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逆説「若者の○○離れ」

 「定年退職後の団塊世代を狙え!」てなスローガンが2005年ごろから唱えられてきた。
他の分野ではどうだか知らないが、こと衣料品業界においてはこの世代向けで成功したブランドはない。代わりに地方のユニクロあたりがファッションに興味のない老人層を多く取り込んでいるように見える。
都心旗艦店は別として郊外店や下町の駅前の店舗は本当に老人客が多い。「あべのマーケットプレイス キューズモール」内のユニクロなんて50代以上の顧客比率はかなり高い。

ポイントはちょうど2000年代半ばごろに団塊世代向けブランド「アンダーカレント」を開発したが、売れ行きが振るわず、その後40代向けに転換したがそれもだめで現在はブランド自体廃止になっている。

衣料品業界では60代以上を「シニア」と呼ぶ。
しかし、残念ながらシニアがファッションにお金をつぎ込んでいるとは今に至るまで耳にしたことがない。
メンズの百貨店向け単品カジュアルではわずか数社がその市場を占有している。
占有しているというとすごく強力な政策でその市場を奪い取ったと思われがちだが実状はそうではない。もっと多くのブランドが存在したがいずれも撤退したため、現在残ったのがその数社であり、残存者メリットゆえに安定した売上高が稼げているという状況である。

日登美、林田、アラミスくらいの企業が残っているのみだ。

こういう状況を見ていると、果たして団塊市場とかシニア市場なんてものが、エコノミストやコンサルタントが言うようなバラ色の市場だとはとても思えない。少なくとも衣料品業界においては。

そういえば先日、シナジープランニングの坂口昌章さんが自身のブログでシニア市場について提案をされていて、これは新しい切り口だと感じたのでご紹介したい。

第7回「「シニア化市場を攻略するコンセプト」
http://j-fashion.cocolog-nifty.com/jfashion/2013/06/20137134-094b.html#more

 最近1年間ほど、集中的にシニア市場について研究しました。
 シニア層の年間消費額が100兆円を超え、流通業界はこぞってシニア市場攻略を考えていますが、成功事例は多くありません。
 「シニア市場」というと「年寄り」というイメージに捕らわれ、年寄りくさい商品やサービスを展開してしまう例が多いようです。あるいは、「シニアなんだから高くても良い商品を買うはずだ」という思い込みから、やたらと高い商品を勧めてしまう。それでは売れません。
 一方で、「若者の○○離れ」という言葉が流行しています。若者にしてみれば、「上の世代が何を勝手なことを言っているんだ」と思っているでしょう。私はこのフレーズの中に、シニアマーケティングのヒントが隠されていると思います。
 若者が離れているコトやモノは、シニア向けにリニューアルすることで成長することが可能です。無理やり、若者に売ろうとしても成功しません。
 企業は、若者には必要ないモノを売ろうとし、シニアにも欲しくないモノを売ろうとして、両方とも失敗しているのではないでしょうか?

とある。そして

2.シニア市場の中身とは?
・巨大で細分化された100兆円シニア市場
・フロー消費からストック消費への流れ
・シニアとは年長者か?上級者か?
・シニア市場のターゲットイメージとは?
・若者の○○離れ(酒離れ、車離れ、タバコ離れ、新聞離れ、映画離れ、読書離れ、恋愛離れ、海外旅行離れ、スポーツ離れ、政治離れ、人間離れ、腕時計離れ、海離れ、ゲーセン離れ、魚離れ、肉離れ、日本酒離れ、雑誌離れ・・・)にヒントあり

とある。

個人的に注目したいのが、「若者の○○離れ」というフレーズである。
例に山ほど挙げられているが、酒離れ、車離れ、たばこ離れから始まって、新聞・映画・読書・恋愛・海外旅行・腕時計・ゲーセン・雑誌などなど。最近ではセックス離れなんていうのもある。

坂口さんの視点が秀逸だと思うのは、この○○離れというのはすべて老人の視点で語られているということに着目した点である。
若者からすれば、育ってきた環境や現在置かれている環境、金銭的状況などの要因から酒・車・映画・恋愛・海外旅行・腕時計・ゲーセンなどに興味を示さなくなっているのであって、それに対して「○○離れ」というレッテルを貼ること自体がおかしい。むしろ若者にとっては不必要な部分も多いから自然と離れて行ってしまうわけである。

若者が離れたこれら諸々に対して、反対に、老人世代は並々ならぬ興味と執着をいまだに抱き続けているということになる。

なら老人世代に対してそれらを提供してやれば良いという説明は理に適っている。

例えばゲームセンターを見てみると、20年前までは不良少年のたまり場というイメージだったが、現在では少年などはおらず、中高年のたまり場になっている。とくに老人世代がゲームセンターを利用することが増えていると報道されている。

だから、若者が離れた○○というジャンルをシニア層に向けて提供すればシニア市場は活性化するのではないかという坂口さんの主張には深く同意する。

ただ、市場としては美味しいのかもしれないが、シニア層相手の商材やサービスを開発するのは個人的にはあまり気が進まないというのが本音である。なぜならその年代の人々を筆者はあまり好きではないからだ。
ビジネスと割り切れる方々にお任せしたい次第である。

早晩、淘汰が始まる

 先日、ごく小規模な産地企業ビジネスマッチングイベントを覗いた。
生地メーカー、染色工場などが出展していた。出展社は10数社あり、そのうちの3分の1くらいの企業がストールを出展していた。

今回はこのイベントの良し悪しや是非を問いたいわけではない。

産地企業の製造したオリジナルストールというのは、すっかりありふれたアイテムとなってしまったと感じる。
見る立場からしてもちょっと食傷気味である。

これは早晩淘汰が始まる。
もちろん他の識者がおっしゃるように淘汰されるのが市場の原則であるからそれは構わない。
ただ、これから参入しようという企業があるなら、相当の仕掛けとプランニングとデザインセンスがなければ後発組が易々と勝ち残れる環境でなくなったのは確かである。

産地製造業がストールに取り組みやすいのは型紙が必要なく、縫製仕様も簡単だからである。
おまけに色柄や表面感だけで勝負できる要素が大きい。

こういうアイテムはかつて、和装の帯だった。
ひたすら決められた幅と長さで織ればよかった。問題は色柄と生地の表面感である。
和装が廃れて、注目されたのがネクタイだ。

ネクタイ製造業に転身した西陣の企業も多かった。何せ西陣ネクタイという社名の企業があるほどだ。
ネクタイも帯ほどではないが、決まった幅と長さで織ればそれで済んだ。

しかし、ネクタイも衰退アイテムとなった。

次に登場したのストールである。

中期的にはストールというアイテムはそれなりに需要が継続するだろうと考えている。
今春夏はセーターのプロデューサー巻きが一大ブームとなりストール需要は減少した。しかし、プロデューサー巻きのトレンドも長続きしないと予測する人もいる。
ブームは去るかもしれないが、あのスタイルは一定数残るのではないかと筆者は推測する。

まあ、プロデューサー巻きをする人が気分によってストールを巻くスタイルと使い分けるようになるのではないかとも思う。

ストールを巻くスタイルも今後一定数は残りそうなので、市場としては存続しそうだ。
けれどもそこに参加するプレーヤーの数はこの3年間で飛躍的に増えた。
また価格別で見ると、低価格SPAブランドには1000~3000円程度の価格で見栄えもそれなりにマシなストールが山ほど存在している。
一方、2万円を越えるような超高額品は有名ラグジュアリーブランドの独壇場になるだろう。

今後、大多数の消費者が求めるのは、国内製造や伝統技法をアレンジしたという付加価値がありながら、それでいて庶民にも変える中価格帯の商品になると思われる。

国内産地企業の生産規模から考えても低価格帯は無理だし、かと言ってブランド力、販促プロモーション能力に劣っているから超高額品も無理である。必然的に中価格帯へ殺到せざるをえない。

中価格帯は恐ろしく競争が激化するだろう。

今から参入する産地企業はそういう状況を想定する必要がある。
軽い気持ちで新規参入するなら必ず痛い目に合う。

先日来、産地企業によるストールの取り組みについて何度も書いているのは、新規参入するには相当の覚悟と戦略が必要だと言いたいためである。

おはようございます。今日も素敵な一日をwwww

 フェイスブックで何か発言するとそれに対してコメントが付く。
例えば、毎朝「おはようございます。今日も頑張りましょう」なんて発言をアップするとする。そうするとその下に、友達や友達じゃない人からも「おはようございます。めっきり朝晩寒くなってきましたね」なんてコメントが返ってくる。

これはこれで、心和むやり取りではある。

しかし、ときどき、まったく関係ないことに「おはようございます。今日も一日がんばってください」なんてコメントが付くことがある。これには疑問を抱かざるをえない。

先日も出張で大阪に来られた方が「他の地方に比べると大阪の人は信号を守りません。何故だろう。何度大阪に来てもこの習慣には慣れません」という一種の問題提起の発言をアップされた。
普通であるなら、その下には「私もそう思います」とか「これが大阪独特の習慣なんですよ。なんとか慣れてください」なんていうコメントが付くはずなのだが、

「おはようございます。今日も佳い一日をお過ごしください」とか
「おはようございます。月末の業務をこなします」というコメントが付いている。

はっきり言って発言主とは会話がまるっきり噛み合っていない。

今回例示した以外にも、こういうコメントは結構ほかでも見かける。
こういう人たちは日本語が理解できないのだろうかと以前から不思議だったのだが、これはフェイスブック内で優位なポジションを確立するために行われている誤った行動だということを先日知った。

なぜ、人はおはよう隊に入隊するのか
http://ameblo.jp/cleaning-bee/entry-11643857341.html

ホント 本文に全く関係のないコメントを残して、変な気持ちにならないのかな??

t02200205_0531049612721704903

なぜ、このようなことをするのか??

みなさんはあまり気にしなくてもいいですが、こういった人たちは
フェイスブック内で優位なポジションに立つためにやっているようです…

1、加点ポイント:

「いいね!」を押した(+1点)、コメントをした(+5点)、
 「いいね!」を押された(+5点)、コメントをされた(+10点)、
 発言をした(+3点)

点数を気にすることは結構だと思う。

ただ、そんなもん、人にやるなよ!!笑

こんな、おはよう運動してる人   

総じて、SNSに詳しくないので気をつけてくださいね(笑)

一度、こういう運動に参加するとフェイスブックを辞めるまで

「おはようございます。今日も素敵な一日を』

とか入ってきますよ。

例えば 「今日は祖母が亡くなって三回忌です』

という投稿をしても

「おはようございます。今日もハッピーでワンダフルでファンタスティックな一日を』

なんて、相当ブッ飛んだ コメントをGETできるでしょう。

とのことである。

フェイスブック内ではそのリアクションによって点数が与えられるようであり、それを貯めれば貯めるほど自分が表示されやすくなるという仕組みになっているらしい。
そのための一種の販促活動とも言えなくもないが、手法は間違っている。
的外れなあいさつを返したところで、その発言主との関係性が深まることには全くつながらないし、それを見ていた別の人から接触があることもほとんどないだろう。

それは実際の売り場で「Tシャツ1990円」とだけ書かれたPOPを貼りつけるようなものである。
とりあえず「Tシャツ」であることと「1990円であること」はわかったが、それだから何?という感じである。
生地が特殊なのか、シルエットに工夫を凝らしているのか、それともコーディネイトの要になるのか、などという情報が無ければそのTシャツはなかなか売れにくい。
「Tシャツ1990円」とだけ書かれたPOPでは消費者はその商品に興味を持たない。

発言主の問題提起に対して「おはようございます。今日も良い一日を」なんて返したところで、発言主はその相手に興味は持たないだろう。

変わり映えはしないけれど・・・。

 今日はちょっとお気楽に。
30代~40代向けメンズファッション雑誌で、現在もっとも印刷部数が多いのが「Safari」である。

http://www.j-magazine.or.jp/magadata/?module=list&action=list

今年4月~6月の3ヶ月間における1号あたりの平均印刷部数によると、
Safariは16万2167部である。
この3ヶ月間は平均して毎月16万2000部強の印刷を行ったということになる。

元祖、オヤジ系雑誌として名高い「Leon」は8万4434部であり、Safariの半分程度の印刷部数となっている。
そういう意味ではSafariの印刷部数は圧倒的だ。

同じ並びだとUomoは5万部、メンズEXは4万4667部という状態である。
またメンズプレシャスなんて3万6500部しかないので、この雑誌はあとどれだけ存続できるのだろうかと要らぬお節介ながら心配になる。

店頭で各誌を読み比べてみた個人的感想だが、毎号内容がもっとも変わり映えしないのがSafariだと感じる。
メンズの洋服はバリエーションが少ないので、春夏秋冬のそれぞれのシーズンで登場するアイテムは決まっている。
とくに夏物なんてポロシャツ、Tシャツ、半袖シャツ、短パン程度である。
あとは腕時計、靴、アクセサリー、などなどだろう。

だからどの雑誌を見ても、夏の3ヶ月間は毎号あまり変わり映えがしない。
しかし、その中でもSafariの変わり映えのなさは突出している。
個人的印象論だが、6月号と7月号と8月号がまるっきり同じ内容だと言われても筆者は驚かない。
むしろ納得する。それほど似ていると感じる。

さらにいえば、去年の号と一昨年の号と今年の号でもそれほど変わり映えがしない。
個人的には、毎シーズンほぼ同じことを掲載しているのではないかと感じてしまうほどだ。
Safariに関していえば、毎シーズン、ほんとに変わらない。

Leonは意外に手を変え品を変え毎号ある程度変化をつけている。
最近は洋服よりも飲食店であったり、住居であったり、ナイトクラブであったりとライフスタイル?的要素が多くなっており、これも彼らなりの他誌との差別化なのだろう。
ただし、そういうリッチでリア充なオヤジたちのライフスタイルを、赤貧な筆者は体験したことがないので、読み飛ばすだけなのだが。

20代向けのメンズファッション雑誌で変わり映えがしないと感じるのはメンズジョーカーだ。
スタイリングも毎号あまり変わらない。春夏秋冬と決まったスタイルを淡々と紹介しているように見える。
もちろん私見なので、私はそう感じないという人がいても不思議ではない。

しかし、後発雑誌にもかかわらず、印刷部数はけっこう多い。
この年代では王者であるメンズノンノとさほど変わらない。むしろメンズジョーカーの方が部数が多い期間もある。

ちなみに今年4月~6月までの3ヶ月間の1カ月当たりの平均印刷部数は

メンズノンノが14万部
メンズジョーカーが15万24部

である。

さて、先日、お兄系ファッション雑誌「メンズエッグ」が廃刊となった。

その理由として http://t-f-n.blogspot.jp/2013/10/mens-egg.html では

1、雑誌のテイストがトレンドに応じて徐々に変化していった。
2、お兄系というファッションを好む層が激減した

の2点を挙げている。

公称発行部数25万部を唱えていたこともあるそうだが、25万部もあれば雑誌は廃刊にはならない。
末期には発行部数が相当減少していたのだろうと推測される。

こうして見ると、メンズのファッション、とくにファッション雑誌はテイストが変わらない方が支持を集めやすいのではないかと思えてくる。
ちなみにコテコテのミリタリー、ビンテージ系の雑誌「ライトニング」の印刷部数は10万3634部(今年4月~6月)で、「メンズクラブ」は6万1734部(同期間)である。

もちろん、両雑誌とも定期的にリニューアルを繰り返しているが、昔の面影が無くなった度合いでいうならメンズクラブの方が高い。昔親しんでいたころの面影はほとんどない。
ライトニングはいささかマイルドになったとはいえ、面影は残っていると感じる。

今回はあくまでも私見で確証はないが、メンズファッション雑誌において、変わり映えのなさと印刷部数の多さには何らかの相関関係があるように思えて仕方がないのだが。

成分表示がすべてではない

 自分自身もそういう部分があるのだが、多くの人は成分表示を見て良品かどうかを判断する。
例えば「ダウン90%・フェザー10%」という表示のダウンジャケットがあるとする。片方に「ポリエステル100%」の表示がある中綿ジャケットがあるとする。
当然、筆者も含めた多くの人がダウンジャケットの方を「良品」と判断し、両方の価格が一緒ならダウンジャケットを買う。

しかし、ダウンにも等級がいろいろとあってそれは「フィルパワー」というもので表記されている。またポリエステルにもさまざまな種類があり、機能性に優れたもの、手触りや表面感の良いものもある。
だから極端な言い方をすれば、フィルパワーがめちゃくちゃ低いダウンよりは機能性ポリエステルの方が良品である。

昨年見かけた珍品には「フェザージャケット」があった。フェザーの方がダウンよりも多く含まれているダウンジャケットである。しかしフェザーにはダウンほどの保温性はないから、フェザージャケットを買うくらいならポリエステル中綿のジャケットを買った方がずっと良い。

これは綿しかり、カシミヤしかり、ウールしかり、アクリルしかり、シルクしかりである。

先日「カシミヤ100%」の表示があるからと言って高級品とは限らないということを書いた。
ニットの場合、原料をどれだけ使用したかによる重さが重要なのであって、10キロのカシミヤを使用したセーターは当然超高級品だし、10グラム程度のカシミヤしか使わなかったセーターは肉薄のペラペラであるから、比較的安い価格で売ることができる。

反対に合繊のアクリルだって一概に安物とは言えない。
高級アクリルというのもある。

綿も同じである。
とくに綿の場合は原産地によってさらにブランド化がなされている。
けれども厳密にいえば、どこの地域で栽培されたのかという部分だけが重要なのではない。
もちろん農作物であるから栽培地の気候や風土、土質などに出来上がりが大きく左右される。
だから「○○という地域は高級綿が出来やすい」という事実はあるが、○○地域で栽培された綿がすべて高級品にふさわしい品質かというとそうではない。

さて、デニム生地メーカー、クロキの安達康雅部長が、一頃話題となった「ジンバブエコットン」に疑義を呈しておられる。

http://ameblo.jp/yan17bo14/entry-11651374918.html

日本の紡績で使用する綿は、主にアメリカ、オーストラリア、ブラジルなどが主体になっております。稀に一部の紡績会社が、アフリカのジンバブエ綿を宣伝し、有名にしたが、ヨーロッパの高級ブランドなどには、そういったリップサービスでは販売できません。そんなん言われても、我々には関係ないもん!って言われます。

逆に就学児童を労働させているような国の綿などは一切購入しません!とか言われます。また、何処の綿!って謳って販売するより、アメリカやオーストラリアの綿を厳選して、日本の紡績技術を駆使し、安くて良い糸を作る方に注力すべきです。

綿の産地に拘っていたのは、一部の生地ブローカーが同業他社を蹴散らすための作戦だったのだと思います。ジンバブエ綿でもピンキリで、当時の糸価格から想像すると、一番良い綿で作られた糸でなかったと思います。生地を売るためのツールとして利用されたのだと思われます。

綿の品質は、グレードよりステープル(繊維の長さ)で決まります。

とのことである。

しかし、一般消費者が成分表示だけを見て、物の良し悪しを判断するのは仕方がない。
筆者だって安達部長だって専門外の食品については成分表示で良し悪しを判断するしかない。
「○○産地のサバ」なんて表示があったら「良んじゃないだろうか」と思ってしまう。

問題は業界関係者までもが物の良し悪しを成分表示でしか判断できなくなっているところにある。
筆者の経験上、有名SPAブランドのベテラン企画担当者や有名セレクトショップのベテランバイヤーまでもが「カシミヤって書いてあるから良品だよね」とか「○○コットンて書いてあるからだから高級品だよね」という判断を下すことが多い。

おいおい、それじゃあ、買い物に来たオバチャンたちと同じレベルじゃないの。

とそう心の中で突っ込んだことはしばしばある。

例えば、シルクだってそうだ。

シルク100%という表示があると高級品かと思うが、ときどき、ザラザラの表面感でまるで太番手のラミーやヘンプみたいな手触りのシルク製品がある。それでいて値段はそこそこに安い。
これは繊維長(ステープル)の短い安いシルクを使って生地を織っているのである。繊維長(ステープル)の長いシルクは高級品として扱われる。
安い原糸で織っているから生地も安いし、それを使った製品の価格も当然安くなる。

だから「シルク100%」の表示があってもこれは高級品でも良品でもない。価格相応の商品である。

一般消費者がこのシルク製品を「高級品」と思いこむのは仕方がないが、少なからぬ業界関係者までもがこれを「お値打ち品」だと思うことは問題だろう。

と、ここまで書いてきて業界全体が素人化しているのではないかと思えてきた。
それだからこそ、必然的に「日本のファッション業界はウソが多い」という先日の女性の指摘につながるのではないだろうか。

ローマは1日にして成らず

 以前にも書いたことがあるが、去年の11月、ブレーンストーミングという名の吞み会にて、「編み物教室を開催してはどうですか?もちろん女性対象がメインですが、ついで男性対象も」と丸安毛糸さんに提案した。
すると、丸安毛糸さんはそれから3カ月弱後に早くも編み物教室を開催してしまった。もちろん男性版も。

当時、その行動の素早さに驚いたものだった。

通常、さまざまな産地製造業や原料会社に提案を行うが、「いいですね~」と返事があっても実行に移されることは稀である。実行に移した中でも即座に動いてくれる企業というのはさらに稀である。

そういう対応に慣れていた筆者にとって、丸安毛糸さんの実行速度は異例だった。

さて、そんな丸安毛糸さんの編み物教室が先日発行された雑誌にカラー4Pで特集された。
しかも女性版ではなく、男性版の方でだ。

これにはさすがの丸安毛糸さんも驚いたようだが、いきさつを尋ねてみると、

「ネットの検索で当社の男性版編み物教室『男糸会』が上位2位くらいに出てくるので、それを調べた雑誌社から取材申し込みがあった」とのこと。

丸安毛糸の岡崎博之社長も「こんなにすぐに取材申し込みが来るとは思いませんでした。こまめに情報発信を続けてきて良かった」と驚いた様子だった。

今月創刊された男性向け情報誌「FORTY」(ネコ・パブリッシング)の真ん中からやや後ろに4Pで掲載されている。
創刊されたばかりの雑誌なので反響や反応は未知数だが、もし4Pのタイアップ記事広告を作成したなら、製作費・掲載料込みで軽く100万円は超えるだろう。
そう考えると、非常にお得である。

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今回は上手く行きすぎたケースだが、それを引き寄せたのは丸安毛糸さんの日々の情報発信だろう。

岡崎社長も頻繁にブログを更新されているし、各スタッフもネットでの情報発信は積極的だ。
以前にも書いたが、ブログ記事も500本くらい貯まるとかなり上位に検索されるようになる。1000本貯まると圧倒的に上位に来る。さらに更新頻度が高ければ高いほど上位表示が維持される。

社長以下、何人ものスタッフで更新されるのだから記事の総数は500本は優に越えているだろう。
そういう地道な取り組みが今回のラッキーを引き寄せたと考えられる。

ブログもそうだし、ツイッターやフェイスブックもそうだが、「やってみたけど反応がないから止める」という企業やブランドをときどき見かける。
「それに対しての対策は?」なんてことを真面目に尋ねてくるSEも存在する。
何を言っているのかと呆れるほかないのだが、じゃあ「対策は?」なんて尋ねる前に毎日ブログを更新して500本の記事を貯めることである。
手っ取り早く成果を出したいなら、広告費用をふんだんに使うことである。

1日に1本記事をアップすれば1ヶ月で30本、1年で360本になる。
1ヶ月に40本強アップすれば1年で500本になる。

書く内容が良いに越したことはないが、そうはいっても良い内容を1日1本書くのはなかなか骨が折れる。
そこで尻ごみをするくらいなら、日常の日記のようなものでも良いから書く方が良い。
質が良いに越したことはないが、筆者は「とりあえず質より量」だと思う。
質は徐々に高めて行けば良い。そう考えている。

今回、開始からすぐに結果の出た丸安毛糸さんの取り組みだが、そこに至るまでには地道に続けた情報発信があったということは忘れてはいけないだろう。

実態の見えない業界

 先日、約20年間ヨーロッパを拠点に活動している日本人女性にお会いした。
彼女がいうには「日本のファッション業界は嘘が多い」とのことだ。

この私見には個人的に激しく同意する。

例えば、ジーンズ関連でいえば、単なるテキスタイルコンバーターや生地商社をなぜだか「生地メーカー」だと誤解している業界人は掃いて捨てるほどいる。
とくに東京には多い。そんなふうに感じる。

一つにはそういうファッショニスタが勝手に誤解している場合がある。
生地商社、テキスタイルコンバーター、振り屋、生地メーカーの区別ができない人がけっこういらっしゃる。

もう一つはその生地商社なりテキスタイルコンバーターが自称「生地メーカー」だと名乗り、その名乗りを信用してしまう場合。

後者だとその生地商社なりテキスタイルコンバーターは明らかに「嘘」を言っているわけだが、筆者の知る限りこういうケースは結構ある。

さて、件の女性は「生地製造から製品の縫製、洗い加工まで一貫生産している」と国内ジーンズブランドが自称しているのを耳にしたという。
その会話現場を直接目にしたわけではないから、彼女が相手の言葉を取り違えている可能性はゼロではない。
しかし、もし相手が彼女が再現した言葉通りのことを話していたなら、それは明らかに「嘘」である。

なぜなら、国内には原料生産から製品製造までを一貫生産できる工場は存在しないからだ。

ジーンズを製造するためにはデニム生地が必要となる。
先日も書いたようにデニム生地製造には大きく4つの工程がある。

紡績、ロープ染色、織布、整理加工である。

この4つの工程をすべて自社で行えるのは国内にはカイハラしか存在しない。
また紡績を除く3つの工程をすべて自社で行うのはクロキしか存在しない。

この4工程がすべて終了してめでたくデニム生地は完成するわけだが、これをジーンズに仕上げるためには
裁断、縫製という工程が必要となり、最後には洗い加工という工程も待っている。

さすがのカイハラとクロキも自社に裁断・縫製工場は持っていないし、洗い加工場も持ってはいない。

裁断・縫製は別の工場に依頼する必要があるし、もちろん洗い加工も同じである。

ただ、仮に「A」というジーンズブランドがあったとする。彼らが、カイハラやクロキに「うち専用のこういう生地を作ってほしい」と依頼することはある。また縫製工場、洗い加工場についても同じような指示をすることもある。
これを指して「一貫生産」と主張するなら、それは解釈を広げすぎているといわねばならない。そんなものは一貫生産とは言わない。彼らには、一貫生産している中国あたりの工場を一度見学することをお勧めする。

正しくは「生地から洗い加工まで当ブランドがすべてディレクションしています」と言うべきである。

今回はたまたまジーンズを例に出したが、この手のことはレディースブランドにもメンズブランドにもスーツブランドにも子供服ブランドにも多数見受けられる。
そしてこの手の情報が無責任なファッション雑誌や新聞によって世間に広く流通してしまい、いつしか既成事実となってしまう。

嘘も方便とばかりに大げさな表現を使って販促を図る業者、その言葉を広告料と引き換えに掲載してしまうマスコミ、両方に責任があるといえる。

セルビッジデニム生地製造でそこそこ有名な生地メーカーが実はセルビッジデニムを織ることができない、なんてことが普通にある。

ほかにも藍染めにしてもそうである。最早何が正しい情報なのかわからない。
あんなにたくさん本藍手染めデニムが生産できるわけがない。

http://ameblo.jp/yan17bo14/entry-11647070559.html

徳島以外で、徳島藍使用って謳っている生地屋があるが、実際、本当の

事であるか?疑問である。

私は、徳島で生産される藍の染料(藍玉)のほとんどが徳島で消費される事を

確認している。(徳島県の職員や組合の人に)

にもかかわらず...

とのことである。

よってファッション業界はますます胡散臭い業界になっていくわけである。

売上規模の縮小は止まらない

 昨日、イオンのスマートスリムなダウンジャケットへの感想を書いたが、偶然にも東洋経済オンラインがイトーヨーカドーの衣料品の記事を掲載していた。

イトーヨーカ堂、衣料品が11期ぶりに黒字化
http://toyokeizai.net/articles/-/22254

11期ぶりということは2002年から衣料品部門の赤字が続いていたということだ。
傍から見ていると、そこまでしてファッション衣料を手掛ける必要があるのかと感じてしまう。機能肌着や靴下、形態安定ワイシャツ、格安スーツ、パジャマ代わりのスエット上下やTシャツ・短パンセットなどの実用衣料・機能衣料にはそれなりの需要があるのだから、そちらに特化すれば良いのではないか。これが筆者の偽らざる本音である。

30代半ば以下のお若い方々には実感がないだろうが、かつてバブル期前後、量販店の衣料品部門は利益の稼ぎ頭だった。43歳になる筆者にもその実感はまったくないのだが、長らく衣料品業界に籍を置く方々からするとこれは常識である。
それ故に量販店各社は衣料品に見切りをつけかねている。とくにイトーヨーカドーは「衣料品に強い」というのが、出自以来のキャッチフレーズだったのでやすやすと実用衣料へ撤退するわけにはいかないという事情もある。

さて記事から引用すると、イトーヨーカドーの衣料品部門の最近の業績推移は以下のようになる。

イトーヨーカ堂の衣料品事業もピーク時は4568億円(1996年2月期)あった売上高が、直近の13年2月期は2142億円と半分以下まで縮小。収益面でも02年8月期から赤字が続いてきた。しかし、「今上期から黒字に転換することができ(利益額は未公表)、通期でもさらに改善できる見込み」(亀井淳社長)となった。

とある。
「11期ぶりに黒字転換」と言っても、その利益額は未公表なのであるから、その額はたかが知れたものなのだろう。しかもまだ中間期での話であり、通期ではさらに改善できる「見込み」があるだけなのである。本来なら記事の見出しには「黒字化見通し」と付けるべきではないかと思う。
ちなみに売上高はこの17年間で半分以下にまで縮小している。

この後の記事を読むと、それなりのヒット商品も生まれているようだし、今秋冬の目玉商品も挙げられているので、楽観的な見方を示しているのかというとそうではない。
東洋経済のこの記者さんはなかなか現実をシビアに見つめている。先頃のジーンズメイトの決算下方修正記事なども秀逸だった。

ただ、採算の改善が進む一方で、衣料品の商品売上高は前年比3.6%減の2142億円(13年2月期)。直近も既存店のマイナス成長が続いており減収傾向は止まっていない。構造改革の成果は着実に現れているが、衣料品の規模縮小を食い止めるまでには至っていない。

と締めくくられており、まさに記者が主張する通り、量販店各社の衣料品部門の規模縮小はまだまだ続くと筆者も考えている。

そもそも現在の市場において、ファッションにそれなりに興味を持つ層は量販店の衣料品平場では購入しない。
ショッピングセンターは利用するだろうが、ファッション衣料を購入するのはその中に入店する低価格SPAブランドのテナントである。代表はユニクロやGAP、H&M、ポイント、クロスカンパニー、ジーユーなどなどだろう。
量販店の衣料品平場で購入するのはファッションに興味のない層が多く、それ故に先ほど挙げたような実用衣料・機能性衣料に需要が集中する。ファッション衣料に関しては、量販店はブランド力が皆無だといえる。

低価格SPAブランドが生まれていなかったバブル期周辺では、量販店にもそれなりのブランド力はあったのかもしれないが、バブル崩壊後にはわずかにあったブランド力もなくなってしまった。一度なくなったブランド力を再構築するのは、新たにブランドを立ち上げるよりある意味で難しい。
「レノマ」というかつての名ブランドがあるが、何度デザイナーを取り替えても日本市場では浮上しない。それと同じことである。
「レノマ」でもできないことを量販店各社ができるとは到底思えない。

記事によると、イトーヨーカドーの今秋冬はニットを強化するという。

今秋冬商戦では、カシミヤやメリノウールなどの高級素材を世界中から調達したニット商品「世界のニット」を重点展開する。中には1万円を超える高単価商品もあるが、「商品力と接客を強化することで上質な商品は支持される」(亀井社長)

とのことだが、残念ながらカシミヤで1万円を超える程度の物は「高単価商品」とは言わない。ユニクロでさえカシミヤニットは7900~9800円なので、1万円前後というのはカシミヤニットにおいては限界的低価格と見なすべきだろう。
筆者はニットの専門家ではないので、大雑把にしか説明できないが、某週刊誌から先日質問を受けた。

「カシミヤ100%のニットで9800円とかの価格が表示されていますが、それって本物なんですか?」と。

普通の羊毛でも繊維長が細く長いものを集めてニットを編めばカシミヤと区別ができないほどの風合いと手触りになる。素人はもちろん、一部の自称玄人ですら騙される。
その昔、某有名セレクトショップがカシミヤ0%の商品をカシミヤ混と表示していたのは有名な話である。製造元から成分表に嘘を書かれれば、自称玄人のバイヤーも区別ができなかったと見るべきだろう。

それ故に、単純に「カシミヤ100%=良品」というわけではない。
ニットを含む編み物の価値は重さで決まる。極端にいうなら、カシミヤ100%ニットでも重さが10グラムしかなければ、ペラペラの薄い生地になり、低価格品になる。
さらにいうなら、繊維長の短い落ちワタのようなカシミヤを集めればさらに原料は安くできるだろう。
まっとうな繊維長のカシミヤ100%で重さが1キログラムもあれば、製品価格は1万円は軽く超える。

昔、某ファーストフードチェーン店が、ハンバーガーに「100%ビーフを使用」と謳っていたが、それと同じことである。ビーフ100%だから高級ではない。ビーフだっていろんな部位がある。また牛肉を何グラム使うかが価格の決め手であって、ビーフ100%でも20グラムしか使っていなければ、そのハンバーグは低価格品ということになる。

大雑把に言って、ニットに関しては同じように考えるとわかりやすい。

そんなわけで、このイトーヨーカドーのニットも価格に見合った品質だと考えるのが適切ではないだろうか。

ターゲットを間違ったのか、思い込みなのか

 日曜日の朝以外ほとんどテレビを見ないので、だいたいが決まったCMしか見ないことになる。
先日、土曜日の午前11時ごろにテレビを何の気なしに点けると、イオンのライトダウンジャケットのCMが流れていた。イオンのトップバリュの衣服になど興味はないから、ボーっと眺めていると、それでも今年のダウンジャケットはかなりスマートなシルエットにしたということだけは的確に伝わってきた。

スリムスマートシルエットの「美姿ダウン」だそうだ。

http://www.topvalucollection.jp/feature/lightdown.html

公式サイトには「ダウンの常識が変わる」と謳われているが、そんな大げさなものでないことは言うまでもない。

そこまで大々的に「差異」を打ち出すのであれば、なぜ、ダウンの表面を走るステッチを横一直線としたのだろうか?
これだとユニクロのウルトラライトダウンと見分けが付かない。
「常識が変わる」「美姿」とまで謳うのであれば表面を走るステッチは縦方向にするとか格子状にするとか多少の工夫があっても良いのではないか。
逆にステッチをわざわざウルトラライトダウンと同じにする理由が見当たらない。もしかするとイオンはさんざん謳っておきながら実は自信がないから同じステッチにしたのではないかと勘ぐってしまう。

さて、たしかにダウンジャケットの悩みはモコモコとしたシルエットで、かなり太って見えることにある。
着用者の顔が小顔で面長ならまだマシだが、筆者のように顔がデカくて四角いとそれは悲惨なことになる。
だからスマートなスリムシルエットのダウンジャケットという商材には一定の需要があると予測できる。

けれども、そういうファッションに興味のある消費者層が、イオンで、しかもトップバリュの衣服を買うだろうかという根本的な疑問がある。
もちろん、価格の安いファッション商品を好む層は数多く存在する。しかしその層は、ユニクロやしまむら、ウィゴー、スピンズ、ポイント、クロスカンパニーあたりの商品を常に購入している。
そういう層がトップバリュの衣服を買うことはめったにないはずだ。あっても肌着や靴下類くらいだろう。

イオンの商品開発の努力は認めるが、顧客ターゲットをまちがえているのではないか。
イオンが「うちの顧客層はファッションの好きな層だ」とか、「トップバリュがファッションブランドだ」とでも感違いしているのではないだろうか。

以前、イトーヨーカドーが自社の1900円ジーンズのCMに女優の黒木瞳さんを起用したことがある。
黒木瞳さんともあろう大物女優が普段、イトーヨーカドーで1900円のジーンズを購入しているとは到底思えない。それだけに実にCMらしいCMだったということができる。
このCMによってイトーヨーカドーのオリジナル1900円ジーンズのイメージが好転したかというとそんなことはまったくない。
このCMがせめて3年間くらいでも続けば多少イメージも変わっただろうが、1シーズンの間だけ取って付けたようなCMを流したところで目に見えた効果など表れない。

今回のイオンのダウンジャケットのCMは人気俳優の伊勢谷友介さんを起用している。
だからといって、イオンのトップバリュのイメージがすぐさま好転するかというとそんなことはない。
今秋冬限りでこのCMは終わるだろうし、伊勢谷友介さんの起用もそれほど長くは続かないだろうから、今後何一つトップバリュのイメージは好転しないだろう。

イトーヨーカドーやイオンが的外れな努力を続けながらここまで衣料品にこだわるには理由がある。
30代半ば以下の方には信じられないだろうが、かつて量販店において、衣料品分野は利益の稼ぎ頭だったのである。ユニクロが台頭するはるか以前の話である。

「かつての利益の稼ぎ頭よもう一度!」、というわけだろうが、ユニクロやしまむら、それに続く低価格SPAブランドがこれほど氾濫してしまった状況下において、そういう客層をもう一度量販店のプライベートブランドに呼び戻すのは並大抵ではない。はっきり言うと至難の業だ。

ユニクロ、しまむら、ウィゴー、ポイント、クロスカンパニーその他もろもろを上回るほどのイメージを打ち出す必要があるが、トップバリュや量販店のプライベートブランドにそこまで良いイメージはない。売り場作りもはるかに及ばない。
一つの商品を改良し、テレビCMに人気タレントを起用すればなんとかなるというレベルの問題ではない。

そういえば、イオンもイトーヨーカドーも大金を使って過去に何度も東京ガールズコレクションのステージに登場したことがあるが、それで何か彼らの衣料品のイメージが好転しただろうか?筆者にはまったく好転していないように映るのだが。

今回のダウンジャケット開発の試みは確かに興味深くはあるが、果たして、イオンのトップバリュが抱えている現在の顧客層にマッチしたものかどうかは甚だ疑問だと言わざるを得ない。

国内産地製というアピールのみでは厳しい

 国内産地を拠点とする製造業者や加工業者が自社オリジナル製品としてストールの企画製造に着手するケースが多い。産地ナントカ展が開催された場合、体感として3分の1くらいの出展業者はストールを用意している印象がある。

先日、「ストールの商況は今後どうなるでしょうね?」という漠然とした質問をいただいた。

個人的には、今後、2万円を越えるような高額商品はそうやすやすとは売れないだろうと考えている。

現在、ストールなるアイテムは広く市場に流通しており、
エスニック雑貨店を覗くと1000円ストールなんてざらにある。
ユニクロや無印良品など低価格SPAブランドでも1000円~3000円くらいでけっこう見栄えのするストールも販売されている。

また、ストールを好む消費者もすでに何枚かのタンス在庫を抱えている。
実用衣料とは異なり、それほど破損もしないから、消費者としては目先の気分転換以外に積極的に買い替える必要はない。

国内産地企業が製品を企画した場合、どうしても中級価格帯以上になる。
暴利をむさぼっているとはまったく思わないが、物によっては2万円以上の価格になる。

しかし、そこそこに見栄えのする商品が広く市場に流通している状況で、しかもタンス在庫が豊富にある状況を見ると、よほどの物を提案しない限り、1万円台後半から2万円強のストールは売れないと考えられる。

1、よほど色柄デザインに特殊性がある
2、高級素材・希少素材を使用している。(カシミヤ混、シルク混など)
3、ブランドの知名度が高い

この3つのうち、すくなくとも1つを実現できていないと高価格帯ストールは売れない。
できれば2つくらい実現していることが望ましいだろう。

ちなみに「色柄デザインに特殊性がある」と言っても、それは「奇抜すぎる変なデザイン」であってはダメだし、オカンの手作り品のような見え方をする「素人っぽい特殊性」であってはダメだ。

しかし、国内産地で製造しているという部分は販促的にもそれなりの効果があるから、7000~1万円弱のストールはそれなりに売れるのではないかと考えている。
その価格で上に挙げた3つの条件のうち、すくなくとも1つは実現している必要はあるだろう。

タンス在庫をある程度抱えている状況において、さらに2万円のストールを買い足すことはちょっと考えにくい。衝動買いできる価格が望ましい。
年代にもよるが、中高年なら数千円から一万円弱というあたりが衝動買いできる限界の価格帯だろう。それ以上は衝動買いではなく、目的買いになる。
2万円のストールを売るには消費者に「目的買い」させる仕掛けが必要になり、プロモーションも含めたそういう仕掛けを産地企業が構築できるのかということである。

筆者の付き合いの範囲でいうなら、9割以上の産地企業はそういう仕掛けを構築することが不可能であると見える。

大規模SPAブランドと価格競争をする必要はないが、ストールというアイテムが登場してからそれなりの時間が経過した現在、ある程度価格も意識する必要がある。
もう「○○産地で作っている」という製造地のアピールのみで売ることは難しくなっていると考えて取り組む必要があるのではないか。

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