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南充浩 オフィシャルブログ

ロゴマークを付けたからブランドになるわけではない

2013年3月22日 未分類 0

 先日、自分で手編みのニット帽を製作し始めた若い方とお会いする機会があった。
染色や製作のことは、一応、専門学校で教えられていたようだが、販売・営業・プロモーションのことに関してはまったく教えられていないようだった。

こういうところに現在の専門学校教育のアンバランスさを感じる。

それはさておき。

手編みのニット帽を1個1500円で一つ、二つといった感じで販売しておられる。
しかし、この価格設定では10個作っても売上高は15000円にしかならないし、15万円の売上高を稼ぐためには100個作らねばならない。

オーダー的にニット帽を作って販売するのであればもう少し値段を上げねばならない。
どのあたりが妥当だろうか。

無責任かつノー天気に「1個1万円くらいにして売らないとだめだよ。ブランドというのはそういうもの」と言い放った某工場の中間管理職がいたが、これはあまりにも無責任な意見である。
なぜなら、無名の若者が作ったニット帽をいきなり1万円で売ることはかなり難しい。
ノー天気な中間管理職がいうように「ロゴマーク入れて高い値段を付けたらブランド」では決してない。
多くの人々が認めるロゴマークでなければ、そんなものは駅前の落書きと同じくらい無価値である。
しかもこの管理職を無責任だと感じるのは、自社の生地は1メートル500円とかで安売りしていることである。
まあ、大量生産・大量販売を基本とした工業製品なのだから、低価格に抑えられるのは当然である。

けれどもそこまでノー天気に「ブランド化」を語るなら、先にご自身が属する企業の生地をブランド化し、高価格で販売してみれば良い。

消費者にとって無名の企業が製造した生地がはたして「ロゴマーク入れただけで高額で売れる」かどうかを身を持って体感されてみればいかがだろうか。

話を本筋に戻そう。

学校を卒業したばかりの若者が手編みしたニット帽はどれくらいの価格で販売するのが良いのだろうか。

1個1500円では安すぎる。
かといって、1個1万円はハードルが高いように思う。
もちろん、若者のプロモーション戦略にもよるが、そういう手法を身につけていなければなかなか難しい。

個人的には中間価格帯を狙うべきではないかと考える。

だいたい4000~6000円くらいでどうだろうか。

高額にすれば良いなどと無責任に言うが、じゃあ1万円の帽子をやすやすと買うのか?
現在、帽子の価格もピンキリで驚くほど高額なものもあるが、そこそこのデザインや色柄で2900円や3900円という商品も珍しくない。
知り合いに独立系のプロの帽子デザイナーもいるが、彼らの帽子だって1万数千円以上という価格設定となっている。底値は1万円台半ばである。
学校を卒業したばかりに若者の帽子に1万円払うより、筆者は帽子デザイナーの商品に1万5000円を払うか、量産品で色柄の気に入った2900円の帽子のどちらかを買う。

そういうわけで、無名の若者の製品なら、低価格量産品と帽子デザイナーの中間価格帯を狙うのがベストではないだろうか。

若者の作る製品も現状、ハイクオリティとは言い難い。
デザインもまだまだ工夫の余地があるだろう。
今後作り続けることで品質もデザインも洗練されていくはずである。

そうなったときに、従来の中間価格帯のもう一格上の1万円前後の商品を提案してみてはどうだろうか?

むやみな激安販売は小規模業者にとっては悪だが、割安感のある商品提案は立派なブランド戦略である。

自社の抱える生産背景を無視して880円のジーンズを小規模業者が製造販売する必要はないが、ハイクオリティ(もしくはそれに類する)ジーンズを7000円や8000円で販売するというのは割安感を打ち出したブランド戦略だといえる。
専門店がプライベートブランドでメイドインジャパンジーンズを5900~8900円で販売し始めているが、これは割安感のある販売戦略だと考えるべきだろう。

割安感が自社の製品の最大の特徴ならそれを打ち出すのは立派な販売戦略である。

反対に「ロゴマーク付けて高価格にできる」と安易に考えている製造業社は今後まちがいなく淘汰されるだろう。

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