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南充浩 オフィシャルブログ

繊維・アパレル業界は儲からない業界

2011年2月15日 未分類 0

 繊維業界とその周辺で働き始めて、いつの間にか17年も経過してしまった。歳月人を待たずである。実は10年くらい前から漠然と「この業界はあまり儲からないのではないか」と思い始めた。
現実、いまだに少しも儲かっていない。むしろ窮乏している。

先日、東京を拠点に活動されている社長とお話させていただく機会があった。自分よりもずっと年下でまだお若く、勢いのあるブランドを展開されている。
その社長が「この業界はあまり儲からないのではないかと考えています」とおっしゃったことに驚かされた。

例えば社員としてある程度裕福になろうと考えるなら、オンワード樫山やワールド、三陽商会などといった大手総合アパレルに入社し、部長クラスまで登り詰める必要があるだろう。平社員の懐事情はあまり裕福ではない。しかし、部長クラスにまで登り詰めるには気の遠くなるような年数が必要だし、そこに到達できるのはほんの一握りである。

また経営者として裕福になろうと思うなら、起こした会社が急成長する必要があり、自分も含めて細々とした自営業者なら、他業種の平社員の方がよほど給料が高い。

まあ、これは飲食業界にも当てはまることかもしれない。

で、さらに驚かされたのが、その社長が「自分は生まれていないが、高度経済成長期やバブル期にアパレルや繊維企業が莫大な売上を稼げたのは、景気が良かったからに過ぎない。今のこの現状が適正規模なのではないか」とおっしゃったことである。
これも、10年来交流させていただいているデザイナーの平井達也さんと常々、話し合っていたこととピタリと合致する。

平井さんは独立直後に、多くの先輩方から「独立して自分のブランド作ったら、売上高10億円・20億円くらいすぐに到達するよ」と言われたらしい。しかし、現在の状況では大規模な投資を行うか、大企業の資本参加がない限り、個人資本のデザイナーズブランドとして10億円を越えることはかなり難しい。
多くの先輩方は、独立が高度経済成長期だったから、バブル期だったから10億円、20億円の規模になれたのではないだろうか。
もし、彼らが2000年前後に独立していたら今、20億円に到達できただろうか?
自分はそうは思わない。

高度経済成長期やバブル期は、まだまだ物のない時代で「作ったら売れた」時代である。言葉は悪いが何でも品物は売れた。

今の繊維業界・ファッション業界の「偉い人たち」のお言葉の多くが、まったく腹に落ちないのは、彼らがバブル期のイメージのままで語っているからではないのかと思う。むしろ今のファッション消費の方が正常な状態ではないのか。
バブル期のあの躍動感が味わいたいなら「偉い人たち」は中国かインド、ブラジルあたりに移住すべきであり、それを国内市場に求めることが無茶である。

高度成長オヤジやバブルオヤジとはそろそろ決別しなくてはならない。

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