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南充浩 オフィシャルブログ

41億点の中から選ばれるためには

2014年12月17日 未分類 0

 たまにはデータ紹介をしてみようと思う。

同じ記事だが、オリジナル版と転載版では少し掲載部分が異なる。

まず、繊研プラス

日本の衣料消費市場の規模は?
http://www.senken.co.jp/news/data-fb/

本当の記事タイトルは「データで見るファッションビジネス」なのだが、紙媒体はやっぱり見出しの付け方が迂遠だと感じる。ウェブに掲載する場合はこんな持って回った見出しでは読まれにくい。
もっと直截的な見出しを付ける必要がある。

ファッションスナップドットコム

服の供給量は過去最高の41億点、低価格衣料がシェア拡大
http://www.fashionsnap.com/the-posts/2014-12-16/supply/

こちらの方が分かり易い見出しである。

これはウェブメディア担当者からの受け売りだが、ページを開いた瞬間にざっと全面が見渡せる紙媒体と異なり、ウェブメディアは開いた瞬間には全面見渡せない。
クリックしてもらわなくてはならない。そうした場合、より具体的・直截的な見出しで読者の興味を惹く必要がある。
ファッションスナップドットコムはこの原則に忠実に見出しを付けているといえる。

少しずつ掲載箇所の異なる両記事から要点と思われる個所を抜粋してまとめてみる。

繊研新聞社の調べによると、13年の日本の衣料消費市場の規模は約9兆2000億円で前年に比べて2.4%増加しました。ちなみに過去10年間で見るとピークは07年で、この年と比べれば13年の市場規模は1割程度小さい水準です。

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グラフを見るとわかるが、08年後半に起きたリーマンショックの影響から09年~11年まで衣料品消費は8兆円規模まで激減している。
12年、13年と徐々に回復し、やっと9兆2000億円にまで回復した。

さて、ファッションスナップ版ではこの9兆2000億円という数字が、04年の9兆1500億円とほぼ同等であることに注目している。
そして、その市場規模の内訳については、04年は低価格分野が39・4%を占めていたことに対して、13年は低価格分野が45・5%にまでシェアを伸ばしていることを指摘している。

また13年の洋服の供給量は過去最高の41億点を突破している。

ここで例示されている低価格分野というのはどういう基準で選定されているのかはわからないが、一応額面通りに受け取っておこう。

衣料品消費自体は堅調に伸びている。
しかし、低価格品の需要と供給量は増えており、単価は下がった。

そういうことである。

さて、このデータを基に各社は販売方法を考える必要がある。
まず、衣料品消費自体は伸びる傾向にあるから、積極策を打ち出す方向で良いだろう。
問題は販売価格である。
低価格傾向は間違いがないから、そこに照準を合わすこともマクロな観点から見ると正しいといえる。

けれども、その低価格分野は競争が激しい。またユニクロという絶対王者も存在する。
そこで勝ち目があるのかと言うことになる。

単に「価格を下げました」というだけの商品なら競合他社に埋没してしまう。
また、高額ブランドがセカンドラインなりを創設して「価格を下げただけ」の提案をしても埋没してしまう。

消費者は数えきれないほどの選択肢を保有している。

このデータを見て、アパレル企業のお偉いさんは「だから価格を下げないと売れない」「価格を下げれば売れる」と考えがちだが、単に「価格を下げただけ」では売れないし、価格を下げても貴社の商品が売れるとは限らない。
そこを理解していない。

価格や物のスペックしか打ち出していないブランドはまちがいなく売れない。

低価格品だろうが、高価格品だろうが41億点に埋没しないようにいかに自社の姿勢を発信するかが課題である。
そして共感者を増やす。この作業がいわゆるブランディングである。
同じような商品なら消費者は別にそのブランドで買わなくても良い。もっと安いところで買う。
自社のブランドを買う理由を消費者に与える必要がある。

自社の姿勢や取り組みを打ち出すことはファンも作ることができるが、アンチも作ることになる。
しかし、アンチが発生することを恐れて当たり障りのない発信に終始してしまえば、強烈なファンを作ることもできない。

例えば「新商品入荷しました。価格は〇〇円です。とってもかわいいですよ~」みたいな発信に終始していてはアンチは発生しない代わりに強烈なファンも作ることはできない。
かつての大手総合アパレルがこの数年、軒並み苦戦しているのはこういう要因もあるのではないだろうか。
当たり障りのない打ち出しに終始している各ブランドで、わざわざ服を買う理由がない。

41億点の中から選ばれる商品になるためには、そういう姿勢が必要不可欠だし、企業・ブランド側も「嫌われる」覚悟が必要だと個人的に考えている。

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