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インナーダウンを探してユニクロめぐり

 昨日が仕事納めの企業も多かったので、このブログは今日で年内最後の更新としたい。
年明けは1月5日から再開の予定である。

さて、先日、清水の舞台から飛び降りるつもりで3990円に期間限定値下げしていたユニクロのインナーダウンジャケットを2枚購入してみた。

今回、購入するにあたって大阪市内の大型店を何店舗か廻ったのだが、予想以上に消化されており、その売れ行きに驚かされた。

まず、当日廻った店舗のリストである。

大丸梅田店
ヨドバシカメラ梅田店
ユニクロ心斎橋グローバル旗艦店
ユニクロなんばシティ店

それとその前日くらいにユニクロあべのキューズモール店

である。

4店舗を一日で廻ったのだが、この商品が一番残っていたのは大丸梅田店である。
メンズは黒、紺、オリーブ、グレーの4色展開だが、4色ともサイズもそろっていたし、各サイズとも枚数がそこそこ残っていた。しかし、紺色のMサイズは欠品していた。
黒、オリーブ、グレーはM~XLまでそろっていた。
結局筆者が購入したのはこの店である。黒と紺のLサイズを購入した。
紺色は最後のLサイズだった。

ヨドバシカメラ梅田店は各色とも残り枚数が少なかった。
とくに紺色はXLサイズが1枚残っていただけだった。

心斎橋グローバル旗艦店もほとんど在庫がなかった。
紺色は全滅。あとはXLサイズが各3枚ずつくらい残っていた程度だった。

なんばシティ店も紺色は全滅。
あとの各色もXLサイズが10枚ずつ残っていた程度だった。

その前日に行ったあべのキューズモール店は全色全滅。

ざっとこんな具合で、その人気ぶりに驚かされた。
これは想像だが、通常のウルトラライトダウンよりも生産枚数が少なかったのではないか。

ここまで調べると、こちらも意地になるので、ユフラ上本町店にも電話で在庫確認をしてみた。
ユフラ店も在庫がほとんどないという答えだった。

とくに紺色の人気が高い。
Mサイズはオンライン通販でも品切れしていた。
(12月26日の時点ではXLしか残っていない)

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(一番人気の紺色)

今回の結果を踏まえると、来年は大増産となるのだろうか?
少なくとも今年よりも生産枚数は増えると考えられる。
あとは色バリエーションが増えると予想される。

ユニクロに検討してもらいたいのは袖口は現状のゴム入りで絞るのが妥当なのかどうかという点である。
レディースのインナーダウンの袖口はゴムで絞っていない。

どちらの方が着用しやすいのだろうか?

いやはや、それにしてもこれほど探し回らねばならないほどの売れ行きとはまったく予想できなかった。
ヤレヤレ。

皆様、良いお年を~。

ユニクロのインナーダウンを買ってみた

 今日で仕事納めという会社も多い。
年の瀬ということで今回はちょっとお気楽に書いてみたい。

先日、清水の舞台から飛び降りるつもりでユニクロのインナーダウンジャケットを2枚買ってみた。
25日までの期間限定価格で3990円(税抜)に値下がりしていたからだ。定価でなら買っていない。

ユニクロでの正式名称は「ウルトラライトダウンコンパクトVネックカーディガン」(長ッ!)である。

黒と紺のLサイズを買ってみた。
試着するとMサイズでも着れたのだが、ボタンを留めると胸がちょっと引っ張られて不恰好なのでLサイズにしてみた。
何故、2枚買ったかというと、筆者は黒と紺を組み合わせることが苦手なので、黒は黒・グレー系、紺はグレー・茶系と合わせることを常としている。
そのため、黒いアウターに合わせるのと紺のアウターに合わせるために黒と紺の2枚のインナーダウンを買った次第である。

正式名称がバカ長いので以下、インナーダウンとするが、これの使い道として、

1、上からコートを着用するには分厚すぎる生地で作られたジャケットのインナー
2、真冬に着用するには薄すぎるジャケット類のインナー
3、ニットアウターのインナー

があると考えられる。

筆者はニットアウターが好きで、何枚か持っている。
しかし、ニットアウターは着用できる時期が短い。
真冬は風を通すから着用するにはつらい。
また秋口は暑すぎて着用できない。
必然的に無風状態の晩秋か、無風状態の春先という極めて限られた条件でしか着用できなかった。

インナーダウンを利用することで手持ちのニットアウターの着用機会を増やすことができそうだ。

今回は、手持ちの格安衣料で、インナーダウンとニットアウターのスタイリングをやってみる。
まあ、スタイリストの真似事であるのでご笑納いただければ幸いである。

これまではニットアウターにはダウンベストを合わせていたが、これも実用的ではない。
「袖が寒いよ~」という状態であり、これで外出するのはなかなか勇気が要った。(笑)

写真 11

(袖が寒いよ~の状態)

で、1つ目

無印良品で一昨年の正月に買ったチャコールグレーのローゲージニットテイラードに黒のインナーダウンを合わせてみた。

ちなみにこのニットジャケットは5900円くらいに値下がりしていたものである。

写真 5

ニットジャケット5900円くらい
インナーダウン3990円
レイジブルーで1000円に値下がりしていたギンガムチェックシャツ
無印良品で1900円に値下がりしていたホワイトグレーのストレッチスリムパンツ

2つ目
ヤマトインターナショナルのファミリーセールで4000円くらいに値下がりしていた「カーニーハウス」ブランドのフェアアイルローゲージカーディガンに紺のインナーダウンを合わせてみた。

写真 4

カーニーハウスのフェアアイルニット4000円くらい
無印良品で1000円に値下がりしていたギンガムチェックシャツ
2990円に値下がりしたときに買った+Jのジーンズ

3つ目
数年前に買った無印良品の紺のニットジャケットに紺のインナーダウンを合わせてみた。
価格は確か4900円くらいに値下がりしていたと記憶している。

写真 3

合わせたのは
ライトオンで1900円に値下がりしていた「バックナンバー」のデニムシャツ
ライトオンで1900円に値下がりしていた「バックナンバー」の赤いストレッチスリムパンツ

4つ目
数年以上前にGAPで購入したスタンドカラーの黒いニットアウターに黒のインナーダウンを合わせてみた。
このニットアウターは破格値で、2900円に値下がりしていたので購入した。

写真 2

合わせたのは
ライトオンで1900円に値下がりしていた「プラスワン」のオックスフォードクレリックボタンダウンシャツ
(画像では見えにくいがボディが白で、襟が紺色という珍しい色合わせである)

ライトオンで1900円に値下がりしていた「バックナンバー」の花柄迷彩柄のストレッチスリムパンツ

ざっとこんな感じである。

さっそく年末年始にこれで外出してみて、寒さが防げるかどうかを体感してみたいと思う。

こちらからは以上です。

良い物が売れるとは限らない

 製造と販売は両輪である。
いくら良い生地を使っても売り方・見せ方が下手くそなら売れない。
また製造の中でも素材とデザイン(パターンも含む)は両輪であり、いくら良い素材を使ってもヘンテコリンなデザインやモサっとしたあか抜けないシルエットならその洋服は売れない。

産地の製造加工業者の中には自らが従事している生地を過剰に重視しすぎる企業がある。
例えば「うちの生地は良いから、ちょっと不味いデザインでも見栄えが良くなる」というような口上を産地業者が述べることがある。
まあ、セールストークの一環なのだろうが、ちょっと実際には当てはまらない。

最高級のナンタラという生地を使っていてもデザインが良くなくて、シルエットがあか抜けていないとその商品は売れない。消費者は別に生地が買いたいわけではない。
生地が買いたければユザワヤかトラヤに買いに行っている。

その原因はさまざまあろう。

まず、産地の製造加工業者の多くが製品作りについてあまり詳しくないことだ。
また販促、広報にも詳しくない。
必然的に狭義の意味での職人的に己が手掛けている商品のみに没頭するということになる。

それに加えて、識者と呼ばれる人々が生地作りを神格化しすぎているということもあるだろう。
過剰な神格化は生地作りに弊害をもたらすのみである。

繊研プラスに掲載されたこの記事にもそういう弊害を見てしまう。

http://www.senken.co.jp/news/cool-japan-chizai/

さて、これは講演の一部であり、しかも続きは紙面でないと読めないので、掲載された部分のみを持って判断することはできない。
また、講演なので記事化されていない前後の文脈もあるだろうし、限られた時間内で数多くある要因すべてを語りつくすことはできないから特定の部分を集中的に語らざるを得ない。

これらを踏まえたうえでそれでも過剰な物作り賛美は害悪だと感じる。

アパレル業界はずっと価格ダウンの方向できた。マーケットは変わっているのに業界は変わっていない。産地を回ると「日本のブランドはわれわれに目を向けてくれない」といわれる。欧州のラグジュアリーブランドはもちろん、中国・韓国の企業でも産地に買い付けにくるのに、日本の企業だけ買ってくれない。来ても価格のことしか言わないと嘆いている。

 ダウンウエアで有名なフランスの人気ブランドは、北陸の技術を活用している。韓国の企業がその北陸の企業の素材を買い付け、製品化して中国で販売している。日本企業だけが目を向けない。だから日本のアパレル企業はみんな中国で苦戦している。

 回転すし屋を例にとると、その生き方は二つ。冷凍マグロを使わず原価の高い本マグロを薄く小さく切って使うか、冷凍マグロをぶ厚く切って使うか。今のアパレル業界は冷凍マグロを薄く小さく切って使っている。だから売れない。アパレル企業もいいものを使うか、安いものをたっぷり使うか、どちらかの方向に行くべきだ。

とある。

この考え方をまとめると「良い物は売れる」と言っているに過ぎないように見える。
あくまでもこの文面だけで判断した場合である。

しかし、世の中には売れない良い物は山ほどある。
売れない良い物は何かが足りないのである。
それは消費者ニーズをとらえきれていない、消費者ニーズを示唆できていない、広報PRが不十分である、販促手法が下手くそである、市場価格にマッチしていない、生地の見せ方が下手くそ、などなどの要因が考えられる。

この文面だけを読むと、日本のアパレルは高い物を売らないからダメだと読める。
高い物を売るためには、販促も広報もPRも必要だし、そもそもブランドを認知させないといけない。
また展示会での生地の見せ方・ディスプレイも上手くないとダメだ。
例えばルイ・ヴィトンやシャネル、グッチなどのラグジュアリーブランドが国内産地の生地を使っていることはよく知られている。
ちなみに彼らは国内の生地工場まで定期的に視察に来る。
日本の大手アパレルブランドで産地工場に見学に来るところが何社あるだろうか。

その部分で大手国内アパレルが取り組み姿勢からして海外ラグジュアリーブランドの足元にも及ばないのは事実である。

しかし、価格帯でいうなら、海外ラグジュアリーブランドと同等価格で販売できる国内ブランドがいくつあるだろうか。また、それ並みの価値を正しく発信できているブランドがいくつあるだろうか。
そこを同等にして市場を論じるべきではない。

また一口に国内産地生地といっても価格はピンキリだ。

デニム生地なら国内産地の定番生地を使えば1メートル700円内外である。
2メートル使っても1400円。
あと縫製や加工、副資材のコストを乗せても4000円以下でジーンズを国内製造することができるだろう。

一方で他の生地なら1メートル2000円、3000円、4000円なんていう生地もあるし、1万円近い生地もある。
1メートル3000円の生地で製品と作ったとして用尺2メートルなら生地代だけですでに6000円である。
そんな生地をおいそれと使える国内ブランドはごく少数だろう。

例として北陸の合繊が挙げられているがフランスのダウンブランドは一体何万円で販売されているのか。
また合繊は他の天然繊維系生地に比べて単価が安いから韓国ブランドでもロットさえまとまれば使用可能だろう。
天然素材系の生地と同列には論じられないのではないか。

「冷凍マグロを薄く切って使っているから売れない」というクダリは「良い物を使っていれば売れる」と読める。
まあ、それ以外にも「安い物をたっぷり使うべき」という示唆もあるが、具体的に衣料品作りに落とし込んだときにどうあてはまるのかはあまりよくわからない。
洋服には決められた用尺があるからそれ以上に過剰に使用する必要もない。

筆者はこれまでからも何度か書いているように、産地の製造加工業者は圧倒的に売り方・見せ方・発信方法を学ぶべきであると考えている。

売り方・見せ方・発信方法が下手だから売れないし伝わらない。
良い物が良い物に見えないし、そもそも発信していない企業も数多くある。
2年もウェブサイトを更新していなかったり、そもそもウェブサイト自体がなかったり。

国内の大手アパレルが硬直的な考え方をしていて展望が開けないのは事実だが、そこに向けて売りたいのなら、そこに向けた発信をすべきだろう。
産地の生地を使えばどういうメリットがあるのか。

価格なのか、品質なのか、独自の開発姿勢なのか、ブランドと一体で商品づくりに取り組む姿勢なのか。

それを発信しないことには、国内の大手アパレルは動かないだろう。
一概に国内アパレルだけが悪いとは言い切れない。

また国内生地が売れない原因の一つには百貨店という販路にもある。
百貨店の歩率が高すぎるから原価率は25%以下でないとブランド側に利益が出ないと言われている。
百貨店向けアパレルのOEM生産を手掛けている知人は実際に「原価率は20%前後でないと採算に乗らない」という。
百貨店のビジネス形態を放置したまま、アパレル側に高額生地を使えとハッパをかけたところで何の効果もない。

国内の生地産地が大きく飛躍するためには、筆者は「良い物は黙っていても売れる」「良い物を使わないから売れない」という精神論から脱却すべきであり、百貨店を含めた販売側、ひいては業界構造自体の再構築も考える必要がある。精神論だけで良い物が売れるならだれも苦労はしない。

インナーダウンの変遷

 今秋冬の最大のヒットアイテムはインナーダウンだろう。
チェスターフィールドコートは前評判は高かったが寒さ対策という実用面で頼りないためか、メディアが期待したほどではなかった。

インナーダウンというのは、アウターの下に着用する薄手のダウンベスト・ダウンジャケットのことであり、今秋冬は立ち襟なしのデザインの商品がユニクロをはじめとする各ブランドから発売されている。

個人的には立ち襟無しのインナーダウンは、あくまでもインナーに着用すべきで、アウターとして着用してサマになるのはイケメンに限られると感じている。そう、文字通り「ただしイケメンに限る」である。

ユニクロのウェブサイトから画像をお借りする。

こんな感じでインナーに着用すると着こなしとして目新しさがある。

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一方、アウターとして着用すると、なんだか間が抜けている。
外国人のイケメンモデルさんが着用してさえ間抜けな感じがするのだから、イケメンでない一般人が着用したらどれほど間抜けに見えるのだろうか。
イケメンにはほど遠い筆者なんて完全にアウトである。通報されるレベルになりそうだ。
ジャケットよりはベストの方がまだマシに見える。

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さて、このインナーダウンへと至る経緯はちょっとおもしろいと感じる。

もともと本格的なアウトドア用品としてインナーダウンは存在していた。
冬高山登山では保温のために分厚いダウンジャケットの下に薄手のダウンジャケットを着用していた。
これがインナーダウンの正式な用途である。

薄手なので重量は軽い。
ここに目を付けたブランドがタウンユースのアウターとして提案し始めた。
寒冷地方でない限り、分厚いダウンジャケットはそれほど必要ではない。
電車移動が多い都心部なら軽量ダウンで十分ではないか。
そんな意図があったのだろうと想像する。

加えて厚手のダウンジャケットはモコモコしていて太って見えてスタイリッシュではない。
ミシュランマンみたいになってしまっている人も多数見かける。

薄手の軽量ダウンならそれらに比べるとスッキリして見える。

そうこうしているうちに薄手の軽量ダウンを圧倒的に広めたのは今回もユニクロである。
ジャケット5900円、ベスト3900円という低価格が武器になった。

ユニクロが広めると、いつもの逆ランチェスターの法則が発動して、衣料品においては弱者である量販店・GMSが追随してさらに広まった。
そして、よく意味の分からない軽さ競争が始まる。
軽ければイイという不思議な競争で何の意味があるのかはまったくわからなかった。
50グラムくらい軽かろうと重かろうと実際着用するにはあまり関係がない。

しかし、アウターとしての軽量ダウンは行き詰まりを見せた。

①ダウン原料の高騰
②数年に及ぶ軽量ダウン販売で消費者に行き渡ってしまったこと
③ダウンジャケットをアウターに使ったスタイリングに限界があったこと

の3つが挙げられるのではないか。

①も②も深刻だが、③も深刻で立ち襟のダウンジャケットをアウターとして着用した場合、どうしてもスタイリングがカジュアルかスポーツかになってしまう。
一部ではテイラージャケット型のダウンジャケットも開発されたが、立ち襟型に代わるほどは広まらなかった。

ダウンジャケットを使った新しい着こなしはないのかと思われていたが、昨年あたりから薄手ダウンジャケットをジャケットやコートのインナーに使おうという提案が始まった。
ユニクロもディスプレイではウルトラライトダウンをジャケットやコート、フリースのインナーとして使用し始めた。

羽毛布団と毛布の正しい使い方がある。
寒くなると掛布団として羽毛布団と毛布を使用する人も多いが、
毛布の上から羽毛布団を掛けるのはあまり効果がない。

羽毛布団の保温性を高めるために、羽毛布団の上から毛布を掛けることが正解なのだそうだ。

ダウンの上からコートやジャケットを羽織るのはこれと同じ理屈であり、原理として正しいといえる。

軽量アウターとして注目を集めたインナーダウンが、ようやく本来の用途であるインナーに戻ってきた。

そして今秋冬は襟なしのインナーダウンとして変化した。
立ち襟がなくなったということは完全にタウンユースのインナーアイテムになったと捉える方が適切だろう。

立ち襟というディテールは元来アウトドアに向けたものである。
ライダースジャケットしかり、遊牧民であった女真族の民族衣装の旗袍しかりである。

ダウンをインナーにすることでアウターのコーディネイトバリエーションが楽しめるようになった。
スポーツ・カジュアルだけではなく、トラッド、ドレッシーなコーディネイトも可能になる。

また、今まで着用法に困っていたアウターも復活させることができる。
例えば、コートを上に着るには分厚すぎるが、それ1枚では寒いというジャケットもインナーダウンを着用すれば真冬でも大丈夫になる。
逆に真冬に着るには薄すぎるアウターもインナーダウンを着用すれば着用期間が延びる。

そんな効果も期待できる。

インナーから始まって軽量カジュアルアウターとなり、デザインを変化させてインナーに回帰したという変遷はなんとも面白い。

福袋についてのアレコレ

 さて、クリスマス間近だが、筆者にはあまり関係ない。

クリスマスが終わると店頭は途端にお正月向けに変わる。
毎年のことながら、この変わり身の早さは見ていてすがすがしさを感じる。

お正月というと、恒例の福袋販売だが、今回は福袋について見てみたい。

元来、福袋は売れ残りの在庫品を詰め合わせて販売していた。
これはそれほど昔の話ではない。10年くらい前まではそういうショップが多かった。
その昔、筆者も一度買った経験があるが、正月の福袋に夏物の半袖衣料品が数点入っていた。
結局のところその時期に仕えそうなアイテムは2点ほどで、3点以上あれば儲けものだった。

これが現在では、色柄、サイズ別に分けられており、その時期に仕えそうなアイテムばかりだということは周知の事実である。

なぜ、こんなことができるかというと、多くの場合は福袋用のアイテムをわざわざ製造しているからだということも良く知られている。

ただし、中には本当に在庫をある程度の枚数を詰めている福袋もある。
筆者が知る限りにおいては、ジーンズチェーン店の多くは実際に店頭で一定期間販売した在庫を詰めている割合が高い。
とは言ってもその場合も福袋用に何点かは製造・仕入れしているようだが。

一方、セレクト系やトレンドSPA系の福袋はほとんどが新造品で占められている。
中には在庫品が混じっていたりもするが、それはよほど売れ行きが悪くて大量に残ったアイテムである。

ただし、いずれの場合も10年くらい前の福袋のように、夏用の半袖アイテムは1枚も入っていない。

2~3年前に、某有名セレクトショップ(実質は疑似SPA)のメンズ福袋と、某無名メンズブランドの福袋の中身がまったく同じなのに値段が全く異なるということでネット上で話題になったことがある。
某有名セレクトショップの福袋が1万円で、そのメンズブランドの福袋が数千円だった。その価格差がずいぶん話題になった。

なぜこんな現象が起きるかというと、

一つは同じODMメーカーに福袋の製造を両社が依頼していた可能性がある。
もう一つの可能性は、某セレクトショップがこのメンズブランドにODM生産を依頼していた可能性である。

この二つしか可能性はない。

ネット上ではこのメンズブランドがセレクトショップにODMを依頼したのではないかという推測も流れていたが、その可能性は極めて低い。

なぜなら、無名ブランドが大手セレクトショップにODMを依頼する事例は業界では存在しない。
必ず逆である。大手セレクトが無名ブランドにODMを依頼するのである。
だから大手セレクトが無名ブランドからODMを依頼されたという可能性は除外して考えるべきである。

ところで、新造品にもかかわらず、どうして福袋アイテムに値札が付いているのかという疑問がある。

これについていつものブログで解説されているのでご紹介したい。

福袋の裏話
http://ameblo.jp/knitkitchen/entry-11963330744.html

つまり、

本来ショボい商品なのを

あたかも「高い」商品が

大幅に安くなっている印象を

消費者に与えたいが為だけに

わざわざ、

ありもしない「元値」が記載された

「下げ札(タグ)」を付けているんですね。

というのが結論である。

福袋用の新造品(店頭での販売実績がない)にもかかわらず、高めの価格を表記した値札が付いているのは、いわゆる「二重価格表示」にあたるので下手をすると景品表示法違反の可能性が極めて高い。

これはこのブログが指摘する通りである。

過去に販売実績がある不良在庫品の値札が定価で表示されていることは景表法違反にはならない。
だからそのアイテムは合法的であるが、福袋用の新造品にもかかわらず高価格を値札で表示するのは景表法違反になる可能性が高いということである。

そんなわけで、年始も楽しい福袋ライフをお過ごしください。

「消費者にニーズを教える」ことが必要

 肌着には大きくわけて、2つの柱がある。
一つは春夏向けの吸水速乾肌着、もう一つは冬向けの保温肌着である。
12月に入って立て続けに寒波が襲来していることから、保温肌着はまずまずの動きだが、今春夏は概して吸水速乾肌着の動きが悪かった。

ポリエステルなどの合成繊維を組み合わせて、通常の綿肌着よりも吸った汗を早く蒸散させるのが吸水速乾肌着だが、今春夏に苦戦したのは消費増税の影響ではないと感じる。

1、すでに数枚以上持っている
2、ここ数年使い続けることで吸水速乾機能に魅力を感じない人が増えた

この二つが理由ではないかと考えられる。

しかし、すでに数枚以上の吸水速乾肌着を持っているから売れないというのは一見もっともなようだが、同じ条件である保温肌着は今冬もそれなりに売れているから、実は正しい答えではないのかもしれない。

個人的には、2の理由が正解なのではないかと考えている。

ここからはあくまでも個人的な体験と感想である。

吸水速乾肌着は綿100%肌着に比べて、たしかに汗を吸った濡れた状態でも肌に貼り付くことがない。
また乾燥する時間も短い。洗濯をして干してみればわかる。それだけ急速に水分が蒸発しているということになる。逆にその機能が着用者にとっては邪魔になるのではないか。

というのは、吸水速乾肌着を外着として着用している分には快適である。
汗をどんどん吸って水分をどんどん蒸発させてくれる。
しかし、肌着1枚で外出する人はそう多くない。ビジネス・カジュアルを問わずに必ず上にもう1枚衣服を着用する。

半袖シャツやポロシャツを着用したり、もう1枚Tシャツを重ねたりする。

そうするとどうなるかというと、通常の綿100%肌着を着用したときと比べて、上に重ねた衣服への汗染みが激しくなる。
筆者は真夏に吸水速乾肌着の上に、紺色の半袖シャツを着たことがある。
筆者は汗かきなので真夏は大量の汗をかく。
吸水速乾肌着がどんどん水分を蒸発させてくれたのは良いが、上に着た綿100%の紺色のシャツがその水分をどんどんと吸収して、ずぶ濡れみたいになってしまった。

綿100%肌着だとここまでの汗染みにはならない。

吸水速乾肌着を着用する場合は、上に重ねる衣服にも吸水速乾機能が必要なのではないかと考えるようになった。

この部分で吸水速乾肌着が着辛いと考えた消費者も増えたのではないか。

また、保温肌着を着用すれば冬の寒さは軽減できるが、吸水速乾肌着を着用しても夏の暑さは軽減できない。
だから吸水速乾機能は必須機能だとは感じられないという消費者も多いのではないだろうか。

その部分を考慮すると、真夏に必要なのは「汗を吸収すれば温度が下がる肌着」ではないだろうか。
肌着そのものが2,3度冷えるみたいな機能があればこれは真夏の必須アイテムになるのではないか。
吸水速乾機能は綿100%と同等程度で良いだろう。
そんな機能繊維の開発が可能なのかどうかはわからないが。

さて、先日某肌着メーカーのトップから話を聞く機会があった。

なかなか意欲的な方なのだが、その中でこんな一節があった。
「消費者ニーズに合わせた商品提案を」というもので、まあ、肌着に限らずアパレル企業各社は口をそろえたようにそう言う。

ここからは言葉遊びのような部分もあるが、部外者の戯言として適当に参考にしてもらいたい。

今まで、バブル崩壊くらいまでは、消費者ニーズに合わせた商品提案を行えばそれなりに商品は売れた。
しかし、今は消費者ニーズに合わせた商品提案ではあまり売れなくなっている。

今、求められているのは、「消費者にニーズを教える」「消費者にニーズを知らしめる」という姿勢の商品提案、商品開発であろう。

これを行ったのがかつてのSonyであり、ジョブスが君臨したころのappleだといわれている。

平たくいうと、「あなた方が欲しいのはこういう商品、機能ではないですか?」という姿勢である。
消費者ニーズに合わせるという姿勢は、すでに出回っている商品の後追いということになり、ひいては価格競争に陥りやすい。
なぜならば、似たような商品がすでにあるわけだから、それよりも価格を下げなくては売れにくくなる。

翻って衣料品で考えるなら、肌着のような機能を求められる商品なら「まだ市場に出回っていないけど、こういう機能があれば便利でしょう?」「こういう機能を求めていたのではないですか?」という姿勢が必要になる。

またファッション衣料なら「こういうコーディネイトは新しくて面白くないですか?」「こういうファッションで過ごすと楽しい生活になりますよ」「ファッションにこういう機能性がプラスされたならより快適ですよね?」という提案が必要になる。
決して「パリで流行ってる〇〇」とか「ニューヨークで話題の〇〇」が最大のセールスポイントではない。それなら、どれだけ早くそれを持ち込むかというだけの競争になり、持ち込み競争に負けると後は価格競争になる。

ここ20年間の日本の衣料品業界はその繰り返しではなかったか。

まあ、言うは易く行うは難しなのだが、そういう考えを念頭に置きながら商品開発を行うのとそうでないのとでは、いずれ結果が異なってくるだろう。

メディアへの露出効果が単発で終わる理由

 昨今、国内産地の製造加工業者が大手メディアに取り上げられることが増えた。
テレビ番組やファッション雑誌、経済誌、大手新聞などである。

取り上げられたことは喜ばしいが、その効果は意外に早く沈静化してしまう。

過去に筆者がプレスリリースを作成することでかかわった産地企業が何社か存在するが、たまに大手メディアに取り上げられた。それによって、次々とほかのメディアで取り上げられるかと期待したが、そんなことはほとんどなかった。

オリジナル商品が取材されたこともあったが、それによってその商品が爆発的に売れたかと言うと、そんなこともなかった。

その後、忘れたころにまた散発的にメディアに取り上げられる。
そんな感じである。

読者の方々は原因はなんだとお考えになるだろうか?

その原因の一つとして、普段からの情報発信が足りないということがある。
例えば自社のウェブサイトをまったく更新していない。そもそも自社サイトがない。
自社のブログがない。メディアにニュースリリースを発送していない。

これらのことが考えられる。

どんな人気番組に取り上げられたとしてもその放送は一度きりで終わる。
録画した人がいたとしてもそれを繰り返し何度も見る人はあまりいない。
となると、視聴者の記憶からはすぐに忘れられる。
おそらく、取材したメディア側からもすぐさま忘れられる。

消費者からもメディアからも忘れられないために今ではウェブサイトやブログがあるのだが、
それが2年前から更新されていないとか、そういうものがそもそも存在しないという状況なら、メディア露出の効果はそこでお終いである。
また一度きりの取材でその商品の魅力をすべて伝えることは不可能だから、自社サイトやブログでの説明し続けることが必要になる。そうでないと商品は売れない。

また取材した大手メディア側も日々次々と取材対象が現れるため、1年前に1度だけ取材した産地企業のことなんて、よほど印象的でない限り放送日が終われば忘れてしまう。
その人が忘れていなくても担当者が異動すれば新しい担当者にはほとんど引き継がれない。

だから定期的に新商品情報とかイベント開催情報などのニュースリリースを送付する必要がある。

頻繁にリリースが来れば正直なところ「またかよ」と思われないかと心配する方もおられるが、心配無用である。
「またかよ」と思われた方が忘れられるよりも何億倍もマシだ。

これを端的にまとめているブログのエントリーを紹介したい。

テレビに出たからって自社の商品が売れるとは限らない。
http://tanpan.jp/blog/archives/3191

社長がなぜバスローブ姿なのかは置いておくとして、

それにしても、最近はアパレル関係の会社がちょくちょくテレビに出てます。もちろんメディアに出れば、注目はされますけど、それが商品に結びつくか?と言ったらそうでもない。あの天下の百貨店とコラボして、全国放送のテレビに出てたって、注文数は数十枚と聞きました。

大事なのは、マスメディアとソーシャルメディアを組み合わせること。

でもテレビに出ただけじゃダメ。発信してたからです。ひたすら。だって発信してなくちゃ、受け皿がないワケですから。そして発信してもらうこと。紹介してもらうこと。

とある。

まあ、平易な言葉で書かれているがそういうことである。

もちろん、大手メディアへの露出効果はある。
売れることもあるが、売れないこともある。
意外だが、売れないことの方が確率的に高い。

10年前までは自社からの発信というのはほぼ不可能だった。
メディアに取材してもらう必要があった。
機関紙や広報誌作成という手段もあったが、結構な費用が必要となる。
現在ではブログも含めたSNSでの発信はほぼ無料でできる。
そういう意味では企業側もずいぶんと発信しやすくなっている。

もうなんなら、産地企業の社長が毎日バスローブ姿の写真を掲載しても良いのではないかと思う。(笑)
それくらいインパクトがあれば良くも悪くも何らかの反応がある。

そんなわけで、メディア露出をどうやって商品の販売、次のメディア露出につなげるかということをせっかくの機会なので各社で考えてみてもらいたい。

41億点の中から選ばれるためには

 たまにはデータ紹介をしてみようと思う。

同じ記事だが、オリジナル版と転載版では少し掲載部分が異なる。

まず、繊研プラス

日本の衣料消費市場の規模は?
http://www.senken.co.jp/news/data-fb/

本当の記事タイトルは「データで見るファッションビジネス」なのだが、紙媒体はやっぱり見出しの付け方が迂遠だと感じる。ウェブに掲載する場合はこんな持って回った見出しでは読まれにくい。
もっと直截的な見出しを付ける必要がある。

ファッションスナップドットコム

服の供給量は過去最高の41億点、低価格衣料がシェア拡大
http://www.fashionsnap.com/the-posts/2014-12-16/supply/

こちらの方が分かり易い見出しである。

これはウェブメディア担当者からの受け売りだが、ページを開いた瞬間にざっと全面が見渡せる紙媒体と異なり、ウェブメディアは開いた瞬間には全面見渡せない。
クリックしてもらわなくてはならない。そうした場合、より具体的・直截的な見出しで読者の興味を惹く必要がある。
ファッションスナップドットコムはこの原則に忠実に見出しを付けているといえる。

少しずつ掲載箇所の異なる両記事から要点と思われる個所を抜粋してまとめてみる。

繊研新聞社の調べによると、13年の日本の衣料消費市場の規模は約9兆2000億円で前年に比べて2.4%増加しました。ちなみに過去10年間で見るとピークは07年で、この年と比べれば13年の市場規模は1割程度小さい水準です。

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グラフを見るとわかるが、08年後半に起きたリーマンショックの影響から09年~11年まで衣料品消費は8兆円規模まで激減している。
12年、13年と徐々に回復し、やっと9兆2000億円にまで回復した。

さて、ファッションスナップ版ではこの9兆2000億円という数字が、04年の9兆1500億円とほぼ同等であることに注目している。
そして、その市場規模の内訳については、04年は低価格分野が39・4%を占めていたことに対して、13年は低価格分野が45・5%にまでシェアを伸ばしていることを指摘している。

また13年の洋服の供給量は過去最高の41億点を突破している。

ここで例示されている低価格分野というのはどういう基準で選定されているのかはわからないが、一応額面通りに受け取っておこう。

衣料品消費自体は堅調に伸びている。
しかし、低価格品の需要と供給量は増えており、単価は下がった。

そういうことである。

さて、このデータを基に各社は販売方法を考える必要がある。
まず、衣料品消費自体は伸びる傾向にあるから、積極策を打ち出す方向で良いだろう。
問題は販売価格である。
低価格傾向は間違いがないから、そこに照準を合わすこともマクロな観点から見ると正しいといえる。

けれども、その低価格分野は競争が激しい。またユニクロという絶対王者も存在する。
そこで勝ち目があるのかと言うことになる。

単に「価格を下げました」というだけの商品なら競合他社に埋没してしまう。
また、高額ブランドがセカンドラインなりを創設して「価格を下げただけ」の提案をしても埋没してしまう。

消費者は数えきれないほどの選択肢を保有している。

このデータを見て、アパレル企業のお偉いさんは「だから価格を下げないと売れない」「価格を下げれば売れる」と考えがちだが、単に「価格を下げただけ」では売れないし、価格を下げても貴社の商品が売れるとは限らない。
そこを理解していない。

価格や物のスペックしか打ち出していないブランドはまちがいなく売れない。

低価格品だろうが、高価格品だろうが41億点に埋没しないようにいかに自社の姿勢を発信するかが課題である。
そして共感者を増やす。この作業がいわゆるブランディングである。
同じような商品なら消費者は別にそのブランドで買わなくても良い。もっと安いところで買う。
自社のブランドを買う理由を消費者に与える必要がある。

自社の姿勢や取り組みを打ち出すことはファンも作ることができるが、アンチも作ることになる。
しかし、アンチが発生することを恐れて当たり障りのない発信に終始してしまえば、強烈なファンを作ることもできない。

例えば「新商品入荷しました。価格は〇〇円です。とってもかわいいですよ~」みたいな発信に終始していてはアンチは発生しない代わりに強烈なファンも作ることはできない。
かつての大手総合アパレルがこの数年、軒並み苦戦しているのはこういう要因もあるのではないだろうか。
当たり障りのない打ち出しに終始している各ブランドで、わざわざ服を買う理由がない。

41億点の中から選ばれる商品になるためには、そういう姿勢が必要不可欠だし、企業・ブランド側も「嫌われる」覚悟が必要だと個人的に考えている。

他社と自社の区別ができない

 なんだかんだで産地企業の人と話す機会に恵まれているのだが、3回に1回は驚かされることがある。

例えば製品ビジネスに関して話したときのこと。
某産地企業が有名なA(仮名)ブランドの商品をODMしている。
ODMとはデザインから生産までを請け負うことで、生産のみを請け負うOEMよりもさらに丸投げ度合が進んだ状態といえる。

で、そのノウハウを生かして自社オリジナルブランドも開発したいらしいが、「ブランド」のとらえ方を根本的に間違っていることがわかった。

ODMでもOEMでも構わないが、他社ブランドの製造を請け負っていることを指して「当社はすでにオリジナルブランド展開をしている」とは世間一般的には言わない。
ODMもOEMも他社ブランドの下請け業務にすぎない。

もちろん、その産地企業にデザインや製造のノウハウは蓄積されているが、Aブランドはその産地企業のブランドではない。
あくまでもA社のブランドである。
仮にAブランドのラベルをはがして、産地企業のラベルを取り付けたなら、同じだけの個数が売れるだろうか。
まったく売れないだろう。
多少は売れるかもしれないが、何千個・何万個とは絶対に売れない。
それだけの個数が売れるのはAブランドのラベルが付いているからである。

産地企業が「Aブランドと同じ素材、同じ技法で作っている」といくら叫んだところで無駄である。
産地企業をB社(仮名)とする。

多くの消費者はAブランドの商品が欲しいのであって、同じ素材・同じ技法・同じデザインであってもBブランドは欲しくないのである。
売れているのはAブランドを展開するA社の力によるものである。

欲しくない理由は単にB社の知名度が低いからで、海の物とも山の物とも知れない製品をわざわざ欲しがる消費者はそう多くはない。

過去に何年間もODM・OEMを請け負ってきたとしても、残念ながらB社にはオリジナルブランドを販売するためのノウハウは蓄積されていない。
蓄積されたノウハウはデザインと製造に関することのみであり、デザイン・製造することと販売することのノウハウは別物である。

いくらデザインが良くても売れない物は売れない。
デザインが良いだけで売れるなら、世のデザイナーズブランドはもっと売上高を伸ばしているはずである。

ここの区別がつかないのなら、正直に言ってこのB社のオリジナル製品販売という計画は相当に苦戦するだろう。
苦戦どころの話ではなく、事業そのものが開始できるかどうかすら怪しい。
仮に開始したとしても早晩事業は廃止せざるを得なくなる。

B社経営陣の問題は他社ブランドと自社ブランドの区別がつかないところにある。
その認識でブランドビジネスを開始すれば、下手をすると訴訟沙汰になる可能性も低くない。

しかし、話を聞いているとこういう認識を持っているのはB社に限ったことではなく、何社かそういう産地製造業がある。

オリジナル製品化をするのは産地製造業の生き残り施策の一つとしては不可欠といえるが、こういう認識がまかり通っているなら実行はほぼ不可能だ。

そんなことも含めて定期的に勉強会とかセミナーでも主催してみようかなどと考えている。
どれくらい要望があるのかわからないが、ちょっと企画してみたい。

もし、要望や仕事の依頼があるなら、minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp までご連絡いただきたい。

「服が売れない」のは当然

 一昨日の土曜日に、何を思ったのかメンズノンノの編集者であるH條氏が「久しぶりに一緒に呑みたいから」という理由だけでわざわざ大阪くんだりまで出向いてこられた。感謝である。

で、今月号のメンズノンノもいただいてしまった。
一応、これでも毎月何冊かはファッション雑誌に目を通すようにしているのだが、ファッション雑誌の活用法というのは一般的にはどのようなものなのだろうか。

個人的な活用法を晒させていただくと、筆者は貧乏なので、掲載されているブランドをそのまま買うことはできない。貧乏は今に始まったことではなく、バブル崩壊後から働き始めているのでずっと貧乏であり、貧乏歴は20年くらいになっている。

筆者は、ファッション雑誌に掲載されているコーディネイトを参考に似たようなアイテムをすべて格安ブランドや投げ売り品で実現するようにしている。
最近はあまり雑誌を参考にしたコーディネイトをしなくなったが、働き始めた当初はけっこういろいろなコーディネイトに挑戦していた。(多くは徒労に終わっているのだが)

雑誌のコーディネイト例だと、トータルで10万円超えも珍しくないが、そんなことは脆弱な財政基盤では不可能であるから、なるべく似たようなアイテムをユニクロ、無印良品、ライトオンで調達をする。
その際、定価ではなくセール品か投げ売り品を買う。
この数年、定価で購入した衣料品はない。

あと、補助的にGAP、オリヒカ、レイジブルー、チャオパニックティピー、スーツカンパニー、ジーンズメイトあたりのセール品と投げ売り品を使う。絶対に定価では購入しない。

ざっとそんな感じである。

これだとトータルでもせいぜい3万円程度だし、場合によっては1万円くらいのときもある。
薄着をする夏場だと靴まで合わせても1万円未満のときもざらにある。
防寒着を着用する冬場でも全身合わせて2万円未満の日がほとんどである。

たぶん、所得の多い方は雑誌に掲載されたアイテムをそのまま買っておられるのだろうが、所得が伸びていない若年層の多くは筆者と同様の活用法ではないかと考えている。

以前にも書いたが、某インポートカジュアルブランドの担当者が「最近はファッション雑誌に掲載しても反応が薄い。身の回りの若い子をリサーチしてみると、ブログを参考にしていることが多かった」とおっしゃっていたが、おそらく掲載アイテムの価格と、自分たちの可処分所得とに大きな差があるため、雑誌をあまり参考にしなくなった部分もあるのではないかと推測する。あくまでも一つの要因として。

普段はあまりコーディネイトブログなんて読まないのだが、ふとした拍子に見てみることがある。
低価格品を使ったコーディネイトブログは割合に多く存在し、写真で掲載されているコーディネイトも上手いものが多い。
それでいて、一品あたりの価格は数百円から数千円程度だから、親近感もある。

たとえば、このまとめ記事。

プチプラオシャレ大好き!『UNIQLO(ユニクロ)gu(ジーユー)しまむら』を着こなすブロガーまとめ
http://matome.naver.jp/odai/2140772746436653901

ここに掲載されている写真を見るとコーディネイトは上手い。
普通に生活するならこのレベルのコーディネイトで十分ではないかと思う。
それにこれらをパッと見て「ユニクロだ」「低価格ブランドだ」と分かる人はほとんどいないだろう。
さすがにウルトラライトダウンはすぐにわかってしまうが。

格安商品を着続けていて気付いたことがある。
20年前と比べると現在の格安ブランドの商品は見た目が圧倒的に良くなっている。
いわゆるそこらのブランド品と変わらない。

それは色柄だけのことではなく、シルエットやディテールなども含めてのことである。
20年くらい前だと色柄は良かったとしても、シルエットが違っていたりとかちょっとしたディテールが異なることが多かった。だから「やっぱり安物はダメだ」ということになったのだが、現在はその差がほとんどない。

そのブランドが多くの人から憧れを持たれているなら別だが、そうでないなら、多くの消費者にとっては、「似たようなものなら安い方で良い」ということになってしまう。
だからブランドの服が売れない。

12月10日の繊研新聞の一面に、「服が売れない」という記事が掲載された。
今秋冬物は全般的に苦戦傾向にある。
それでも中には売れているブランドもあるし、低価格ブランドはそれなり好調である。

売れているブランドは、多くの消費者に「憧れ」を何らかの方法で提供しているのだろうし、低価格ブランドは上に書いたような理由でそれなりに好調を維持していると考えられる。

結局、「服が売れない」と叫んでいるブランドは、低価格ブランドを越えるような価値を提供できていないということになる。
物のスペックだけの打ち出しでは売れない。
また、「トレンドをいかに早くキャッチしたか」というのも、それのみではあまり効果はない。
なぜなら、早晩他ブランドに追いつかれてしまうからだ。逆にいうとそれもスペックの一種ともいえる。

「世界最大の〇〇」があっというまに他の施設に追い抜かれて価値がなくなるのと同じである。

そんなわけで、服が売れないのはある意味で当然ではないかという結論に達してしまう。

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