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製造段階にこそ多層化による弊害が起きている

 ユニクロが大躍進していた頃、製造小売と訳されたSPA業態が注目を集めた。
今では大手のアパレルはほとんどがSPA化している。

それまで、アパレルは卸売りが中心で、直接小売店が仕入れる場合もあったが、何重にも問屋が介在していた場合も多かった。

この何重もの問屋を省き、小売店への直接卸さえ省き、アパレルが直接販売することで流通経費を抑制することができるというのがSPAのメリットだと説かれてきた。
ユニクロの場合は小売店が直接製造のコントロールをしたのだが。

このSPA方式によって流通コストが抑えられ、店頭販売価格は従来より安くすることができる。というのがSPAについての説明だった。

問屋という機能がまるっきり無駄で絶滅させるべきものとは筆者は思っていない。
しかし、SPAが隆盛を極める前の状況にまで問屋という業態が復活するとは思えない。

近年、衣料品の売り上げ不振が続いている。
てっとり早く競争力を持たせるには店頭販売価格の値下げが有効的だと広く世間では考えられている。
けれども店頭販売価格は下げられるだけ下げてしまったのが現状である。
店頭販売価格は現状維持が精いっぱいというのがアパレル各社の本音といえる。

店頭販売価格を現状維持ないしは微減させるけれど、利益は確保しなくてはならない。
そうでないと会社はつぶれてしまう。

ではどの経費を削減するのか。
人件費という手がある。昨今のブラック企業問題の原因の一つにこれがある。

もう一つは、商品の製造コストをさげることである。
使用している原材料を安物に置き換える、縫製仕様を簡素化する。
そして、縫製工場の縫製工賃をさらに安く叩く。

である。

これによって、百貨店に並ぶような商品といえども原価率20%を下回ることは珍しくなくなっている。
単純化して計算すると、店頭価格10000円の商品で原価率が18%だったとすると、製造原価は1800円となる。
ユニクロの原価率が平均38%だとされているから、4990円の商品の製造原価は1896円となる。

極端にいえば、百貨店で10000円で並んでいる商品よりもユニクロの4990円の商品の方が、製造原価が96円高いという場合もあるということになる。

まあ、これは極端な比較で、ユニクロの原価率はあくまでも平均であり、アイテムによって異なっているので、すべての商品が38%ではない。もっと高い商品もあるし、もっと低い商品もある。

では、百貨店向け商品は品質を高めるためにどうするのか?ということになる。
これ以上、人件費と縫製工場の工賃を叩くのか?それでは最早奴隷扱いである。

ここ数年、不思議に思っていることがある。
流通段階の無駄はかつて多く指摘されてきたが、実は製造段階にも無駄がたくさんある。
流通の多層状況はさまざま報道されたが、製造の多層構造はあまり指摘もされず問題視もされてこなかった。

生地メーカーからアパレルに直接生地を販売するわけではない。
間に商社が介在する。与信管理の機能があるからこれはそれほど問題ではない。というより非常に論理的である。

問題は、与信機能もないのに、この段階で多数の「ブローカー」やら「コーディネイター」やらが何人も介在することである。そのたびに彼らに対するマージンが発生し、生地の最終価格は値上がりする。

縫製段階でも同じだ。アパレルから協力先の縫製工場に支持が行くわけではない。
OEM/ODM企業が介在する。
縫製工場のハンドリングや生産管理の機能を有するから介在するのは効率的である。

けれども同じくそれ以外に与信機能も工場ハンドリング機能もない「ブローカー」やら「コーディネイター」やら「アドバイザー」やらが介在し、製造コストが値上がりする。

また驚くことに、OEM/ODM企業に向けたOEM/ODM企業が業界には多数存在する。

たとえば、「A」というショップブランドがある。まあ、仮にセレクトとSPAの併用業態だったとする。
ここに商品を納めるOEM/ODM企業がある。
これだけなら至極当たり前の構図だが、このOEM/ODM企業が、さらにOEMを依頼する先がある場合もある。

「A」が15000円で販売する商品があるとする。
それをOEM企業は7000円前後で納入する。
そのOEM企業に別のOEM企業が3500円ほどで納入する。
縫製工場のハンドリングと生産管理は最初のOEM企業が行っている。

こんな構図も実はあまり珍しいことではない。

個人的には、商品の品質を高めるには製造段階の多層化を是正する必要があるのではないかと最近感じている。

しかし、多数の人間が介在できるというのはそれだけ業界には余力があるということでもある。
一概に整理してしまうのが良いのかどうか、多少の迷いがある。

迷いはあるが、「商品の品質を高める」「人件費や縫製工賃を叩かない」ことを実現するには製造段階の整理しかないと思える。

業界に携わる方々はどうお考えだろうか?

買う理由が見当たらない

 先日から在庫を買いたたいて催事で超低価格で販売するという会社の手伝いをしている。

3~4枚買って3000円弱という安さで販売している。
大手通販などの在庫品がメインなのだが、一枚一枚を見ると、デザイン・色柄や使用素材、縫製は悪くない。
正確にいうと値段の割には悪くないというべきであろう。

昨今の原料高の影響もあるのだろうか、綿やウールを使ったニットはあまり少なく、ほとんどがアクリル混やアクリル100%の素材使いである。
気になるのはこの部分くらいである。

もちろん、先端を行くようなクリエイティブなデザインの商品は色柄・デザインの物は見当たらない。
けれどもユニクロよりもちょっとだけ見栄えのする色柄・デザインの物はふんだんにある。
定価でも3000~6000円くらいなので、十分に一般大衆に手の届く値段である。

これを見ていると、最早、商品の色柄・デザインだけでは中~高価格帯にあるブランド品を買う必要性が感じられない。その価格帯の物を売るなら、色柄・デザインや商品スペック以外のことを整備する必要がある。
それには宣伝・広告の部分もあるだろうし、販促方法も含まれるし、直営店の店舗作りも含まれるし、ブランドのストーリー性みたいなことも重要になる。これらがなくて、単に「物勝負」となると、一般大衆には低価格品との区別ができない。おそらく筆者にもほとんど区別できないだろう。

20年前の安物の大手通販や量販店平場の商品と比べると、見た目の部分は大きく進歩している。

先日、こんなブログを拝読した。

東京のファッション・ウィークの売り上げ規模を今の4倍にするには?
http://www.wwdjapan.com/editorsview/muko/2014/04/27/00011629.html

ファッション分野に立脚する業界紙としては珍しく、デザイナーズブランドに対してシリアスな提言をされており、素直に評価したいと思う。

メルデセス・ベンツ ファッション・ウィーク 東京に参加する各ブランドの年間売上高を合計400億円にするにはどうしたらよいかをみんなで考えよう、と。

企業が母体となっているいくつかのブランドをのぞいて、東京でショーを行なっているインディペンデント系ブランドの年商は多くて5億円、名前が知られているブランドでも2~3億円、大部分が1億円未満です。利益ではなく、売上高の話です。つまり、40ブランド集まっても100億円に達しません。

とあるが、これは筆者が以前にも何度か書いたことと同様の趣旨で賛同できる。

筆者は別にメルセデス・ベンツ ファッション・ウィークに何の興味もないので、そこでの売上高を増やすことに対して提言をするつもりはない。しかし、デザイナーズブランドはファッション・ウィークとは関係なく売上高を増やすことを志向する方が良いと考えている。
とくに年商1億円未満のブランドは。

ブログからは

どうしたら市場規模を今の4倍にできるのでしょうか?売り上げが大きいブランドの参加を促す?数を増やす?海外?靴やバッグなどアイテムの広がり?異業種とのつながり?コラボレーション?eコマース?

と、書き手自身が暗中模索しておられる様が伝わるのだが、それよりも前に、低価格品との違いを広く消費者に認知してもらう必要がある。
そこそこに品質が良くて、そこそこにデザイン性がある商品というだけなら、一般消費者にとっては量販店の平場商品で十分なのである。組み合わせによっては西友のPB商品ですら、それなりに見栄えがする。

そんな環境に包まれている消費者がなぜ、一枚数万円もする無名ブランドのジャケットを買う必要があるのだろうか。
同じ価格を支払うなら有名ブランドや海外ラグジュアリーブランドに支払うという消費者がほとんどだろう。

有名ブランドやラグジュアリーブランドはブランドとしての位置づけが確立されているし、消費者に浸透させ、ブランドステイタスを維持するために莫大な広告宣伝販促費を投下している。
売上高が極小なデザイナーズブランドに莫大な宣伝広告販促費は期待すべくもないから、自身でもっと発信をする必要があるだろう。

小手先の売り方変化や業界内部でのコチョコチョとした工作活動よりも、消費者に「そういう物を買おう」という風潮を植え付けなくてはならない。
そういう目的意識を持った発信をどれだけのデザイナーズブランドができるかであろう。

漫画・アニメとの融合

 先日、心斎橋筋商店街でこんな看板を見つけたのだが、これが果たして販促につながるのかどうか筆者には理解できない。

「うる星やつら×スピンズ」という看板である。

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ほんの少し前までは漫画・アニメというジャンルとファッションというジャンルは支持層がまったく異なっていた。
筆者の高校・大学生当時を思い出してみると、オタクと呼ばれる漫画やアニメの愛好者はファッションには無頓着な人が多かった。たぶん、筆者もそのうちの一人である。

体感的にいうと、アニメ愛好家の方がよりコアなオタクで、漫画はもっと支持層が広かったという印象である。
高校・大学生当時にファッションを愛好するようなチャラっとした輩も熱心に週刊少年ジャンプを読んでいた。

逆に今の若い人は漫画をあまり読まず、漫画を愛好しているのは筆者と同年配の30代半ば~50歳にかけてだという。三つ子の魂百までというやつだ。若いころに愛用した物からなかなか抜け出せない人が多い。

当時は、友人同士で漫画について語り合うなんていうことはなかったし、いくら愛好者が多いといえども、漫画のキャラクターが描かれたTシャツやスエットなんて着るのは本当のオタクだった。

漫画よりもコアなアニメについては言わずもがなである。
アニメのキャラクターが描かれたTシャツを着ているような輩は極度のオタクとみなされていた。

数年前からユニクロでは毎夏、盛んに漫画やアニメのキャラクターが描かれたTシャツが販売されている。
ガンダム、ワンピース、あしたのジョー、などなどだ。

たとえばガンダムだったら、ジオン公国や地球連邦軍の紋章のみが描かれたTシャツならまだ着用できなくもない。しかし、ガンダムそのものが描かれたTシャツなんて着る人間がいるのか?というのが素朴な疑問だった。
ワンピースしかり、あしたのジョーしかりである。

店頭を定期的にチェックしていると、完売とはいかないし、グラフィックデザインによって残り具合に格差があったが、それでも毎シーズン一定の量が購入されていることに気が付く。
ガンダムが描かれたTシャツを買った人はどういう場面で着用しているのか気になって仕方がない。
筆者なら部屋着か寝間着にするところだが、おそらくデイリーカジュアルとして着用している人もそれなりにいるのだろう。

アニメグッズ専門店「アニメイト」の衣料品版はユニクロじゃないのかと思ったこともある。

筆者はひそかにそんな疑問を抱え続けていたわけだが、漫画・アニメとファッションの融合はお構いなしに加速している。
もっとも印象に残っているのが、ファッション雑誌「シュプール」の2011年10月号で、荒木飛呂彦さんの「岸辺露伴 グッチへ行く」という短編漫画が掲載されたことである。

荒木さんの人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」のサブキャラクター、岸辺露伴が持っていたグッチのバッグにまつわるストーリーである。

筆者からすると「ファッション雑誌にジョジョが!」「グッチとジョジョが!」という驚きがあった。

また、今春はセーラームーンとプリキュアが伊勢丹新宿店と大々的なコラボを行っている。
詳細は山田耕史さんのブログをお読みいただきたい。

セーラームーンとプリキュアが伊勢丹新宿店をジャック!
http://t-f-n.blogspot.jp/2014/04/blog-post_8.html

好き嫌いは別にしてファッションの殿堂のような伊勢丹新宿店がセーラームーンやプリキュアのようなアニメと大々的にコラボをするなんていうのは以前だと考えられないことである。
せいぜい子供服売り場か玩具売り場向けの企画に終わっていただろう。

ちなみに自宅の近所のスーパーにもプリキュアバナナが販売されている。ラベルにプリキュアが描かれているだけで普通のバナナなのだけど。

それにつけてもこういう流れは10年くらい前までは想像できなかった。
でも、いくら市民権を得たとしても、ガンダムやセーラームーンのキャラクターがデカデカと描かれたTシャツをデイリーカジュアルとして着用するのは筆者には無理である。

こんなことを書いていたら思い出したことがある。
機動戦士ガンダムのメカニックデザイナーとしてガンダムやモビルスーツをデザインした大河原邦男さんは、元々はオンワード樫山のデザイナーだった。
そういう意味では昔からファッションと漫画・アニメは想像するよりも近しい存在だったのかもしれない。

深謀遠慮には舌を巻く

 利益追求のためには不採算部門を切り捨てる必要があるし、そもそも不採算になると思われるようなことをすべきではないという結論に達する。

そうすると何の面白みもない店が出来上がることになる。

以前にも書いたが、アーバンリサーチの店づくりは必ず不採算に見える部分がある。
たとえばセンスオブプレイスには生花店が併設されている。
グランフロント店は業務用冷蔵庫付きの本格的な生花店である。

フリーマンズスポーティングクラブには理髪店が併設されている。
美容室やサロン、カットハウスではなく本格的な理髪店である。

一見すると何の意味もないと感じてしまうが、生花店がないセンスオブプレイスはどうだろうか?
単にユニクロより1000~3000円高いトレンド系洋服SPA系ブランドである。

生花店があることで、そうではない「提案型ショップ」に見える。
理髪店もしかりだろう。理髪店がなければ単なるトラッドカジュアル系メンズブランドである。

これらがあるがために「アーバンリサーチはいつも面白いことをやるよね」という評判が立つ。

でも利益追求の観点からするとこれらの併設はおよそ効率的ではない。
そういう理由でこういうことをやらないブランドは数多くある。

先日、雑談した中でこの取り組みに対して「広告費」の観点から有益な示唆をいただいた。

広告費という観点でいうと、たとえばそれらのコーナーの併設のために1000万円がかかったとしよう。
雑誌広告を数回出稿するとだいたい1000万円である。
10年くらい前なら雑誌広告を掲載すると、如実に売り上げが増えた。
とくにメンズ系ブランドで多かった手法は、雑誌とタイアップした別注品の掲載である。
以前だと掲載する雑誌によっては500枚が完売したこともあった。今はどうだろうか?そういう手法も誌面であまり拝見することがないし、広告代理店からもそういう企画が当たったとは耳にしない。

雑誌への広告掲載効果はこの10年で低下したのではないかと感じている。

現在の状況でいうなら多くの雑誌広告は掲載しただけのものとなっている。
数回掲載して1000万円の費用がかかってもそこからのリターンはあまり期待できない。

それを踏まえて業界の先輩はこう指摘された。

生花店や理髪店は微々たる額かもしれないが日々売上高がある。と。

生花店なら単価は数百円から3000円くらいだろう。
理髪店なら単価は数千円だろうか。

となると、生花店なら1日当たり少なくとも2~3万円の売上高がある。
理髪店なら数万円程度だろうか。

これが30日稼働したとして、生花店なら60~90万円、理髪店なら100万円以上となる。
1年間では生花店が720万円以上、理髪店は1200万円以上となる。

ざっと計算すると1年で設置費用は回収できるということになる。
そこで働くスタッフの人件費も発生するからことはこれほど単純ではないが、少なくとも1000万円で無反応の広告を出稿するよりは、社に売上高をもたらすともいえる。

そしてこういうコーナーを併設することで新規性・珍奇性からマスコミが取材をし、記事に掲載されるのだから、広告塔としての側面もある。

その先輩は、広告費として見た場合、雑誌広告を出稿するよりもよほど効率的だと指摘したわけである。

こう説明されると納得であり、一見非効率と見えた取り組みが、広告という観点で見ると効率的だったともいえる。

アーバンリサーチが以上のことを意図的に取り組んでいたとしたなら、その深謀遠慮には舌を巻くほかない。

従来型アパレルの影響力はますます弱まる

 最近、自社で雑誌風の紙媒体を発行する企業が増えたと感じる。
以前だと雑誌は出版社にしか作れなかったが、昨今はそうではない。

以前にも書いたが、多くの雑誌は出版社の下請けである編集プロダクションが作成している。
他業種の企業が正当な代金を払えば、編集プロダクションが雑誌風の読み物媒体を作成してくれる。

また出版社での業務経験や編集プロダクションでの業務経験があるフリー編集者、フリーライター、フリーカメラマン、フリーレイアウトデザイナーなどは掃いて捨てるほどいるから、そういう人々を個別に集めても雑誌風の媒体を作ることは可能だ。

そして印刷・製本会社も以前なら忙しくて少部数の仕事は受けてくれなかったが、紙媒体が減少している昨今は少部数の案件でも積極的に受けてくれる。

メディア関連ではない企業が雑誌風媒体を比較的容易に作成できるのはこういう背景がある。

そんなことをつらつらと考えていたが、この構図はアパレル業界に似ているのではないかと思った。

以前ならアパレル企業以外が洋服を作ることは難しかったが、今なら、OEM事務所やODM事務所を使えば、簡単に洋服を作ることができる。
またフリーランスのデザイナー、パタンナーなども掃いて捨てるほど存在する。

国内縫製工場も受注の減少から昔では考えられなかったほどの小ロットでも受けてくれる。
中国の縫製工場だってずいぶんと小ロット対応の工場が増えた。

こうして見ると、相似形であるといえる。

こと衣料品に関していうと、原料メーカーを押さえ、小売業を押さえるならアパレルメーカーは要らないということになる。
なぜなら、小売業自体が大手になればなるほど自社で商品政策を計画しており、それに適した商品を作ってくれる縫製工場はある。
間に入ってOEM・ODM企業が企画とハンドリングと生産管理を行えば商品ができて、小売店の店頭に並ぶ。

原料メーカーは生地が売れればどこに売っても良いわけである。

こうなると、卸売り型のアパレルメーカーの存在価値は大きく薄れてしまう。
小規模小売店はまだまだあるので、そこに向けて卸売りを行うアパレルメーカーの存在意義はそれなりにあるが、以前ほどではないということである。

知人と新しい構想を練ってみた。
企画ラフ案を原料メーカー、製造系アパレルメーカー、流通に投げてみたところ、原料メーカーと流通からは「原則賛同」の声が挙がったが、製造系アパレルメーカーからの反応は鈍い。

どうしたものかと考えてみたが、だったらそこにOEM/ODM企業を噛ませれば商品は生産できるということに改めて気が付いた。
流通業が賛同している時点で販売チャネルは確保できているのである。

自分でそれを亜体験してみたとき、アパレルメーカーの力がどんどん弱まっている理由を再認識できた。

月並みなようだが、アパレルメーカーはよほどの意識改革をしないとますます影響力は弱まるばかりではないかと思えてならない。

高く売るために高い素材を使う?

 先日、大手生地商社の方と雑談していたら
「最近の若手デザイナーが国産生地を欲しがるのはどうしてでしょう?」と質問された。

たしかに10年前にはあまり見られなかった現象である。
筆者はなんだかんだで17年くらいこの業界にいるが、90年代後半当時の若手デザイナーから「国産生地」が話題になることはあまりなかった。

もちろん、国産生地に興味を持っていた若手デザイナーもいたが、そうでない人も相当数いたというのが体感だ。

国産品への愛着があるのはまことに喜ばしいことである。
そういう若手デザイナーもいるだろう。
しかし、そうではない若手デザイナーもいるのではないか。

そういう若手デザイナーは、自身の製品を高値で売るための言い訳として国産生地を使用しているのではないかと感じられる。

中国国内の人件費が高騰し、日本国内の工場と工賃が変わらなくなってきたとはいえ、いまだに国産生地は高額である。
その高額な生地を使うから自身が作る製品も高額になるという言い訳が成立する。

しかし、厳密にいうと国産生地でも粗悪で廉価なものもあるし、アジア産の生地でもそこそこ高額なものもある。

また品質で比べると、国内工場に比べて最新鋭の機械設備を備えたアジアの工場の方が物性的に優れた生地が製造できる場合もある。
だから、モノ重視で選ぶなら、国産一辺倒やアジア産一辺倒にはなりえない。

あとは自身の製品の販売価格との相談である。

大企業ではない若手デザイナーは製品を安く売ることを考えるよりも高く売ることを考えるべきだとは思う。
別にユニクロと競争する必要もないし、したところで太刀打ちできないのは自明の理である。

けれども欧米のラグジュアリーブランドと並ぶような価格設定にするのもどうかと思う。
多くの人は同じ値段を出すならラグジュアリーブランドを買う。
そちらの方がブランドステイタスがあるからだ。品質云々、デザイン性云々だけの問題ではない。

それよりも、若手デザイナーは生産ロットをミニマムロットまで拡大させる努力をすべきだと思う。
ミニマムロットに到達させて、製品の価格を抑えるべきである。そうすれば販売数量も今より増やせる。

なにも1000円、2000円の服を販売しろということではない。
8万円くらいしているコートを5万円弱にした方が良いのではないかということである。

その方が販売数量も伸び、ビジネスとしても一定の規模に到達できる。

欧米だと有名メゾンブランドのデザイナーに起用されることで、自身のブランドも売上高が伸びることもある。
けれども日本で活動している限りにおいてそういうチャンスはほとんど期待できない。
そうなると自身のブランドの売上高を伸ばすほかない。
そのためにも価格政策は必要だろう。

製品を高く売るために高額な国産生地を使用するという図式は本末転倒ではないかと感じられてならない。

「誰でもSPA」が可能になる?

 先日、フェイスブック友達に教えてもらったのだが、イラストで描いたものを現実の洋服に仕上げるという有料サービスが開始されるはこびとなっているらしい。

http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1403/28/news010.html

この記事に紹介されている。

バンダースナッチという会社が考案したシステムで、発注者は洋服のイラスト(デザイン画)を描くだけで、あとは有料で現実の洋服にしてくれるという。
記事を読むと実用化一歩手前というところまで来ているようだ。

サービスの詳細は以下のページで説明されている。

http://started.jp/about

イラストを描く→サンプル生産→第1ロット(テスト販売)→第2ロット(量産化)という順番で商品化される。

正直、この価格設定で事業者、パタンナー、縫製工場は利益が確保できるのか?この価格設定で依頼する顧客があるのか?という疑問はある。
小ロット生産の極みなのでおそらく第2ロットに行くまではサンプル縫製工場に依頼するのだと推測する。

この事業は失敗するかもしれないし、もしかしたら成功するかもしれない。
記事とサイトを見た限りでは予測できない。

失敗する可能性の方が高いと感じるが、成功するという可能性もある。
多くの新規事業は失敗の方が多く、その中の一部が成功するのだから、こういう取り組みはドンドン生まれた方が良い。

さて、この取り組みが大成功とはいかないまでも、それなりに事業化できたとする。
おそらく類似のサービスが雨後の筍のように生まれる。

そうなると、アパレル・ファッション業界にデザイナーという職種は要らなくなる。
すぐに完全に需要がなくなるわけではないが、デザイナー需要はまちがいなく減少する。

アパレル・ファッション業界にはデザイナーという職種が存在する。
洋服のデザインそのものを考案する極めて重要な職種であり、業界では実態はともかくとして花形職種である。

ただ、一口にデザイナーといってもその役割・能力は所属する企業によってマチマチである。

1、メゾンブランドに所属していたり、自身でブランドを主催しているデザイナー
このデザイナーは概して、出来上がったデザインの好き嫌いは別にして、高度な創造性を有するとされている。

2、物づくり系ブランドを展開する企業に所属するデザイナー
このデザイナーは、自身の個性を全開できるわけではないが、ブランドの製品デザインに関してそれなりの創意工夫を凝らすことができる。
ここでいう「物づくり系」とは製造業寄りというだけではなく、大手のアパレルブランドでもそれなりの創造性を重視しているブランドも含む

3、街頭スナップと他社製品のサンプル写真のみで仕事をする自称デザイナー
大手企業ではこのタイプが近年中心となっている。街頭スナップを大量に撮影し、その中から良さそうなアイテムをピックアップし、仕様書さえ書くことなく、その写真をそのまま工場にメール送付する類のデザイナーである。
また、売れているといわれている他社製品を店頭でこっそり撮影し、それを工場に送りつけるケースもある。

もし、バンダースナッチのシステムが完成し、そこそこの成功を博したなら、間違いなく3番の自称デザイナーは要らなくなる。
なぜなら、もっと低賃金でイラストを描いてくれるファッション好きが世の中には山ほど存在するからだ。
たとえば、専門学校生だってアルバイト代わりにやるだろう。
街頭スナップと店頭製品からのピックアップという能力なら、専門学校生だって同レベルにある者も多い。
彼らは一応、嘘でもデザイン画・スタイル画は描ける。
おまけにあまり就職率は高くない。

となると、このシステムを使えば彼らに安値でデザイン画を描いてもらうことは可能になる。
また、彼らだって第2ロット(量産化)されれば、いくばくかのキックバックももらえる。

なら、好きでもない居酒屋とかキャバクラのアルバイトにいそしむよりも、そちらに専念していくばくかの収入を得ようとするのは当然の結末だろう。

今回はすべてタラレバで話しているが、このバンダースナッチの取り組みが失敗に終わっても、類似のシステムを考案する会社・企業はまた現れるだろう。
そのうちに成功を収める企業も現れる可能性がある。

そうなったときに、3番のようなデザイナーは企業にとって不要になるし、3番のようなデザイナーに依存している企業も存在価値がなくなるだろう。
全滅とは言わないが、何割かは淘汰されるのではないか。

このシステムが成功することは「デザイナー」という職種自体も存在を危うくさせる危険性をはらんでいるし、まさしく「誰でもSPA」を立ち上げれる時代がそこまで到来しつつあるといえる。

この期に及んで、アパレル業界はまだ前年実績が云々とか、他社の売れ筋が云々とか言うつもりだろうか。
前年実績と他社の売れ筋後追い(街頭スナップの商品化なんてまさに他社売れ筋の後追いの典型)に終始するアパレル企業自体が淘汰される日がそこまで来つつあるのかもしれない。

古き良き時代に戻ることはない

 小悪魔agehaを発行していたインフォレストが事実上倒産した。
これは既報なので多くの方がご存じだろう。インフォレストはこの雑誌以外にも何誌か発行しており、同社から出されたリリースによると、他社に移籍して続く雑誌と社とともに消えゆく雑誌がある。
手に入れたリリースからその行く末を抜粋してみる。

「Happie nuts Happie 」― 6 月号 (4/17 発売 )より、発売延期。 再開時不明。

「Samurai ELO」― 6 月号 (4/24 発売 )より、株式会社 より、 三栄書房へ版元移行。

「小悪魔 ageha 」 ― 6 月号 (5/1 発売 )より、発売延期。 再開時不明。

「Samurai Magazine」 ― 6 月号 (5/7 発売 )より、版元移行に向け調整中。

「女子カメラ」― 9 月号 (7/20 売り)より、ミツバチワークス株式会社へ版元移行。

「ibought」 ― Vol.6(発売日未定)より、ミツバチワークス株式会社へ版元移行。

またこれら以外の雑誌は流動的な状況で確定していないとのことである。

この中で再開時期不明となっている2誌は廃刊になる可能性がきわめて高い。

移籍して発行が継続しているのは「samurai ELO」と「女子カメラ」だけということになる。
「ibought」も移籍は決定しているが、発売日が未定となっている。このまま休刊してもおかしくはない。

さて、インフォレストの事業背景は、帝国データバンクに詳しい。
以下に引用してみる。

当社は、2002年(平成14年)6月に他の出版社の一部雑誌出版部門を分社化し設立。出版および衣料・服飾雑貨などの通信販売業者で、出版部門は、女性向けの「小悪魔ageha」「nuts」「アイラブママ」「女子カメラ」、男性向けの「Samuraiマガジン」「SamuraiELO」などの若者向けのファッション誌のほか、パズル関連、コンピュータ関連の雑誌、書籍、ムックを発行、とりわけ「小悪魔ageha」がテレビなどで頻繁に取り上げられ、販売部数が30万部に伸びた2008年3月期の年売上高は約59億4500万円、新規事業として通販事業を開始した2009年3月期には年売上高約74億9600万円を計上していた。

その後は、「小悪魔ageha」をはじめ既存雑誌の売り上げが頭打ちとなっていたほか収益確保のため雑誌の廃刊を進めたことや景気低迷下で広告収入も減少、2010年3月期の年売上高は約68億300万円に落ち込んでいた。また、同時期に親会社が変更されてからは、代表者の交代や本社不動産の売却、従業員の削減などリストラを進める一方、組織再編を進め経営の効率化を図っていた。しかし、その後も売り上げの減少が続き2012年3月期は年売上高約43億7900万円にダウン、資金繰りも厳しさを増していたことで信用が低下。ここにきて資金繰りが限界となり、今回の事態となった。

とのことであり、負債総額は30億円である。

小悪魔agehaが支持された背景にはカリスマ女性編集長の力があった。

ブームが起きた2007年~2008年にかけて部数を飛躍的に伸ばしているが、その翌年から会社側は早くも通販事業を立ち上げている。これは収益性を強化する目的だろう。
企業側としてはありがちな選択肢である。それに対してカリスマ編集長は反対の意思を表明していた。
過去のインタビュー記事でも「反対」と明言しておられたようだ。

情報以外の物品を売ることを潔しとしなかったということである。
編集者としての矜持には賛同できる部分がある。

会社側の思惑通りに通販効果もプラスされ、売上高は14億円近く伸びている。
これはおそらく通販だけの功績ではなく、小悪魔agehaのブームによる、広告収入の伸びもあったと考えられる。

その後、2010年に親会社が変更になるとあるが、要するに売却されたのである。
売却先はカラーズインターナショナルという会社だ。

ブームが頭打ちになり、リストラを進めたというのはお決まりのパターンである。

そのあたりの時系列的な変遷はこちらのブログに詳しく述べられている。
他の解説記事よりも数段詳細にまとめられているので、ご興味のある方はご参照いただきたい。

http://kaya8823.hatenadiary.com/entry/2014/04/16/172810

講談社とか小学館とか集英社とかそういう大手出版社以外に、中小零細の出版社がある。
中小零細出版社でも雑誌を発行している。

そうした中小零細出版社は資本が小さく経営が不安定なので、他社からの経営支援を受けている場合が多い。
支援する企業は一般的に出版業界以外の企業が多く、インフォレストの場合も同様である。

出版業界以外の企業は、雑誌媒体を持っていることに価値を見出して支援を申し出る。
ところが支援してみると、雑誌媒体はそれほど収益性は高くない。
発行部数も伸びないし、広告出稿量も増えない。その割に人件費は高い。
そうして、何年か後に手放してしまう。

もっと小さい出版社で子供服雑誌「maria」というのがあった。
関西を拠点にしていたが、これも廃刊になっている。
廃刊になった理由の一つとしては資本参加していたスポンサーが手を引いたということが挙げられる。
スポンサーは当然出版関係の企業ではなかった。

筆者が以前に籍を置いたことがある関西の編集プロダクションも自社オリジナルの雑誌を発行していた。
こちらはファッションではないのだが。
このプロダクションも経営難からスポンサー企業が転々と変わっている。かろうじて雑誌だけは発行されているのだが、どこがスポンサーになって会社が維持されているのかはわからない。会社としての体をなしているのかどうかも怪しい。

一方、企業側は紙媒体ということに価値を感じているようだ。
ポイントが俳優の水嶋ヒロさんを編集長に据えて自社編集の雑誌を発行した。
最近はまったく評判を聞かないが、発行を継続しているのだろうか?

マックハウスだって雑誌的な読み物を季刊で発行していた。
今でも継続しているのだろうか?

そんな風にみると、他分野の企業からすると紙媒体には得も言われぬ魅力があるのだろう。
逆に出版に携わっている側からするとそこまでの魅力はまったく感じないのだが。

ファッション雑誌に限らず、今後、すべての紙媒体は大きな成長が望めない。
一部にはその時々に応じて部数を伸ばす雑誌もあるだろうが、雑誌全体の部数が伸びることはない。
ファッション雑誌も当然そうなる。

そして部数が伸びた雑誌もどこかで頭打ちが来る。無限成長はあり得ない。

となると、超大手出版社以外の中小零細出版社が売却されたり、買収されたりというケースはまだまだ増えるだろう。
売却先、買収先の多くは出版以外の業界の企業であろう。
そして数年して転売されるか、廃止されるかである。

そしてこの流れは止まらない。
雑誌が隆盛を極めていた古き良きアナログの時代に戻ることは決してないだろう。

根本処置をするほか手立てがない

 若手クリエイターの支援とはよく耳にするお題目で、主に東京コレクション出展ブランドを指すことが多いが、単に資金援助をするだけで支援になるのかどうかは甚だ疑問である。

まず、東京コレクション出展若手ブランドの年商規模は著しく小さい。
トップクラスの知名度を誇るブランドですら年商5億円強である。
中堅だと2~3億円程度。意外に知名度が高いブランドでも1億円未満というところはザラにある。
年商数千万円のブランドなんて山ほどある。

そういう年商1億円未満のところに生地メーカーや生地問屋、染色工場などが「支援」を行うわけだが、この場合の「支援」は資金援助ではなく、生産系での支援という場合が多い。

そういうブランドに生地を割安で提供する。小ロットでも製造加工を請け負う。などである。

しかし、そういう支援は何年間も続けることができないのが現状だ。
なぜなら生産加工現場が疲弊してしまうからだ。

製造加工の側の言い分からすると、製品1型あたりの生産枚数は恐ろしいほど少ない。
1型10枚とか15枚である。
アイテムによってミニマムロットは違う。カットソーや合繊布帛アウターなんていうのはちょっとミニマムロットが大きめだし、ジーンズだと1型サイズ込みで100本である。
ジーンズに落とし込んで話すと、S、M、Lの3サイズで100本ということは1サイズあたり30本強ということになる。

仮に卸先が10軒あれば、単純計算すると各店にS、M、Lの1セットずつを納品すればさばけることになる。

ミニマムロットに達すれば縫製工賃は劇的に安くなるが、10本程度だと1本あたりの縫製工賃は最低でも数千円はする。だいたい1万円内外を見ておくと間違いはない。

となると、若手クリエイターの商品というのは、縫製工賃だけですでに1枚あたり1万円のコストがかかっているということになる。

そこに生地代、付属代、副資材代、ジーンズなら洗い加工代などがかかるわけだから、製品1枚当たりのコストがすでに2万円近くにもなる。

小売店に卸すと店頭販売価格は6万~8万円ということになる。

こんな価格では多数を販売することは難しい。
この値段なら「ポール・スミス」や「バーバリー」のスーツが買えてしまう。
多くの人は同じ値段ならブランド知名度の高い「ポール・スミス」や「バーバリー」を買う。残酷なようだがこれが現実である。

かくして売れないのでクリエイターは生産ロットを増やすことができず、製造コストは高止まりしたままとなる。
以下無限ループである。

某大手生地問屋はこの状況を指して「悪循環スパイラルですね」と言い切ったがその通りである。

支援する生地関係企業もこれでは疲弊する。

多くのアイテムの用尺はだいたい2メートルである。
ということでここで2メートルと仮定すると、1反50メートルの生地から25着の洋服を作ることができる。
ところが、10~15枚という生産ロットだと1反未満しか必要ないということになる。
生地製造業者からするとこれでは大きな原価割れということになる。

生地製造の背景を知らないクリエイター側からすればこの程度の「どこが支援なのか?」と思うかもしれないが、1反未満の生地を何年にも渡って提供してくれるというのは、経営状況が厳しい生地製造業者からすると、大きな支援である。余った生地はよそに転売もできず、産廃業者に有料で引き取ってもらうことが多い。

だから生地製造側は何年も支援を続けると疲弊してしまい、嫌気がさす。

その上、製造関係者から言わせると、多くの若手クリエイターは商品生産のリードタイムをまったく考慮しない。考慮しないというよりも商品生産にリードタイムが必要なことを理解していないのだろう。

簡単に「別注生地作ってください」というクリエイター連中は多いが、生産ロットがあることはさておき、1反作るにしても今日発注して来週上がってくるというようなものではない。
そこから縫製工場へ投入するわけだから、今から別注生地を発注して2週間で製品にして納入するなんてことは不可能である。

もしできるというところがあるなら、それは中国の広州市場か韓国の東大門市場で並んでいる商品や生地をそのまま買い付けて来たというのが真相だろう。

某生地メーカーは「あの人には何年も前からそういう短期生産は無理だと言っているからわかっているはずなんですけど、いまだにそういう発注をしてきますね。日本語を理解していないのでしょうか?」という。

こういう話を聞くと、若手クリエイターへの「支援」とは資金的・生産加工的な支援よりも、ビジネスモデル構築を「支援」すべきではないかと思えてくる。

資金援助はだいたい何年間かの期限付きであり、期限が来れば終わる。
生産加工での支援は何年間かすれば現場が疲弊してしまい、関係は終わる。

どちらにしても何年間か限定での支援にしかならなくて、小手先での支援にすぎないという印象が強い。
ビジネスモデル構築という根本処置をするほか、有効な手立てがない。

支援側も若手クリエイター側もこのあたりを認識しないと投入した資金と労力は「ドブに金を捨てている」のと同じということになってしまうだろう。

そんなわけで筆者は、業界関係者がいうほど若手クリエイターの支援が簡単なものでも美しい行為でもないと思えて仕方がない。

文化的発信がほとんどない

 就職するまでまったくファッションに興味のなかった筆者は、月刊雑誌「メンズクラブ」で洋服の基本を自己流で勉強した。
90年代前半から10年以上は毎月雑誌を買い続けた記憶がある。

そうこうしているうちに「メンズクラブ」がリニューアルし、なんだか「Leon」っぽくなってからは、購入しなくなった。

ああいう、洋服の基本を教えてくれるような雑誌は今は流行らないということだろうか。
先日「fine」もリニューアルして、「Safari」のそっくりさんになった。

雑誌も商業製品なので売れなくては意味がないが、売れるからといって「Leon」や「Safari」の類似雑誌が増えるのもどうかと思ってしまう。
売れ筋に同質化するのは何も洋服だけのことではないらしい。

筆者の父親はスーツ着用のサラリーマンだったが、着る物には無頓着な人だった。
筆者の母が、イズミヤとかジャスコの平場で買ってきたスーツ、シャツ類を平気で定年退職するまで着用していた。

当然、現役当時にスーツの選び方や着方などをレクチャーしてもらったこともない。

就職していざ、スーツを着る段階になってはたと気が付く。
スーツの選び方がわからないと。

そこで「メンズクラブ」で自己学習をし始めた次第である。

ビジネスでも冠婚葬祭でも着用可能な万能スーツは無地のチャコールグレーだと初めてそこで知った。
紺、とくに濃紺・ダークネイビーも万能スーツだが、どちらかというと夜のイメージがあるという。

一番無難なのが無地チャコールグレーである。

結婚式には白無地ネクタイではなく、シルバータイ。

そんなことを「メンズクラブ」で学んだ。

今日の日経ビジネスオンラインでそのあたりのことを書いてみた。

正統なスーツはチャコールグレー!?
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140414/262843/?n_cid=nbpnbo_top_updt

その割には日本のビジネスマンはあまりチャコールグレーを重視していない。
またリクルートスーツでもチャコールグレーを押す声は、スーツ販売店からも挙がってこない。

何とかの一つ覚えみたいに、20年前の売り場はも「リクルートなら紺ですよ~」といい、数年前からは「リクルートは黒ですよ~」と言っている。
まあ、紺は良いとしよう。

大学の就職課が「黒」を勧めるのは仕方がないが、本来プロであるはずのスーツ販売店がなぜ「正式にはチャコールグレーです」と言わないのか不思議でならない。

今回、日経ビジネスオンラインに原稿を送ると担当の編集者が「一部の企業では『最終面接は黒スーツで来てください』という指定があるらしいです」と教えてくれた。

こういう誤りを正すのは本来、スーツ販売店の役割ではないのだろうか。

筆者が大学生のころになると、スーツはロードサイドの青山、はるやま、AOKIあたりで購入するのが普通のことになっていた。20年前にツープライススーツショップはまだ出現しておらず、町のテイラーは勢いをすでに失っていた。

こうなると、本来、スーツの基本的な文化をレクチャーするのは青山、はるやま、AOKIなどのいわゆる大手紳士服チェーン店ということになるはずだが、筆者個人は、その手のキャンペーンをあまり目にしたことがない。

これらの企業のテレビCMでもツーパンツスーツだとか、涼感スーツだとか、ストレッチスーツだとか、売らんがための企画しか見たことがない。
また、雑誌の純広告や記事広告でも売らんがための企画しか拝読したことがない。
大手紳士服チェーン店各社からの文化的発信はほとんど無いように感じる。

そういう中において旧「メンズクラブ」は貴重な存在だった。

「日本の男性のスーツの着こなしは云々」という意見を見ること・聞くことがある。
その責任の一端は大手紳士服チェーン店にもあると思えて仕方がない。

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