MENU

南充浩 オフィシャルブログ

逆説「若者の○○離れ」

2013年10月31日 未分類 0

 「定年退職後の団塊世代を狙え!」てなスローガンが2005年ごろから唱えられてきた。
他の分野ではどうだか知らないが、こと衣料品業界においてはこの世代向けで成功したブランドはない。代わりに地方のユニクロあたりがファッションに興味のない老人層を多く取り込んでいるように見える。
都心旗艦店は別として郊外店や下町の駅前の店舗は本当に老人客が多い。「あべのマーケットプレイス キューズモール」内のユニクロなんて50代以上の顧客比率はかなり高い。

ポイントはちょうど2000年代半ばごろに団塊世代向けブランド「アンダーカレント」を開発したが、売れ行きが振るわず、その後40代向けに転換したがそれもだめで現在はブランド自体廃止になっている。

衣料品業界では60代以上を「シニア」と呼ぶ。
しかし、残念ながらシニアがファッションにお金をつぎ込んでいるとは今に至るまで耳にしたことがない。
メンズの百貨店向け単品カジュアルではわずか数社がその市場を占有している。
占有しているというとすごく強力な政策でその市場を奪い取ったと思われがちだが実状はそうではない。もっと多くのブランドが存在したがいずれも撤退したため、現在残ったのがその数社であり、残存者メリットゆえに安定した売上高が稼げているという状況である。

日登美、林田、アラミスくらいの企業が残っているのみだ。

こういう状況を見ていると、果たして団塊市場とかシニア市場なんてものが、エコノミストやコンサルタントが言うようなバラ色の市場だとはとても思えない。少なくとも衣料品業界においては。

そういえば先日、シナジープランニングの坂口昌章さんが自身のブログでシニア市場について提案をされていて、これは新しい切り口だと感じたのでご紹介したい。

第7回「「シニア化市場を攻略するコンセプト」
http://j-fashion.cocolog-nifty.com/jfashion/2013/06/20137134-094b.html#more

 最近1年間ほど、集中的にシニア市場について研究しました。
 シニア層の年間消費額が100兆円を超え、流通業界はこぞってシニア市場攻略を考えていますが、成功事例は多くありません。
 「シニア市場」というと「年寄り」というイメージに捕らわれ、年寄りくさい商品やサービスを展開してしまう例が多いようです。あるいは、「シニアなんだから高くても良い商品を買うはずだ」という思い込みから、やたらと高い商品を勧めてしまう。それでは売れません。
 一方で、「若者の○○離れ」という言葉が流行しています。若者にしてみれば、「上の世代が何を勝手なことを言っているんだ」と思っているでしょう。私はこのフレーズの中に、シニアマーケティングのヒントが隠されていると思います。
 若者が離れているコトやモノは、シニア向けにリニューアルすることで成長することが可能です。無理やり、若者に売ろうとしても成功しません。
 企業は、若者には必要ないモノを売ろうとし、シニアにも欲しくないモノを売ろうとして、両方とも失敗しているのではないでしょうか?

とある。そして

2.シニア市場の中身とは?
・巨大で細分化された100兆円シニア市場
・フロー消費からストック消費への流れ
・シニアとは年長者か?上級者か?
・シニア市場のターゲットイメージとは?
・若者の○○離れ(酒離れ、車離れ、タバコ離れ、新聞離れ、映画離れ、読書離れ、恋愛離れ、海外旅行離れ、スポーツ離れ、政治離れ、人間離れ、腕時計離れ、海離れ、ゲーセン離れ、魚離れ、肉離れ、日本酒離れ、雑誌離れ・・・)にヒントあり

とある。

個人的に注目したいのが、「若者の○○離れ」というフレーズである。
例に山ほど挙げられているが、酒離れ、車離れ、たばこ離れから始まって、新聞・映画・読書・恋愛・海外旅行・腕時計・ゲーセン・雑誌などなど。最近ではセックス離れなんていうのもある。

坂口さんの視点が秀逸だと思うのは、この○○離れというのはすべて老人の視点で語られているということに着目した点である。
若者からすれば、育ってきた環境や現在置かれている環境、金銭的状況などの要因から酒・車・映画・恋愛・海外旅行・腕時計・ゲーセンなどに興味を示さなくなっているのであって、それに対して「○○離れ」というレッテルを貼ること自体がおかしい。むしろ若者にとっては不必要な部分も多いから自然と離れて行ってしまうわけである。

若者が離れたこれら諸々に対して、反対に、老人世代は並々ならぬ興味と執着をいまだに抱き続けているということになる。

なら老人世代に対してそれらを提供してやれば良いという説明は理に適っている。

例えばゲームセンターを見てみると、20年前までは不良少年のたまり場というイメージだったが、現在では少年などはおらず、中高年のたまり場になっている。とくに老人世代がゲームセンターを利用することが増えていると報道されている。

だから、若者が離れた○○というジャンルをシニア層に向けて提供すればシニア市場は活性化するのではないかという坂口さんの主張には深く同意する。

ただ、市場としては美味しいのかもしれないが、シニア層相手の商材やサービスを開発するのは個人的にはあまり気が進まないというのが本音である。なぜならその年代の人々を筆者はあまり好きではないからだ。
ビジネスと割り切れる方々にお任せしたい次第である。

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ