると、

既存店売上高が前年比15・6%減
既存店客数が同13・5%減
既存店客単価が同2・4%減

となっている。

今年12月度の売上高は、一昨年対比だと89%だから、まだ一昨年の水準に戻ったとは言い難いが、回復傾向は徐々に強まっていると見ている。

ライトオンは12月22日からバーゲンセールを開催しており、2,3の店頭を見る限りでは値下げ商品はそこそこ好調に動いているようだから、1月度の速報も期待が持てる。

ジーンズメイトも12月は気温低下に助けられた上に、12月上旬から値下げセールも開始しており、今回の下げ幅が小さかったのはそれらの複合要因ではないだろうか。
しかし、こちらは先月までの推移と合わせると、下げ止まりとは言い難く、まだまだ注視が必要であろう。

12月22日から全国的に猛烈な寒波に襲われている。
寒波襲来がクリスマスとも重なり、防寒アウターと保温肌着が活発に動いたと推測されるので、年初に発表されるユニクロ、マックハウス、ポイント、ハニーズの12月度売上速報が楽しみである。

きっと、日本でまだまだやれることがあるはず

 書き出しに困ると文章ははかどらない。
などと唐突に、書いてみた。

何が書きたいのかというと、業界の識者と言われる方々の論調を見ていると、「日本はダメだ」「海外スゲー」というのが余りにも多すぎると感じる。
もちろん、現在の日本には解決すべき問題が山積している。
かと言ってヨーロッパ各国もアメリカも中国も韓国もパラダイスではない。同様に解決すべき問題が山積している。

先日、山内康一さんのブログで日本に関する良いニュースが掲載されていた。

http://yamauchi-koichi.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-c305.html

国際交流基金が今年3月にまとめた報告書によれば、
外国人の日本語学習者の推移は以下の通りです。

1979年 約 12万7千人
1990年 約 98万1千人
1998年 約 210万2千人
2003年 約 235万6千人
2006年 約 297万9千人
2009年 約 365万1千人

とのことである。
とくに2006年からの伸びがすごい。
もちろん、海外の人が日本語を学ぶからには、何かメリットがあるのだろう。
仕事で使用するのか出稼ぎ目的なのか。

筆者の不勉強もあってか、このニュースあまり知られていないように感じる。
メディアはもっとこういう記事も流すべきではないだろうか。

このブログには続きがあって

GfKローパー広報&メディア社が2005年から発表している
国家ブランド指数(Nation Brand Index)というのがあり、
この指数でも日本は決して悪くありません。

2010年の国家ブランド指数のトップ10を見ると以下の通りです。

1)アメリカ、2)ドイツ、3)フランス、4)イギリス、5)日本
6)カナダ、7)イタリア、8)スイス、9)オーストラリア、10)スウェーデン

となっており、「進歩系」を自称する識者が持ち上げる中国、韓国は遠く及ばない。
日本人が理想視しているスウェーデンよりも日本の方が上である。
イタリア、スイスにも勝っている。

この指数もあまり報道されていないと感じる。

さて、先日、テレビ番組、ワールドビジネスサテライトで、パソコン大手のヒューレットパッカード(以下HP)が日本工場を新たに作ったと報道されていた。また、先日、別の紙面では中国のパソコン大手のレノボが日本工場を計画しているとの報道もあった。
ワールドビジネスサテライトでは「人件費は高いですが、大量生産ではなく、各企業の個別オーダーに対応した特別機種を生産するには日本のこまやかさが適している」と伝えられていた。

また、工場ではないが、韓国の大手企業LGとネクソンが本社機能を日本へ移転するという。
「自称グローバル識者」によると、韓国経済は絶好調のはずなのに(実状は異なるが)・・・・である。

こうした報道に接していると、日本が勝手に「意気消沈」しているだけではないのかと思える。
もちろん、傲慢は良くない。しかし、謙虚も度が過ぎると有害である。

まだまだ日本はやれることがある。
そんな取りとめもないことをツラツラと考えてみた。

おそらく繊維アパレル業界もまだまだ日本でやれることはあるはずなのではないか。

インターネットの使い方にも上手い下手がある

 販促に関して、インターネットが欠かせないツールであるのは、世間的に常識として認知されていると思う。
個人事務所みたいな企業であっても、業務内容と連絡先を載せたホームページはあった方が良いし、具体的な商品内容もウェブ上で見せた方が良い。

物販に関してもそうである。
しかし、物販では、ただ単にホームページがあれば良い物でもないし、「○○%オフ」とか「○○イベント開催」などという言葉だけの告知を何度繰り返してもあまり効果がない。
衣料品は最終的に直接着たり、触ったりしてもらわないと真価がわからない。

先日、別ページの記事に書いたが、「キャサリン・ハムネット・ロンドン」の消費者参加型受注イベントは、インターネットを使って、上手く実際の商品に誘導できていると感じる。

消費者向けにITソーシャルネットワークを駆使
展示受注会の新しいあり方
「キャサリン・ハムネット・ロンドン」

http://www.apparel-mag.com/abm_trend_1111_it.html

文中にもあるように、このイベントは、フェイスブック上で消費者に展示受注会への参加を呼び掛け、抽選で無料招待する。そのほかには、各店舗の優良顧客を無料招待して、本社スタッフと店舗スタッフがそれぞれもてなすという趣向であり、飲食をしてもらいながら、その場で新作を受注してもらうというシステムである。
飲食はもちろん無料で、夕方5時以降はお酒も供出される。

昼間はバイヤー向けの普通の展示会だが、夕方5時以降は一般消費者向けの展示受注会である。
招待された一般消費者はなかなか熱心で、2時間・3時間かけて商品を吟味する人はざらにおり、並みのバイヤーなど足元にも及ばない。
また会場内で様子を見ていると、本社スタッフや店舗スタッフと、一般消費者の距離がかなり近づいており、友達に相談する感覚で商品のことを尋ねていた姿が印象的だった。

正直に言うと、このイベントに初めて招待していただいた昨年12月の時点では、「なんやよくわからんなあ~」というのが感想だった。それでもスタッフの方は懲りずに筆者を招待し続けて下さった。
今回ので5回目となる。
5回も継続できているということは、このイベントが売上高に好影響を与えていると会社側も判断したのだろう。

筆者のような零細事業主からすると、この飲食にかかる費用は相当に大きい。
しかし、一般のマスコミに広告を掲載するよりはるかに安いし、またその場での受注がある程度は見込める。
反応があるかないかわからない広告を掲載するよりも、売れ筋も見極められるし、商品ごとの手ごたえも感じ取れるため、遥かに効率が良い。

そして呼び込みはインターネットを介してなので、無料である。

まともな企業からすると、ひどく効率が良い。

デジタルを通して、アナログな実物の服に導くと言う手法である。

似たようなイベントはいくつかは開催されているが、まだまだ少ない。
他のブランドももっと積極的に採り入れても良いのではないだろうか。

ついでに書いてしまうと、
先日、ネット上で「○○ブランドが20%オフ」「25日までクリスマスセール開催」という呼び込みの言葉を見た。
しかし、残念ながらそのホームページで、商品ラインナップを見ることができなかった。
なぜなら、商品ラインナップを掲載していないから。
「○○ブランド」にどんなラインナップがあるかも、クリスマスセールにどんな商品が出ているのかも店舗に行かなくては分からない。
これが「キャサリン・ハムネット・ロンドン」のような無料パーティーでもあれば消費者は店舗まで足を運ぶだろうが、このままではセールの告知は「言いっぱなし」で終わってしまう。

実にもったいないと思う。

インターネットの重要性は各企業も理解はしているが、その理解度の深さはマチマチで、あまり効果的に仕えていない企業も多く見受けられる。

委託販売が続く限り小規模ブランドは百貨店とは取り組めない

 今日は、少し思い出話を。
日本でのオリジナル製品ビジネスがうまくいかずに中国へ行ってしまった知人がいる。
もう2年くらい会ってないし、中国へ渡る前以降の詳しい内情はよくわからない。

その彼が自分のブランドを国内で展開しつつあったころ、百貨店の催事を巡業していた。
期間限定で2週間とか1ヶ月とかで出店して、全国の各百貨店を廻るのである。
その彼がなぜ、期間限定ショップを好んだかと言うと、百貨店は買い取りがほとんどないからである。
百貨店に卸す商売が始まるのは、歓迎すべきことだが、買い取りなしの委託販売であるからシーズン終了時にドカっと在庫を返品される可能性が極めて高い。

大手企業ならそれでも資金繰りは大丈夫だが、彼のようにほぼ個人事務所に近い企業は、ひとたまりもない。
じゃあ、2週間分だけの在庫を持って、今日は○○百貨店。その売れ残りに新しい補充商品を継ぎ足して来月は××百貨店、と巡業した方がマシなのである。

最近、百貨店で「メイドインジャパンを見直そう」とか「小規模ブランドをインキュベートしよう」と提唱する動きがあると聞くが、実際には「買い取りしない」という商形態がある限り、小規模企業が百貨店に卸し売ることはほぼ不可能と断言しても良い。

先日、10年来付き合いのあるデザイナー氏にも某百貨店から「平場に卸しませんか?」と打診があったという。
しかし、デザイナー氏の会社もほぼ個人事務所に近いくらいの規模である。(とは言っても億単位の年商はあるのだが)
当然お断りされた。
筆者はデザイナー氏の選択は正解であると確信している。

百貨店に求められているのは「買いつけ力を強化」するのでもなく、「MD力を強化」するのでもない。それらも必要だが、まずは委託販売のみという商形態を変えることである。商形態が変われば、先のデザイナー氏も取り引きを開始するし、そのほかにも「ぜひやりたい」という小規模デザイナーズブランドや、産地発のファクトリーブランドはいくらでも現れる。

今の委託販売を温存したまま、まず先にブランド集めに奔走しても、徒労に終わるのではないだろうか。

先日、大丸梅田店を取材した。
その際、「百貨店の主要客層である50代、60代と今の40代以下では買い物に行く店がまったく異なる」と言われた。具体例を挙げると、ユニクロである。

大丸梅田店13階には今年3月にユニクロが入店した。
筆者のような低所得者からするとユニクロは行きつけの店という感じなのだが、大丸梅田店の贔屓筋である50代・60代顧客は「初めてユニクロを見た」「初めてユニクロで1枚買った」という人が予想以上に多いのだという。

これから考えると、百貨店が主要客層である50代・60代を大事にするなら、カジュアル強化や「デニム拡充」は難しいのではないかと思う。
「百貨店でデニム」という打ち出しは2005年のプレミアムジーンズブームが最後ではないか。
あの当時はOL層が百貨店でデニムを買ったが、今の百貨店でデニムを買うのは50代・60代がほとんどだと見える。だからこそ、タカヤ商事の50代女性向けのジーンズブランド「ミセスジーナ」がそこそこに堅調なのだろう。

今の20代OLは、トレンドの影響からデニムを穿いていないし、よしんば買うことがあってもそれは百貨店ではない。

となると、委託販売というハンデを抱えた百貨店が、産地工場のファクトリーブランドという要素が強いジャパンデニムを打ち出すことに対して、その効果には疑問を抱かざるを得ない。

もちろん大丸梅田店のように50代以上にも、30代・40代のファミリー層にもという二兎を追う店作りは可能である。しかし、それを実現できるのは、今までの百貨店と高額ブランドの商習慣に染まった人たちではないと思うのだが、皆さんはいかがお考えだろうか。

日本は今でも本当に「物作りの国」だろうか?

 先日、国内洗い加工最大手の豊和を取材するために児島に行った。

技術開発に熱心な同社なので、本来の目的は、新しい加工技術について取材する予定だった。
しかし、豊和の田代社長にインタビューしているうちに
「2012年内にロサンゼルス近郊に直営洗い工場を開設する計画だ」との発言が出た。
社長に確認すると、「書いても良い」とのことなので先日、ウェブ用の記事にした。

ロサンゼルス近郊に直営工場開設を計画   洗い加工の豊和 田代豊雄社長
http://www.apparel-mag.com/abm_papers_1112_howa.html

田代社長がなぜアメリカに進出するかというと、
ヨーロッパ、アメリカ、中国の中で、一番消費の底力があるのがアメリカだという判断である。
ヨーロッパはギリシャ、スペインの問題から経済危機に陥っている。
日本国内では中国に熱い視線を注いでいる人が多いが、成長率は鈍り始め、地下も下落している。
また中国国内の消費動向は、いわゆる高級ブランド志向となっており、日本のアパレルブランドが注目される要素が少ない。
その上で田代社長は「中国はいつバブルがはじけるかわからない。ちょっとした手違いであっという間に現在の景気が反転する可能性が高い」と分析する。

アメリカもドル安が続いており、政情も不安定だが、「それでも最も底堅い」という判断を下された。

田代社長は「日本では縫製業が死滅しつつあるが、アメリカには日本よりも縫製工場が多く残されている。『物作り』が残っている国で、プレミアムジーンズブランドに向けた洗い工場を開設したい」と意気込みを語っていただいた。

アメリカにそれほど縫製工場が多く残されているとは意外だった。
今でも日本人は「物作りの国」と自ら思いこんでいるが、アパレル縫製業に関してはとっくの昔に「物作りの国」ではなくなっていたようである。反対に、アメリカの方が「物作り」を国内に残している。

そういえば、先日、経済誌にもアパレル製造業ではないが、
「中国の人件費高騰で工場が米国内に回帰している」という記事も掲載されていた。

昨年あたりから、繊維アパレル業界でも「メイドインジャパン」をなんとかしようという動きが活発化している。
社会貢献的な見地での取り組みは大歓迎だが、単なる「販促」の枕詞ならそれはあまりにも軽すぎる。
そして田代社長が指摘されたように「縫製業が死滅しかかっている」という現状にあまり触れる方は少ないのではないかという懸念もある。
生地は作れる、染色も洗い加工も整理加工もなんとかできる、しかし縫製スペースが国内に無い。
こういう状況がもう間もなく来る。

もっとも頭の痛いこの部分に触れずして、「日本の製造業」だ、「日本の職人技」だ、「日本の物作りの品質」だ、と息まいたところで、「縫製は中国かアセアン諸国かインドあたりですよね?」という状況では、あまりにも実状が伴っていない。
むしろ、アメリカの方が国内縫製工場が多く残っているという現実を筆者も含めて、繊維アパレル業界は重く受け止めるべきだろう。

今でも日本は本当に「物作りの国」だろうか?

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