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南充浩 オフィシャルブログ

売上規模の縮小は止まらない

2013年10月22日 未分類 0

 昨日、イオンのスマートスリムなダウンジャケットへの感想を書いたが、偶然にも東洋経済オンラインがイトーヨーカドーの衣料品の記事を掲載していた。

イトーヨーカ堂、衣料品が11期ぶりに黒字化
http://toyokeizai.net/articles/-/22254

11期ぶりということは2002年から衣料品部門の赤字が続いていたということだ。
傍から見ていると、そこまでしてファッション衣料を手掛ける必要があるのかと感じてしまう。機能肌着や靴下、形態安定ワイシャツ、格安スーツ、パジャマ代わりのスエット上下やTシャツ・短パンセットなどの実用衣料・機能衣料にはそれなりの需要があるのだから、そちらに特化すれば良いのではないか。これが筆者の偽らざる本音である。

30代半ば以下のお若い方々には実感がないだろうが、かつてバブル期前後、量販店の衣料品部門は利益の稼ぎ頭だった。43歳になる筆者にもその実感はまったくないのだが、長らく衣料品業界に籍を置く方々からするとこれは常識である。
それ故に量販店各社は衣料品に見切りをつけかねている。とくにイトーヨーカドーは「衣料品に強い」というのが、出自以来のキャッチフレーズだったのでやすやすと実用衣料へ撤退するわけにはいかないという事情もある。

さて記事から引用すると、イトーヨーカドーの衣料品部門の最近の業績推移は以下のようになる。

イトーヨーカ堂の衣料品事業もピーク時は4568億円(1996年2月期)あった売上高が、直近の13年2月期は2142億円と半分以下まで縮小。収益面でも02年8月期から赤字が続いてきた。しかし、「今上期から黒字に転換することができ(利益額は未公表)、通期でもさらに改善できる見込み」(亀井淳社長)となった。

とある。
「11期ぶりに黒字転換」と言っても、その利益額は未公表なのであるから、その額はたかが知れたものなのだろう。しかもまだ中間期での話であり、通期ではさらに改善できる「見込み」があるだけなのである。本来なら記事の見出しには「黒字化見通し」と付けるべきではないかと思う。
ちなみに売上高はこの17年間で半分以下にまで縮小している。

この後の記事を読むと、それなりのヒット商品も生まれているようだし、今秋冬の目玉商品も挙げられているので、楽観的な見方を示しているのかというとそうではない。
東洋経済のこの記者さんはなかなか現実をシビアに見つめている。先頃のジーンズメイトの決算下方修正記事なども秀逸だった。

ただ、採算の改善が進む一方で、衣料品の商品売上高は前年比3.6%減の2142億円(13年2月期)。直近も既存店のマイナス成長が続いており減収傾向は止まっていない。構造改革の成果は着実に現れているが、衣料品の規模縮小を食い止めるまでには至っていない。

と締めくくられており、まさに記者が主張する通り、量販店各社の衣料品部門の規模縮小はまだまだ続くと筆者も考えている。

そもそも現在の市場において、ファッションにそれなりに興味を持つ層は量販店の衣料品平場では購入しない。
ショッピングセンターは利用するだろうが、ファッション衣料を購入するのはその中に入店する低価格SPAブランドのテナントである。代表はユニクロやGAP、H&M、ポイント、クロスカンパニー、ジーユーなどなどだろう。
量販店の衣料品平場で購入するのはファッションに興味のない層が多く、それ故に先ほど挙げたような実用衣料・機能性衣料に需要が集中する。ファッション衣料に関しては、量販店はブランド力が皆無だといえる。

低価格SPAブランドが生まれていなかったバブル期周辺では、量販店にもそれなりのブランド力はあったのかもしれないが、バブル崩壊後にはわずかにあったブランド力もなくなってしまった。一度なくなったブランド力を再構築するのは、新たにブランドを立ち上げるよりある意味で難しい。
「レノマ」というかつての名ブランドがあるが、何度デザイナーを取り替えても日本市場では浮上しない。それと同じことである。
「レノマ」でもできないことを量販店各社ができるとは到底思えない。

記事によると、イトーヨーカドーの今秋冬はニットを強化するという。

今秋冬商戦では、カシミヤやメリノウールなどの高級素材を世界中から調達したニット商品「世界のニット」を重点展開する。中には1万円を超える高単価商品もあるが、「商品力と接客を強化することで上質な商品は支持される」(亀井社長)

とのことだが、残念ながらカシミヤで1万円を超える程度の物は「高単価商品」とは言わない。ユニクロでさえカシミヤニットは7900~9800円なので、1万円前後というのはカシミヤニットにおいては限界的低価格と見なすべきだろう。
筆者はニットの専門家ではないので、大雑把にしか説明できないが、某週刊誌から先日質問を受けた。

「カシミヤ100%のニットで9800円とかの価格が表示されていますが、それって本物なんですか?」と。

普通の羊毛でも繊維長が細く長いものを集めてニットを編めばカシミヤと区別ができないほどの風合いと手触りになる。素人はもちろん、一部の自称玄人ですら騙される。
その昔、某有名セレクトショップがカシミヤ0%の商品をカシミヤ混と表示していたのは有名な話である。製造元から成分表に嘘を書かれれば、自称玄人のバイヤーも区別ができなかったと見るべきだろう。

それ故に、単純に「カシミヤ100%=良品」というわけではない。
ニットを含む編み物の価値は重さで決まる。極端にいうなら、カシミヤ100%ニットでも重さが10グラムしかなければ、ペラペラの薄い生地になり、低価格品になる。
さらにいうなら、繊維長の短い落ちワタのようなカシミヤを集めればさらに原料は安くできるだろう。
まっとうな繊維長のカシミヤ100%で重さが1キログラムもあれば、製品価格は1万円は軽く超える。

昔、某ファーストフードチェーン店が、ハンバーガーに「100%ビーフを使用」と謳っていたが、それと同じことである。ビーフ100%だから高級ではない。ビーフだっていろんな部位がある。また牛肉を何グラム使うかが価格の決め手であって、ビーフ100%でも20グラムしか使っていなければ、そのハンバーグは低価格品ということになる。

大雑把に言って、ニットに関しては同じように考えるとわかりやすい。

そんなわけで、このイトーヨーカドーのニットも価格に見合った品質だと考えるのが適切ではないだろうか。

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