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南充浩 オフィシャルブログ

委託販売を止めない限り、大阪伊勢丹は上向かない

2011年10月31日 未分類 0

 もう紙面でご存知の方も多いだろうが、JR大阪三越伊勢丹が初年度売上高目標を200億円も下方修正した。

流通ニュースから引用する。
http://www.ryutsuu.biz/strategy/d102823.html

JR大阪三越伊勢丹の年間売上目標を下方修正すると発表した。

当初計画の550億円を350億円に引き下げた。5月4日の開業から9月末までの累計売上高は152億円で、来場者数は1600万人だった。

同社は、「独自性を打ち出した売場作り(自主編集売場)を展開したが、商品の置き方が分りにくいという声もあり、大阪では浸透しなかった。三越伊勢丹のスタイルが受け入れられなかった」と説明した。

一方で、隣接するファッションビル「Lucua(ルクア)」の年間売上目標は当初の250億円から320億円に上方修正した。9月末までの累計売上高は160億円、来場者数は2070万人だった。

とのことである。

開業3カ月後の7月末時点でJR大阪三越伊勢丹(以下:大阪伊勢丹)の売上高は104億円であり、このペースで行くと、416億円規模にしかならないと、以前にこのブログで書いたことがある。
しかし、その予想は外れ、さらに売上高の低いペースで推移したことがうかがえる。

さて、大阪伊勢丹の敗因は何であろうか?
流通ニュースの記事中にあるように「自主編集売り場の陳列の問題」だったのだろうか?
筆者は違うと思う。

大阪伊勢丹の売り場作りはかなりレベルが高く、他社店舗の勉強にもなるレベルである。
敗因は売り場作りではなく、ブランドラインナップがあまりに陳腐すぎたことである。
近隣に阪急百貨店梅田店、大丸百貨店梅田店という競合が犇めいており、思うままにブランドが集まらなかったという背景はあるにしてもあまりにもラインナップがショボすぎた。

これは筆者の独断と偏見ではなく、近隣の商業施設関係者数人の意見でもある。

3月の記者会見で配布されたプレスリリースから見てみよう。
地下1階には2つに分断されたまったくパワーのない「イセタンガール」がある。
ここには「バーバリーブルーレーベル」「トゥビーバイアニエスベー」「リッチミーニューヨーク」「ペイトンプレイス」「ディアプリンセス」の5つが記されているが、どれも新鮮味があまりない。
「バーバリーブルーレーベル」は底堅い人気があるものの、ピークをとうに過ぎている。
「ペイトンプレイス」はバブル期以降まったく振るわない。「ディアプリンセス」は90年代の神戸エレガンスブーム終焉とともに忘れ去られたブランドである。

3階のコンテンポラリー婦人服売り場は「シアタープロダクツ」「コズミックワンダーライトソース」「トリコ コムデギャルソン」「アナスイ」などのデザイナーズ系のブランドが主体だが、百貨店に来る年配客にはまったく響かない。

4階のベーシック、キャラクター婦人服は「23区」「ザ・ビューオブアンタイトル」という何の変哲もないオンワード樫山とワールドのいつものコンビであり、その横にボーイズの「Bショップ」がある。「Bショップ」は現在好調なブランドだが、このラインナップに加えるべきブランドではない。もっとナチュラルベーシック系のブランドを集積した場所がふさわしい。

自慢だった8階のイセタンメンズには、「バリー」「ダンヒル」「バーバリーロンドン」「アクアスキュータム」「ヒッキーフリーマン」などが並んでおり、バブリーな香りしかしない。

現在、大阪伊勢丹も巻き返すべく、ブランド構成を変える取り組みが始まっているという。
おそらく、希少性の高いブランドを誘致して、自主編集化しようと考えているのではないかと推測するが、それの実現は難しいだろう。
なぜなら、希少性の高いブランドは企業規模が小さい。
その場合、百貨店の最大の弊害である委託販売という取り引き形態が障害となる。

どういうことかというと、百貨店の取り引きはほぼ委託販売である。買い取り率は数%程度だ。
委託販売というのは、売れた枚数だけ小売店側がメーカーに代金を支払うというシステムであり、売れ残った物はメーカーに返品できる。
そうすると、期末には大量の返品が発生することとなる。
先述したオンワード樫山やワールドのような大手企業なら1店舗分くらいの返品は吸収できる。
しかし、年商規模数億円や10億円程度の中小企業ではその返品を吸収することはできない。そのため、中小企業は百貨店との委託販売を嫌がる。

さらに突っ込んで言えば、
先日、小島健輔さんがブログで指摘された通り、
「買い取らないなら編集するな!」ということである。
http://www.apalog.com/kojima/archive/816

文中から引用させていただくと

編集手法は買い取り商法のセレクトショップや欧米の百貨店で発達したもので、自ら品揃えと補給、在庫運用と販売管理を貫徹する者ならではの技術体系なのです。買い取らないで編集するなど権利と義務のはき違えもいいとこで、独占禁止法上の優越的地位の濫用さえ疑われます。

消化仕入れのブランドを編集すればブランド側の補給と販売管理を阻害して売り難い売場になってしまいますから、効率的とも言えません。編集するのは買い取り商品に留め、消化仕入れのブランドは箱展開かコーナー編集に割り切るべきでしょう。『買い取らないなら編集するな』が鉄則だと思います。

ということになる。

以上のことから、
今回の大阪伊勢丹は負けるべくして負けたと言わざるを得ないし、希少ブランドを誘致してラインナップを変え、売り場を活性化させるというプランは委託販売を止めない限り無理である。

百貨店という業態の限界が露呈したと言い切りたい。

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