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南充浩 オフィシャルブログ

製造段階にこそ多層化による弊害が起きている

2014年4月30日 未分類 0

 ユニクロが大躍進していた頃、製造小売と訳されたSPA業態が注目を集めた。
今では大手のアパレルはほとんどがSPA化している。

それまで、アパレルは卸売りが中心で、直接小売店が仕入れる場合もあったが、何重にも問屋が介在していた場合も多かった。

この何重もの問屋を省き、小売店への直接卸さえ省き、アパレルが直接販売することで流通経費を抑制することができるというのがSPAのメリットだと説かれてきた。
ユニクロの場合は小売店が直接製造のコントロールをしたのだが。

このSPA方式によって流通コストが抑えられ、店頭販売価格は従来より安くすることができる。というのがSPAについての説明だった。

問屋という機能がまるっきり無駄で絶滅させるべきものとは筆者は思っていない。
しかし、SPAが隆盛を極める前の状況にまで問屋という業態が復活するとは思えない。

近年、衣料品の売り上げ不振が続いている。
てっとり早く競争力を持たせるには店頭販売価格の値下げが有効的だと広く世間では考えられている。
けれども店頭販売価格は下げられるだけ下げてしまったのが現状である。
店頭販売価格は現状維持が精いっぱいというのがアパレル各社の本音といえる。

店頭販売価格を現状維持ないしは微減させるけれど、利益は確保しなくてはならない。
そうでないと会社はつぶれてしまう。

ではどの経費を削減するのか。
人件費という手がある。昨今のブラック企業問題の原因の一つにこれがある。

もう一つは、商品の製造コストをさげることである。
使用している原材料を安物に置き換える、縫製仕様を簡素化する。
そして、縫製工場の縫製工賃をさらに安く叩く。

である。

これによって、百貨店に並ぶような商品といえども原価率20%を下回ることは珍しくなくなっている。
単純化して計算すると、店頭価格10000円の商品で原価率が18%だったとすると、製造原価は1800円となる。
ユニクロの原価率が平均38%だとされているから、4990円の商品の製造原価は1896円となる。

極端にいえば、百貨店で10000円で並んでいる商品よりもユニクロの4990円の商品の方が、製造原価が96円高いという場合もあるということになる。

まあ、これは極端な比較で、ユニクロの原価率はあくまでも平均であり、アイテムによって異なっているので、すべての商品が38%ではない。もっと高い商品もあるし、もっと低い商品もある。

では、百貨店向け商品は品質を高めるためにどうするのか?ということになる。
これ以上、人件費と縫製工場の工賃を叩くのか?それでは最早奴隷扱いである。

ここ数年、不思議に思っていることがある。
流通段階の無駄はかつて多く指摘されてきたが、実は製造段階にも無駄がたくさんある。
流通の多層状況はさまざま報道されたが、製造の多層構造はあまり指摘もされず問題視もされてこなかった。

生地メーカーからアパレルに直接生地を販売するわけではない。
間に商社が介在する。与信管理の機能があるからこれはそれほど問題ではない。というより非常に論理的である。

問題は、与信機能もないのに、この段階で多数の「ブローカー」やら「コーディネイター」やらが何人も介在することである。そのたびに彼らに対するマージンが発生し、生地の最終価格は値上がりする。

縫製段階でも同じだ。アパレルから協力先の縫製工場に支持が行くわけではない。
OEM/ODM企業が介在する。
縫製工場のハンドリングや生産管理の機能を有するから介在するのは効率的である。

けれども同じくそれ以外に与信機能も工場ハンドリング機能もない「ブローカー」やら「コーディネイター」やら「アドバイザー」やらが介在し、製造コストが値上がりする。

また驚くことに、OEM/ODM企業に向けたOEM/ODM企業が業界には多数存在する。

たとえば、「A」というショップブランドがある。まあ、仮にセレクトとSPAの併用業態だったとする。
ここに商品を納めるOEM/ODM企業がある。
これだけなら至極当たり前の構図だが、このOEM/ODM企業が、さらにOEMを依頼する先がある場合もある。

「A」が15000円で販売する商品があるとする。
それをOEM企業は7000円前後で納入する。
そのOEM企業に別のOEM企業が3500円ほどで納入する。
縫製工場のハンドリングと生産管理は最初のOEM企業が行っている。

こんな構図も実はあまり珍しいことではない。

個人的には、商品の品質を高めるには製造段階の多層化を是正する必要があるのではないかと最近感じている。

しかし、多数の人間が介在できるというのはそれだけ業界には余力があるということでもある。
一概に整理してしまうのが良いのかどうか、多少の迷いがある。

迷いはあるが、「商品の品質を高める」「人件費や縫製工賃を叩かない」ことを実現するには製造段階の整理しかないと思える。

業界に携わる方々はどうお考えだろうか?

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