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委託販売を止めない限り、大阪伊勢丹は上向かない

 もう紙面でご存知の方も多いだろうが、JR大阪三越伊勢丹が初年度売上高目標を200億円も下方修正した。

流通ニュースから引用する。
http://www.ryutsuu.biz/strategy/d102823.html

JR大阪三越伊勢丹の年間売上目標を下方修正すると発表した。

当初計画の550億円を350億円に引き下げた。5月4日の開業から9月末までの累計売上高は152億円で、来場者数は1600万人だった。

同社は、「独自性を打ち出した売場作り(自主編集売場)を展開したが、商品の置き方が分りにくいという声もあり、大阪では浸透しなかった。三越伊勢丹のスタイルが受け入れられなかった」と説明した。

一方で、隣接するファッションビル「Lucua(ルクア)」の年間売上目標は当初の250億円から320億円に上方修正した。9月末までの累計売上高は160億円、来場者数は2070万人だった。

とのことである。

開業3カ月後の7月末時点でJR大阪三越伊勢丹(以下:大阪伊勢丹)の売上高は104億円であり、このペースで行くと、416億円規模にしかならないと、以前にこのブログで書いたことがある。
しかし、その予想は外れ、さらに売上高の低いペースで推移したことがうかがえる。

さて、大阪伊勢丹の敗因は何であろうか?
流通ニュースの記事中にあるように「自主編集売り場の陳列の問題」だったのだろうか?
筆者は違うと思う。

大阪伊勢丹の売り場作りはかなりレベルが高く、他社店舗の勉強にもなるレベルである。
敗因は売り場作りではなく、ブランドラインナップがあまりに陳腐すぎたことである。
近隣に阪急百貨店梅田店、大丸百貨店梅田店という競合が犇めいており、思うままにブランドが集まらなかったという背景はあるにしてもあまりにもラインナップがショボすぎた。

これは筆者の独断と偏見ではなく、近隣の商業施設関係者数人の意見でもある。

3月の記者会見で配布されたプレスリリースから見てみよう。
地下1階には2つに分断されたまったくパワーのない「イセタンガール」がある。
ここには「バーバリーブルーレーベル」「トゥビーバイアニエスベー」「リッチミーニューヨーク」「ペイトンプレイス」「ディアプリンセス」の5つが記されているが、どれも新鮮味があまりない。
「バーバリーブルーレーベル」は底堅い人気があるものの、ピークをとうに過ぎている。
「ペイトンプレイス」はバブル期以降まったく振るわない。「ディアプリンセス」は90年代の神戸エレガンスブーム終焉とともに忘れ去られたブランドである。

3階のコンテンポラリー婦人服売り場は「シアタープロダクツ」「コズミックワンダーライトソース」「トリコ コムデギャルソン」「アナスイ」などのデザイナーズ系のブランドが主体だが、百貨店に来る年配客にはまったく響かない。

4階のベーシック、キャラクター婦人服は「23区」「ザ・ビューオブアンタイトル」という何の変哲もないオンワード樫山とワールドのいつものコンビであり、その横にボーイズの「Bショップ」がある。「Bショップ」は現在好調なブランドだが、このラインナップに加えるべきブランドではない。もっとナチュラルベーシック系のブランドを集積した場所がふさわしい。

自慢だった8階のイセタンメンズには、「バリー」「ダンヒル」「バーバリーロンドン」「アクアスキュータム」「ヒッキーフリーマン」などが並んでおり、バブリーな香りしかしない。

現在、大阪伊勢丹も巻き返すべく、ブランド構成を変える取り組みが始まっているという。
おそらく、希少性の高いブランドを誘致して、自主編集化しようと考えているのではないかと推測するが、それの実現は難しいだろう。
なぜなら、希少性の高いブランドは企業規模が小さい。
その場合、百貨店の最大の弊害である委託販売という取り引き形態が障害となる。

どういうことかというと、百貨店の取り引きはほぼ委託販売である。買い取り率は数%程度だ。
委託販売というのは、売れた枚数だけ小売店側がメーカーに代金を支払うというシステムであり、売れ残った物はメーカーに返品できる。
そうすると、期末には大量の返品が発生することとなる。
先述したオンワード樫山やワールドのような大手企業なら1店舗分くらいの返品は吸収できる。
しかし、年商規模数億円や10億円程度の中小企業ではその返品を吸収することはできない。そのため、中小企業は百貨店との委託販売を嫌がる。

さらに突っ込んで言えば、
先日、小島健輔さんがブログで指摘された通り、
「買い取らないなら編集するな!」ということである。
http://www.apalog.com/kojima/archive/816

文中から引用させていただくと

編集手法は買い取り商法のセレクトショップや欧米の百貨店で発達したもので、自ら品揃えと補給、在庫運用と販売管理を貫徹する者ならではの技術体系なのです。買い取らないで編集するなど権利と義務のはき違えもいいとこで、独占禁止法上の優越的地位の濫用さえ疑われます。

消化仕入れのブランドを編集すればブランド側の補給と販売管理を阻害して売り難い売場になってしまいますから、効率的とも言えません。編集するのは買い取り商品に留め、消化仕入れのブランドは箱展開かコーナー編集に割り切るべきでしょう。『買い取らないなら編集するな』が鉄則だと思います。

ということになる。

以上のことから、
今回の大阪伊勢丹は負けるべくして負けたと言わざるを得ないし、希少ブランドを誘致してラインナップを変え、売り場を活性化させるというプランは委託販売を止めない限り無理である。

百貨店という業態の限界が露呈したと言い切りたい。

過剰供給と過剰仕入れで滞留するローゲージニット

 昨日、レディースのローゲージニットのことを書いたのだが、少し補足したい。

ローゲージニットは分厚いため、インナーとして着ることはなかなか難しい。
ほとんどがアウターとして利用される。しかし、防風性が皆無であるため、真冬に着用することは適さない。
おそらく16度~22度くらいの気候の時にしか着用できない。
着用期間は10月下旬から11月末。長くても12月上旬までである。

数年来、毎年秋冬にはローゲージニットが期待されているものの、それほど売れずに終わる。
今秋は例年以上に注目されていたが、10月20日の小売店には店頭在庫として滞留しているようだ。

昨日その要因として先に挙げた気温の問題を書いた。

取材したニットメーカーはさらにあと2つの要因を挙げて下さった。

1、ブームと見込んでローゲージニットを製造したメーカーが多く供給過剰に陥った
2、ブームと見込んで自店のキャパシティ以上のローゲージニットを仕入れた小売店が多かった

この2つである。

1つ目は、ニットを得意とするメーカーは毎年ローゲージニットを一定数量製造している。
ブームが来ると見込めばこれを多めに製造する。
今秋は、例年よりも期待値が大きかったので、ニットメーカー各社は数量を多めに製造した。
また普段はあまりニットを製造しないアパレル各社も、ブームと見込んでローゲージニットを製造した。
その結果、供給過剰に陥ったというわけである。

2つ目は、小売店のバイヤーといえども人の子であり、確信を持って発注できる人間などほんの一握りである。
バイヤーは常に迷いながら仕入れている。
ブームであると聞けば、それを無意識で多めに発注することも珍しいケースではない。
また、いつもならA社からだけ仕入れているのに、B社からも仕入れてしまうというようなこともある。
その結果、自店のキャパシティを越えた数量のローゲージニットを仕入れてしまっている小売店も多いようだ。
例えば50枚なら完売できる顧客を持った店が、70枚仕入れてしまっているということである。
しかもいつもならA社から50枚だけ仕入れているのに、B社からも20枚仕入れてしまっている。

これによって、店頭にはローゲージニットが滞留していることとなる。

本当は一定数量が売れているにも関わらず供給過剰、過剰仕入れでローゲージニットが不良在庫化しつつある可能性もある。
しかし、本当にブームで万人が欲しがる商材なら、少々の過剰供給も過剰仕入れも問題ではなく、消化率が高まる。

過剰供給、過剰仕入れをはねのけられないということは、ローゲージニットは機能的要因もあって万人が欲しがる商材ではないということになる。

件のニットメーカーによると、冬本番はやはり、インナーに適したいつものハイゲージセーターに落ち着きそうだという。あと、節電によるウォームビズの本格化から、ハイゲージのタートルネックセーターが動きそうだともいう。

やはり気候要因は無視できないのではないか。

期待外れ?ローゲージニットとショップコート

 先日、ニットの卸売りメーカーに取材したところ、夏にはあれほど受注が好調だったローゲージニットだが、
10月20日の段階では店頭であまり売れておらず、滞留在庫となっている店が多いという。

8月末ごろまで、3~5ゲージ程度のローゲージニットに注目するという声が多く聞かれ、大阪・泉州のニット工場ではローゲージニットの受注が年末まで満杯だった。
ローゲージニットは着用できる期間がひどく短いため、筆者にはそれが大きく売れるということが信じられなかった。さらに言えば、この数年、毎年秋口には「ローゲージニット」という声が出ていたのだが、大ヒットを見たことがなかった。今回は「ついにヒットするのか?」と期待して見ていたのだが、どうやら期待ほどには動かずに終わる可能性が高くなってきた。

ローゲージニットベスト2

日本の気候に照らし合わせて考えてみると、ローゲージニットは着用期間が1ヶ月半ほどしかない。
通常の衣料品に比べるとかなり短い期間しか着用できない。
今年の気候を思い返してもらいたいのだが、8月は猛暑、9月も20日ごろまで猛暑、一旦気温は低下したものの10月も夏日が多かった。気温が本格的に下がったのは今週に入ってからである。

長期予報は当たるも八卦当たらぬも八卦だが、11月は再び気温が高くなり、12月は寒くなり、1月は厳しい冷え込みになるという。

となると、今年のローゲージニットの着用期間は10月の下旬から11月末まで、長くても12月上旬までということになり、正味1ヶ月半ほどしか着用できない。

ローゲージニットは見た目はかっこ良いのだが非常に機能的ではないため、暑い頃に着用するには暑すぎ、防風性が皆無なので本格的に寒くなるとこれまた着用は難しくなる。おそらく最高気温が16度~22度の期間しか快適に着ることはできない。
そうなると、関東や関西での最適な期間は10月半ば~12月上旬ということになる。

やはり、機能性の低すぎる商品は業界が煽ってもマス商品としては広がらないということなのだろうか。

8月下旬から最高気温が25度を下回るヨーロッパにしか愛用者はいないのだろう。

同じく、ファッション雑誌が押しているが、着用者をさっぱり見かけないアイテムの1つにメンズの「ショップコート」がある。なんだかよく分からないネーミングだが、綿素材のロング丈のカバーオールジャケットだと想像してもらえると一番的確ではないか。

今秋冬のメンズのファッション雑誌には「ショップコート」のページが必ずある。
それほど雑誌は注目しているわけだが、実際に歩いてみると街でそれを着ている男性を見かけたことがない。
筆者は天王寺、難波、心斎橋、梅田あたりをうろうろすることが多いのだが、大阪でマイナーな存在だが、東京の都心ではメジャーな存在なのだろうか?

ただ、この商品もあまり機能的ではない。
Gジャンと同じくらいの生地の厚さがあるため、10月下旬くらいまでは暑すぎて着用できない。
その上、裏地も中綿も取り外し可能なライナーもないため、防寒能力は極度に低い。
また「コート」という名前ではあるものの、身幅やアームホールはジャケットサイズであるため、その下に厚手のものは重ね着できない。

こう考えると、着用期間はローゲージニットと同じく10月下旬~12月上旬までに限られてしまう。

関西でショップコート着用者をほとんど見かけないのは、やはり機能性が低すぎるためではないだろうか。

やはり、その国の気候風土に適した商品でないと、大衆層に売ることは難しいということではないのか。

ボブソンが開拓した保温ジーンズという市場

 先日、ジョンブルの来春展示会にお邪魔した。

トータルなカジュアルアイテムを展開しているジョンブルだが、児島を拠点にしており、元々はジーンズが強い。
今でもジーンズは主力アイテムの一つである。

しかし、来春企画では、綿麻混のデザインデニムや、ライトオンスのデザインデニムは新規提案しているものの、ベーシックなデニムの新提案はなく、現行商品の補充追加対応のみになるという。

メンズのボトムスではチノパン、カーゴパンツ、カラーストレッチパンツが引き続き主力になるという。

ジョンブルだけの傾向で決めつけるのは早計というものだが、他のジーンズカジュアル関係のメーカーや小売店の現状を聞いても、ベーシックなデニムはあまり動いていないようだ。
2010年春夏からチノパン、カーゴパンツ、カラーストレッチパンツがメインアイテムとなっているが、来春夏もその傾向は変わらないようだ。

メンズのチノパン、カーゴパンツ類

(ジョンブルのチノパン類)

ジーンズの復活はまだまだ先になる可能性が高い。

こうなると、エドウインとリーバイスという国内の大手ジーンズブランドはかなり厳しい。
もちろんその他中小のジーンズ専業メーカーも厳しい。

おそらく、今冬は「防風ジーンズ」「HOTジーンズ」などの保温系の、来春夏は「クールジーンズ」「ドライジーンズ」などの吸水速乾系の機能商品がメイン商材になり、ベーシックな綿100%ジーンズはほとんど話題にも上らないだろう。

こういう機能商品が注目されている状況を見ると、ボブソンは「惜しかったナー」と思う。
身売りされる前の数年間のボブソンは、定番ジーンズが苦戦していたこともあり、多くの機能商品を開発した。
現在、店頭を賑わせている保温ジーンズを真っ先に開発したのもボブソンである。
すでに2000年ごろには開発しており、量販店向けに数多くを販売していた。

しかし、時代が早すぎたのか、ボブソンという会社が粘り腰が足りなかったのか、当時はあまり広がらなかった上に、他社が類似商品で追随し始めると、あっさりとこの市場を手放してしまった。

今更言ってもはじまらないが、あの時にもっとボブソンが先行開拓者として粘っていれば、今年5月の民事再生法は申請しなくても済んだのではないか、その前に身売りしなくても乗り切れたのではないか。と残念に思う。

毎年、保温系ジーンズを目にするたびに、ボブソンを思い出す。

回復基調が鮮明なライトオン

 ライトオンとジーンズメイトの10月売上速報が発表となった。

ライトオンは
既存店売上高9・8%増
既存店客数3・8%増
既存店客単価5・8%増

と前年実績を上回った。

ちなみに昨年10月の業績は
既存店売上高が14・1%減
既存店客数が13・5%減
既存店客単価が0・7%減

であり、回復基調がより鮮明となっていることがわかる。
今年10月の実績は一昨年実績よりも5%減程度にまで売れ行きが戻っている。

ジーンズメイトは
既存店売上高7・3%減
既存店客数23・2%減
既存店客単価20・7%増

とこちらはまだ下げ止まる傾向が見えない。
とくに客数の23・2%減はかなり厳しい。
客数の落ち込みを客単価増でカバーしようという取り組みが今年初めから続いており、
順調に客単価は増えているが、もう少し客数減を抑える必要があるのではないだろうか。

以前指摘した通り、客単価20%増というのは数字上は凄いが、ことジーンズメイトの実態から見るとあまり大したことではない。

過去、590円とか790円商品を大量に売っていたため、590円を710円に、790円を950円に値上げすると20%増を達成できてしまう。
10,000円を12,000円に値上げするのとはインパクトが違う。

9月、10月とライトオンの店頭を見ていると、
ユニクロとは差別化したカジュアル品の品ぞろえがかなり充実していると思う。
とくに「世界のカーゴパンツ特集」と銘打った各種カーゴパンツの集積コーナーは面白い。
ユニクロや他社SPAブランドとは一線を画している。
昨年もあった企画だが、今秋冬も仕掛けてきたところから類推すると、それなりの手ごたえがあったということだろう。

意思決定が遅すぎるアパレル

 「意思決定の遅さが日本企業の弱点」と言われるが、繊維・アパレル業界でもそれに当てはまる会社は多い。

某モノ作り系のジーンズカジュアルメーカーがある。
この企業が、もう2年くらい雑誌広告の出稿を迷っている。

原因は2年弱前に敏腕のプレス担当者が退社したことにある。
この担当者はなかなかアグレッシブな性格で、少ない予算から積極的に雑誌広告や広報活動を行っていた。
そのアグレッシブさと、この企業風土はいささかマッチしなかったようだ。

迷う原因はもうひとつ。
売上高が思ったように伸びなくなったこと。

この2つである。

たまたま、相談に乗ると「載せたい雑誌がない。うちにピッタリと合う雑誌がない」とこの企業の人間は口をそろえる。
もう少し突っ込んで聞くと、今の広報担当者がいくつか候補を決めると、営業やMD、企画担当者全員に意見を求めているのだという。そして「なかなか全員が賛成する雑誌がない」という結果に終わる。

この企業からコンサルティング料を頂いているわけではないので、「そーなんですね(棒)」と返答するのだが、この調子ではあと10年かかっても出稿する雑誌は決まらないだろう。

一言で言えば、全員の賛成を得て決定しようとする行為が間違っている。

最初に各担当者に「出稿を希望する雑誌」をそれぞれリストアップさせ、それを集める。
集めた結果を踏まえて、広報担当者と役員で、出稿雑誌を決める。
出稿雑誌を決めたら、それを各担当者に発表する。
あくまでも「発表」するだけであって、「承認」を求めるのではない。

発表した際に、それを選んだ理由や中期的展望を語るべきだろう。
例えば「いろいろ意見がありましたが、今回は●●と○○に3回ずつ出稿しようと思います。その3回で様子を見てから次年度以降を決定したいと考えています」というふうに。

なぜなら、全員が満足するような雑誌など存在しないからである。

女性誌はあまり詳しくないのでメンズ系の雑誌を例に考えてみたいが、
モノ作り系の雑誌だと有名なところでは「ライトニング」「フリー&イージー」あたりがある。
しかしどちらも微妙に誌面内容が異なる。
「ライトニング」はアメカジ、ミリタリーが中心だが、「フリー&イージー」になるとややトラッド&クラシック寄りになる。

モノ作り系の雑誌だが読者層が異なる。
モノ作り系ブランドが両方に広告出稿するのはある程度効果的だと思うが、「うちはトラッドを目指していないので『フリー&イージー』は嫌です」という社員がいてもおかしくはない。逆もしかりだ。

こうした場合、全社員の賛成を待って決定していたのでは、永遠に両方ともに広告出稿をすることはできない。
このメーカーはこういう愚をおかしているのである。

そもそも「じゃあ、雑誌に広告出稿しなければ良い」という意見を持たれる方も多いと思う。
筆者もそう思うが、このメーカーが「やはり雑誌には出稿したい」と考えているから話がややこしい。

筆者は海外企業と仕事をしたことがないのでわからないが、日本企業の意思決定の遅さとはこういうことを指すのではないかと思う。

そして、これはバブル崩壊以降顕著になったのではないだろうか。
筆者はバブルが崩壊してから働きだしているので、バブル期はもとより高度経済成長時代も知らない。
ただ、バブル期の各社のエピソードを伺うと、即断即決も珍しくなかったように感じる。
それは好景気だったのと会社の業績が良かったせいで、全員に心と金のゆとりがあったのだろう。

しかし、バブル崩壊後はそうではない。
これは筆者は肌身に沁みている。

不景気だし会社にも資金的余裕がない。企業はできるだけ失敗したくないと考える。
担当者が自分一人で責任を取るのがイヤだから、全員の賛成を求める。しかし、10人を越える組織で全員一致の案件などほとんどない。当然、いくつもの案件が未決定のまま時間が過ぎる。
こうして意思決定はドンドン遅れることとなる。

他の業界は知らないが、繊維アパレル業はこの縮図である。
そして2年間も広告出稿雑誌を決められない企業はその典型であろう。

定着期に移行したナチュラル系

 「雲ガール」という言葉を流行らせようとして、広告代理店だか仕掛け人だかがゴリ押ししている感じがするので非常に不快である。

「○○ガール」「○○女子」「○○男子」という用語を次々と生み出してはいるものの、大半は定着せずに消え去っている。最たる例は「弁当男子」「パパ男子」あたりだろう。

ファッションの世界で一番最初に注目されたのは「森ガール」だが、最近はこの用語もさっぱり聞かない。服装で見ても「森ガール」スタイルそのままの女性はあまり見かけない。そのテイストをどこかに採り入れたスタイル全般が「ナチュラル系」として集約されたように思える。

さて、その「ナチュラル系ファッション」なのだが、ジャンルのひとつとして定着した感じがあるが、ブームは過ぎ去ったのではないか。

なぜそのように考えるかというと、廉価版ブランドが続々と参入しているからである。
その代表例は「無印良品」だろう。
ユニクロよりもナチュラルテイストの強い無印良品は、ナチュラル系カジュアルの最廉価版だと捉えている。
カットソーで1900~2900円が主力となる。

また今春からジーンズメイトが新業態として開始したレディースショップ「ブルーベルマーケット」も規模は小さいが廉価版の一つに数えても良いだろう。
他社ブランドの仕入れ品もあるが、オリジナルのカットソー類は2900~3900円くらいである。

P4271226

(ドミンゴの「ブロカント」)

P9231627

(ジーンズメイトの新業態「ブルーベルマーケット」)

こういう廉価版が拡大するとそのブームは終焉を迎え、定着期に移行する。
稀に廉価版の登場でブームが終わり、そのまま消え去るファッションもあるが、ナチュラル系はこのまま定着すると見ている。

なぜなら、ナチュラル系は幅広い層の女性が着用できるからである。
10代後半~50代、60代の女性が着用が可能だ。
年配の女性が10代、20代と同じ服装をすると違和感を感じることが多い。
セクシー系や109系の服はその代表選手として挙げられるだろう。

セクシー系や109系ファッションに身を包んだ50歳前後の化け物みたいなオバチャンを天王寺界隈で目にすることがあるが、正直「オエっ」となる。

しかし、ナチュラル系は50代でも60代でも違和感がない。
むしろ、お洒落な年配の方という印象がある。

10年来の付き合いのあるデザイナーさんによると
ナチュラル系ファッション雑誌がここ数年で雨後のタケノコのように創刊され、一時期は大型書店でも「ナチュラル系コーナー」が作られていたが、昨年あたりからコーナーを目にしなくなったという。

ナチュリラ、リンネル、クウネルあたりまでは認識しているが、よくわからない類似雑誌もその後続々と創刊されており、そのどれもこれもが同じに見える。
雑誌名はちがうものの、表紙のデザインや誌面のレイアウトはどれもが似ている。
さらにナチュラル系ファッションが一般層に広がるに従って、広告出稿しているのは廉価版ブランドばかりになっている。

これらの影響で、雑誌販売部数にも陰りが出て、専用コーナーがなくなったのではないだろうか。

コーナーが無くなったということはブームとしてはピークアウトしたということになる。
これから年配層にさらに広がりを見せ、定着化するだろう。

しかし、ナチュラル系の服装をしたオバちゃんが増えるのことは歓迎したい。
何十年も勘違いしたままセクシー系やカワイイ系に身を包んだオバちゃん達の数が減るのだから。

複雑に入り組むアパレル業界の製造工程

 先日、某生地メーカーの方から冗談混じりで提案があった。
「一つの衣料品を小売店から原料まで遡って取材してみては?」

聞いた瞬間に面白いと思ったのだが、すぐに「これは難しい」と感じた。
同席していたOEM事業の方もそう思われた。

なぜなら、日本の衣料品は生産ルートが複雑に入り組んでおり、
ストレートに遡ることができないからだ。

生地があって、ブランドが生地をセレクトして、縫製工場が縫って、小売店に納めるというのが本来の構図である。
極端に図式化すると、

生地→ブランド→縫製→小売店

ということになる。
これならば遡ることは容易なのだが、現実はこうではない。

この図式で遡れるのは、国内自社工場を抱えた一部のブランドだけだろう。
例えば、エドウインのジーンズ、鎌倉シャツのシャツ、タビオの靴下、トレンザのスーツなどである。

現実は、生地メーカーは商社に生地を売って終わり。
商社がいろんなブランドに生地を販売する。ブランドに販売するだけならまだしも、ブローカーやエージェントにも販売する。このブローカーやエージェントがブランドに提案する。
ブランドは同じ生地を商社からも提案され、ブローカーやエージェントからも提案されるということがしばしば起きる。

ブランドは、デザインを外部のデザイン事務所に丸投げしたり、企画生産そのものをOEM/ODM業者に丸投げしたり、大手ブランドなら商社に丸投げしたりする。
OEM業者や商社は複数の縫製工場に一部ずつ製造を依頼し、完成後ブランドに納品する。

複雑なルートをなるべく単純化して書いたつもりだが、
実際はさらに複雑な製造ルートをたどることも珍しくない。

生地→商社→エージェント→ブローカー→ブローカー→複数のルートに枝分かれ→追跡不能→ブランド
というような流れが日常的に起きている。

このため、この取材企画はボツになってしまった。(笑)

繊維アパレル業界は、このように仲介業があちこちに介在して商品が出来上がるという重層構造で成り立っている。このためいたるところで中間マージンが発生する。ただし、高額商品は売れないので、店頭価格に上乗せすることはできずに製造原価をさらに切り下げて店頭価格を維持することになる。

非効率的だし、本当に良い物はなかなか生まれにくい業界構造である。

しかし、反面、少ない売り上げを多数の業者が分かち合うという「ワークシェアリング」の側面もあるのではないかと最近思えてきた。
大儲けはできないけれど、少ない収入をみんなで分け合う業界。ともいえる。

というのは少し誉めすぎか。

欠品することがファッション

 「欠品したことで売り上げが伸び悩んだ」

どこかで聞いたフレーズである。
単純に「欠品」というが、トレンドアイテムなのかベーシックアイテムなのかではだいぶと状況が異なると思う。
肌着や靴下、定番ジーンズ、定番ボタンダウンシャツのようなベーシック品はなるべく欠品させない方が良いと思うが、トレンドアイテムはむしろ欠品しても良いのではないか。

欠品しても良いというのは語弊があるが、在庫が売り切れた場合、短い期間で無理をしてリピートをするよりも素材を変えたり、色柄を変えて別品番を投入した方が良いと思う。
場合によってはデザインを一新しても良い。

そういう意味では、欠品にこだわるユニクロより、新しい商品を次々と投入する、しまむらの方がファッション的なスタンスにあると言える。
店頭のディスプレイがひどかろうが、什器が安物臭かろうが、店作りがチープ感に溢れていようが、しまむらの方がファッション店に近いのではないだろうか。

2006年に発行された月泉博さん著の「ユニクロVSしまむら」から引用してみる。

しまむらのMD政策で特筆すべきは、「リピート(追加仕入れ)不要。売り切れ御免」という独自の考え方だろう。
同社は期中の商品追加補充はいっさい行わない(自動発注による定番商品補充などは別)。
小商圏では機会損失の防止より、売り場の鮮度維持、変化訴求が優先されるべきとの考え方に基づく。藤原に言わせれば「変化こそファッション。だから機会ロスなんて発想がそもそもおかしい。逆に品切れすることこそ正しい」ということになる。

とのことである。

この売りきれ御免という発想はZARAやH&Mと非常に近く、しまむらは日本版のファストファッションを実現できる可能性がある。さらに言えば、ZARAやH&Mよりも商品の品質は高い。

欠品させないというユニクロの考え方は量販店や大手チェーン店と非常に近いと感じる。
肌着や靴下などの実用衣料ではそれで良いと思うが、アウター類やカジュアル衣料には適さない。
一時期、話題となった「ユニばれ」「ユニ被り」という現象が出てきてしまう。
あまりにも大量の同一商品を販売してしまうと、同じ柄のシャツを着た人が周りにたくさんいる、同じウルトラライトダウン着用者に一日に何人も遭遇する、という「ユニ被り」現象が起きる。

また、うまくミックスコーディネートしても「そのシャツはユニクロですね?」と見破られてしまう「ユニばれ」現象も起きる。

ZARAやH&M、しまむらが重宝される理由は「被らない」「バレない」ことにもある。

100億円前後の小売店が「欠品しない」をモットーにしているのなら構わないが、6000億円の小売店が「欠品しない」を心がけるということは、勢い定番商品が増えるということになる。
一説には、ユニクロのレディースボトムスは、現在23型にまで絞り込まれているという。
わずか23型である。その代わりに1型あたりの生産枚数は軽く20万枚を越える。

そうすると、単純に同じ色・同じ形のボトムスを穿いた女性が20万人以上量産されるということになる。
これではますます「ユニ被り」現象は促進されてしまう。

ユニクロは、あえて一部の品番については「売り切れ御免」方式を導入するべきだと思う。

産地への公的支援は、今後ほとんど望めない状況に

 和歌山県の高野山のふもとに、高野口産地がある。
以前にも書いたが、フェイクファーやベロア、モケット、シェニール織り、カットパイルなど毛足の長い織物・編物の産地である。

おととしから経産省のジャパンブランドに認定され、今年度で最終年を迎える。
毎年3月に産地企業13社が集まって東京で高野口産地素材展を開催する。
ジャパンブランドなので現在、助成金が支給されているわけだが、来年4月以降はこの助成金が無くなる。

一例で高野口産地を採り上げたが、
ジャパンブランド認定されている産地はほかにも複数ある。
もちろんそれらには助成金が出ているが、ジャパンブランドの認定期間は3年であり、それ以降継続更新されることはない。

これまでは、経産省の助成金以外にも、都道府県別、市町村別の助成金や補助金があったのだが、
事業仕分けと震災の影響から、公的な助成金はほぼ無くなりつつある。
高野口産地で言えば、来年4月以降の助成金や補助金は、今のところあまり望めない状況にある。

これは高野口産地だけではない。ジャパンブランドの3年が終わったあとに公的な助成金が望めない産地は多々ある。というより、ほとんどの産地が公的な支援をアテにできない状況と言った方が正しいかもしれない。

あるコーディネーターは「あと3年間は公的な支援は無いと思った方が良い」とおっしゃっているが、個人的には3年どころか5年後も10年後も公的支援は復活しないと感じている。

そうなると、各産地は助成金や補助金をアテにできず、参加企業が少しずつ資金を持ち寄って、産地展示会を開催せざるをえないのだが、はたして各産地企業がそこまでの危機感を持っているかどうか。

参加企業数や展示会場の料金設定などにもよるが、産地展示会を開催するとなると、最低でも1社あたり30~50万円の支出が必要となるだろう。これをケチれば、これまで開催してきた産地展示会よりも見栄えが大幅にグレードダウンすることは間違いない。

「展示会は見栄えじゃない、展示する商品の出来栄えだ」という意見もあるが、
これだけ各ジャンルで見せ方が工夫されている状況下で、いきなり質素な展示を見せても、おそらく来場者の多くは興味を示さないだろう。

商品を「展示」する以上は、それなりの「演出」が必要である。
演出が必要ないのであれば、各小売店はもっと簡単に商品を販売することができるだろう。
「小売りと展示会は違う」とお考えの方も多いが、残念ながら同じである。
やはり陳列や演出が上手いところには、展示会でも多くのお客が来場するし、そうでないブースには立ち寄る客は少ない。

その後、話しこめば状況は逆転するかもしれないが、陳列や演出が優れているブースの方が、より多くのお客に立ち寄ってもらえる。ただし、商品の出来栄えが悪ければ、立ち寄ったお客が多くとも実質の受注には結びつかない。だから商品の出来栄えも大事なのだが、演出や陳列も重要なのである。

今年度、来年度以降、公的助成金・補助金が無くなってから、各産地はどのように発表の場を設けようと考えているのだろうか?

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