日本は今でも本当に「物作りの国」だろうか?
2011年12月19日 未分類 0
先日、国内洗い加工最大手の豊和を取材するために児島に行った。
技術開発に熱心な同社なので、本来の目的は、新しい加工技術について取材する予定だった。
しかし、豊和の田代社長にインタビューしているうちに
「2012年内にロサンゼルス近郊に直営洗い工場を開設する計画だ」との発言が出た。
社長に確認すると、「書いても良い」とのことなので先日、ウェブ用の記事にした。
ロサンゼルス近郊に直営工場開設を計画 洗い加工の豊和 田代豊雄社長
http://www.apparel-mag.com/abm_papers_1112_howa.html
田代社長がなぜアメリカに進出するかというと、
ヨーロッパ、アメリカ、中国の中で、一番消費の底力があるのがアメリカだという判断である。
ヨーロッパはギリシャ、スペインの問題から経済危機に陥っている。
日本国内では中国に熱い視線を注いでいる人が多いが、成長率は鈍り始め、地下も下落している。
また中国国内の消費動向は、いわゆる高級ブランド志向となっており、日本のアパレルブランドが注目される要素が少ない。
その上で田代社長は「中国はいつバブルがはじけるかわからない。ちょっとした手違いであっという間に現在の景気が反転する可能性が高い」と分析する。
アメリカもドル安が続いており、政情も不安定だが、「それでも最も底堅い」という判断を下された。
田代社長は「日本では縫製業が死滅しつつあるが、アメリカには日本よりも縫製工場が多く残されている。『物作り』が残っている国で、プレミアムジーンズブランドに向けた洗い工場を開設したい」と意気込みを語っていただいた。
アメリカにそれほど縫製工場が多く残されているとは意外だった。
今でも日本人は「物作りの国」と自ら思いこんでいるが、アパレル縫製業に関してはとっくの昔に「物作りの国」ではなくなっていたようである。反対に、アメリカの方が「物作り」を国内に残している。
そういえば、先日、経済誌にもアパレル製造業ではないが、
「中国の人件費高騰で工場が米国内に回帰している」という記事も掲載されていた。
昨年あたりから、繊維アパレル業界でも「メイドインジャパン」をなんとかしようという動きが活発化している。
社会貢献的な見地での取り組みは大歓迎だが、単なる「販促」の枕詞ならそれはあまりにも軽すぎる。
そして田代社長が指摘されたように「縫製業が死滅しかかっている」という現状にあまり触れる方は少ないのではないかという懸念もある。
生地は作れる、染色も洗い加工も整理加工もなんとかできる、しかし縫製スペースが国内に無い。
こういう状況がもう間もなく来る。
もっとも頭の痛いこの部分に触れずして、「日本の製造業」だ、「日本の職人技」だ、「日本の物作りの品質」だ、と息まいたところで、「縫製は中国かアセアン諸国かインドあたりですよね?」という状況では、あまりにも実状が伴っていない。
むしろ、アメリカの方が国内縫製工場が多く残っているという現実を筆者も含めて、繊維アパレル業界は重く受け止めるべきだろう。
今でも日本は本当に「物作りの国」だろうか?