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告げるべきか告げないべきか

 先日、靴下のチュチュアンナの展示会にお邪魔した際に「2012秋冬はロングブーツの売れ行きが鈍い」という話題が出た。

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(ロングブーツのイメージ画)

そう言われてみると、若い女性はカラータイツやカラーパンストにパンプスを合わせているケースが多い。
寒さ対策としてムートンブーツを履いている女性も見かけるが、決してロングではない。
ショートブーツ、ハーフブーツ程度だろう。

膝の真下や膝上まであるようなロングブーツ姿の女性はいつもの冬よりも少ないと感じる。

その分、靴下、タイツ、パンストなどで足元の着こなし変化を楽しむ傾向が強いようだ。

さて、筆者はこの事実を、一応存在する妻に告げるべきか告げないべきかを迷っている。
3年ほど前に、「若い世代はブーツカットジーンズを穿いていない。ブーツカットジーンズを穿いているのは年配という証明」と告げたところ、「何故、もっと早く知らせてくれなかったのか」と苦情を申し立てられてしまった。

10年ほど前まで、当時20代後半~30代前半のOL層はジーンズと言えばブーツカットジーンズという構図だった。
当時発売された「美脚○○」とか「足長○○」という商品の主力はブーツカットだった。
現在30代後半~40代前半の主婦層にはそのときのイメージのままの方が多いようだ。

彼女は比較的テレビをよく見る人なので、テレビに登場するタレントや一般人の服装を見ていると自然と気が付いているのではないかと思っていたのだが、そうではなかったらしい。
そんな彼女は革のロングブーツを履いている。
非常に暖かいらしいので機能重視で履き続ければ良いと思うのだが、自分の愛用品が「そのトレンドは終わった」と告げられれば嫌な気持ちになることは避けられない。

ファッション産業はトレンドがある程度変化しないと新たな需要が生まれない。
そのため新しいトレンドが登場することは産業にとっては良いことである。
しかし、最近のトレンドは以前のように、ビッグヒットはほとんどない。
今回のブーツの丈のように、ジワジワとそういう傾向か進んでいて、ハッと気が付いてみるとそういうルックスが増えている。そんな印象がある。

10年前のように猫も杓子もブーツカットジーンズというビッグトレンドはない。

筆者のようなファッション感度の鈍い人間からすると昨今の緩やかなトレンド変化というものはあまり気が付かない。取材先で指摘されて初めて気が付くことが増えた。

まあ、そんなわけで3年後くらいにほとぼりが冷めたころに「2012年秋冬はロングブーツは当時トレンドではなかったよ」と告げてみようと思う。

苦しむジーンズ専業メーカー

 先日、リーバイ・ストラウス・ジャパンの2012年11月期連結決算が発表された。

売上高は96億1300万円(前期比4・6%増)
営業利益は2億9400万円
経常利益は3億4400万円
当期損失は12億8000万円

だった。

当初予想では売上高は97億円としていたので、やや下方修正ではあるが、前年より増収となった。
営業利益と経常利益は黒字復活したが、依然として当期損失は残ったままである。

当期損失の理由として、

最終損益につきましては、第3四半期に特別損失項目として、将来の物流業務の効率化及び物流コストの削減を目的として現在の平塚配送センターから外部倉庫への移転を決定し、有形固定資産につき減損損失を15億62百万円計上したため、税金等調整前当期純損失、当期純損失はそれぞれ、12億47百万円(前期は、15億44百万円であったため2億96百万円の改善)、12億80百万円(前期は、16億9百万円であったため3億29百万円の改善)となりました。

としている。

2013年11月期連結を

売上高98億円
営業損失6億9000万円
経常損失6億6000万円
当期損失7億2000万円

と見通しており、増収ではあるもののなかなか厳しい数字を打ち出している。

赤字になる理由として

本年度まで免除されていた親会社へ支払うべきロイヤリティが解除となること及び不透明な為替の仕入コストへの影響を勘案して営業損益及び経常損益は、690百万円の営業損失、660百万円の経常損失となり、当期純損失は720百万円程度を見込んでいます。

と挙げている。

国内大手ジーンズ専業メーカーの2強としてエドウインとリーバイスが残っていたが、エドウインは現在、再建問題に揺れている。残ったリーバイスも売上規模はなんとか維持しているものの、赤字決算が続いており、こちらも厳しい状況といえる。

専業メーカーがSPAを志向して、規模を拡大した例は業界にいくらかある。
東京シャツのシャツ工房はその好例だろう。メーカーではないが、タビオの「靴下屋」も専業ショップとして参考になるだろう。最近だと、鎌倉シャツに注目が集まっている。

こうした例を見ると、ジーンズもSPA化すれば良いのではないかと思うが、そうは簡単にいかない部分もある。
靴下は消耗品なので、定期的な買い替えが必要である。また、小さいなアイテムなのでたくさん買い込んでも収納スペースに困らない。
ワイシャツも消耗品という側面はあるし、ビジネスマンとしては、洗い替えを考慮に入れて常に数枚以上を着まわす。そういう意味ではワイシャツもある程度の数量を持つことが必要となる。毎日着たきりすずめではビジネスシーンで悪い印象を与えてしまう。

一方、ジーンズだが、こちらは毎日穿き替える必要はない。
少々汚れても大目に見られる。
消耗品という側面が薄い。破れても裾が擦り切れてもOKである。
こうなると定期的な買い替え、買い足しはなかなか望めない。とくにジーンズが非トレンド化してしまえば、定期的に購入する理由はなくなる。

そうなると単純なSPA化というのはなかなか難しい。

ジーンズ専業メーカーによるSPAがなかなか大規模に育たないのは、そういう背景もあるのではないか。
SPA化を進めるには、一層の知恵が必要となる。

天は自ら助くる者を助く

 Heaven helps those who help themselves=天は自ら助くる者を助く

これをさらに日本語に意訳すると「人事を尽くして天命を待つ」となる。
なつかしい。高校1年生の時に習った英語である。

日本国内にはさまざまな地域に繊維産地がある。
タオルだと愛媛県・今治と大阪・泉州地域、毛織物だと愛知県、デニム生地だと岡山県・広島県、クレープや楊柳だと滋賀・高島、先染めのシャツ生地だと兵庫県・西脇などなど。

各産地がそれぞれ合同で展示会を行う。
例えば西脇素材展とか、高島産地合同展とかいうような具合である。

先ごろ開催されたある産地素材展の成果があまり芳しくなかったと耳にした。
来場者が想定より少なかったそうだ。
来場者の数が多くても受注が決まらなければあまり意味はないのだが、それでも少ないよりは多い方が良いという考え方にも一理はある。
たくさんの人に見てもらった方が将来の可能性は広がると思われるからだ。

アパレルの合同展示会は大型のものだとIFFやルームス、雑貨業界だと東京ギフトショーなどがある。
集客のために主催者や事務局から大量の案内状、招待状が送付される。
それこそ何万通という数量である。

しかし、アパレル業界・雑貨業界の展示会に出展する各企業はそれぞれ自社からも展示会招待状を発送する。
だから主催者からと出展社からの両方から招待状をいただくことが多々あるのだが、それで良い。

来場者の集客を主催者任せにしてしまうのは愚の骨頂だからだ。

東京ギフトショーの出展社説明会では展示会の心得のようなプロモーションビデオが流される。
その際に出てくる言葉が「天は自ら助くる者を助く」である。
要するに、自社での集客もやらないと意味はないですよ。ということである。

で、先のある産地素材展だが、集客の努力をした出展社はあまりいなかったようだ。
ならば来場者数が予定より少ないのは当然の結果だ。

今回に限らず、各産地展で来場者が増えないというのは、出展各社が集客の努力を怠っているのではないかと思う。もちろん、自発的に自社からも招待状を送付されている企業もあるだろうが、そうでない企業というのも各産地に相当数あるのではないか。

闇雲に「来てくれ」とお願いするだけでは効果が薄いことも十分承知しているが、最初の「来てくれ」というアクションさえ起こさずに、「効果的な集客法」ばかり考えていても仕方がない。
仮説→実行→検証がビジネスの基本ではないのか。
実行せずに検証ばかりしていても絵に描いた餅である。

出展企業が事務局やプロデューサーに依存しているだけでは、各産地展はますます衰退するほかない。

アメカジに融合されてしまいやすい

 先日、サーフカジュアルについて雑談していた。
発端は今春からサーフカジュアルもトレンドの一分野に入っているということからだった。

そう長くはない経験に照らし合わせるとサーフカジュアルがビッグトレンド、ビッグビジネスに結びついたのを見たことがない。
そもそもが個人的に見ると、サーフカジュアルとアメカジの区別もできにくい。

筆者の周りにもサーフィンを楽しむ人が数人以上存在するが、彼らがいわゆる「サーフカジュアル」を常に愛用しているようにも見えない。
雑誌で言うと「Safari」あたりにサーフカジュアルスタイルが掲載されやすいと思うが、はっきりいうとアメリカ西海岸スタイル、アメリカンカジュアルスタイルとさほど見分けがつかない。

日本国内でサーフカジュアルブランドがもっとも盛り上がったのは10年くらい前だろう。
あの当時はクリムゾンの「PIKO」「タウン&カントリー」が全盛期で、そのあと「Russ-K」をデビューさせたが、今では3つともあまり見かけない。最後発の「Russ-K」は現在、ライトオンやジーンズメイトで値引き販売されているのをよく見かける程度である。

正直に言えば、サーフカジュアルブランドのほとんどはTシャツのグラフックで勝負しているように見える。
しかし、Tシャツのグラフィックだけでは消費者の購買意欲をそこまで継続させることはできない。
気に入った柄が1つや2つあっても、毎シーズンそのブランドで買いたくなるほどのものではない。
しかし、グラフィックしか勝負ができないので、スタート当初はシンプルだったロゴプリントがだんだんと派手になり、最後には田舎のヤンキー崩れが着るのかと思うほど派手でケバケバしい柄に行きついてしまう。
サーフカジュアルTシャツにはそんなイメージがある。個人的な印象でいうなら「PIKO」なんかがそう見える。

さて、そんなこんなで話していて、ふとクリムゾンの現状をググってみた。
ちょうど今月末が決算期であり、業績予想の下方修正を発表していた。

修正によると、

売上高18億9100万円
営業損失900万円
経常損失1億300万円
当期損失4000万円

とのことである。

非常に悪い決算内容なのだが、筆者は売上高に驚いてしまった。

クリムゾンのピーク時は売上高180億円あった。
2007年1月期でも157億円ある。
わずか5年間で10分の1程度にまで売上高が縮小している。

10年前はさまざまなサーフブランドが量販店やカジュアルチェーン店にひしめきあっていたが、今ではほとんど見かけることはなくなった。
会社規模を維持できているのは「ビラボン」を展開するジーエスエムジャパンくらいだろう。
こちらも社名は最近、ビラボンジャパンに変更しているようだが。

あと「クイックシルバー」や「オーシャンパシフィック(OP)」あたりもそれなりに残っている印象だが後のブランドは、この10年でほとんど聞かなくなった。

原因はいろいろとあるのだろうが、個人的にはサーフカジュアルスタイルと通常のアメカジスタイルの境界線の見えなさにあると感じる。要はアメカジジャンルに取り込まれてしまいやすいのだと思う。
サーフスタイルをコーディネイトするにおいて、別にサーフブランドにこだわる必要がない。
通常のアメカジブランドのアイテムだけで十分構築できてしまう。
そうなれば特別にサーフブランドを買い求めなくても良い。

そんなわけでサーフテイストはトレンドの一分野として注目されるかもしれないが、サーフカジュアルブランドというのは日本ではなかなか確立させるのがなかなか難しいのではないか。
今後もビッグブランド、ビッグカンパニーが出現することはないと考えている。

守株待兎 ~待ちぼうけ~ を笑えない

 15年くらい前、インディーズデザイナーブームという小さなムーブメントがあった。
結局、大した花も咲かせずに終わってしまったのだが、そのころデビューした何人かのデザイナーさんとの付き合いがまだある。

デビュー当時、国内産地の生地メーカーに「生地を売ってください」と交渉しに行くと、「10反以下では売れない」「5反以下では売れない」と断られたそうだ。97年とか98年とかの頃である。
だいたい1反=50メートルの長さなので、10反というと500メートルである。
生地メーカーによっても違うのだが、「10反以下とか5反以下では売りたくない」と答える生地メーカーは多かった。

これは無理もないことで、かつて「ガチャマン(ガッチャマンではない)」と呼ばれた黄金時代、生地なんていうものは何万メートルでも売れた。その記憶があるため、「そんな500メートルとか、250メートル販売みたいチンケな商売はやってられない」というのが90年代後半の生地メーカーの偽らざる本音だろう。

その後、バブルもはじけたし、衣料品販売は不振だし、安価な海外生地が流入するし、で国内産地の生地販売量はみるみる縮小していった。
こうなると、国内産地の生地メーカーも小規模販売せざるを得ない。

昨今の各若手デザイナーがやたらと国内生地を使用できるようになったのもその恩恵だろうか。

しかし、国内でもいまだに「5反以下では販売できない」とのたまう産地企業もある。

小ロット販売を嫌う理由は、整経と呼ばれる作業に時間がかかるためだ。
早くても丸一日くらいはかかるし、長ければ数日かかる。

整経とはなんぞやというと、

整経は、必要な本数の経糸を、長さを揃えてビームに巻き付ける工程です。

ストライプ柄やチェック柄など、経糸に色の違う複数の糸を使う場合は、デザインどおりに経糸を配列する(「柄組み」をする)必要があります。

とある。
http://www.norikaiya.net/koutei-2-2-warping.html

これは自動化できない作業で、すべて手動で行われる。そのため時間がかかるというわけである。

だから5メートルだけ織ってくれなどといわれると「勘弁してくださいよ」ということになる。

しかし、在庫で積んでいる生地ならば5反だろうが3反だろうが販売すれば良いのである。1反での販売だって構わない。「何を寝ぼけたことをおっしゃっているんですか」と思う。

「シャネル」や「ルイ・ヴィトン」「プラダ」「グッチ」など数多くの欧米ラグジュアリ―ブランドへデニム生地を販売する岡山県井原市の世界的デニム生地メーカー、クロキは「在庫生地なら1反からでも販売する」という。生地料金が高くなっても構わないなら「1反以下でも販売する」という。

現在、自社売上高の半分が欧米向け輸出となっているクロキがこの小ロット対応である。

「商況が厳しい」「生地が売れない」という国内産地企業が多数ある。
そういうところに限って「うちは5反以下は売らない」などとおっしゃる比率が高い印象がある。

だからこそ御社の商況は厳しいのではないですかね?

後、何十年待ち続けても国内にかつての大量生産時代は戻って来ない。それだけは確実に言える。

足下の敵を討て

 専門学校で講義をするので、先日、ランチェスターの法則をおさらいしていたら「足下の敵を攻撃しろ」という項目を再発見した。

内容をまとめるとこうだ。

「成熟市場において売上高を伸ばそうとするなら、それは競合他社から売り上げを奪え。その標的は自社よりも1ランク下の敵(=足下の敵)である。なぜなら、自社より強い的と対決しては自社に勝ち目が無い。狙うべきは勝ちやすい相手だ。しかも1ランク下からシェアを奪えば、自社が伸びるうえに敵は弱るので差が倍になる」

非常に理論的に明快であるが、まあ、なんともイヤ~な気持ちにさせてくれる。(_´Д`) アイーン

しかし、である。

もう少し解説を読むと「自社よりも売上高が少ない企業を狙え」とは書いていないことに気が付いた。

「勝ちやすい事業領域を細分化して、地域、販路、顧客、商品などを設定し、そこに経営資源を重点投入する」とある。

攻撃すべき足下の敵は、自社よりもスケールの小さい企業はなく、企業規模は大きくとも、細分化した項目の中で自社が勝てる相手に照準を定めれば良いということになる。

自社が5億円の企業だったとして、3億円の企業を攻撃するのではなく、50億円の企業の弱い部分を攻撃すれば良いということになる。
その弱い部分は商品である必要は無い。地域、顧客、販路など様々な分野がある。

全国展開する大規模チェーン店が進出してきても、特定の地域でのシェアは絶対に譲らない専門店がごくわずかだがある。地域別に勝つとはそういうことだろう。

この顧客層ならあの大規模店に勝てる、この販路ならあの上場企業に負けない、とそういうことを弱者は考えるべきなのだろう。

ずいぶんと血なまぐさい例えではあるが、ランチェスターの法則はもともと戦争から導き出された法則であるのでそれは仕方がない。

逆に言うと、弱者が強者と同じことをやっても勝てるわけがないし、弱者が強者の仕掛けに追随するのは最悪の手法である。
「ユニクロでン十万枚売れたあの商品と同じ素材を使えば、わが社の商品も売れる」と百貨店向けアパレル首脳陣が考えるのは、まったく愚の骨頂である。弱者が強者に追随しても規模と価格で勝てるはずがない。しかし、逆は成功する可能性がある。
弱者が考え出した差別化商品を強者が追随して大規模に展開するという事例はけっこうお見かけする。

売れ行きはまったく芳しくなかったと推測するが、昨年夏にユニクロが発売したステテコなんていうのはその典型だろう。

アズという肌着メーカーが数年かけて開拓した色柄付きのステテコという差別化アイテムにユニクロが追随したことは誰の目から見ても明らかである。

そういうわけで、弱者は弱者らしく、差別化戦略を組んで「足下の敵」を攻撃することをお薦めする。

昨年秋から停滞モードに

 ライトオンとジーンズメイトの1月度売上速報が発表された。

ライトオンは

既存店売上高が前年比0・6%減
既存店客数が同7・6%減
既存店客単価が同7・6%増

だった。

ジーンズメイトは

既存店売上高が前年比0・7%減
既存店客数が同0・7%減
既存店客単価が増減なし

だった。

ジーンズメイトは業績低下は完全に底打ちしたといえる。

一方、ライトオンだが、客数減と客単価増が同じだったため、売上高はほぼ前年並みとなった。
客数減の幅が大きいことが気にかかるが、新年2日のセールでは、メンズ、レディース、子供の各福袋を買うために長い行列ができていた店舗もあり、それほど客数減という印象はなかった。
特定の店舗の状況だけで全店を推測するのは早計なのだが・・・・。

参考に、ライトオンの昨年1月度を見てみる。

既存店売上高が前年比11・6%増
既存店客数が同15・7%増
既存店客単価が同3・5%減

となっており、一昨年度よりも大きく伸びている。
今1月度は昨年実績からのさらなる伸びはなかったということになるが、それでも一昨年の実績は上回っている。
これまで急ピッチで業績回復してきたライトオンだが、昨年秋ごろから停滞している印象が強い。
ここらで、もう一度、商品政策や販売政策のテコ入れを図らないといけないタイミングではないだろうか。

高価でニッチな「本物」だけで良いのかな?

 先日、こんな記事について議論しておられるのをお見かけした。

本場結城紬の検査厳格化 生産履歴を全面記録
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1202Q_S3A110C1CR8000/

茨城県結城市などの特産品で、生産技法が国の重要無形文化財に登録されている高級絹織物・結城紬(つむぎ)を代表する「本場結城紬」の検査基準が、2月から厳格化される。生産履歴を全面記録して類似品との違いを際立たせ、高級品としての価値を守るためで、茨城県と協議していた。

 本場結城紬検査協同組合関係者によると、製品の織り手が受検する際、染色したり糸を紡いだりした人など、生産に携わった全業者の登録番号の記入が義務化される。これまでなかった糸取り業者の記入欄が新設され、記入を徹底する。

とのことである。

これに対して「意図はわかるが、結城紬の本質を消費者に訴求する前に、文化財指定技術で作られた物だけが本物であとはニセモノという認識が強くなる。果たしてこれは産地の活性化になるのか?メーカーや小売がどんなに説明しても、本場結城紬以外はニセモノと解釈される」との意見を呈された着物関係者がおられた。

門外漢を承知で言わせていただくなら、その方のおっしゃりたいことには賛同できる。
普段、1反何十万円もするような和装生地には縁のない生活をしているが、着物というジャンルはこれだけ着用者が減っているのに、間口を広げる方向には動いていないのだなという感想を持った。

ある和装業界のコンサルタントによると、呉服小売市場規模が2800億円、レンタル着物市場が2000億円なのだそうだ。小売りとレンタルがほぼ拮抗している。6対4くらいの比率である。
この数字から推測すると、「着物を買うには高額すぎるし、何年かに1度しか着用しないからレンタルで済ませましょ」という消費者がかなり増えているのではないか。

先述の意見に対して業界からは「厳格に定めた本物を守る必要がある」という意味合いの反発があった。
もちろんこちらの意見も良く理解できる。

これって和装に限らず洋装向けの生地や、ほかの伝統産業でもよく見かける構図だなと思う。

ある伝統技法がある。それを簡易にしてコンテンポラリーなヒット商品が生まれる。
そうすると、それがあたかも本物の伝統技法そのもののように認識され、本場の方々の不満(?)が溜まる。

ひどく大雑把にまとめるとこんな感じだろうか。

着物の着用者が減り続けている原因に関しての個人的な感想をいうと、

まず製品の価格が高い
次に現在の生活スタイルに適していない

が挙げられると思う。

10万円の着物というと業界ではかなり低価格に分類される。
もちろん、洋装とは製造工程から生産ロットまで違うので一概に比べてはいけないのだが、それでも洋装に慣れきっている大多数の消費者からすると高い。
10万円のスーツといえばけっこうな高級品だし、10万円のコートといえばそれなりのステイタスである。
バーバリーやアクアスキュータム級のコートが買える。

現在の生活スタイルに適していないという指摘もある。
まず着物では自転車に乗れない。自動車の運転だってやれなくはないが、やりづらいだろう。
それを緩和するには、いわゆる着付けから解放された着こなしが必要になるのだが、それとて業界からは反発の声があるようだ。

例えば、上は短衣にして下はジーンズやスパッツを穿いたりすれば良いと思う。
足元だって歩きにくければブーツかスニーカーでも良いのではないかとも思う。
でもそういうハイブリッドなコーディネイトに反発の声があることも事実である。

ただ、門外漢から言わせてもらうと、価格を下げて着こなしの自由度を広げて、間口を広げないと着物の着用者はますます減るのではないかと感じられる。

閑話休題

先ほどの「本物」論争であるが、これは和装だけの話ではない。
大ごとにならないだけで、ジーンズだってスーツだってシャツだって各洋装アイテムにも同じ問題がある。
また、伝統産業の技法を活かした洋装ブランドにも同じ反発もある。

例えば、沖縄の染色技法「びんがら」を活かしたとされる某カジュアルブランドがある。
しかし、本場の方からすると「あれはびんがらではない」ということになる。

ジーンズだってそうで、トレンドブランドを捕まえて「こんな縫製ではジーンズとは呼べない」とおっしゃる方もいる。
最近のジーンズは生地が薄くなっている。定番でも12オンスくらいだろう。それに対して「定番デニム生地は13・5~14オンスでないと認めない」という意見もある。

そういえばツイードという生地もそうかもしれない。「本物のツイードはもっと固くて重い。最近みたいに柔らかくて軽いのはツイードではない」とおっしゃる方もいる。

しかし、物は考えようで、廉価版・簡易版のおかげでそれぞれのアイテムや技法や生地の知名度が高まっている部分も間違いなくある。

このあたりが難しいところで、本来は「簡易版・廉価版は入門編ですよ。本物は別にあります。そこもぜひ一度覗いてくださいね」というような案内が徹底できれば理想なのだろう。

理想を言うのはたやすいが、なかなか難しい問題である。

素材関連企業もBtoCが必要

 ファンシーヤーンの専門商社、丸安毛糸が2月20日から自社内で編物教室を開始する。
専門商社というくらいだから、メーカーではない。糸を作っているわけではない。商社機能である。

http://www.maruyasu-fil.co.jp/article/14689416.html

無題

(同社のイメージ図)

これまでBtoBの活動をされてこられた企業だが、さらに知名度を高め、ニット需要を創造するための取り組みであろう。
実は、昨年11月下旬に、丸安毛糸の大阪展示会を取材と称して訪問した後、ブレストという名の社内吞み会に参加させていただいた。
その際、丸安毛糸の岡崎社長が「もっと知名度を高めて、ニットを好きな人を増やすにはどうすれば良いか」と仰ったので、「自社内にあるニットラボで一般消費者向けのニット教室を始められてはどうですか?」と提案した。

ニット教室やワークショップにはそれなりの需要があると、筆者なりに考えていた。
現に、阪急百貨店うめだ本店の10階では、期間限定ショップが入れ替わり立ち替わりワークショップを開催している。阪神百貨店のレディースジーンズ売り場「ジーンズハウス」だって定期的に各種ワークショップを開催し始めている。
知り合いのデザイナーブランドが卸売りしている小規模専門店も毎月何らかのワークショップを開催しているとも聞く。

そんな事例を挙げながら提案した。
当初、岡崎社長はBtoCへの取り組みについてそれほど乗り気ではなかったような印象をお受けしたが、意見交換するうちにだんだんと乗り気になってこられたように感じた。

しかし、ここまでなら他の原料メーカーや生地産地でも良くある話だ。

その際、乗り気になっておられても後日、伺うと「あれはやっぱり当社では無理」というお返事をいただくことがほとんどである。感触でいうなら8割以上だろう。

そんなわけで、筆者も単なるブレストに終わるだろうと考えていた。

ところが、先日「ニット教室始めます」というお知らせをいただいた。
当然、筆者以外の方々の意見もお聞きになられた上での決断だろう。
それにしても動きが早い。構想わずかに2カ月である。

原料メーカーや生地産地の腰の重さに慣れている筆者は驚いた。
まさに即断即決である。

近年、丸安毛糸は業界の内外から急速に注目を集めている。その一端はこの動きの早さにあるだろう。

原料メーカーや産地企業にワークショップや生地小売りのようなBtoC事業を提案すると難色を示されることが多い。ロットは細かいし、売上高は小規模だからだ。大量受注大量生産の時代を覚えておられる方なら仕方がないとも思う。

けれども、今後何年間か待ち続けて、国内製造業にバブル期や高度経済成長時代のような大量受注が戻ってくるのだろうか。筆者は何十年待っていても戻ってくることはないと考えている。
ならば新しい事業を考えないと企業存続は難しい。

それに産地企業の方々がよく仰るのだが、「○○で有名な××産地だから」というようなことは産地側の幻想だと考えておいた方が実状に沿っているだろう。
消費者はそれほど生地産地に詳しいわけではない。雑誌やマスコミの影響もあるが、デニム生地だって「児島」で製造していると思っている人がほとんどなのである。
児島のメイン産業は洗い加工場で、あとは小規模な縫製工場が残っているに過ぎない。
デニム生地メーカーは皆無だ。

デニム生地メーカーが集積しているのは広島県福山市周辺と岡山県井原市である。
だが、一般消費者は「デニム生地の井原市」と言われてもピンとこない。
そんなものである。

だからこそ、ワークショップでも生地小売りでも、オリジナルグッズのネット通販でも何でも良いから一般消費者に直接接触できるBtoCが原料メーカー、素材関係会社でも必要だと考える。
何も某紡績や某合繊メーカーみたいに意味のわからないイメージだらけのテレビCMを流す必要はさらさらない。

そんなわけで、構想2カ月くらいで動く原料メーカーや産地企業が続々と現れていただきたいと切に願う。

秋冬の隠れたヒットアイテムか?

 昨年12月と書くと何だかかなり以前のことのように感じるが、実際は先月のことである。
白いパンツを穿いている女性がいつもの冬よりも多いと感じた。
いわゆるホワイトジーンズをイメージしてもらいたい。

ホワイトジーンズは通常の年だと、だいたい春夏のアイテムとして扱われる。
3月ごろから着用者が増え始めて、10月には減っていく。
衣替えとともにさようなら、そんな感じである。

しかし、2012年を思い返してみると、10月下旬ごろからホワイトジーンズを着用している女性が増えた印象がある。メンズのファッション雑誌を読んでいても昨年秋以降に発売された号には必ずホワイトジーンズ着用のスタイルが掲載されている。

秋冬にホワイトジーンズが注目されるのは珍しい。
欧米のスタイリングには寒い時期にホワイトジーンズを穿く「ウインターホワイト」という着こなしがあると聞くが、これまで日本で「ウインターホワイト」と洒落こむのは、本当にファッション好き、言いかえればひどくキザったらしい人くらいしかお見かけすることがなかった。
偏見だが、わざわざ冬に白いパンツを穿く男性にはそういう印象がある。(笑)

昨年、12月に阪急百貨店うめだ本店のレディースジーンズ売り場「ワールドマップジーニスト」を取材した際にも「ホワイトジーンズコーナー」があり、バイヤーも秋冬の隠れたヒットアイテムだったと教えてくれた。
また、ジーンズを基調としたトータルカジュアルを展開するジョンブルでも、レディースは昨年秋の終わりごろからホワイトジーンズが動いているという。
もっともナチュラル感のあるジョンブルなので、白い経糸にベージュや薄グレーの緯糸を打ち込んだ少しくすんだ色合いではあるのだけれど。

各ブランドのホワイトジーンズ
注目を集めるホワイトジーンズ

ホワイトジーンズを含む白いパンツは本来のシーズンである春夏にはもっと売れ行きを伸ばすのではないか。

ところで、白いパンツを穿くと汚れがすぐに目立つ。
黒や紺などの濃色のパンツに比べて洗濯する頻度が高まる。そうすると洗い替え用途としてもう1本所有することが望ましい状態となる。
そう考えると、秋冬に白いパンツを購入した人は、まだもう1本購入する可能性が高いのではないだろうか。

すでに秋冬から注目が集まっているビビッドなカラーパンツと並んで、個人的にはホワイトジーンズの売れ行きに期待している。
色合わせが難しいビビッドなカラーパンツよりも、何色にでも合うホワイトジーンズの方がマスに支持されるのではないかとさえ考えている。

これは当たるも八卦、当たらぬも八卦であるが。

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