実態の見えない業界
2013年10月23日 未分類 0
先日、約20年間ヨーロッパを拠点に活動している日本人女性にお会いした。
彼女がいうには「日本のファッション業界は嘘が多い」とのことだ。
この私見には個人的に激しく同意する。
例えば、ジーンズ関連でいえば、単なるテキスタイルコンバーターや生地商社をなぜだか「生地メーカー」だと誤解している業界人は掃いて捨てるほどいる。
とくに東京には多い。そんなふうに感じる。
一つにはそういうファッショニスタが勝手に誤解している場合がある。
生地商社、テキスタイルコンバーター、振り屋、生地メーカーの区別ができない人がけっこういらっしゃる。
もう一つはその生地商社なりテキスタイルコンバーターが自称「生地メーカー」だと名乗り、その名乗りを信用してしまう場合。
後者だとその生地商社なりテキスタイルコンバーターは明らかに「嘘」を言っているわけだが、筆者の知る限りこういうケースは結構ある。
さて、件の女性は「生地製造から製品の縫製、洗い加工まで一貫生産している」と国内ジーンズブランドが自称しているのを耳にしたという。
その会話現場を直接目にしたわけではないから、彼女が相手の言葉を取り違えている可能性はゼロではない。
しかし、もし相手が彼女が再現した言葉通りのことを話していたなら、それは明らかに「嘘」である。
なぜなら、国内には原料生産から製品製造までを一貫生産できる工場は存在しないからだ。
ジーンズを製造するためにはデニム生地が必要となる。
先日も書いたようにデニム生地製造には大きく4つの工程がある。
紡績、ロープ染色、織布、整理加工である。
この4つの工程をすべて自社で行えるのは国内にはカイハラしか存在しない。
また紡績を除く3つの工程をすべて自社で行うのはクロキしか存在しない。
この4工程がすべて終了してめでたくデニム生地は完成するわけだが、これをジーンズに仕上げるためには
裁断、縫製という工程が必要となり、最後には洗い加工という工程も待っている。
さすがのカイハラとクロキも自社に裁断・縫製工場は持っていないし、洗い加工場も持ってはいない。
裁断・縫製は別の工場に依頼する必要があるし、もちろん洗い加工も同じである。
ただ、仮に「A」というジーンズブランドがあったとする。彼らが、カイハラやクロキに「うち専用のこういう生地を作ってほしい」と依頼することはある。また縫製工場、洗い加工場についても同じような指示をすることもある。
これを指して「一貫生産」と主張するなら、それは解釈を広げすぎているといわねばならない。そんなものは一貫生産とは言わない。彼らには、一貫生産している中国あたりの工場を一度見学することをお勧めする。
正しくは「生地から洗い加工まで当ブランドがすべてディレクションしています」と言うべきである。
今回はたまたまジーンズを例に出したが、この手のことはレディースブランドにもメンズブランドにもスーツブランドにも子供服ブランドにも多数見受けられる。
そしてこの手の情報が無責任なファッション雑誌や新聞によって世間に広く流通してしまい、いつしか既成事実となってしまう。
嘘も方便とばかりに大げさな表現を使って販促を図る業者、その言葉を広告料と引き換えに掲載してしまうマスコミ、両方に責任があるといえる。
セルビッジデニム生地製造でそこそこ有名な生地メーカーが実はセルビッジデニムを織ることができない、なんてことが普通にある。
ほかにも藍染めにしてもそうである。最早何が正しい情報なのかわからない。
あんなにたくさん本藍手染めデニムが生産できるわけがない。
http://ameblo.jp/yan17bo14/entry-11647070559.html
徳島以外で、徳島藍使用って謳っている生地屋があるが、実際、本当の
事であるか?疑問である。
私は、徳島で生産される藍の染料(藍玉)のほとんどが徳島で消費される事を
確認している。(徳島県の職員や組合の人に)
にもかかわらず...
とのことである。
よってファッション業界はますます胡散臭い業界になっていくわけである。