月別: 2月 2011 (1ページ / 2ページ)

続、繊維・アパレル業界は儲からない業界

 先日「アパレルは儲からない」と書いたところ、よく分からない反響があった。「大儲けしたいならアパレル・繊維業界は不向き」という考えは変わらないのだが、少しだけ補足しておきたい。

きっかけは、東京拠点のイケイケブランドの若き社長さんが「この業界ってあんまり儲からないように思います」とおっしゃったことだった。儲かる儲からないの基準は人それぞれで、売上高20億円でも「儲からない」と思う方もいるし、今の自分なら売上高3000万円でも「十分に儲かった」と思える。
この社長さんの「儲かる」基準がどこなのかはわからないが、おそらく売上高10億円や20億円では「儲からない」と考えておられるのだろうと思う。

現在の状況では、商品を企画製造して卸売りを行うアパレルメーカー的ブランドでは、何千億円や何百億円規模の企業に成長することはほぼ難しいだろう。ユニクロやしまむらはこの20年での成長企業の筆頭に挙げられるが両方とも小売店である。反対にメーカー的アパレルでこの20年で急成長を遂げた企業はない。
そのユニクロでも国内一兆円を目指しているが、現況では大規模なM&Aを行う以外には到達できないと考えている。

だから「短期間に何百億円単位の売上高を求めるのであれば、アパレル・繊維業界ではなく、ほかの業界を目指した方が良い」と思う。今の業界でブランドを起こすなら数名くらいの従業員で、売上高5億円くらいを目指して利益を確保するのが一番適しているのではないだろうか。
元ドゥニームのカリスマデニム企画者である林芳亨さんも独立に際して「2~3人くらいの事務所で、1億円か2億円くらいの売上高を作るのが一番ええのんとちがいますか」とおっしゃっていた。知識と才能のある林さんなので、もう少し大きなビジネスを組み立てることは十分に可能だと思うが、50億円や100億円のビジネス規模は無理だろうと思う。(おそらく、その規模のビジネスをやる気もないと思うが)

昨年度の民間サラリーマンの平均給与は406万円と算定されている。男性だけだと500万円である。アパレル・繊維業界の男性従事者でこの平均給与500万円に到達している人間がどれほどいるだろうか。おそらく40歳代でも到達できていない人間の方が自分も含めて多数派だろう。こういうことから考えても「アパレル・繊維業界は儲からない」と思う。

「儲からないけどこの業界で仕事を頑張りたい」という人もいる。それはそれで良いことだと思うが「ビッグビジネスを展開したい」と思う方にはアパレル業界はあまり適していない。

格差が顕著な2月売上速報

 さて、恒例のライトオンとジーンズメイトの月次売上速報を。
今回はこの2社に明らかな差が出ている。

ライトオンの2月既存店売上高は前年比3・4%増
既存店客数は同1・2%減
既存店客単価は同4・6%増

とかなり久しぶりに前年実績を上回った。
2009年9月以降で既存店売上高が前年実績を上回ったのは初めてのことである。
客数は微減だが、許容範囲内と言えるだろう。

一方、ジーンズメイトだが。。。。
2月既存店売上高は前年比10・7%減
既存店客数が同14・2%減
既存店客単価が同4・1%増

とこちらは、下げ止まる気配がない。

両社のコメントだが、ライトオンは冬物アウター、冬物ニットが好調に動いたというが、ジーンズメイトはジーンズ不振とともに春物が鈍かったため苦戦したという。はたしてどちらが実状をより的確に報告しているのだろうか?
自分はライトオンの方が実状を的確に報告していると思う。なぜならこの2社は20日締めである。2月21日からはめっきり春めいてきたがそれまではかなり寒く、2月14日は全国的に大雪だった。そのため、本来なら冬物の最終処分品が順調に動いたはずである。そして、この2社とも2月20日までかなりの冬物を残していた。ライトオンはそれを順調に売ったのだろう。ジーンズメイトは、低気温で春物が伸びる気配がないなら、なぜ在庫の冬物を前面に押し出さなかったのか?謎である。

ちなみに同じく20日締めのしまむらの売り上げ速報を見てみよう。
しまむらグループは既存店客数と既存店客単価は発表していない。

しまむらの2月既存店売上高は前年比3・1%増
アベイルの2月既存店売上高は同6・3%増

となっており、好調だったと言える。

こうなると、下げ止まる気配がないのはジーンズメイトのみということになり、企業間格差が顕在化し始めたと言える。
とにかくジーンズメイトの奮起に期待したい。

大阪伊勢丹はLUCUAなしでは成り立たない

 5月4日にJR大阪三越伊勢丹がオープンする。
この百貨店に関しては、隣接直結するファッションビル「LUCUA」とまとめて楽しむべきだろう。JR大阪三越伊勢丹単体では「ありふれた陳腐な保守的百貨店」である。

参考にLUCUAのHPを見ていただきたい。

http://www.lucua.jp/index.html

ビームス、ジャーナルスタンダード、トゥモローランド、ディーゼル、トップショップ、アーバンリサーチストアなど人気セレクト、人気ブランドが入店している。このほか買いやすいブランドとしては「無印良品」もある。大丸梅田店には「ユニクロ」が入店するので、両方を買い回りできる。

一方、JR大阪三越伊勢丹(以降、伊勢丹と表記)は、取り立てて目新しいブランドはない。伊勢丹は梅田地区の中で一番狭い百貨店として建設されている。地下1階には、ヤング向け売り場「イセタンガール」を開設するのだが、ここもあまり見るべきモノがない。新宿店と比べるとラインナップは見劣りする。
この「イセタンガール」は、大丸梅田店にオープンする「うふふガールズ」と対抗する目的だと思うのだが、ウエアのブランドは「バーバリー ブルーレーベル」「トゥビー バイ アニエスベー」「リッチミーニューヨーク」「ペイトンプレイス」「ディアプリンセス」の5ブランドしかない。
しかもラインナップにはまったく新鮮味がない。

とくに「ペイトンプレイス」と「ディアプリンセス」というブランド選びには首を傾げざるを得ない。「ペイトンプレイス」はファイブフォックスのブランドだが、DCブーム終焉以降はほとんど注目されなかったブランドだし、「ディアプリンセス」はイズムのブランドで、2000年前半の神戸エレガンスブーム以降は鳴かず飛ばずである。

近隣に大丸があり、阪急があるためブランド誘致も厳しかったのだと思うが、それにしても・・・という内容だ。
今後、ブランドの入れ替わりがあるかもしれないので、そこに期待するしかないだろう。

一般に「ファッションの伊勢丹」と呼ばれることから、この大阪伊勢丹には過剰な期待がかけられてきた。しかし、実際の「ファッション」部分は、隣のファッションビル「LUCUA」が受け持つと考えるべきだろう。

グルーポンの景表法違反は氷山の一角

 グルーポンの残飯おせち事件を引き起こした外食文化研究所に2月22日、行政処分が下った。

グルーポンおせち、外食文化研究所に行政処分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110222-00000867-yom-soci

読売新聞の記事から引用すると、処分内容は

景品表示法違反(優良誤認など)である。

また、サイトを運営する「グルーポン・ジャパン」(東京都渋谷区)に対しても、出品業者に対して「50%以上の割引」を条件付けるなど、無理な価格設定を引き起こしかねない運営を改めるよう要請した。

とのことである。

以前、ほかのブログでも指摘したように、販売実績がないのに割引価格を提示するのは景品表示法(景表法)違反となる。

わかりやすく言えば、「10000円の50%オフ」による「5000円」と表示したければ、一定期間10000円で販売した実績がないと表示できないということである。10000円での販売実績のない5000円の商品は、定価5000円と表示するしかないということである。

これを禁止しないと、いくらでも元値が高い値札を付けることが可能となる。販売実績がないのに「10万円の90%オフ」で「10000円」とか、「50000円の90%オフで5000円」とかの表示も可能となってしまうわけである。例えば、ユニクロがオックスフォードシャツを定価が1900円にも関わらず「元値7900円の75%オフ」と表示したらどうだろうか?
グルーポンの表示はこれと同じことをしているのである。

洋服は、原価が非常に分かりにくい。素材・縫製が良くても価格が安いブランドもあるし、素材も縫製もあまり良くないけれどもブランド名だけで価格が高いブランドもある。綿花が2ドルを越えた現在でさえ、洋服の価格上昇が叫ばれないのはそのせいである。
反対に食材は原価がわかりやすい。だからコーヒー豆が急騰すれば、インスタントコーヒーの値段も上がる。

しかし、料理はどうだろうか?食材ほどには原価がわかりにくい。そこそこ良い食材を使い、味もおいしいのに価格が安い料理もある。反対に味はさほどでもないのに価格の高い料理もある。
ひどく乱暴に言ってしまえば洋服も料理の値段も売り手が付け放題だ。

だからこそ元値の偽造は犯罪なのである。

しかし、残念なことに小売業者でさえこの景表法を理解していない場合が多い。こと洋服に限って言えば、そこそこの大手小売でさえも、元値を偽造しようとするケースがある。自分が景表法を教えてもらったのは、友人のデニムOEM業者からである。
彼は、以前、量販店向けの衣料品メーカーに勤務していたのだが、そのメーカーで景表法について厳しく指導されたという。
彼によると「大手量販店ですら景表法に対しては無頓着な担当者がおり、元値の偽造を要請することがあった。その都度景表法を持ち出して注意した」とのことだ。

今回のグルーポンは事件が大きくなりすぎて景表法違反が発覚した事例だが、厳しく適用するならまだまだ摘発される小売業は増えるだろう。それは飲食に限らず、洋服の小売業者も相当数に上るはずだ。今回の景表法違反は、ほんの氷山の一角にすぎない。

リーバイスストアの評価点が低かった理由

 先日、コメントを掲載していた東洋経済の記事がウェブにも転載していただいた。ウェブなので名前の間違いも訂正していただいた。(笑)

http://www.toyokeizai.net/business/strategy/detail/AC/34ee4984ead648ba08763d905d211f0c/page/1/

記事の内容については、読んでいただいた通りなので、付け加えることもない。

それと2月19日発売のモノ批評雑誌、月刊「MONOQLO」でZOZOタウンのセール批評をさせていただいた。
ツイッターで「リーバイスストア」に対する評価が厳しいですね、という感想をいただいた。自分はA、B、Cの三段階評価で、申し訳ないがリーバイスストアにはCを付けさせていただいた。

理由は、リーバイスストアが嫌いというわけではなく、リーバイスストアの品ぞろえの少なさ、それから現在アウトレットで行っている大処分セールに比べて値引き率が低かったから、の2点でC判定とさせていただいた。
リーバイスストアの品ぞろえの少なさについては、これはリーバイスというジーンズ専業ブランドの構造的欠陥だと言える。ついでに言えばジーンズ専業メーカー各社共通の欠陥である。

「専業メーカー」と言われるくらいなので、ジーンズとチノパン、一部ワークパンツくらいしか製造していない。トップス類はGジャン、カバーオール、ワークシャツ、Tシャツ、スエット程度である。このラインナップで「ビームスや「ユナイテッドアローズ」と並んだときに、著しく見劣りする。
「ビームス」や「ユナイテッドアローズ」は小物雑貨、リビング用品までそろっており、またウェアに関して言えばカジュアルからスーツ類まである。これでは見劣りするのも当然である。

現在、リーバイスは直営店・FC店で「リーバイスストア」を、エドウィンは直営の「エドウィン」ショップの拡大を図っている。両社とも単なる卸売りメーカーからの脱却を意図していることは明確である。しかし、ショップを構成する品ぞろえに関しては、まだまだ不十分であると思う。
なぜなら、先に挙げたように、ジーンズを中心としたパンツ類と、Gジャンとワークシャツを中心としたトップス類しかないからである。消費者は毎月1本ずつジーンズを買うのだろうか?おそらく大半の消費者は買わない。
今のラインナップなら、年に3~4回買うかどうかだろう。

ジーンズ専業メーカーから出発して、直営店をジワジワと拡大しているブランドとして「ジョンブル」がある。ここのラインナップはメンズといえども多彩だ。ジーンズ、チノパン以外にもセーター類、カジュアルセットアップ類、小物雑貨までトータルにそろう。
リーバイスとエドウィンは、商品開発の一例として「ジョンブル」を見習うべきだと思う。
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(ジョンブルの旧大阪店店内)

ユニクロとGAPを安く買う方法

 今回はちょっと肩の力を抜いて。
先日、「ユニクロの商品を安く買う方法」というブログを拝見した。
http://r.nanapi.jp/317/

方法1:週末値引きで買う
方法2:オンラインストアで買う

とあり、まったくその通りである。

とくに週末値引きで買うのは正解で、ユニクロの出品傾向(自分調べ)は、季初に、いきなり値引きすることが多い。例えば今の綿セーターなら、1月に大々的に値引きを行った。

その後、シーズンに突入するとあまり値引きしなくなる。そしてシーズンのピークが過ぎるころになると再び週末値引きを積極的に行うと言う傾向がある。このことから考えるとシーズン初めの週末値引きで買うか、少し我慢してピークがやや終わりかけた頃に買うかが最も効率的だと思う。

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さらに付け加えるなら、ユニクロの商品は毎週火曜日に値下げされる。シーズンの残り物は毎週火曜日に、どれかが順番に値下げされていく。
2990円のセーターが1990円に値下げされた場合、毎週火曜日に値段をチェックしていると、何週間か後にはさらに値下げされているのを発見できる。これはリアル店舗もオンラインストアも同じである。

ついでに、自分が愛用しているGAPで言うなら、水曜日か木曜日あたりに値下げされることが多い。
GAPもユニクロ同様に順次商品価格が下がっていく。9800円のジャケットが最終的に2900円くらいまで下がる。この2900円に下がったジャケットを1900円で買いたいのなら、毎週水曜日か木曜日に値段をチェックしに行くと良い。
さらに言うなら、GAPは最後の1枚まで通常店の店頭で売り切るらしい。アウトレット店へ移動することは稀だそうだ。
だから、残っている最後の1枚を根気強く待てば、さらに値下がりする可能性もある。

GAP心斎橋店

これまでGAPで定価品を買ったことがない。
マフラーはだいたい600~900円まで値下がりしたときに買う。
2010年の12月に帽子を買ったが、これも900円に値下がりしていた。
テイラードジャケット類は、だいたい2900円に値下がりするまで待つことが多い。ジーンズも1900~2900円で買っている。
セーター類も何枚か買ったがすべて1900~2900円に値下がりするまで待ってから買った。

ユニクロとGAPの共通点は、1つのアイテムをかなり大量に作り込むので、よほどの人気アイテムでない限りは、シーズンの中盤以降まで確実に残っていることである。中盤以降は確実に値段が下がるので、それまでじっくりと待つのも手だ。

エヴィスとドゥニームの欧州進出の差

 ジーンズと言えば、ビンテージレプリカ系のブランドにもすこーし言及したい。
90年代半ばにビンテージレプリカブームがあった。エヴィスやドゥニーム、シュガーケーンなどが人気だった。しかし、そのブームも3年ほどで終わる。2000年には完全に終息していた。
ブームが終わって生き残ったブランドはそう多くない。

そんな中、2002年の日韓ワールドカップで再び「エヴィス」が注目を集めた。イングランドのベッカム選手が愛用していたからだ。

他のビンテージ系ブランドを見てみると、「ダルチザン」はビンテージの先駆けのようなブランドだったが、90年代半ばにはすでに経営譲渡されており、創業者は手を引いている。その時から、経営権は児島の洗い加工大手、晃立に渡っている。現在も晃立の社長がダルチザンの社長を兼ねている。
ダルチザンはビンテージブーム時でも売上高数億円で推移しており、現在もあまり変わっていない。

2000年代前半には販路を拡大していたフルカウントも経営は厳しく、自社ビルを手放し、直営店の大半を閉店した。古株のスタッフもほとんど入れ替わってしまった。

一方の雄であった「ドゥニーム」もオリゾンティから再三の移籍を繰り返し、現在はウィゴーにブランドを買収されている。創業時のメンバーは誰一人残っていない。

現在も比較的堅調に見えるのは、先述したエヴィスとウェアハウス、「シュガーケーン」を展開する東洋エンタープライズくらいではないだろうか。
これほど、ビンテージ系ブランドの市場は狭い。

エヴィスの躍進とブランドステイタスの確立は、ヨーロッパ市場進出が成功したからだと感じている。ベッカム選手の目にとまったのもヨーロッパ進出がある程度成功したからであろう。最近では、覚えている方も少ないかもしれないが、2000年前後の同じころに、ドゥニームもヨーロッパ進出に取り組んだことがある。
ドゥニームは結局、成功せずにヨーロッパから撤退したのだが、エヴィスと明暗を分けた部分はどこなのだろうか?

それは両社の販売戦略の違いであった。エヴィスは欧州の現地企業にライセンス供与し、現地企業がライセンス生産した。一方、ドゥニームは日本からの輸出で対応した。これによって、両ブランドの現地価格は天と地ほど開いてしまうことになる。
エヴィスは現地生産であるため、日本とほぼ同じくらいの価格(1万9000円前後)で販売できた。
ドゥニームは日本からの輸出になるため、関税がかかり、日本価格の2~3倍の値段になってしまった。イギリスでの価格は日本円にして7万円前後になったという。

いくら高品質であるとは言え、7万円のジーンズにはちょっと手が出ない。日本では熱心なビンテージマニアもいるが、欧州にはそこまでのマニアはあまりいない。話題にはなるが、実際はあまり売れない。

ヨーロッパ進出の手法を見ても、エヴィスの戦略・戦術は効果的だと言える。数あるビンテージブランドの中から頭抜けた企業規模に拡大したのも今からすれば、当然だったと思える。

アパレル生産の国内回帰は一過性

 昨年秋から、アパレル製品製造業の国内回帰が業界紙だけでなく、一般メディアでも話題となっている。
2月12日のJCASTニュースの記事はその典型例だろう。

縫製業者が日本回帰? 中国の賃金上昇が影響
http://www.j-cast.com/2011/02/12087316.html?p=1

原因は、中国工場の人件費高騰と納期遅れであると言われている。
実際は、納期遅れではなく、生産数量が少ないわりに縫製の仕様が細かい日本向けのオーダーを中国工場側が嫌っており、生産を受け入れてもらえないのである。

一般に「アメリカのアパレルは1型1万枚、ヨーロッパのアパレルは1型1000枚、日本のアパレルは1型100枚未満」と言われる。しかもアメリカもヨーロッパも日本ほど縫製の仕様には細かくない。さらに経済成長によって、中国国内向けの需要も増えており、日本向けの生産を請け負うよりもずっと効率的で儲かる。
例えば、昨年11月ごろに中国工場に生産を発注したところ「納期は2011年4月ごろになる」と言われた業者が数多くある。中国側の本音は「めんどくさい日本向けの仕事は請け負いたくない」である。

中国の生産から溢れた日本のアパレルは、インド、バングラディシュ、ベトナム、カンボジア、インドネシアなどに生産拠点を移し始めたが、まだまだ生産クオリティは低い。そこで緊急避難的処置として、壊滅寸前だった国内工場に注文を流し始めた。
日本国内の縫製業者はこの10年間で激減しており、工場数が減ったところに受注が増えたのだから、現在、国内工場はどこも満杯である。3週間程度の納期遅れはザラだといわれている。

業界関係者もメディアもこれを「明るい兆し」として喜んでいる。たしかに喜ばしいことではあるが、この活況がいつまで続くのか疑問だ。もっと端的に言えば「国内活況は長続きしない」と考えている。インドやアジア諸国での生産が一定レベルに達すれば、アパレルは確実に生産を再び海外に移す。それは2~3年先のことだと推測している。

国内製造業者の多くは、今回の「降って湧いた」活況に安心しておられる。しかし、今回の受注は永続するものではなく、一過性の物に過ぎない。国内製造業者は今回の受注を「特別ボーナス」だと考え、2年先に備えて新しい準備を始めるべきである。
今の状況が永続すると考えて次の準備を始めていない国内製造業者は、アジア諸国の生産ラインが整ったとたんに破綻してしまう。

国内製造業者が気を引き締めてくれることを願ってやまない。

ジーンズ専業メーカーには厳しい状況が続きそう

 先日、ジーンズの生産統計についてザッとしたことを書いたのだが、2005年からの4年間で、2000万本も生産数量が減少している。

http://blog.livedoor.jp/minamimitsu00/archives/2222152.html

では、なぜ4年間で2000万本も生産数量が減少したのかをあれこれ考えてみる。
1つは、以前も書いたように、ジーンズ生産統計は日本ジーンズ協議会加盟企業のみを集計してあり、加盟していない企業の生産数量はおおよそ想像できるものの、集計されていない。
日本ジーンズ協議会には、ユニクロもポイントもしまむらも加盟していない。また量販店向けジーンズメーカーの雄であるカイタックインターナショナルもコイズミクロージングも加盟していない。

それを考慮すると、ジーンズ協議会加盟企業の生産数量が激減したといえる。

友人のジーンズOEM業者によると「ジーンズの流通量はむしろ増えている印象がある」という。ジーンズ協議会に加盟していない企業のジーンズ生産量が増え、反対に加盟企業の生産数量が減ったのではないか。

また、ジーンズがトレンドアイテムではなくなった背景に関して「千円以下の格安ジーンズ出現の影響があったのではないか?」という声も良く聞く。
これは一定の影響があったのではないだろうか。ただ、それほど大きくないのではないかとも思う。
格安ジーンズ自体は非常に短命に終わっており、すでに各売り場では大幅に縮小されている。一つにはジーユーや量販店が思っていたほどには支持されなかったのだろう。もうひとつには格安ジーンズ向けのデニム生地が供給しにくくなったことがある。

格安ジーンズのスタート当初は、デッドストック在庫のデニム生地を安値で引き取って生産していたというが、そのデッドストックも尽きた。そうすると、わざわざ安い素材を生産しなくてはならなくなるのだが、製造業者にとってはあまりメリットがない。
さらに昨年から綿花価格も高騰しているため、今後はさらに安い生地の生産が厳しくなる。

こう見ると、格安ジーンズは一定数量は売り場に残るものの、今後は一段と縮小されるのではないだろうか。

いわゆるジーンズ専業メーカーと、総合アパレルのジーンズとを見比べた場合、以前ほどには差がないと感じる。
これは、かつてビッグジョンの尾崎篤社長もおっしゃっていたように「ジーンズメーカーのOBや退職組が、総合アパレルなど今までジーンズを手掛けてこなかった企業に転職したことが大きいのではないか」と考えている。
現実に、ユニクロにせよ、ライトオンのPBにせよジーンズの企画は、ジーンズメーカー出身者が手掛けている。また、ジーンズメーカーからの退職組がOEM・ODM事務所を立ち上げて、広くアパレル各社の企画に参加している。おおげさに言えば「ノウハウの流出」で商品差がなくなった状況にある。

今後、この傾向はさらに進むと個人的に推測しており、ジーンズ専業メーカーはよほどブランディングを上手く考えないと、アパレルの単なるOEMメーカーになり下がる可能性もある。

繊維・アパレル業界は儲からない業界

 繊維業界とその周辺で働き始めて、いつの間にか17年も経過してしまった。歳月人を待たずである。実は10年くらい前から漠然と「この業界はあまり儲からないのではないか」と思い始めた。
現実、いまだに少しも儲かっていない。むしろ窮乏している。

先日、東京を拠点に活動されている社長とお話させていただく機会があった。自分よりもずっと年下でまだお若く、勢いのあるブランドを展開されている。
その社長が「この業界はあまり儲からないのではないかと考えています」とおっしゃったことに驚かされた。

例えば社員としてある程度裕福になろうと考えるなら、オンワード樫山やワールド、三陽商会などといった大手総合アパレルに入社し、部長クラスまで登り詰める必要があるだろう。平社員の懐事情はあまり裕福ではない。しかし、部長クラスにまで登り詰めるには気の遠くなるような年数が必要だし、そこに到達できるのはほんの一握りである。

また経営者として裕福になろうと思うなら、起こした会社が急成長する必要があり、自分も含めて細々とした自営業者なら、他業種の平社員の方がよほど給料が高い。

まあ、これは飲食業界にも当てはまることかもしれない。

で、さらに驚かされたのが、その社長が「自分は生まれていないが、高度経済成長期やバブル期にアパレルや繊維企業が莫大な売上を稼げたのは、景気が良かったからに過ぎない。今のこの現状が適正規模なのではないか」とおっしゃったことである。
これも、10年来交流させていただいているデザイナーの平井達也さんと常々、話し合っていたこととピタリと合致する。

平井さんは独立直後に、多くの先輩方から「独立して自分のブランド作ったら、売上高10億円・20億円くらいすぐに到達するよ」と言われたらしい。しかし、現在の状況では大規模な投資を行うか、大企業の資本参加がない限り、個人資本のデザイナーズブランドとして10億円を越えることはかなり難しい。
多くの先輩方は、独立が高度経済成長期だったから、バブル期だったから10億円、20億円の規模になれたのではないだろうか。
もし、彼らが2000年前後に独立していたら今、20億円に到達できただろうか?
自分はそうは思わない。

高度経済成長期やバブル期は、まだまだ物のない時代で「作ったら売れた」時代である。言葉は悪いが何でも品物は売れた。

今の繊維業界・ファッション業界の「偉い人たち」のお言葉の多くが、まったく腹に落ちないのは、彼らがバブル期のイメージのままで語っているからではないのかと思う。むしろ今のファッション消費の方が正常な状態ではないのか。
バブル期のあの躍動感が味わいたいなら「偉い人たち」は中国かインド、ブラジルあたりに移住すべきであり、それを国内市場に求めることが無茶である。

高度成長オヤジやバブルオヤジとはそろそろ決別しなくてはならない。

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