月別: 4月 2012 (1ページ / 2ページ)

楽天の中国撤退理由の解説がステレオタイプ過ぎないか?

 先日、某雑誌の取材で福井県の方を尋ねた。
業界の方でも何でもなく、単なるアメカジ・ワークブランド好きの方である。
その方の手持ちの洋服を見せてもらってそれを写真撮影しつつ、コメントをいただくという作業だった。

その方は年間に数枚しか買わないそうだが、一枚あたりの価格が高い。

GAPの最終値下げで990円に値下がりしたTシャツを2枚と、1900円に値下がりしたニットカーディガンをさらにレジにて2割引きで買う筆者とはだいぶ異なる。

お手持ちの中に、「フィルソン」のウールワークベストがあった。
ネットで調べると販売価格1万8000円である。

この方の手持ちの他の洋服は「エヴィス」「シュガーケーン」などで、だいたい単価2万~5万円くらいなのだが、すべてネット通販で買うという。

福井県でもかなり田舎に住まわれていて、中心街へ行くのも大阪や京都に行くのも時間がかかるのでネット通販という選択は当然だと思う。
それでもそんな高額な物をネットで買うことに驚くとともに、そこまで定着していることが分かった。

筆者はネット通販をあまり利用したことが無い。
何度かはある。買った物といえば、ユニクロで週末限定価格で値下がりした商品とか、リーバイスのオンラインファミリーセールで3150円に値下がりした廃番ジーンズなどだ。

でも送料500円を支払うのが嫌なので家族分をまとめて買う。
ユニクロなら5000円以上買うと、リーバイスのオンラインファミリーセールは1万円以上で送料無料である。
送料無料になるようになるべく「キッカリ」の金額にする。
ユニクロなら5000円ジャスト、リーバイスなら1万円ジャスト。それ以上無駄な物は買わない。

なぜネット通販を利用しないかというと

1、愛用している低価格ブランド群の中にはネットよりも店頭の最終値引きの方が安い物がある。
2、試着できない

この2点が主な理由である。
ブランドごとに採寸が異なることも多い上に、同一ブランドの中でも商品によって寸法が異なることもある。

そんなネット通販音痴の筆者なので、
今月に発表された楽天の中国市場撤退、今年初旬に発表されたYahoo!Japanの中国市場撤退の理由があまり良く分からない。売れなかったことだけははっきりと分かるが。
正確に言うと、各紙で報道された理由があまりピンとこないのである。

そんな中、東洋経済で掲載された記事が一番しっくりときた。

楽天・ヤフーはなぜ敗れた? 激変する中国オンラインショッピング市場
http://www.toyokeizai.net/business/industrial/detail/AC/a1c1206894f023d4460cd8098545061a/

ヤフーは2010年6月、楽天は10年10月に中国版のモールを立ち上げた。
それからわずか2年弱での両社の撤退である。
正確にはヤフーが2年弱、楽天は1年半である。
以下に撤退の理由の解説を引用抜粋する。

どうして、そろいもそろってダメだったのだろうか。
 
 「母国で成功した日本的デザインにこだわりすぎた」「母国で成功したフットワークの重い日本式決定構造」といった、中国での日本企業の敗因としてのステレオタイプな解説は各所でなされている。

そういった経営体制側の要因はもちろんあるだろう。ただ、中国のネットユーザーの立場から見てみれば、「販売店とのチャットによるコミュニケーションは必須なのに備えていないこと」「他の輸入代理店に比べ値段が高すぎたこと」「取扱商品数が十分でなかったこと」といった、非常に基本的な部分での不備が、敗因として挙げられる。

とのことである。

筆者がしっくりこないと言ったのは、上で記されているステレオタイプの解説である。
その程度のことならわざわざ記事を読まずとも、ある程度知識を持ちあわせている人なら、容易に想像できる。

少し横道にそれるが、フランスのカルフール、イギリスのテスコという大手流通が相次いで日本市場から撤退した。米国のウォルマートも長い間苦戦を続けている。
彼らが上手くいかない理由も「母国での成功スタイルにこだわりすぎた」「現地化できなかった」ことが挙げられる。

疑問を感じるのは、マスコミや評論家の論調である。
日本企業が海外市場から撤退するときには「母国(日本)でのスタイルにこだわった」ことを非難するが、海外企業が日本市場から撤退するときには、その企業を非難するのではなく、「海外企業が通用しない日本市場の風習」を非難する向きが多い。
これはダブルスタンダードも良いところである。
日本企業には「現地に合わせろ」と言い、海外企業には「日本人が海外企業に合わせろ」と言う。
どこまで舶来コンプレックスに囚われているのかと呆れ果てるばかりである。
なぜ海外企業にも「現地(日本市場)に合わせろ」と言わないのか。

さて、そんなこんなで今回の東洋経済の記事は非常に分かりやすかった。
続編にも期待したい。

低価格SPAのロゴ入りアイテムは「ダサい」と思う

 先日、日経ビジネスオンラインに「ユニクロはまだダサいのか」という記事が掲載された。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20120328/230332/?ST=nbmag

銀座店のオープン時と、その前段階での取材を合わせた記事である。
個人的に注目したのが、オープンに先駆けての柳井正会長の言葉である。
これを掲載した紙面はなかなかない。ほとんどの紙面がオープン当日の強気に満ちたコメントばかりだ。

記事から抜粋引用する。

「我々がグローバルブランドであるということが、今、世界各地で認知されつつある。だが残念ながら、日本では過去の歴史があり、なかなかグローバルブランドとしての認知が足りない。もう一度、グローバルブランドとしてのブランディング、最新鋭のユニクロを見せたいと思い、世界に誇る銀座という立地を選んだ」

 続く質疑応答でも、柳井会長は何度も同じような趣旨の発言を繰り返した。

 「ユニクロは日本だと、ブランドというよりも、もっと生活に密着したもの。ロードサイドや(消費者の家の)近所に店があるので、寒くなったらヒートテックを買いに行く店になっている。だがグローバルに展開している旗艦店は、店自体が最新鋭なうえ、いずれも数少ない一等地にある。日本で売っている商品が、グローバルな一等地でも売れているということを、日本人にもう1度認識してもらうことが大切だ」

 「ユニクロの世界でのイメージと、日本のイメージが一緒にならないといけない。ロードサイドの時代から、27~28年経っているが、まだ古いユニクロのイメージを持つ人が多い。そのためにフラグシップストアを持ち、新しいユニクロを伝えないとだめだ」

 「(消費者のユニクロに対する)認識を変えさせないといけない。昔のロードサイドで、我々は自分たちのブランド以外の商品を売っていた。そういうイメージがまだあるのではないかと思っている。我々は、ブランドのアイデンティティをもっと表現して、理解してもらうことが必要だ」

 要するに、日本人のユニクロに対するイメージがあまり良くないことを刷新するのが、銀座店だというのだ。単なるロードサイド店ではなく、世界で評価されているのと同じ「ユニクロ」に変わる。いわば、ユニクロというブランドイメージを逆輸入しようとしているわけだ。

とのことである。

こういう弱気な発言も各メディアは報道してもらいたいと思う。

記事は「いまやユニクロは認知されており決してダサいものではない」と結論付けているが、まったくその通りだと思う。
しかし、一方で「進んで買いたいほどカッコいいイメージがあるのか?」と言われるといささか疑問を感じる。
日本人の96%までが所有しているといわれる国民服だが、購入した人間の多くはその理由に「安くて品質が良いから」ということを挙げる。
私見だが「カッコイイから」と答える人の割合を遥かに上回るだろう。

「ダサくはない」が、「あこがれのブランド」ではない。これが正直な位置づけだと思う。

筆者も無地のラムウールセーターを愛用しているし、値下げされたヴィンテージノータックチノパンも愛用している。
無地のアイテムは市民権を得ており、国民の必需品である。

しかし、ロゴ入りはどうか?ロゴ入りははっきり言って「ダサい」と感じる人が多いのではないか。

先日、テニスプレーヤーの錦織圭選手モデルのウエアがオンライン限定で発売された。
色の切り替えや全体のデザインは好き嫌いの範疇であり、「ダサい」と判断する人もあれば「なかなかカッコイイ」と判断する人もいるだろう。
しかし、ロゴマーク入りはどうだろう?
購入された人もおられるだろうが、あまり食指が動かない人が多いのではないだろうか。
ユニクロ愛用の筆者でもロゴ入りは「ダサい」と思う。390円くらいまで値下げされても絶対に買わない。

00_072731

これは別にユニクロに限ったことではないと思う。
雑誌モデルの発言がきっかけで若者に人気が爆発した「しまむら」も同じである。
胸に「しまむら」とか「shimamura」とロゴが入ったポロシャツとかTシャツを「しまらー」の若者たちは欲しがるだろうか?おそらく欲しがるのは少数派だ。

「無印良品」とて同じであろう。「無印良品」とか「MUJI」とロゴが入ったウエアが「カッコイイ」と思う人間はあまりいない。「ハニーズ」しかり「ジーユー」しかりである。
「H&M」「ZARA」もしかりだろう。以前にロゴ入りトレーナーを盛んに販売していた「GAP」ですら、それに対する評価は怪しい限りである。

低価格SPAブランドは、決して「ダサく」はないが、いずれも「あこがれのブランド」ではない。
そういうポジショニングだということを「ロゴ入り」アイテムは改めて浮き彫りにしてくれるのではないか。

バーゲン開始時期を遅らせても収益は改善しない

 三越伊勢丹とルミネが今夏のバーゲン開始時期を遅らせるということが決定したようだ。
23日付けの各紙で報じられている。

http://www.excite.co.jp/News/entertainment_g/20120423/JCast_129977.html

 三越伊勢丹ホールディングスは2012年7月13日から首都圏の主要9店舗でセールを開始するため、現在準備を進めている。東急百貨店も13日から2週間、首都圏の4店でセールを実施。駅直結の商業ビルを運営しているルミネ(東京・渋谷区)も全15店でのセールを7月12日から開始するとした。

バブル崩壊後に前倒しが進められてきたバーゲンセールだが、最近の消費動向は「『暑くなる前に買う』より『暑くなってから買う』という、季節の変動に合うような消費に変わってきている」(ルミネ広報)。時期を遅らせることで「欲しい時に欲しいものが揃っている」状況を作り出すことが各社の狙いだ。

とのことである。

日経新聞は「収益改善が目的」と報じている。

たしかに、季節先取りで買う消費者は減っており、よほどのファッション好きだけである。
大多数の消費者はルミネの広報が言うように体感気温に応じて夏物・冬物を買う。

今年3月・4月の売れ具合を見てもそれは一目瞭然である。
ある百貨店向け肌着メーカーは「今年は寒い時期が長かったので4月の1週目まで保温肌着が好調に動きました」という。
昨年は11月中頃まで25度以上の気温が続いた。
そうすると、当然のことながら防寒アウターは12月まで動かなかった。
12月はすでにプレセール時期であり、20%程度の割引で販売されており定価販売ではない。

だからユニクロが7月中旬にヒートテックを売り場に投入するのを見ると「見ただけで暑苦しいわ」とつい思ってしまうし、1月末に半袖ドライポロシャツが投入されれば「見てる方が凍えるわ」と感じてしまう。
「季節先取りで憧れちゃう~」などという消費者はバブル崩壊とともに消え去ったのだろう。

しかし、である。

セールを7月13日に遅らせたからと言って「収益改善」がはたされるのだろうか?
残念ながらそうは思えない。

少し開始時期を遅らせたからと言って、7月13日まで消費者はよほど欲しい物以外はバーゲン待ちするだろうから、定価販売が増えるとは考えにくい。
さらに、7月13日にセールが始まってもその期間内に全商品が完売することはあり得ない。そのため、例年通り盆明けごろまで残った商品をさらに値下げして叩き売ることになる。
収益はほとんど改善しないだろう。

かと言って、セール早期化を野放しにしておいて、7月末から初秋物や秋物を早めに立ち上げても売れるとは思わない。
なぜなら、体感温度で買う人が主流だからだ。
7月末は暑さもピークである。そんな時期に秋物を早めに、しかも定価で買うのはごく少数のファッション大好き人間くらいである。

セール時期を7月中旬とか7月上旬に戻すという取り組み自体は賛成だが、かなり厳しい状況が待ち受けており「経営陣がどこまで我慢できるか」にかかっているとしか言いようがない。

さて、件の元編集長がこの件について書かれている。
http://ameblo.jp/3819tune1224/entry-11232129843.html

私は元々バーゲンは春夏ものは旧盆以降、秋冬ものは成人式以降と長年言い続けてきた。

でもさあ、自分たちが売れ残りを危惧するためなのか、自分たちでバーゲン時期を早め早めにしていったのは1980年代半ば過ぎからだった。

そんなことをしたら自分で自分の首を絞めることになると言っても、だれも耳をかさなかった。ザマヲみろ自業自得だイイ気味だとさえ思った。

今じゃあシーズン・インの時期からバーゲンやっているのだから。私には信じられないことだが現実。

今ごろになってバーゲン時期を後倒しだってさ。

遅すぎるってんだ!

自分たちの反省なしで、正価販売の期間を延ばして売り上げ増をという安易な考え方ではないか。

百貨店の考えることってこんなものさ。

だってさ、もの心付いた年代からバーゲン早い時期育ちは既に30代半ば以上なんだぜ。今の若者は全員早いバーゲン育ちなんだヨ。

てことは今の若者から高齢者までなんだ。

早い時期のバーゲン買い物を長年してきた人たちに、正価販売を少しでも長くなんて考えたって見込みほど売り上げ増になるとは思えない。

自分たちの冒してきた反省をしてみることから考えないといけない。

とのことである。
まさに「今ごろ遅すぎる」である。遅めのバーゲン開始が再び定着するまで数年~10年くらいの月日が必要だろう。こらえ性のない経営者たちがそこまで我慢し続けられるか、である。
筆者は、おそらく2年か3年で音を上げると予想している。

今後の成り行きに注目したい。
動向ではなく、あくまでも「成り行き」に。

震災の影響がまだまだ残る4月度売上速報

 恒例のライトオンとジーンズメイトの4月度売上速報が発表された。

ライトオンは
既存店売上高が前年比9・7%増
既存店客数が同6・0%増
既存店客単価が同3・5%増

だった。

ライトオンによると、昨年は東日本大震災の影響から、店舗閉鎖や営業時間短縮店舗が多数発生したため今月も既存店実績更新となったが、肌寒い気候が続いたため春物の動きは鈍かったという。

ジーンズメイトは
既存店売上高が前年比6・6%減
既存店客数が同9・7%減
既存店客単価が同3・4%増

だった。

こちらは東日本大震災の影響には一切言及していない。

私見を述べると、昨年4月はまだまだ東日本大震災の影響で休業店舗や営業時間短縮店舗があった。
そのため、3月度よりは伸び率は鈍化しても、4月度も通常通りに全店フルタイム営業をするだけで最低でも前年実績並みでなければおかしいと言わざるを得ない。

ちなみに3月度の各社商況は当然、前年実績を更新しているが、伸び率が1%増とか2%増程度では「かなり売れていない」ということになる。
これは筆者の偏見ではなく、スポーツメーカー各社から自戒も込めて聞こえてくる声である。
「3月は最低でも10%増は確保しないと」というのが主流である。

それを頭に入れて、もう一度各社の3月度売上速報を見直してもらいたい。

全国百貨店売上高ですら今年3月は前年比14・1%増である。
15年連続で売上高が減少し続けている百貨店ですらである。

余談だが、百貨店売上速報でよく「宝飾品・貴金属などの高額品が伸びた」と報道されることがある。
今年3月も「高額品」は12・0%増である。
しかし、日本百貨店協会ホームページで確認していただければすぐにわかるが、その「宝飾品などの高額品」の売り上げ構成比率はわずかに4%程度である。

売り上げ構成比4%の商品が12%増したからと言って、百貨店全体に及ぼす影響は極めて小さい。
今年3月の「高額品」は昨年度12%増して、売り上げ構成比が4・3%に伸びたという方が正しいかもしれない。
そんな「高額品」が5%増しようと10%増しようと、一言でまとめるなら「焼け石に水」である。

「高額品」の増減は消費トレンドを測るバロメーターにはなるかもしれないが、一喜一憂するほどの大きな売上高ではないということである。
マスコミ各社が何故、「高額品」の増減を必要以上に熱心に報道するのかいまだに理解できない。

ルクアの初年度売上高は370億円に、JR大阪三越伊勢丹を上回る

 大阪市内の商業施設オープンラッシュからもうすぐ一年が経過しようとしている。

先日、4月3日付けの繊研新聞にルクアとJR大阪三越伊勢丹の3月末までの売上高が掲載された。
これによると、JR大阪三越伊勢丹は310億円、ルクアは341億円でありルクアが完全にJR大阪三越伊勢丹を上回っている。
この調子で行くと、JR三越伊勢丹は下方修正した初年度目標350億円にすら到達しない可能性が極めて高い。

グランドオープンは5月4日だったから、3月末から数えると残り1ヶ月強しかない。
単純に310億円を11カ月で割ると、1ヶ月当たりの平均売上高は約28億円となる。
4月はゴールデンウイーク前に販売が増える月であるが、セール時期ほどではない。
そのため、月間売上高が40億円に到達するとは考えにくいのではないだろうか。

一方、ルクアは売上高見込みを320億円に上方修正していたが、すでに3月末で30億円オーバーしたことになる。

この後の4月6日付けの繊研新聞には、ルクアの初年度売上高は370億円になりそうだと報じられている。

JR大阪三越伊勢丹の初年度売上高は、名の知れた商業施設としては珍しい歴史的惨敗と評しても良いのではないだろうか。

その理由は、「伊勢丹流ディスプレイが大阪に受け入れられなかった」というだけではないはずである。
なら反対に「伊勢丹流ディスプレイ」が新宿本店以外で受け入れられている店舗があるのだろうか?

一方、JR京都伊勢丹は売上高647億円だという。
こちらも初年度売上高はあまり芳しくなかったが、その後の修正で持ち直した。

2年目からJR大阪三越伊勢丹がどのように修正するのか注目したい。

仏和辞典によると、ジレは女性の肌着らしい

 常々、ベストをわざわざ「ジレ」と呼ぶ風潮は好きではなかった。
「細かいこと言うなよ。オッサン」という声もあるのは承知しているが、マイナスのイメージがあるわけでもないうえに、広く一般的に知られている用語をことさら別の呼び名にすることが陳腐な販促としか感じられないからである。

さすがにこの時代にベストを「チョッキ」と呼ぶ若い人はいないだろうと思っていたが、先日、取材にお邪魔した先では30代と思しき奥様が「チョッキ」と口にされていたので、驚くとともに「チョッキ」という言葉は完全な死語ではないと改めて感じた。

さて、この「ジレ」という言葉はフランス語で「チョッキ」または「ベスト」を指す。
ここまでは生兵法の筆者でも知っていることだが、さらに「女性用の肌着」という意味もあるらしい。
なら、「ジレ」とシタリ顔で連呼するファッショニスタを気取るオッサンは、恥をかいていることになる。

http://ameblo.jp/3819tune1224/entry-11226647917.html

「gilet」を「プログレッシブ仏和辞典」(小学館)で引くと、
①チョッキ、ベスト(スーツなどの下に着る)、②(婦人用の)カーディガン、③肌着、アンダーシャツとある。「ファッション辞典」(文化出版局)には、胴着、チョッキ、ベストとあって、さらにブラウスを着ているように見せかけるための袖なし身頃だけのブラウスを言うとある。
ファッションに関心がある女性に「ジレ」って?と聞くと、下着のことですかという答えが多い。
こんなことまで考えて「ジレ」を使ったのかね。
ただ新しい言葉だからということだけで使ったとしたら、罪作りだね。
みんなが分かる言葉を使うことを心がけよう。

ファッション界のやさしい言葉を難しく言いかえる悪しき習慣は、そろそろヤメようよ。難しいことをやさしく言いかえようヨ。

とのことである。

このファッション雑誌の元編集長のブログは回顧録が主体だが、ときどき本質的なことを指摘される。
今回、抜粋引用させていただいたブログのタイトルはズバリ、

ジレとベスト、どちらが分かりやすい言葉?、ジレは女性に肌着なんだヨ

である。

先に結論を引用したが、出だしから紹介したい。

近ごろ「ジレ」という言葉が氾濫している。
百貨店の広告などに氾濫している。先日は新聞までも使っていた。10人いたら9人が分からない言葉でなく「ベスト」と言えばいいじゃないか。

(中略)

私が気に入らないのは「ジレ」なる言葉。
フランス語を使えばオシャレなのかい?
「胴着」とまでは言わないが、「チョッキ」も今は使わないか。ならば「ベスト」でいいじゃないか。「ジレ」なんて言葉を使わなくたってさ。

「ジレ」って聞いて、分かる人の確率はどれぐらいだろう?
「ベスト」ならば90パーセントは、分かるだろう。
80歳以上の人ならば「チョッキ」が馴染みやすい言葉だろう。
「ジレ」を使おうと考えた奴は「ベスト」を使ったら、自分が時代を生きていないとまわりから言われるのでないかと考えたんだろう。

ファッションの仕事をしている奴に多いのが、やさしいことを難しく表現したら自分もすごい人と思われると錯覚してるんだ。馬鹿だね!そういう奴が、私が編集長をしていたファッション誌にもいた、そういう奴はいい学校を出ているんだ不思議に。

ファッション雑誌を読んでいると、やたらにカタカナが多いだろう。そういう雑誌は、馬鹿な編集者やライターが多いんだと思うこと。

「ジレ」って言葉は「広辞苑」にも「新明解国語辞典」にも出ていない。「ベスト」はある。つまり「ジレ」は認知度が非常に低いことだ。

とのことであり、まさにご指摘には賛同する。

呼び名を変えるということは販促で大きな効果を発揮することもある。これは否定しない。

販促コンサルタントの藤村正宏さんが講演で示される例の一つに小林製薬の「ナイシトール」がある。
内臓脂肪を落とす飲み薬である。
これは、もともと新製品ではなく、これまで同じ成分の薬剤を別の名前で販売していたという。
ところがさっぱり売れなかったので、名称を「ナイシトール」に変更したところ爆発的に売れて、いまだにテレビCMが放送されるほどのロングラン商品となっている。
ネーミングを変えて成功した例だろう。

以前の名前を存知あげないが、ナイシトールよりはその効果がイメージしにくい名前だったのだろう。
ナイシトールはちょっとベタだけど、名前を聞いただけでその効果がなんとなくイメージできやすい。
それに、以前の名前は知名度も低かったから変える必要があった。

さて、立ち返って「ベスト」である。
別に負のイメージはない。「パンスト」に比べると遥かにファッション的なイメージすらある。
知名度は高い。先のブログで触れられているように国語辞典にも掲載されている。反対に「ジレ」は国語辞典には掲載されていないほど知名度が低い。
わざわざ呼び変える必要性はゼロである。

もし、孔雀の羽根みたいな派手な衣装を着たファッション業界人が
ネクタイのことを「クラヴァッタ」と呼ぶことを提案したらどうだろう?
ナンセンスである。
知名度が高い「ネクタイ」という言葉を廃止して、わざわざ知名度が低い「クラヴァッタ」と呼び変える必要性はまったくないからだ。

そんなわけで、「ジレ」という呼び名は一切使いたくない。

高級生地使用の低価格スーツ

 この3年ほど、さっぱりスーツを着る機会がなくなった。
冠婚葬祭くらいだろうか。
今ほど「赤貧洗うが如し」の暮らしをしていない頃は、年に1着くらいはスーツを買った。
以前ならDCブランド崩れのSPAブランドのバーゲンで買ったこともあったが、いつのころからかツープライススーツショップで手を打つことが多くなった。

さて、生地だけで見るとツープライススーツショップもかなり高級なものを使用している。
「スーパー100」「スーパー120」「スーパー150」などという高級生地が使われているものも珍しくない。
実際に、スーパースーツストアで19000円で買ったスーツは「スーパー120」使用である。

パターンや縫製については素人なので、単純に考えれば高級素材を使用して、19000円とか29000円でスーツが購入できるなら「それでええじゃないか」と思う。
じゃあ高級スーツというのは「ボッタクリなのか?」とも思わないでもない。

もし、手元に19000円のスーツと、高級スーツの2つがあってたんねんに見比べることができたら、素人の筆者でも幾分か違いを発見することはできるだろう。
しかし、手元に何も無く、19000円のスーツのみを見せられて鑑定しろと言われた場合、素人の筆者には到底無理である。

ツープライススーツショップに限らず、安価なパターンオーダー店も増えている。
1着あたりの単価でいうと19000円でパターンオーダーができるエフワンが業界最安値ではないかと思う。企業経営としては極めて利益が低く、売上高も伸び悩んでおり厳しい状態が続いているが。
2着、3着のまとめ買いセールだと奈良を本社とするツキムラが最安値だろうか。

高級素材を使用した低価格スーツと、高級素材を使用した高額スーツのどこがちがうのか?というのは筆者の長年の疑問だった。

先ごろ、教えていただいたテーラーのブログを読んでその疑問が氷解した。
少し長文になるが抜粋引用を交えてご紹介したい。

高級生地と安すぎる仕立上価格
http://www.tailor-kasukabe.com/articles/structure/16_easy.html

下限のイージ・オーダーの縫製の質は、量販店の既製品と全く同じです。芯は接着芯であり、その他、細部の仕立ても量販店のそれと全く同じ、お世辞にも優れているとは言えません。下限のイージ・オーダーの利点は縫製の質にはありません。オーダーという名前が使われているからといって、常に既製服より縫製が優れていることにはならないわけです。

このような縫製では高級生地の特徴である「柔らかい風合い/なびき」はすべて殺されます。全く意味がありません。ゼニアやロロピアナの生地を使った服がなぜ高価なのかと言えば、これらの生地の特質を生かすには縫製の質をも上げなければならないからです。もし縫製の質を徹底的に安価に押さえるのであれば、高級生地を使ってはいけません、欠点だけが目立ちます。テーラーとしては、良い生地を無駄に使ったような気がして、気分がよくありません。

高級生地の特性が殺される結果、2万円の既製服とこの7万円近くする服がほとんど同じに見えます。このような服に7万円も出すべきではありません。生地と仕立てのバランスが悪く、大量量販店のスーツにも劣ります。値段が高いだけでほとんど同じ服が出来上がるのですから、高いだけが取り柄の服ということになります。

とのことである。
もう少し解説を紹介すると、

下限のイージ・オーダーによる縫製では、最後に機械でプレスし、ネジレやシワを取り除き、ボリュームを無理矢理出します。しかし柔らかい生地をプレスしたらどうなるでしょう。見事に紙のようにぺらぺらになります。

「高級プレタや専門店では15万〜20万円もする」との宣伝文句もみかけます。しかしこれは当前です。既製服だとしても、このような高級生地の特性や良さを最高に生かす縫製をするから高くなるわけです。徹底的に安価なイージ・オーダーの利点は縫製の質では有りません。

最近ではイージ・オーダーでもかなり技術レベルが上がっています。しかしそれは、ある程度の価格帯のものです。最低価格帯のイージ・オーダーでは、相変わらず大量量販店の縫製レベルと同じで、オーダーとして生地の風合いを生かすなどということは、最初から期待の外に有ります。そもそも利用目的が違います。

良い生地の特徴に塑性力というものがあります。シワになっても湿らせて吊るしておけば、簡単にシワがとれて元通りになります。では、逆にもとからシワがあった場合どうなるでしょう。当然、シワが復元します。

下限の縫製では縫製段階でシワが残っています。それを無理矢理にプレスで押さえつけてとってしまいます。結果、下限のイージ・オーダーの縫製だと、良い生地であればあるほどシワが出てくるという冗談のような話になります。出来上がった時点では奇麗だけれども、時間が経つにつれてプレスでとったシワが戻ってしまうのです。

良い生地ほど後から後からシワが出てきます。これでは、かえってシワになるという苦情を招いているだけです。テーラーとしては、良い生地をなるべく値打ちに提供するところに眼目がありますから、このような縫製では良い生地を仕入れても何にも意味がありません。

なるほどなるほど。である。

そして安価品についてのメリットとデメリットをキチンと解説してくれている。懇切丁寧である。

上手にご利用下さい。1万円の生地に10万円のフル・オーダーと、9万円の生地に2万円のイージ・オーダーであれば、圧倒的に前者の方が着心地も見栄えも上回ります。それほど縫製は生地にとっても重要であるというわけです。

ということである。

さすがはテーラーという解説である。

高級素材を使った低価格スーツという商品がなぜ作られ続けるのかということに対しての回答もこのブログには含まれている。
筆者も含めて消費者は「生地」についての知識が少しだけある。しかし、縫製についての知識はほとんど持ち合わせていない。それこそ「プロ」だけである。
当然、売る側としては「販促」に利用しやすい「生地」の部分を強調アピールすることになる。
これはスーツに限らず、カジュアルアイテムでも同じだろう。
「日本製のデニム生地」とか「プレミアムコットン」とか、「○○リネン」とか、この手の例は掃いて捨てるほどある。実際に掃いて捨ててしまいたいくらいである。

衣料品製造業でも、生地を織る・編むする生地製造工場は比較的注目されているが、縫製工場はほとんど注目されていない。その結果、「ジャパンなんちゃら」とか「プレミアムテキスタイルなんちゃら」という生地製造工場ののイベントばかりになってしまっている。
そのため、経営が厳しいと言われながらも生地製造工場はけっこう残っている。縫製工場に比べれば格段に知名度も高い。

国内縫製工場の存続が危ぶまれている背景と、高級生地を使った低価格スーツが発生する背景は「生地重視・縫製軽視」という点で同じである。

とテーラーカスカベさんのブログを読んでツラツラと考えてみたりした。

パンストの名称変更を求む

 先日、パンストのことを書いたら靴下メーカーのチュチュアンナからお知らせが来た。

前年比8倍増で柄入りのパンストが売れているという。

たしかにパンストは復活しつつあるのだろう。しかし、よくマスコミが「8倍増!!!」みたいな報道をするが、パンストの勢いがあるというよりも前年までの実績がそれほど低かったと見るべきだろう。

これは今年3月の各社の月次売上高報告でも同じである。
昨年は東日本大震災のため、営業時間短縮や長期間休業した店舗が多数出てしまった。
今年はほとんどの店舗が通常営業しているのだから、なんら工夫を凝らす必要も無く、通常通りに淡々とフルタイムに営業するだけで前年実績を上回ることができる。
10%増前後の数字は当たり前で、逆に今年3月の実績が1%増とか2%増程度にしか伸びないならよほど売れていない店舗である。

閑話休題

さて、先日ブログを書いてからずっと考えていたことがある。
パンストというイケてない名前を廃止して何か新しい名前を付けてはどうだろうか?

パンスト、正式名称パンティストッキング

パンストでもパンティストッキングでもどうも変態チックな名称である。
どこからどう聞いても卑猥な感じがする。
これでは売れる物も売れない。

かと言って「薄手タイツ」というのもなんだか違う気がするし、
「ストッキング」というとこれは指す範囲が広すぎて他のものとも混同しそうである。

何かもう少しビシっとした造語ができないものだろうか?

スパッツをレギンスと言い変えたり、ネックウォーマーをスヌードと言い変えたり、ベストをわざわざジレと言い変えるような、消費者を混乱させる呼び変えはあまり評価していないのだが、正式名称パンティストッキング、略称パンストは負のイメージが大きすぎるから、名称変更は大賛成である。

ネーミングセンス溢れた業界の方々にイケてる呼び名を考えてもらいたい。

基盤が危うい日本の衣料品製造業

 昨日の国内縫製工場の現状についていろいろな意見をいただいた。

アパレルによる買いたたきや工賃の引き下げという負の歴史が長らく続いたため、
一部の例外を除いて、国内の縫製工場は後継者不足や、モチベーション低下が深刻化しているのが現状である。
この背景認識は共通の物だろう。

後継者不足で若手労働者が集まらない状況から、安価な中国人研修生を導入したことも国内縫製工場のクオリティを下げる原因の一つとなっている。
中国人研修生は3年の勤務で帰国する。
毎年新しい人が来るが、3年勤めあげた人は帰国してしまう。
手近に例えると中学校や高校の生徒みたいな感じで人員が入れ替わる。

3年勤めて、技術が向上した矢先に抜けられてしまうことも工場側の大きな悩みの種だといえる。
初めて来日した人は当然、技術は低く、また一から教えなくてはならない。
工場全体の技術力アップにもつながらない。

昨日、分量が多くなり書ききれなかったのは筆者の圧倒的な力量不足である。

こういう厳しい状況でも縫製工場を継いだ、あるいは継ごうとしておられる2代目・3代目の方がおられる。

次代担う方々は、これまでの因習にとらわれずに新しいやり方を模索するべきであると考えている。
言うは易し行うは難しなのだが、どこかで切り替えないと、これまで通りのやり方では国内の衣料品製造業はほとんどなくなってしまうのではないだろうか。

近頃盛んに言われている「メイドインジャパンを海外へ」というフレーズには賛成であるが、そのセールスポイントの一つに「高品質、高感度」が挙げられていることに対しては、はたしてこれを唱えている人は実状を知っているのだろうかと疑問を感じてしまう。

もちろん、実状を知っていながら、販促的観点から「煽り文句」として掲げている場合も考えられる。
でもそうではなく、単なる思い込みなら実際に海外に出品すれば大恥をかく。
恥をかく程度で済めば良いが、「メイドインジャパン製品」全体の評価ダウンにもつながる。
そこを危惧している次第である。

日本製の生地を世界にアピールする試みが長らく続けられているが、
これとて縫製業と同じくらい基盤が危うい。

たしかに生地を織る・編む工場は今でも各産地にそれなりに残っているが染色や整理加工は減り続けている。
染色や整理加工が無くなれば生地は作れない。

世界的に評価が高い日本製生地としてデニムがある。
たしかに欧米の超一流ブランドまでが日本のデニム生地を使用している。
岡山県井原市や広島県福山市のデニム生地工場に行けば、いろいろな工場から「先週、なんとかっちゅうブランドのヨーロッパ人がデニム生地を買い付けに来たで」という声が聞こえてくる。

しかし、このデニム生地製造にしたところで、ロープ染色できる一定規模の工場が国内にどれだけ残っているかである。
知る限りでは、ロープ染色専門の坂本デニム。一貫生地製造を手掛けるカイハラとクロキ。
これくらいではないか。
あと、四国の日清デニムも思い浮かぶが、近年規模が縮小しておりロープ染色部門が残っているのかどうか。

デニムですらこの程度である。

筆者はもとより、国産製品の躍進を夢見ている。
しかし、実状とかけ離れたイメージだけでアピールすることは大きな失敗を招くと考えている。
大本営発表ばかりを鵜呑みにするのは危険である。

そのため、現状を知ってもらったうえで海外へのアピールなり、国産品の普及活動なりに取り組んでもらいたいと願ってやまない。

国内の衣料品製造業は決して高品質ではない

 先日、何軒かから展示会用サンプルについての話というか、苦情というかをお聞きした。
展示会用サンプルに関することなので縫製の問題である。

ある小規模デザイナーブランドは、OEM業者を通じて国内工場でサンプルを縫製してもらった。
物はシャツとカバーオールジャケットである。
出来上がったサンプルは、裏地は破れているし、折り返すべきところを折り返していなかった。ボタンの取り付け位置もズレていた。

考えられる原因としては

1、ブランド側からの指示書がわかりにくいものだった
2、仲介するOEM業者の工場への指示が悪かった
3、縫製工場の技術力が低かった

の3つが挙げられると思う。

1の場合を除いて2,3は製作サイドの問題である。

縫製工場の技術力が低い原因を考えると、
単純に手先の器用・不器用、工員の熟練度以外に、工員の高齢化もあるかもしれない。
70歳代でミシンを踏む日本人工員も珍しくないので、視力が弱って細かい部分まで見えていないことがある。
これはお気の毒なことだがどうしようもない。
家庭的・経済的状況が許すなら引退していただくしかない。

さて、別の小規模ブランド。

1型100枚もいくかどうかという程度のブランドだが、現在、中国、日本、東南アジアでサンプル製作と本生産を行っている。最近では、中国でも100枚程度の製造を行ってくれる工場も増えている。
このブランドの経営者によると、最近では「国内工場よりも中国工場の方が縫製技術が高いです」という。
この経営者は業界歴30年を越えており、展示会サンプルなら自分で縫製してしまうという方である。

これに類した話はあちこちの業者からも聞く。
当然、工賃の問題もあるが「シンプルな物は国内で、手の込んだ物は中国工場で」という業者もいる。
彼らに言わせると、工賃だけの問題ではなく、やはり技術的にも中国工場の方が信頼できるらしい。

日本のファッションブランドを海外へ。という掛け声があるが、
国内の縫製工場がこんな体たらくではなかなか心もとなく感じてしまう。
もちろん、日本国内には技術力に定評のある縫製工場はいくつかある。当然、中国でも技術力の低い工場もある。しかし、小規模なメーカーやブランドから「日本の縫製工場はそれほど技術力が高くない」と評価されるのは、明るい前途とはとても言えないのではないか。

それに加えて、工場側とブランド側でもしかすると意思疎通ができていないのではないかとも思う。
対話が足りないという意味ではなく、同じ日本語を使っているにも関わらず、その「日本語」が通じていないのではないだろうか。

縫製に関して言えば、小規模ブランド側が仕様の意図を懇切丁寧に説明したところで、それが工場側に正しく理解されていない可能性が高い。
これは縫製だけに限らず、生地製造についても同じである。

産地における生地の色柄開発ということで、デザイナーと提携することがある。
その産地での可能性を広げるために、これまで産地では扱ってこなかったような色柄を提案することになる。
ところが、ある産地ではデザイナーが示したプラン通りの色柄で仕上がってくることが稀である。
ビビッドな色を指示したところ、サンプル反がまったく違った色になっていた。
生地メーカー側は「そんなビビッドな色はあかんから、うちのこれまで使ってた色にしておいた」とこともなげに言う。
しかし、これは取り組みの意図をまったく理解していない。
これまでと同じような色で良いならわざわざ開発プロジェクトは組まない。
サンプル反とはいえ、その試作に関しては労力と、少ないとはいえ資金を使うのでなるべく簡略にしたいことは理解できるが、あまりにイージーに取り組むなら新しい物はできない。
従来品を発表し続ければ良いのである。これが一番労力と資金が要らない。

デザイナー側からは「いくら丁寧に説明しても理解してもらえないなら、言語が異なる海外工場に発注した方がマシではないか。通訳を通じてでも正しく対応してもらえるならそちらの方が良い」という意見が、当然あがる。

結果として「国内工場は『言葉の壁がないから意思疎通しやすい』と言われるが、『言葉の壁』がないだけで意思疎通はできない」という評価になる。

つらつらと書いてきたが、現在の状況では、一部の企業を除いて国内の製造業はかなり危ういと感じる。
こんな状態で「国内製品の品質の高さを海外にアピール」できるとはとても思えない。

アパレル側やブランド側の問題もあるかもしれないが、工場側の意識も変わらないことにはまったくの掛け声倒れに終わってしまう。

繰り返しで恐縮だが、国内の衣料品製造業は危機に瀕していると感じる。

1 / 2ページ

©Style Picks Co., Ltd.