複雑に入り組むアパレル業界の製造工程
2011年10月20日 未分類 0
先日、某生地メーカーの方から冗談混じりで提案があった。
「一つの衣料品を小売店から原料まで遡って取材してみては?」
聞いた瞬間に面白いと思ったのだが、すぐに「これは難しい」と感じた。
同席していたOEM事業の方もそう思われた。
なぜなら、日本の衣料品は生産ルートが複雑に入り組んでおり、
ストレートに遡ることができないからだ。
生地があって、ブランドが生地をセレクトして、縫製工場が縫って、小売店に納めるというのが本来の構図である。
極端に図式化すると、
生地→ブランド→縫製→小売店
ということになる。
これならば遡ることは容易なのだが、現実はこうではない。
この図式で遡れるのは、国内自社工場を抱えた一部のブランドだけだろう。
例えば、エドウインのジーンズ、鎌倉シャツのシャツ、タビオの靴下、トレンザのスーツなどである。
現実は、生地メーカーは商社に生地を売って終わり。
商社がいろんなブランドに生地を販売する。ブランドに販売するだけならまだしも、ブローカーやエージェントにも販売する。このブローカーやエージェントがブランドに提案する。
ブランドは同じ生地を商社からも提案され、ブローカーやエージェントからも提案されるということがしばしば起きる。
ブランドは、デザインを外部のデザイン事務所に丸投げしたり、企画生産そのものをOEM/ODM業者に丸投げしたり、大手ブランドなら商社に丸投げしたりする。
OEM業者や商社は複数の縫製工場に一部ずつ製造を依頼し、完成後ブランドに納品する。
複雑なルートをなるべく単純化して書いたつもりだが、
実際はさらに複雑な製造ルートをたどることも珍しくない。
生地→商社→エージェント→ブローカー→ブローカー→複数のルートに枝分かれ→追跡不能→ブランド
というような流れが日常的に起きている。
このため、この取材企画はボツになってしまった。(笑)
繊維アパレル業界は、このように仲介業があちこちに介在して商品が出来上がるという重層構造で成り立っている。このためいたるところで中間マージンが発生する。ただし、高額商品は売れないので、店頭価格に上乗せすることはできずに製造原価をさらに切り下げて店頭価格を維持することになる。
非効率的だし、本当に良い物はなかなか生まれにくい業界構造である。
しかし、反面、少ない売り上げを多数の業者が分かち合うという「ワークシェアリング」の側面もあるのではないかと最近思えてきた。
大儲けはできないけれど、少ない収入をみんなで分け合う業界。ともいえる。
というのは少し誉めすぎか。