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南充浩 オフィシャルブログ

国内の衣料品製造業は決して高品質ではない

2012年4月16日 未分類 0

 先日、何軒かから展示会用サンプルについての話というか、苦情というかをお聞きした。
展示会用サンプルに関することなので縫製の問題である。

ある小規模デザイナーブランドは、OEM業者を通じて国内工場でサンプルを縫製してもらった。
物はシャツとカバーオールジャケットである。
出来上がったサンプルは、裏地は破れているし、折り返すべきところを折り返していなかった。ボタンの取り付け位置もズレていた。

考えられる原因としては

1、ブランド側からの指示書がわかりにくいものだった
2、仲介するOEM業者の工場への指示が悪かった
3、縫製工場の技術力が低かった

の3つが挙げられると思う。

1の場合を除いて2,3は製作サイドの問題である。

縫製工場の技術力が低い原因を考えると、
単純に手先の器用・不器用、工員の熟練度以外に、工員の高齢化もあるかもしれない。
70歳代でミシンを踏む日本人工員も珍しくないので、視力が弱って細かい部分まで見えていないことがある。
これはお気の毒なことだがどうしようもない。
家庭的・経済的状況が許すなら引退していただくしかない。

さて、別の小規模ブランド。

1型100枚もいくかどうかという程度のブランドだが、現在、中国、日本、東南アジアでサンプル製作と本生産を行っている。最近では、中国でも100枚程度の製造を行ってくれる工場も増えている。
このブランドの経営者によると、最近では「国内工場よりも中国工場の方が縫製技術が高いです」という。
この経営者は業界歴30年を越えており、展示会サンプルなら自分で縫製してしまうという方である。

これに類した話はあちこちの業者からも聞く。
当然、工賃の問題もあるが「シンプルな物は国内で、手の込んだ物は中国工場で」という業者もいる。
彼らに言わせると、工賃だけの問題ではなく、やはり技術的にも中国工場の方が信頼できるらしい。

日本のファッションブランドを海外へ。という掛け声があるが、
国内の縫製工場がこんな体たらくではなかなか心もとなく感じてしまう。
もちろん、日本国内には技術力に定評のある縫製工場はいくつかある。当然、中国でも技術力の低い工場もある。しかし、小規模なメーカーやブランドから「日本の縫製工場はそれほど技術力が高くない」と評価されるのは、明るい前途とはとても言えないのではないか。

それに加えて、工場側とブランド側でもしかすると意思疎通ができていないのではないかとも思う。
対話が足りないという意味ではなく、同じ日本語を使っているにも関わらず、その「日本語」が通じていないのではないだろうか。

縫製に関して言えば、小規模ブランド側が仕様の意図を懇切丁寧に説明したところで、それが工場側に正しく理解されていない可能性が高い。
これは縫製だけに限らず、生地製造についても同じである。

産地における生地の色柄開発ということで、デザイナーと提携することがある。
その産地での可能性を広げるために、これまで産地では扱ってこなかったような色柄を提案することになる。
ところが、ある産地ではデザイナーが示したプラン通りの色柄で仕上がってくることが稀である。
ビビッドな色を指示したところ、サンプル反がまったく違った色になっていた。
生地メーカー側は「そんなビビッドな色はあかんから、うちのこれまで使ってた色にしておいた」とこともなげに言う。
しかし、これは取り組みの意図をまったく理解していない。
これまでと同じような色で良いならわざわざ開発プロジェクトは組まない。
サンプル反とはいえ、その試作に関しては労力と、少ないとはいえ資金を使うのでなるべく簡略にしたいことは理解できるが、あまりにイージーに取り組むなら新しい物はできない。
従来品を発表し続ければ良いのである。これが一番労力と資金が要らない。

デザイナー側からは「いくら丁寧に説明しても理解してもらえないなら、言語が異なる海外工場に発注した方がマシではないか。通訳を通じてでも正しく対応してもらえるならそちらの方が良い」という意見が、当然あがる。

結果として「国内工場は『言葉の壁がないから意思疎通しやすい』と言われるが、『言葉の壁』がないだけで意思疎通はできない」という評価になる。

つらつらと書いてきたが、現在の状況では、一部の企業を除いて国内の製造業はかなり危ういと感じる。
こんな状態で「国内製品の品質の高さを海外にアピール」できるとはとても思えない。

アパレル側やブランド側の問題もあるかもしれないが、工場側の意識も変わらないことにはまったくの掛け声倒れに終わってしまう。

繰り返しで恐縮だが、国内の衣料品製造業は危機に瀕していると感じる。

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