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南充浩 オフィシャルブログ

「誰でもSPA」が可能になる?

2014年4月21日 未分類 0

 先日、フェイスブック友達に教えてもらったのだが、イラストで描いたものを現実の洋服に仕上げるという有料サービスが開始されるはこびとなっているらしい。

http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1403/28/news010.html

この記事に紹介されている。

バンダースナッチという会社が考案したシステムで、発注者は洋服のイラスト(デザイン画)を描くだけで、あとは有料で現実の洋服にしてくれるという。
記事を読むと実用化一歩手前というところまで来ているようだ。

サービスの詳細は以下のページで説明されている。

http://started.jp/about

イラストを描く→サンプル生産→第1ロット(テスト販売)→第2ロット(量産化)という順番で商品化される。

正直、この価格設定で事業者、パタンナー、縫製工場は利益が確保できるのか?この価格設定で依頼する顧客があるのか?という疑問はある。
小ロット生産の極みなのでおそらく第2ロットに行くまではサンプル縫製工場に依頼するのだと推測する。

この事業は失敗するかもしれないし、もしかしたら成功するかもしれない。
記事とサイトを見た限りでは予測できない。

失敗する可能性の方が高いと感じるが、成功するという可能性もある。
多くの新規事業は失敗の方が多く、その中の一部が成功するのだから、こういう取り組みはドンドン生まれた方が良い。

さて、この取り組みが大成功とはいかないまでも、それなりに事業化できたとする。
おそらく類似のサービスが雨後の筍のように生まれる。

そうなると、アパレル・ファッション業界にデザイナーという職種は要らなくなる。
すぐに完全に需要がなくなるわけではないが、デザイナー需要はまちがいなく減少する。

アパレル・ファッション業界にはデザイナーという職種が存在する。
洋服のデザインそのものを考案する極めて重要な職種であり、業界では実態はともかくとして花形職種である。

ただ、一口にデザイナーといってもその役割・能力は所属する企業によってマチマチである。

1、メゾンブランドに所属していたり、自身でブランドを主催しているデザイナー
このデザイナーは概して、出来上がったデザインの好き嫌いは別にして、高度な創造性を有するとされている。

2、物づくり系ブランドを展開する企業に所属するデザイナー
このデザイナーは、自身の個性を全開できるわけではないが、ブランドの製品デザインに関してそれなりの創意工夫を凝らすことができる。
ここでいう「物づくり系」とは製造業寄りというだけではなく、大手のアパレルブランドでもそれなりの創造性を重視しているブランドも含む

3、街頭スナップと他社製品のサンプル写真のみで仕事をする自称デザイナー
大手企業ではこのタイプが近年中心となっている。街頭スナップを大量に撮影し、その中から良さそうなアイテムをピックアップし、仕様書さえ書くことなく、その写真をそのまま工場にメール送付する類のデザイナーである。
また、売れているといわれている他社製品を店頭でこっそり撮影し、それを工場に送りつけるケースもある。

もし、バンダースナッチのシステムが完成し、そこそこの成功を博したなら、間違いなく3番の自称デザイナーは要らなくなる。
なぜなら、もっと低賃金でイラストを描いてくれるファッション好きが世の中には山ほど存在するからだ。
たとえば、専門学校生だってアルバイト代わりにやるだろう。
街頭スナップと店頭製品からのピックアップという能力なら、専門学校生だって同レベルにある者も多い。
彼らは一応、嘘でもデザイン画・スタイル画は描ける。
おまけにあまり就職率は高くない。

となると、このシステムを使えば彼らに安値でデザイン画を描いてもらうことは可能になる。
また、彼らだって第2ロット(量産化)されれば、いくばくかのキックバックももらえる。

なら、好きでもない居酒屋とかキャバクラのアルバイトにいそしむよりも、そちらに専念していくばくかの収入を得ようとするのは当然の結末だろう。

今回はすべてタラレバで話しているが、このバンダースナッチの取り組みが失敗に終わっても、類似のシステムを考案する会社・企業はまた現れるだろう。
そのうちに成功を収める企業も現れる可能性がある。

そうなったときに、3番のようなデザイナーは企業にとって不要になるし、3番のようなデザイナーに依存している企業も存在価値がなくなるだろう。
全滅とは言わないが、何割かは淘汰されるのではないか。

このシステムが成功することは「デザイナー」という職種自体も存在を危うくさせる危険性をはらんでいるし、まさしく「誰でもSPA」を立ち上げれる時代がそこまで到来しつつあるといえる。

この期に及んで、アパレル業界はまだ前年実績が云々とか、他社の売れ筋が云々とか言うつもりだろうか。
前年実績と他社の売れ筋後追い(街頭スナップの商品化なんてまさに他社売れ筋の後追いの典型)に終始するアパレル企業自体が淘汰される日がそこまで来つつあるのかもしれない。

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