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南充浩 オフィシャルブログ

古き良き時代に戻ることはない

2014年4月18日 未分類 0

 小悪魔agehaを発行していたインフォレストが事実上倒産した。
これは既報なので多くの方がご存じだろう。インフォレストはこの雑誌以外にも何誌か発行しており、同社から出されたリリースによると、他社に移籍して続く雑誌と社とともに消えゆく雑誌がある。
手に入れたリリースからその行く末を抜粋してみる。

「Happie nuts Happie 」― 6 月号 (4/17 発売 )より、発売延期。 再開時不明。

「Samurai ELO」― 6 月号 (4/24 発売 )より、株式会社 より、 三栄書房へ版元移行。

「小悪魔 ageha 」 ― 6 月号 (5/1 発売 )より、発売延期。 再開時不明。

「Samurai Magazine」 ― 6 月号 (5/7 発売 )より、版元移行に向け調整中。

「女子カメラ」― 9 月号 (7/20 売り)より、ミツバチワークス株式会社へ版元移行。

「ibought」 ― Vol.6(発売日未定)より、ミツバチワークス株式会社へ版元移行。

またこれら以外の雑誌は流動的な状況で確定していないとのことである。

この中で再開時期不明となっている2誌は廃刊になる可能性がきわめて高い。

移籍して発行が継続しているのは「samurai ELO」と「女子カメラ」だけということになる。
「ibought」も移籍は決定しているが、発売日が未定となっている。このまま休刊してもおかしくはない。

さて、インフォレストの事業背景は、帝国データバンクに詳しい。
以下に引用してみる。

当社は、2002年(平成14年)6月に他の出版社の一部雑誌出版部門を分社化し設立。出版および衣料・服飾雑貨などの通信販売業者で、出版部門は、女性向けの「小悪魔ageha」「nuts」「アイラブママ」「女子カメラ」、男性向けの「Samuraiマガジン」「SamuraiELO」などの若者向けのファッション誌のほか、パズル関連、コンピュータ関連の雑誌、書籍、ムックを発行、とりわけ「小悪魔ageha」がテレビなどで頻繁に取り上げられ、販売部数が30万部に伸びた2008年3月期の年売上高は約59億4500万円、新規事業として通販事業を開始した2009年3月期には年売上高約74億9600万円を計上していた。

その後は、「小悪魔ageha」をはじめ既存雑誌の売り上げが頭打ちとなっていたほか収益確保のため雑誌の廃刊を進めたことや景気低迷下で広告収入も減少、2010年3月期の年売上高は約68億300万円に落ち込んでいた。また、同時期に親会社が変更されてからは、代表者の交代や本社不動産の売却、従業員の削減などリストラを進める一方、組織再編を進め経営の効率化を図っていた。しかし、その後も売り上げの減少が続き2012年3月期は年売上高約43億7900万円にダウン、資金繰りも厳しさを増していたことで信用が低下。ここにきて資金繰りが限界となり、今回の事態となった。

とのことであり、負債総額は30億円である。

小悪魔agehaが支持された背景にはカリスマ女性編集長の力があった。

ブームが起きた2007年~2008年にかけて部数を飛躍的に伸ばしているが、その翌年から会社側は早くも通販事業を立ち上げている。これは収益性を強化する目的だろう。
企業側としてはありがちな選択肢である。それに対してカリスマ編集長は反対の意思を表明していた。
過去のインタビュー記事でも「反対」と明言しておられたようだ。

情報以外の物品を売ることを潔しとしなかったということである。
編集者としての矜持には賛同できる部分がある。

会社側の思惑通りに通販効果もプラスされ、売上高は14億円近く伸びている。
これはおそらく通販だけの功績ではなく、小悪魔agehaのブームによる、広告収入の伸びもあったと考えられる。

その後、2010年に親会社が変更になるとあるが、要するに売却されたのである。
売却先はカラーズインターナショナルという会社だ。

ブームが頭打ちになり、リストラを進めたというのはお決まりのパターンである。

そのあたりの時系列的な変遷はこちらのブログに詳しく述べられている。
他の解説記事よりも数段詳細にまとめられているので、ご興味のある方はご参照いただきたい。

http://kaya8823.hatenadiary.com/entry/2014/04/16/172810

講談社とか小学館とか集英社とかそういう大手出版社以外に、中小零細の出版社がある。
中小零細出版社でも雑誌を発行している。

そうした中小零細出版社は資本が小さく経営が不安定なので、他社からの経営支援を受けている場合が多い。
支援する企業は一般的に出版業界以外の企業が多く、インフォレストの場合も同様である。

出版業界以外の企業は、雑誌媒体を持っていることに価値を見出して支援を申し出る。
ところが支援してみると、雑誌媒体はそれほど収益性は高くない。
発行部数も伸びないし、広告出稿量も増えない。その割に人件費は高い。
そうして、何年か後に手放してしまう。

もっと小さい出版社で子供服雑誌「maria」というのがあった。
関西を拠点にしていたが、これも廃刊になっている。
廃刊になった理由の一つとしては資本参加していたスポンサーが手を引いたということが挙げられる。
スポンサーは当然出版関係の企業ではなかった。

筆者が以前に籍を置いたことがある関西の編集プロダクションも自社オリジナルの雑誌を発行していた。
こちらはファッションではないのだが。
このプロダクションも経営難からスポンサー企業が転々と変わっている。かろうじて雑誌だけは発行されているのだが、どこがスポンサーになって会社が維持されているのかはわからない。会社としての体をなしているのかどうかも怪しい。

一方、企業側は紙媒体ということに価値を感じているようだ。
ポイントが俳優の水嶋ヒロさんを編集長に据えて自社編集の雑誌を発行した。
最近はまったく評判を聞かないが、発行を継続しているのだろうか?

マックハウスだって雑誌的な読み物を季刊で発行していた。
今でも継続しているのだろうか?

そんな風にみると、他分野の企業からすると紙媒体には得も言われぬ魅力があるのだろう。
逆に出版に携わっている側からするとそこまでの魅力はまったく感じないのだが。

ファッション雑誌に限らず、今後、すべての紙媒体は大きな成長が望めない。
一部にはその時々に応じて部数を伸ばす雑誌もあるだろうが、雑誌全体の部数が伸びることはない。
ファッション雑誌も当然そうなる。

そして部数が伸びた雑誌もどこかで頭打ちが来る。無限成長はあり得ない。

となると、超大手出版社以外の中小零細出版社が売却されたり、買収されたりというケースはまだまだ増えるだろう。
売却先、買収先の多くは出版以外の業界の企業であろう。
そして数年して転売されるか、廃止されるかである。

そしてこの流れは止まらない。
雑誌が隆盛を極めていた古き良きアナログの時代に戻ることは決してないだろう。

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