月別: 3月 2013 (1ページ / 2ページ)

ストール作りはあくまでも第一歩に過ぎない

 生地工場が最終製品を作る場合、もっとも作りやすいのがストールである。
複雑なパターン(型紙)も必要ないし、最低限の縫製で済む。
生地をまっすぐに切って、ほつれないように周りを縫えばお終いである。

まれに斜めにカットしたりと工夫を凝らしているブランドはあるが、それは少数派である。

その作りやすさも手伝ってか、ストールブランドはどんどん増える一方である。
とくに産地生地メーカーはストールへの参戦が目立つ。

けれども爆発的に売れたストールブランドは耳にしたことがない。
ストールを求める消費者は、ステテコを求める消費者よりも多いと推測できる。
まず、男女ともに利用することができる。
次にアウターに巻くため、ある程度の枚数が必要になる。
同じストールばかり巻いていたのではコーディネートにも合わせにくいし、着たきり雀になってしまう。
一人当たり数枚所有することが理想的だろう。

しかし、昨今のストール飽和状態を見ていると、産地生地メーカーがストール作りに全力投球することに疑問を感じる。
供給過多のため、1ブランドあたりのストール販売量はそれほど多く見込めない。
ストールは産地生地メーカー以外の総合アパレル、SPAブランドにもそろえられている。
そうなると、ストールというそれほど大きくない市場をかなりたくさんのブランドで分け合うことになる。

「だから生地メーカーはストール作りなんかやめちまえ」。
そう言いたいわけではない。

複雑なパターンも縫製も必要なく、純粋に色柄だけで勝負できるのだから、最終製品作りの第1段階としてストールを作れば良いと思う。
最終製品作りを進めて行く上で、ストールはその練習台になる。
さらに言うと、自社である程度の販売を行うわけだから、流通の勉強にもなるし、販売の勉強にもなる。

次に筆者が言いたいのは、「ストール販売に過剰な期待を抱くな」ということである。
その理由はすでに先に述べている。
多くのブランドが参入して供給過多である以上、1ブランドあたりの売上高はそれほど多くはない。
生地メーカーが立ち上げて爆発的に売れたストールブランドを、残念ながら耳にしたことがない。

今後も産地生地メーカーによるストール参戦は続くだろう。
これだけストールが供給過多になっている現状、新規参入ブランドがストール販売で莫大な利益を得るとは考えにくい。
それよりも中期的視野に立って、製品作りのノウハウを貯める、流通を覚える、店頭販売のやり方を覚える、そういう目的を掲げての戦略的第一歩とすべきだろう。

「ちょちょっと切って縫うだけで高値で売れるからストールを始める」。
こんな風にお手軽に考えている生地メーカーがあるなら、再考することをお薦めする。

新手法を確立できるか?

 先日、オープンした「天王寺MIOプラザ館」にアーバンリサーチの新業態「センスオブプレイス」の第1号店がオープンした。
世界進出を狙ったファストファッションブランドということで、オープン前から業界的には注目を集めていた。

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(センスオブプレイスの店頭ディスプレイ)

天王寺MIOプラザ館という商業施設は大阪市内でもあまり注目されておらず、まあ、今回のリニューアルオープンで集めたテナントも一部を除いて、大半以上はごくありきたりのブランドだった。

通常、新業態のお披露目では「初年度売り上げ目標」「展開店舗数の中期的目標」などがお決まりのように尋ねられる。これについて「○○億円です」と明言するブランドもあれば「ちょっと非公表です」と開示しないブランドもある。
それは企業それぞれのスタンスなので仕方がない。

今回のオープンに際して「展開店舗数の中期的目標」を尋ねたところ、明確な答えが返ってこなかった。
低価格ブランドの場合、展開店舗数を一気に増やすことで1枚当たりの製造原価を下げる。初年度10店舗、3年で30店舗くらいの出店ペースは珍しくない。

新ブランドとして10店舗くらいの店舗数になると、オリジナル商品が製造しやすくなる。
アイテムによってミニマム生産量は異なるが、ジーンズやカジュアルパンツなどは1型・サイズ込みで100枚というのが相場である。
1店舗あたりに10枚を配送することを想定すると、10店舗で計100枚となる。
いくら衣料消費不振の時代とはいえ、1店舗10枚くらいなら完売できるだろう。
そう考えると、多くの場合、1年以内に10店舗体制まで持って行くことが望ましい。

ところが、「センスオブプレイス」はそういう体制を採らないらしい。
オンライン通販が実店舗に先行して立ち上がっていることを踏まえて、「実店舗数を増やすよりもオンライン通販の販売枚数を増やすことで、総生産数量をある程度の枚数にすることを考えているのか?」と質問したところ、微妙ながらも「YES」の答えが返ってきた。

たしかに生産数量を固めるために、実店舗を増やすよりもオンライン通販の販売力を高めた方が、利益は大きくなるだろう。実店舗出店は人件費から始まって、内装工事費、什器代と、とかく費用がかかる。
出店するたびに費用が発生する。

オンライン通販の場合は、一度立ち上げてしまえばそのあたりの費用は発生しない。
売上高が増えれば増えるほど、利益は確保しやすくなる。
だからオンライン通販の販売数量を増やすことができれば、ビジネスモデルとしては理想的である。

しかし、それを実店舗と組み合わせて成功した新ブランドはあまり見たことがない。

実店舗をあまり増やすことなく、オンライン通販を伸ばすことで低価格ファストファッションが成功することは可能だろうか?
同ブランドに対して業界的に注目すべきはファッションのテイストや品ぞろえよりもこのビジネスモデルが確立できるかどうかではないか。

しばらく経過を観察してみたい。

スペックだけのPOPはまったく意味がない

 久しぶりに店頭での販売に従事した。
1週間という短い期間だったが、ちょっとしたことを再発見した。

できるだけ具体的に説明した方がお客の購入率が高まる。
「何を今更。当たり前のことを」とおっしゃるかもしれないが、筆者も含めてこれが意外にできていなかった店や販売員が多かったのではないかと感じた。

絹100%の2メートルの組紐を販売していたのだが、組紐は巻かれて透明のビニール袋に入って並べられている。もちろんPOPには「正絹の組紐、2メートル」と書かれてある。
販売し始めたころは十分これで具体的じゃないかと考えていた。

ところが、あまり感触が良くない。
着物の愛好家はすんなりお買い上げいただいたが、そうでない方の反応は鈍かった。

そこで1つ、2つを袋から出して、伸ばすようにした。
実際の2メートルを目で見てもらえるようにした。そうすると、購入比率が急に高まった。
どうやらお客は「2メートル」と書かれてあっても、具体的に2メートルがどれほどの長さなのか想像しにくかったということだろうか。

一般的に考えて、170センチの身長の男性は珍しくない。
170センチの身長の男性というとだいたいどんなものか想像しやすいのではないかと思う。
2メートルだからそこに30センチを足せば容易に想像できるのではないかと考えていたが、実際はそうではなかったようだ。

だから「2メートルはこんな長さですよ」と組紐を伸ばして見せると、迷っていたお客のほとんどが「そんなに長いのなら」と購入してくれた。

しかし、こちらとしても反省点は多々ある。
まずPOPに「正絹の組紐、2メートル」とスペックしか書いていなかったことだ。

ここに「帯締めにも利用できます」とか「巾着袋の紐にも利用できます」などと利用法も書くべきだった。

日頃はいろいろと考えてはいるのだが、いざその場になると実行できないことも多い。
利用法も書いていないのでは、着物に興味のない消費者は「2メートルの組紐って何に使えば良いの?」ということになる。販売員に対して口頭で質問してくれれば良いが、わざわざ質問してくれるお客はほんの一部である。大多数のお客は疑問を抱えたまま沈黙している。

沈黙したお客に説明できるのはPOPしかない。

そういう観点から次回はPOPにも工夫を凝らす必要があることを痛感した。

月並みな感想だが、実地で体験してみることはやはり重要である。

3月度の売り上げはまずまずか?

 恒例のライトオンとジーンズメイトの3月度売上速報が発表された。
どちらも既存店ベースで前年微減と前年微増だったのでまずまず堅調だったといえるだろう。

何度も書くが2月21日~3月20日までの売上速報である。

ライトオンは、 

既存店売上高が前年比1・2%減
既存店客数が同0・6%減
既存店客単価が同0・8%減

ジーンズメイトは

既存店売上高が前年比1・0%増
既存店客数が同1・0%減
既存店客単価が同2・1%増

だった。

2月下旬まで低気温が続いたが、3月に入って気温は急上昇した。
そのため、春物が良く動いたと見るべきだろう。
ただ、前年が閏年で今年度より営業日が一日多かったことはあまり言い訳にはならない。

ちなみにライトオンの昨年3月度は

既存店売上高が前年比30・8%増
既存店客数が同24・8%増
既存店客単価が同4・8%増

だった。

これに比べて今年度は微減なのだから、金額ベースで考えるなら伸びはしなかったがまずまずだったと見るべきだろうか。
やはり、春の立ち上がりのジーンズカジュアルは根強い人気がある。
ジーンズカジュアルアイテムが年間もっとも売れるのが3月、4月であり、あとは9月、10月である。
真夏と真冬は、とくにジーンズの動きが鈍い。

このサイクルを考えるなら、3月度、4月度はもっと売上高を稼いでおかなくてはならないだろう。
ライトオンで考えると3月度はほぼ前年並みを維持したから、4月度は前年増を目指すべきだろう。

ジーンズメイトはこれまで苦しんでいたが、既存店ベースでは完全に底打ちをしたと見ても差し支えないだろう。
プライベートブランドも拡大路線に踏み切ったのだから、今後の回復に期待したい。

わけもなく安い商品は胡散臭い

 多くの卸売り型アパレルやSPAブランドと話すと「とりあえず安くしないと売れない」、逆に「とりあえず安くしたからこれで売れるだろう」という意見を耳にすることが多い。

しかし、理由もなしに「とりあえず」安くした商品はあまり売れ行きが良くない。
それはユニクロやジーユーに追随して価格競争を挑んだブランドがことごとく失敗していることを見れば一目瞭然だろう。

もちろん、販促手法の不備や広報告知が行きとどかなかった部分もあるだろう。
店頭サービスにも原因があるかもしれない。

それらを差っ引いても理由のない安売りでは集客できない。

ユニクロが台頭する前の80年代に無印良品が消費者から支持されたのは「わけあって安い」というキャッチコピーがあったからだろう。とくにあの当時の社会状況を思い出してみると、DCブランドブームで洋服の平均価格は恐ろしく高かった。メンズのスーツなんて10万円くらいは当たり前だった。
そんな中で無印良品の商品価格は、消費者からは劇的に安く見えたはずだ。
そういう事情を考慮してみても、「わけあって安い」という売り方はまさに適切だったといえる。

まだ10代だったので当時のおぼろげな記憶をたどってみると、「高くなければまともなブランドにあらず」という風潮だった時代に、「わけもなく安い」商品は単なる安物、紛い物、関西ではバッタ物と認識されてしまっただろう。
当時の安売り衣料品ブランドで現在もまともに存続している企業はほとんど見かけない。

自分が運営に携わっている産地メーカーによる生地販売会「テキスタイル・マルシェ」を見ていると、激安生地しかないブースは概して苦戦する傾向が強い。
京都府の丹後地方の生地メーカーは今まで何度か参加してくれたことがあるが、1メートル1000円均一みたいな売り方をしたときに限って売れ行きが良くない。

ちなみに丹後地方は、絹の縮緬製造が盛んな地域で、最近だとポリエステルの縮緬や縮緬の織り技術を活かした洋装向け生地などを製造している。

だから元来は高級な生地を製造している。

3月20日から阪急百貨店うめだ本店10階で「テキスタイル・マルシェ」を開催しているが、今回の丹後地方の生地メーカーの売れ行きは悪くない。トップではないが、コンスタントに売れ続けている。

値段を見ていると、1メートル1500円、2000円、3000円、5000円以上となっている。

ポリエステル縮緬は1500~2000円、3000円以上は純絹か絹が交織されている。

「絹だからそこそこの高価格」「ポリエステルだからそれなりに安い」と明確に値段が分けられており、「わけもなく安い」生地は一つもない。
販売担当者の接客努力や顧客層がマッチしてることもあるが、「わけもなく安い」という販売スタイルを捨てたことが大きな要因だと感じている。

手芸や洋裁をたしなむ人にとって、「わけもなく安い」生地は必要とされていない。
「安いなら安いなりの理由」が必要だし、「わけあって高い」物でもそれなりの需要がある。

生地やアパレル製品だけでなく、飲食物にしたって「わけもなく安い」商品はどこか胡散臭い。
生産地の衛生面は大丈夫か?品質検査基準をちゃんとクリアしているのか?まともな材質を使用しているのか?
などのもろもろの不安を感じる。

これが「工場と直接取引なので安い」「大量生産なので1個あたりの製造コストが安い」などの明確な理由が表示されていることが必要だろう。

ユニクロブーム全盛時にアパレル首脳陣からよく「うちはユニクロより900円値段を下げたから売れるだろう」というような言葉を耳にしたが、そんなつまらない理由を掲げて売れたブランドを見た試しがない。

ロゴマークを付けたからブランドになるわけではない

 先日、自分で手編みのニット帽を製作し始めた若い方とお会いする機会があった。
染色や製作のことは、一応、専門学校で教えられていたようだが、販売・営業・プロモーションのことに関してはまったく教えられていないようだった。

こういうところに現在の専門学校教育のアンバランスさを感じる。

それはさておき。

手編みのニット帽を1個1500円で一つ、二つといった感じで販売しておられる。
しかし、この価格設定では10個作っても売上高は15000円にしかならないし、15万円の売上高を稼ぐためには100個作らねばならない。

オーダー的にニット帽を作って販売するのであればもう少し値段を上げねばならない。
どのあたりが妥当だろうか。

無責任かつノー天気に「1個1万円くらいにして売らないとだめだよ。ブランドというのはそういうもの」と言い放った某工場の中間管理職がいたが、これはあまりにも無責任な意見である。
なぜなら、無名の若者が作ったニット帽をいきなり1万円で売ることはかなり難しい。
ノー天気な中間管理職がいうように「ロゴマーク入れて高い値段を付けたらブランド」では決してない。
多くの人々が認めるロゴマークでなければ、そんなものは駅前の落書きと同じくらい無価値である。
しかもこの管理職を無責任だと感じるのは、自社の生地は1メートル500円とかで安売りしていることである。
まあ、大量生産・大量販売を基本とした工業製品なのだから、低価格に抑えられるのは当然である。

けれどもそこまでノー天気に「ブランド化」を語るなら、先にご自身が属する企業の生地をブランド化し、高価格で販売してみれば良い。

消費者にとって無名の企業が製造した生地がはたして「ロゴマーク入れただけで高額で売れる」かどうかを身を持って体感されてみればいかがだろうか。

話を本筋に戻そう。

学校を卒業したばかりの若者が手編みしたニット帽はどれくらいの価格で販売するのが良いのだろうか。

1個1500円では安すぎる。
かといって、1個1万円はハードルが高いように思う。
もちろん、若者のプロモーション戦略にもよるが、そういう手法を身につけていなければなかなか難しい。

個人的には中間価格帯を狙うべきではないかと考える。

だいたい4000~6000円くらいでどうだろうか。

高額にすれば良いなどと無責任に言うが、じゃあ1万円の帽子をやすやすと買うのか?
現在、帽子の価格もピンキリで驚くほど高額なものもあるが、そこそこのデザインや色柄で2900円や3900円という商品も珍しくない。
知り合いに独立系のプロの帽子デザイナーもいるが、彼らの帽子だって1万数千円以上という価格設定となっている。底値は1万円台半ばである。
学校を卒業したばかりに若者の帽子に1万円払うより、筆者は帽子デザイナーの商品に1万5000円を払うか、量産品で色柄の気に入った2900円の帽子のどちらかを買う。

そういうわけで、無名の若者の製品なら、低価格量産品と帽子デザイナーの中間価格帯を狙うのがベストではないだろうか。

若者の作る製品も現状、ハイクオリティとは言い難い。
デザインもまだまだ工夫の余地があるだろう。
今後作り続けることで品質もデザインも洗練されていくはずである。

そうなったときに、従来の中間価格帯のもう一格上の1万円前後の商品を提案してみてはどうだろうか?

むやみな激安販売は小規模業者にとっては悪だが、割安感のある商品提案は立派なブランド戦略である。

自社の抱える生産背景を無視して880円のジーンズを小規模業者が製造販売する必要はないが、ハイクオリティ(もしくはそれに類する)ジーンズを7000円や8000円で販売するというのは割安感を打ち出したブランド戦略だといえる。
専門店がプライベートブランドでメイドインジャパンジーンズを5900~8900円で販売し始めているが、これは割安感のある販売戦略だと考えるべきだろう。

割安感が自社の製品の最大の特徴ならそれを打ち出すのは立派な販売戦略である。

反対に「ロゴマーク付けて高価格にできる」と安易に考えている製造業社は今後まちがいなく淘汰されるだろう。

意味が分からなかった保温性ステテコ

 以前から書こうと思っていて書きそびれていたことがある。

ステテコについてなのだが、いろいろ調べてみてもステテコは高温多湿の日本の夏に適合した肌着だとある。
要するに夏向けの肌着とされている。
肌にまとわりつかず吸水性に優れた綿のクレープ生地を使用しているのだから夏向けであろう。

衣類というのは時代が下るにつれて本来的ではない用途を与えられることがある。
肌着だったステテコに色・柄を付けることで、アウターやホームウェアとして利用するのは、その一例だといえる。

そんなわけだが、昨年秋にユニクロから「ヒートテックステテコ」なる商品が発売された。
まだ店頭にも残っているはずなので、実物を確認していただきたい。
看板商品の「ヒートテック」を掲げるくらいなのだから、間違いなく保温衣類だろう。
保温ホームウェアかとも思うが、生地薄すぎることと丈が短すぎることを考えるとホームウェアとしては活用しにくい。それこそフリース上下セットの方が適している。
個人的には保温肌着の一種だと判断している。

本来的な役割から変化することがあるとはいえ、涼感肌着のステテコを保温肌着にする意味がよくわからない。
男性がズボン下に穿く保温肌着なら「ぱっち」があるではないか。ユニクロではヒートテックタイツと名付けられていたはずだ。
ちなみにwikiで調べると「ぱっち」は関西地方だけの呼び名だとあり、全国的に通じると思っていた筆者は大きな衝撃を受けている。

で、男性のズボン下保温肌着をタイツのほかにもう一種類作ることに何の意味があるのだろうか。
ヒートテックタイツは9分丈、膝下丈、膝上丈があり、もう一種類別の膝下丈の保温肌着に存在価値があるとはとても思えない。

2011年の東日本大震災とそれに伴う津波の影響で原発事故が起きた。
そのため、2011年から夏も冬も節電の重要性が再認識され、夏の涼感肌着の一つとして色柄付きのステテコに注目が集まった。

2012年夏も色柄付きステテコは好調に推移すると読んだ肌着メーカー各社が積極的に新商品を打ち出したが不発に終わった。2012年夏に急きょ参戦したユニクロもそれほど販売は芳しくなかったのではないかと推測する。それは夏が終わって、冬が終わろうとしている今でもユニクロの店頭には昨夏発売したステテコがヒートテックステテコとは別に陳列され続けているからだ。

ステテコ向けのクレープ素材の産地である滋賀県湖西の高島産地で尋ねても昨年夏の各肌着メーカーのステテコは苦戦傾向だったという。
某大手肌着メーカーからも昨夏のステテコは予想以上に消化が悪かったため、秋物への商品入れ替えが進まなかったと聞いている。

そのあたりの昨年夏のステテコ商戦不発については

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130318/245175/?P=1

にまとめさせていただいている。

この記事に書いたように女性向けステテコも意味の良く分からない商品だが、2012秋冬に発売された保温ステテコもまったく意味の分からない商品だったと感じた。

品ぞろえが同じなら駅近が繁盛するのは当然

 今春も大阪市内では商業施設の新規オープン、改装リニューアルオープンが続いている。

先日、3月15日に小規模だがJR天王寺駅のMIOプラザ館の2階、3階がリニューアルオープンした。
2階にはアーバンリサーチの「センスオブプレイス」、アバハウスインターナショナルの「マイセルフ」という新業態が2店舗入店するものの、3階のブランドラインナップは極めて平凡である。

クレ・ド・ソル、ル・クールブラン、ナチュラルビューティーベーシック、ロディスポット、アパートバイローリーズ、メガネのJINSなどなど。

こうして見ると、ここに限らずどの商業施設もほとんど同じブランドラインナップである。

「個性の時代」とか言われているが、どうも嘘に感じられて仕方がない。
「個性」の時代と反比例するように商業施設はどんどん画一化している。画一化してくれば一番利便性の良い商業施設に人は集まる。
どこに行っても品ぞろえがそれほど変わらないなら、一番便利な店を利用するのは至極当然の結果である。

画一化でもっとも人を集めやすいのがJRだろう。
JRの各駅ビルに商業施設を作れば人は集まりやすい。
以前だと、少し離れたエリアに個性店があったり、少し離れた商業施設のブランドラインナップに特徴があったため、そこまで「わざわざ」行く必要があったが、どの商業施設もブランドラインナップがさほど変わらないのであれば、駅に近い商業施設がもっとも利用価値が高いということになる。

概してJRの各商業施設の売上高が増えるのはそういう意味で当然といえるだろう。
(中には例外もあるが)

関西だと都心はJR系と阪急系の商業施設しか残らないのではないだろうか。

一方、個人経営の有力ブティック、専門店というのは都心ではどんどん姿を消している。
大阪市内の中心部や東京都心にはほとんど残っていないのではないか。

15年来の付き合いのある独立系デザイナーズブランドがあるが、彼らは東京都心の卸売り先がついになくなったそうである。
現在、取り引きがある専門店やブティックはすべて地方都市だという。

そういう意味ではもしかすると小規模ブランドや小規模専門店は地方を拠点に全国発信できるのではないかとも思う。それとてそう容易いことだとは思わないが、可能性は残っているのではないか。

綿信仰と洗い加工の発達

 日本のデニム生地は高感度という評価がある。
しかし、海外で日本のデニム生地の評価が高まったのは90年代からのことで、非常にここ最近の話である。

先日来よりジーンズの歴史を改めて調べていると、デニム生地の国産化に成功したのは1970年代である。
63年ごろに国産ジーンズ第1号の「キャントン」が開発されているが、デニム生地はアメリカからの輸入だった。

若い人たちにとって90年代というのは昔のことなのだろうが、40歳を越えたオッサンからするとつい昨日のことのようである。

最近の雑誌などを読んでいると、デニム生地はあたかも日本の伝統産業のような書き方をされていることがあるが、何のことはない70年代から登場した新参者である。

ちなみに有名なアメリカのデニム生地メーカー、コーンミルズ社は2003年に一度倒産している。
それほどにアメリカにおけるデニム生地製造は斜陽産業だということになる。

以前にも書いたように、繊維流通研究会発行の「ジーンズハンドブック」を読み直していると、面白い箇所があった。

戦時中の統制下では物資節約のために、スフ(ステープルファイバー)や人絹(レーヨン)などの合成繊維が30%配合された織物しかなかった。
だから、戦後はその反動で「綿100%」や「ウール100%」素材への渇望とあこがれがあった。

とのことである。

50歳代以上の男性には根強い「綿信仰」がある。
普及の順で見ると、形態安定ワイシャツ、吸水速乾素材配合のポロシャツやTシャツがあり、続いて機能性肌着が登場した。
後発の機能性肌着はさておき、形態安定加工ワイシャツや吸水ポロシャツに拒否反応を示す50代以上の男性は多い。
形態安定加工ワイシャツにも吸水ポロシャツにも通常ポリエステルが配合されている。

形態安定加工ワイシャツに対しては「通気性が悪く暑い」という評価をよく耳にする。
また、吸水ポロシャツに対しては「夏は普通にしていても汗をかくのでわざわざ吸水速乾する必要がない」という声も聞いたことがある。

筆者は自分で形態安定加工ワイシャツを着てみたが、それほど通気性が悪かったという印象はない。
また汗っかきなので吸水速乾ポロシャツはありがたい機能だった。

一般消費者ではなく、アパレル業界に籍を置く方々からの意見なので、この年代の「綿信仰」は想像以上である。
暑い寒いというのは体感なので、個々人が違う感じ方をするのも当然だ。多くの人が暖かいと評価するヒートテックだが筆者はそれほど暖かいとは感じない。

最近、この「綿信仰」は戦後の綿100%へのあこがれをそのまま引きずっているのではないかと、ふと思った。

ジーンズに洗い加工を施してから販売するようになったのも、日本が最初だ。
日本に終戦後もたらされたジーンズは米軍からの中古衣料だった。
中古ジーンズということは、すでに穿きこんでクタクタになっている。
日本人が最初に親しんだジーンズはクタクタの中古ジーンズである。

その後、アメリカから新品のジーンズが輸入されるようになるが、ある意味で大雑把な当時のアメリカ人はジーンズに洗い加工を施してから販売するなどというような面倒なことはしない。
当然、糊が着いたままのノンウォッシュで販売する。

中古ジーンズに親しんでいた日本人にはそれは「固くて穿きづらい」と感じられた。そこで日本人は洗い加工で糊を落としてからジーンズを販売することにした。これが洗い加工業の原点であり、日本で洗い加工が発達した理由である。

綿信仰と洗い加工の発達の両方に共通するのは、戦後という原体験である。
この2つが根強い理由は原体験に基づいているからではないだろうか。
「三つ子の魂百まで」とはよく言ったものである。

違和感があるなら上場廃止にしたら?

 苦戦が続くJR大阪三越伊勢丹だが、ようやく再建案がまとまったようだ。

JR大阪三越伊勢丹/2015年春に改装、専門店街を導入
http://ryutsuu.biz/store/f031401.html

西日本旅客鉄道は3月13日、2015年春を目途にJR大阪三越伊勢丹を大規模改装すると発表した。

今回、共同で店舗を運営する三越伊勢丹側と大規模改装についての合意に至ったため、計画を発表したもの。

改装規模は未定だが、JR大阪三越伊勢丹の一部にテナントリーシング方式で専門店を導入する。専門店の管理は、JR大阪三越伊勢丹が行なう予定だという。

専門店により、ファッションビルの要素を導入し、百貨店と専門店が融合した店舗を目指すという。

としている。

これは以前、JR西日本側が「百貨店部分を縮小し、空きスペースにルクアからの専門店を導入する」としたもので、三越伊勢丹HD側はこの発言に反発していた。
しかし、ご自慢の自主編集売り場が不発に終わった上、徒歩5分圏内に阪急、阪神、大丸の3つの百貨店が林立し、来月には北側にグランフロント大阪までオープンするという状況ではブランドを入れ替えるというプランも成立しにくい。なぜならば、目ぼしい有力ブランドはその4つの施設のどれかには入居しているからだ。

となると、現状の百貨店売り場を維持したままブランドだけを入れ替えることは不可能だろう。

ルクアから専門店を誘致するというのは、まあ、ある程度有効な手段だといえる。

けれども、ルクアとグランフロント大阪が近接する中で、さらにそれらと被らない有力専門店がそれほど残っているのだろうか?その部分には大きな懸念を感じる。
これは推測にすぎないが、専門店を集めるのもかなり難渋するのではないだろうか。

現状、アパレル業界は寡占化が進んでおり、専門店も全国チェーン化したものばかりである。
とくに東京都内、大阪市内などの都心部はチェーン店ばかりが残っており、個人経営の有力小規模専門店など壊滅している。むしろ、地方都市の方が個人経営の有力専門店がまだ残っている。

今春、大阪市内でも商業施設の新規オープン・改装オープンが相次ぐ。
そこに出店するのはいつもの顔ぶれの全国チェーン店が屋号を変えたものばかりだ。
ユナイテッドアローズ、ビームス、アーバンリサーチ、ジャーナルスタンダード、アバハウス、トゥモローランドなどなど。
これら企業が違う屋号で出店するだけであり、百貨店もファッションビルも郊外型ショッピングセンターもほとんど出店企業の顔ぶれは同じである。

そんな状況下で、JR大阪三越伊勢丹の救世主となるような専門店テナントがあるとはとても思えない。

「専門店導入で即活性化できる」と考えているならそれは甘すぎるだろう。

蛇足だが、先日、東洋経済に伊勢丹の記事が掲載された。
その中でこういう一節がある。

そもそも、ブランドイメージが重要な百貨店業界で自ら債務超過を明かすなど常識では考えられず、三越伊勢丹関係者はその点に関しJR西への違和感を隠さない。

http://toyokeizai.net/articles/-/13192

しかし、JR西日本も三越伊勢丹HDも上場企業であるなら、債務超過のディスクロージャーは当然ではないのか。これが非上場の私企業なら情報非公開もいたしかたない。
上場企業でありながら、財務状況のディスクロージャーにのうのうと「違和感がある」などと口走る三越伊勢丹HDの感覚にこそ、違和感がある。

都合の悪い情報を隠ぺいし、良い情報のみを報道されたいのであればMBOでも何でもやって、上場廃止してはどうか?

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