月別: 3月 2014 (1ページ / 2ページ)

何年間同じことを言っているのか

 先日、ジーンズメイトの2014年2月期決算の下方修正が発表された。

売上高は当初の102億5000万円から、99億2400万円に、
営業損失は当初の4億円から、6億8200万円に
経常損失は当初の3億7000万円から、6億3000万円に
当期損失は当初の5億3000万円から、7億5600万円に

となった。

商売は予定通りに行かないことの方が多いから、こういうことは仕方のない側面がある。

ただ、疑問なのが会社側が発表した下方修正の理由である。
以下に引用する。

売上高につきましては、下半期に入ってから天候の影響などによる冬物商品群の立ち上がりの遅れが大きく響き、既存店前年比が93%(計画は同96%)にとどまったため、全体として9,924 百万円になる見通しとなりました。

とある。

天候の影響って一体何年間言い続けているのか。
ちなみに3月24日に発表された3月度月次売上速報でも不振の理由がこう説明されている。

気温の影響などもあり春物商品全般の立ち上がりが遅れました。

とのことである。

売れるか売れないかはすべて天候任せだということだろうか?
別にジーンズメイトだけを責めているわけではないが、自社の不振の理由を「天候」「気温」「気候」を理由にしているアパレル企業が他にも多くある。

衣料品の最大の役割は暑さ・寒さから人間の身を守るためである。
とくに肌着やパジャマ、靴下、防寒着などという実用衣料の売れ行きは気温によって大きく左右される。
一方、カジュアルウェアやファッションウェアは気温に左右される割合がそれらよりは少ない。
もちろん多少は左右される。

しかし、気候が不順だというのはもう数年前から言われている。
実際にこの数年間は夏は35度を越える猛暑だし、その割には冬の寒さは厳しい。
人間が快適に感じる温度は18度前後だといわれているが、そういう快適な気温の日数はあまりない。
春と秋は短くなっており、一年のほとんどが夏と冬という気候になっている。

1ヶ月単位で見るなら、暑くなり始める時期・寒くなり始める時期の早い遅いはあるが、年間を通じて見るならだいたい毎年似たような平均気温で推移している。

この気候変化のサイクルが昨年始まったばかりというなら話はわかる。
けれどももう何年間もこのサイクルが続いている。下手をしたらこの10年間はほぼこの気候変動である。
で、毎年「天候の影響で不振でした」というのはどういうことなのか。

じゃあ、商品の投入時期をずらすとか、より気温に応じた商品を仕入れる工夫だとか、気温に適した機能商品の開発を行うとか、そういう天候対策を何故取らないのか。
今年もおそらく似たような気候のサイクルになるだろう。それでも来年の3月にも同じように「天候の影響で云々」と説明するつもりだろうか。

オチマーケティングオフィスの生地雅之さんは常々「不振の原因を景気、天気、人気のせいにするな」と唱えておられた。本来、衣料品の売れ行きはこの3つに大きく左右される。
だが、その3つが悪くても売れる工夫をするのが本来のアパレルブランドと小売店の仕事ではないのか。

効果がはっきりしない割に価格の高い広告を出稿することよりも、気候対策の方がよほど安上がりに実行できると思うのだが。

異様に根強い

 東京から関西に出張してきた方の感想を伺うのが好きである。
昔ほどではないが、様々なものにまだ東西差が残っているからである。

とくにファッション関連の感想を伺うのが面白い。

2,3年ほど前に東京から出張してきたブランドデザイナーとその相棒のプロデューサーは「BBOY系の服装をした人間がこれほど歩いてい街は東京にはないですよ」とアメリカ村を見て仰った。
それと同時に「ディーゼルのジーンズをこれほど多数の人が穿いているのは大阪だけでしょう。東京でもディーゼル着用人口はめっきり減りましたよ」とも仰った。

先日、東京のファッションマーケティング会社の方が関西に来られた。
実家がこちらなので正しくは帰省というべきである。

「久しぶりの関西はいかがですか?」と尋ねると、「神戸と梅田、天王寺を見ましたがイタカジ系の男性が多いですね」との返答。
ここでもやはり「ディーゼルのジーンズ着用者が異様に多いですね」との答えがあった。

そう、この2,3年で大阪都心でもBBOY系スタイルはめっきりと減った。
それでもまだたまに見かけるのが関西のすごいところである。
メンズで一番多いのは、お兄系の髪型をして、イタリアンカジュアル(イタカジ)系の服装をした人々である。
おそらく、かつて「ヤンキー」と呼ばれていた人たちもこの集団に属している。
安物のホスト連中の休日着も同じである。

で、彼らの御用達のジーンズブランドは「ディーゼル」である。

関西における「ディーゼル」人気は異様に根強い。

イタカジ人気が根強いからディーゼルが根強いのか、ディーゼルが根強いからイタカジ男が溢れているのか、その辺りの順序は分からない。

ディーゼルのジーンズとアルマーニエクスチェンジのペラペラのTシャツを合わせていたら完璧なスタイルである。

彼らの愛読雑誌は「Safari」だろう。
「Leon」はもう少しライフスタイルに寄っているし、そこで扱われている食品、ホテル、住居、飲食店は高額である。イタカジ系実業家なら手が出るかもしれないが、ヤンキーには所得的に無理である。
一方、「Safari」はファッション関連商品に終始しており、ライフスタイル提案まで手を伸ばしていない。所得があまり高くない人でも取り入れやすいのは「Safari」の方だろう。

部数は「Leon」の8万部内外に対して、「Safari」は後発ながら16万部内外と倍近い大差をつけている。
ひょっとするとその「Safari」の部数を支えているのは関西人ではないかと少しだけ勘繰っている。

さて、ジャヴァグループに「ストララッジョ」というメンズブランドがある。
レディース中心のジャヴァにあって珍しいメンズラインで、イタカジ系の典型であり、「Safari」にピタリとテイストが合う。

で、このブランドのショップリストを見てみると、
全国10店舗中、東日本にあるのは仙台店だけである。
そのほかは北陸の金沢に1店舗、中京の名古屋に1店舗である。
福岡の天神店を含めると残りはすべて関西を中心とした西日本にある。

これは結果論かもしれないが、消費者の嗜好に合致しているのではないかと思えてくる。

さて、関西圏はいつまでイタカジ王国、ディーゼル王国でいられるのだろう?筆者は別にイタカジを真似ようとは思わないが、全国の均一化が叫ばれる中、好き嫌いは別にして関西人が独自性を維持しているのは、それなりに興味深い現象である。

何故変化してはいけないの?

 3月12日から17日まで阪急百貨店10階で「テキスタイル・マルシェ」という生地の切り売り販売会を行った。
主催チームに属する筆者も6日間、ほとんど店頭で接客販売した。

その中の1日、着物をカジュアルミックスに着こなした女性が来場されたことがあった。

フリルのブラウスの上から着物を着用し、首元はレースのスカーフを巻いておられた。
足元はショートブーツで、帯は縦結びにしてある。

ざっとそんな感じである。

筆者は良いコーディネイトだと思った。
同じく、マルシェに出展していた丹後の宮眞さんの大内さんも良いコーディネイトだと感じておられた。
しかし、丹後は和装生地の産地であるだけに大内さんもそれなりに和装の知識がある。
その大内さんが「ぼくはあのコーディネイトは良いと思うけど、コアな和装愛好者は怒ると思う」と感想を述べられた。

同じころ、少し離れた売り場で、和モチーフのミセス洋装ブランドも期間限定販売を行っており、そこの女性社長は
「呉服屋に生まれた身としては、カジュアルミックスなコーディネイトには抵抗がある」と感想を述べられた。

お二方の感想を耳にして「和装業界の病巣は根深い」と感じた次第だ。

和装業界は衰退の一途をたどっている。
この辺りは、矢野経済研究所のデータをもとにする。
2013年の業界市場規模は3010億円と発表されている。

http://www.yano.co.jp/press/press.php/001200

リンクから記事を読んでいただければ分かるが、前年比1・7%増で回復基調とある。
しかし、これは回復基調ではなく、市場は縮小限界点にほぼ達しており、1~2%の増減なんていうのはほぼ誤差の範囲内であると考えた方がつじつまが合う。
今後爆発的市場が4000億円や5000億円にまで回復する見込みはないだろう。それだけの要素がない。

業界市場規模が3000億円しかないというのは、かなり小さい市場規模であるといえる。
例えばアパレル業界でいうなら、ワールド1社で3000億円以上の売上高がある。
着物業界はその商品単価の高さにもかかわらず、ワールド1社の売上高よりも売上規模が小さい。

業界規模を拡大するためには、単純に2つの方法がある。

1つは顧客の買い上げ単価を上げる。
もう1つは着物の需要を増やす。すなわち利用者人口を増やす。

である。

すでに衣料品の中では無類の高額品である着物を、現在以上に商品単価を値上げするのはほぼ無理だろう。
だから有効な手段としては着物の利用者人口を増やすこととなる。

その結論を踏まえた上で、近年着物業界では「利用者人口を増やそう」という取り組みが若手(どの年代までを若手と呼ぶかは異論があるが)を中心に積極的に行われている。

例えば「着物を着る日」を設定したり、「着物を着て集まる場」を作ったり、とそういうことである。

で、そのための手段の一つとして着物のカジュアルダウン化、着物のカジュアルミックス化がある。

あの堅苦しい着付けをせねばならないから着物を敬遠する消費者が多いわけで、例えば先ほどの女性のような着こなしや大正期や昭和初期のような着こなしが広く認められれば、着物利用者は増える可能性が高い。

また着物の下にタイツやレギンスなどを穿いても良いと思う。

着物が敬遠される理由の一つとして現在の生活様式に合わないという点もある。
例えば袴を着用しないと自転車に乗れない。
袴を着用したところで幅広いので、チェーンに裾が絡まってしまうだろうけども。

となると、着物の下にタイツやレギンスなどを着用すれば良い。

そんな工夫でコーディネイトを楽しむことができれば利用者数は幾分かは増えるのではないか。

それでもコアな着物愛好者が先ほどのような意見を持っているなら、そういう取り組みは広がりにくい。
大御所とか権威とか言われる人々が否定的に見るなら、初心者は委縮してしまうだろう。

洋服は時代に応じて形状やデザインは変化している。
トレンドとは関係なく機能的に変化を遂げている部分もある。

なら何故着物だけは変化してはいけないのか?

もちろん、正統な伝統は保存する必要があるが、日常着のレベルでは時代に応じて変化する必要があるのではないか。
デイリーユースな部分までの変化を拒むのであれば、着物という衣料品は早晩、博物館や美術館に陳列されるだけのものとなるだろう。果たしてそれが「伝統を保存した」ということになるのかどうか。

着物業界の市場規模が縮小しきったのは、変化を拒み続けたからではないのかというのが筆者の感想である。

価値が正しく伝わっていない

 先週の日経ビジネスオンラインで伊藤忠によるエドウインの経営支援問題について書いた。

伊藤忠の支援で、国産最後の砦「エドウイン」は甦る
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140317/261293/?n_cid=nbpnbo_leaf_bn

思うところはあらかたそこに書いたので付け加えることはあまりない。

総額500億円強といわれる投資損失に対して、銀行団が200億円債権放棄し、伊藤忠商事が300億円投資することで決着が付いた。

もともとエドウインは商品が売れなくて経営危機に陥ったのではない。
損失が明るみに出た後もメンズの「エドウイン」、レディースの「サムシング」、子会社リー・ジャパンの「リー」は好調を維持している。
損失さえ切り離せば再建は容易である。

この3ブランドを欲しいという企業はいくらでもあっただろう。

2012年8月下旬に損失がスクープされて以降、筆者にもエドウインについて週刊誌から何度か取材があった。
そのたびにライターや記者と話をしたが、上のようなエドウインの実態は驚くほど伝わっていなかった。

ほとんどのライターや記者は「エドウインは売れ行き不振」と思い込んでいたし、「エドウインよりリーバイスの方が大手」だと思っていた。

こういう状況を見るにつけても「エドウインはもったいないな~。実力が世間にあまり伝わっていない」と感じずにはいられなかった。

記事でも書いたが、原因の一端はエドウイン側にある。
これまでほとんど適切な情報開示をしてこなかったからである。
非上場の会社なのでその義務はないが、決算発表も行われたことがない。
もちろん、他にも決算未公開の企業は多数ある。
しかし、最近の風潮からすると売上高と営業利益程度は発表するケースが増えたと感じる。

たしかに決算を発表すれば、減収になれば「今期減収減益」と報じられる。
経営者の性格にもよるだろうが、これが我慢できないという人も相当数いるにちがいない。
これはエドウインだけに限らず、上場を果たしているリーバイ・ストラウス・ジャパンを除く、ジーンズ専業メーカー、ジーンズ専業ブランドに共通した風土である。

「外野からごちゃごちゃ言われたくない」という心情は理解できる。

それでも筆者はジーンズ専業メーカー各社はある程度の情報開示はすべきだったと考えている。

エドウインに話を戻すと、開示してこなかったからこそ、「売れ行きが堅調であること」「国内最大手の専業メーカーであること」は正しく世間に伝わっていなかった。

そして、エドウインの最大の付加価値である東北地方に13もの自家工場があることも伝わっていない。

この自家工場があるからこそ、エドウインは8000円台で純日本製のジーンズを生産することができる。
デザインの好き嫌いは別としてエドウインのジーンズは間違いなくコストパフォーマンスが高い。
このことは繊維・ファッション業界の人間にも伝わっていない。何とももったいない話ではないか。

繊維・ファッション業界の人間からこういう意見を言われることがある。

「ジーンズに関しての不満は、ユニクロ以外のブランドを買おうとすると1万円を軽く越えること。3990円の次が1万円越えというのはちょっと不便」

というものである。
彼らに対して、8000円台の純日本製ジーンズがあるという情報がまったく伝わっていない。

大手専業ジーンズメーカー各社の広報戦略はこれまで「いかに人気タレントと契約するか」に終始していた。
しかし、それが消費者に対して効果を発揮したのはせいぜい2000年代前半までである。
2000年代半ば以降は生産背景を伝える方が効果がある。

現在、アパレルブランドは数だけは掃いて捨てるほどある。
実際に半分くらいは掃いて捨てた方がすっきりするのではないかと思うほどに数だけは多い。

その中で、国内自家工場を持っているアパレルブランドが一体いくつあるのか。
自家工場を所有するアパレルブランドはかなりの少数派である。
その中でも国内に工場を構えるのはさらに少数派である。
その希少価値を伝えずに、他のファブレスアパレルと同じ土俵でイメージ競争をしたところで、何の効果もない。
エドウインも含めて専業ジーンズメーカーはそこを伝えるべきだったが、時すでに遅しである。
専業メーカーの中には国内自家工場を手放したところもあるし、ひどく縮小してしまったところもある。

しかし、エドウインを始め、ブルーウェイ、ドミンゴ、ジョンブル、ベティスミスはまだ一定の規模で国内自家工場を維持している。
今からはそこをアピールすべきである。

極言するならMこみちやBラッド・ピットなんてタレントとの契約はまったく必要ない。

新生エドウインには自社の価値がどこにあるのかを見極め、その価値を正しく伝えることに期待したい。

セールはさらに早期化する?

 週に何度もセールの案内が携帯メールに来る。
世間は年がら年中セールをやっているようだ。

筆者はあまりそういう会員には登録しないが、それでも昨日だけで3社から案内のメールが送られてきた。
バナナ・リパブリック、グローバルワーク、ジーンズメイトである。
バナナ・リパブリックは春物最大50%オフ、グローバルワークとジーンズメイトは全品20%オフの案内である。

他方で「セール後倒し論」が根強く業界で支持されているが、これだけ次から次へとセールの案内が来るご時世において、一部の百貨店とファッションビルが「セールを期間を後倒しします」と言ったところで多くの消費者に支持されるとはちょっと思えない。

3月20日~24日までGAPで全品50%オフセールが開催された。
セール品も含めて店頭の価格がレジにてさらに半額になる。
その上、携帯電話の会員証の提示で5%されるからすさまじい値引きである。

レディース商品はあまり見ないので、メンズ商品を例示してみたい。
ベーシックなジップアップの裏毛スエットパーカがある。
これの定価は7900円だ。
しかし、店頭ではすでに1290円にまで下げられている。

ここからさらに半額となり、さらに会員証の提示で5%オフである。

ざっと580円にまで下がる。

7900円のスエットパーカが1290円にまで値下がりしていること自体に驚かされるが、最終価格が580円にまで下がるというのも驚異的である。

IMG_1151

(580円にまで値下がりしていたパーカ)

こんな調子で本当に「セール後倒し」が可能なのだろうか?
筆者にはかなり疑問である。

それ以上に、各社とも在庫が残っているのではないかと感じられる。
というのも、3月20日の時点で早くもセールを打たざるを得ないということはあまり春物衣料の消化が良くないということだろう。

報道などでは消費増税前の駆け込み需要などもあり、高額品が売れているとも耳にするが、衣料品というよりもバッグや靴などの雑貨が動いているだけではないのだろうか。

商業施設内を見まわすとあちらこちらでセールが開催されている。
多くの消費者にとって、衣料品とは「年がら年中安い物」と認識されているに違いない。
衣料品デフレは一向に止まっていないように見える。

このままでは今夏のセールは6月中旬どころか、ゴールデンウィーク明けの5月下旬から始まるのではないかと指摘する識者もいる。

消費税導入による景気悪化をそれほど悲観してはいないが、こと衣料品に関しては悲観的にならざるを得ない。

演じたり、大げさに伝えたり

 筆者は最近、「物語商法」にいささかうんざりしている。
「物のスペック」のみでは売れない時代だから、その「物」の背景にある物語を伝えなくてはならない。
これはその通りであり、この手法でなくては物は売れないだろう。
この手法を取らなくても売れる方法があるとすると、超破格値で提供することである。

物やサービスについて取材すると、年間に何回かは「これはすごい。どうして今ままで知られていなかったんだ」と純粋に驚かされることがある。
こういう対象物だと「物語」を他者に伝えることになんら苦痛は感じない。
ただし、こういう事例は年に何回かしか出くわさない。

しかし、多くの事例はこんな感じである。
「この会社の取り組み姿勢は良いと思うけど、商品の見た目や性能がイマイチだよな」とか「この商品はまあまあだけど、会社の姿勢はちょっとアレだよな」という感じである。

こういう場合は「物語」を伝えることに一抹の苦痛がある。
「全面的に賛成ではないけど、内容の8割くらいは賛成しているから仕方が無い」
まあ、そんな感じで伝えている。

「佐村河内氏・小保方さん問題」があぶり出した 
ストーリー消費社会の現実
http://diamond.jp/articles/-/50521

この記事の中に次のような一節がある。

<僕らはみんな、いつも何かを売り込んでいる。(中略)自分が売り込む商品に100%の自信があればいいが、たいていは演じたり、大げさに伝えたり、真実を隠さなければならなかったりする。売り込み、説得し、奉仕する能力は、自分のアイデンティティーと切っても切り離せないものなのだ>

後半の「売り込み、説得し、奉仕する能力は、自分のアイデンティティーと切っても切り離せないものなのだ」という一節は筆者が長年感じてきた苦痛の原因である。
まあ、多くの方もここに苦痛を感じておられるのではないかと勝手に推測する。

賛同するのはその前段である。

「僕らはみんな、いつも何かを売り込んでいる。(中略)自分が売り込む商品に100%の自信があればいいが、たいていは演じたり、大げさに伝えたり、真実を隠さなければならなかったりする」

普段携わっている繊維業界においてもこういう事例は多い。
というか、こういう事例がほとんどではないだろうか。
筆者は記事を書くことで他人が演じることに協力することがある。
それでも「ちょっとアレ」だと感じている商品やサービスについて過剰に持ち上げることにはかなり抵抗がある。

それが仕事なんだからつべこべ言わずにやれよ

とお叱りを受けそうだが、気持ちが乗らないものは仕方がない。
嫌なものは嫌だ。

 先日、東京の某マーケティング会社の方と雑談させていただいた。
最近は各メディアでも国内繊維製造加工業の話題が増えたように感じていたが、認知はまだまだ高まっていないということを改めて感じさせられた。

お断りしておくが、マーケティング会社の方が無知なわけでは決してない。
繊維製造加工業者の発信がまだまだ足りないということである。

雑談の中で、ジーンズの洗い加工におけるレーザー加工というのが話題になった。
話題になったというより筆者が話題に上らせたという方が正しい。
ジーンズにヒゲやアタリ感をつける洗い加工の技法にはいくつもあるのだが、通常のブリーチ加工や手で擦る以外にレーザー加工という技法がある。

フォトショップで画像データとして取り込んだ図柄を、レーザー光線を照射してジーンズ上に再現するという技法だ。

加工中の製品2

(レーザー光線照射中のジーンズ。レーザーで焼くので煙が出ている。ただしレーザー光線そのものは見えない)

ヒゲやアタリ感を画像データとして取り込んでそれをレーザー光線でジーンズの表面を焼いて忠実に再現する。
実際に児島で作業風景を見せてもらったこともある。

実はこの技法は、ヒゲやアタリ感という中古加工に用いるよりも細密画のような細かな図柄や複雑な幾何学柄を施す方が効力を発揮する。

レーザー加工サンプル2

(新聞の一面を画像データとして取り込み、デニム生地の表面にレーザー光線で再現したサンプル。こういう細かい図柄にこそレーザー加工は最大限に効果を発揮する)

さて、先のマーケティング会社の方はレーザー加工という技法があることも、レーザー加工機の存在もご存知なかった。これまで業界紙の記事にも何度か登場したにもかかわらずである。

「知られていないものは存在しないのと同じ」というのがマーケティングの原則なので、多くの人々にとってはレーザー加工は存在しないのも同じということなのだろう

そのマーケティング会社の方は「いやー、そんな技法があるのは知らなかったなあ。そういう背景をもっと語ったり、店頭で画像として見せたら訴求力があるのに」と仰った。
これも「物語商法」であり、それを訴求するのは正しい商法であると感じる。
国内の繊維製造加工業はまだまだ自らの価値を正しく発信していない。だから、まだまだ「物語」は眠っており、発掘される必要がある。

頭ではわかっているが、あまり気持ちは奮い立たない。
もっと能力がある方にお任せする方が良いだろう。
筆者は大した仕事もしていないくせに疲れているようだ。

物語商法には食傷気味

 一時期ほどではないにせよ、洋服の価格は下がり続けている。
正確には下がり続けているというよりも最近では低位安定という感じである。
下落しきるところまでしきったので、これ以上は下がりようがない。

それはさておき、高額な洋服が売れない理由の一つとして、低価格品と見分けがつかないからということがある。

先日の「めざましテレビ」を見ていて改めてそう感じた。
「きょうのわんこ」のコーナーだけを楽しみにこの番組を見ているが、「きょうのわんこ」のコーナー以外はさして面白いとは思わない。「きょうのわんこ」が無ければとっくに視聴を止めている。

まあ、それでもときどき面白い実験がある。

今回の実験は、超高額品を1点着せて、その他は低価格品でコーディネイトして、どれが超高額品か見分けられるかという内容である。

その超高額品がジャケットの場合もあるし、靴の場合もある。

これを見分けられたのは平均すると半数前後という結果だった。
ジャケットの場合は約半数、靴の場合は1人が分かったくらいだ。
この実験結果がヤラセではないと仮定すると、すごく高いブランド品を着ていても他人にはあまり分からないということである。逆にすごく安いブランドを着ていてもわからないということである。

メンズのジャケットや革靴なのでデザインはベーシックだし、分かりやすいロゴや色柄もない。
分かりやすいロゴや色柄が付けられていないアイテムなら価格の高低は他人からはわかりにくい。

人は同じ物なら価格の安い方で買う。
似たような物も価格の安い方で買う人が多い。

これが通常の消費行動であるから、似たような物が溢れている衣料品は価格の安い方で買う人が多いということになってしまう。

実際に着用してみると違うのだろうけど、高い物と安い物の外見の差がほぼなくなっている。
90年代半ばまでは、スーパーマーケットの平場に売っている安い洋服と、DCブランド崩れのブランド店に売っている洋服は価格も月とすっぽんほど離れていたが、見た目も大きく違っていた。

DCブランド崩れのショップに並んでいるような洋服の代替品をスーパーマーケットで探し出すことは不可能だった。

今では低価格SPAショップに行けば、それらしい代替品を探すことができる。スーパーマーケットの平場の洋服だって見た目は小洒落ている物が増えた。

だからこそ、「物」を売るのではなく「コト」「物語」「背景」「感動」を売れ。

ということになるのだろうけど、今度は「物語」の演出過多な売り方が増えており、何だかどれも胡散臭く見えてしまう。

偽ベートーベン騒ぎも、ナンタラ細胞のねつ造疑惑も「物語」の演出過多な商法だったと感じられる。

偽ベートーベン氏がもし、耳が聞こえないという属性を持たず、記者会見に登場したような短髪の西田敏行風の風貌だったら彼の曲(とされているもの)があれほど売れただろうか。

ナンタラ細胞の論文を発表した人が、研究者らしさ満載の男性だったらここまでマスコミが注目しただろうか。

3月15日の中日新聞の記事にこんな一節がある。
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20140315070914336

意表を突くアイデア、人工多能性幹細胞(iPS細胞)をしのぐ実用性…。世界を驚かせた論文は、若い小保方氏をみこしにかついだ腕自慢の面々による共同作業だった。

笹井氏は小保方氏を大舞台に押し上げようと奮闘。会見に備え、理研広報チームと笹井氏、小保方氏が1カ月前からピンクや黄色の実験室を準備し、かっぽう着のアイデアも思いついた。

この記事が事実なら、あきらかに過剰演出である。
ちなみに祖母が使っていたとされる割烹着だが、現在店頭で販売されている新作製品だという指摘もある。

個人的には「物語」商法の行き過ぎを感じる。
そして、こうした「物語商法」「感動商法」にはちょっとウンザリしている。

けれども「物のスペック」のみでは売れない環境下において、「物語商法」や「感動商法」の方が売り上げを稼ぎやすいのは事実だ。
洋服だって同じである。

何か別の商法はないものだろうか。
ビジネスの才能の乏しい筆者としては、だれか優れた人が新しい商法を編み出してくれることに期待するほかない。

オープンは華々しいけど

 先日、1年半ぶりに一つのブログが再開された。

「ニットキッチン」元社長の奮闘記
http://ameblo.jp/knitkitchen/

これである。

非常にマイルドな書き口で、アパレル業界を鋭く斬るので以前から愛読していた。
1年半もの間、どのようなネタが蓄積されたのか今から楽しみにしている。

さて、このブログがどうして1年半も放置されたのかというと、その事情が最新のエントリーで明らかにされている。

エントリー中から抜粋してまとめると次のようになる。

2009年11月に(株)JOY ZIPPERとして二度目の起業を果たす。

で、業務内容はというと

当時、ファッションに特化したカタログ通販の中で最も売れていたカタログの一つ「マ○イVoi」に「Clumsy」というブランドを作り、本格的に取り組んでいました。

とある。

カタログ名はマルイVOIである。
当時のマルイVOIはなかなか捨てたものではなく、発行部数が80万部くらいあるから、宝島社のファッション雑誌くらいしかこの発行部数を上回っていない。
WEBとカタログを合わせた売上高は200億円くらいあり、ファッションに特化したという意味ではZOZOに次いで二位だったともある。

その割にはあまりメディアで取り上げられなかった。

そうこうしているうちに

10年来のお付き合いのあった

(株)WAVE InternationalのS伯社長から

「資本提携(業務提携)」のお話をいただいたのは

ちょうどこの頃ですね(b^-゜)

「第三者割当増資」という形で

株式の一部を持ってもらうことで

2010年3月、

(株)JOY ZIPPERは、

(株)WAVE Internationalの

グループ会社になります。(b^-゜)

とのことである。

そして、ウエイブインターナショナルの新SPAブランド「ラウレアサニーサイドストア」の立ち上げに従事することとなったため、多忙によりブログは放置されることになる。
ちなみにウエイブインターナショナルはTSIホールディングスの子会社である。

この「ラウレアサニーサイドストア」は2013年2月下旬に第1号店が梅田の「エスト」にオープンする。
ところが、わずか11か月後の今年1月末にこのブランドが廃止になる。

1年間持たなかったわけだが、その理由は売り上げ不振とか収益の低調さとかよりも、TSIホールディングスのリストラの一環である。何しろ、TSIホールディングスは今年1月下旬に「432店舗の大量閉鎖」を打ち出している。

先のブログではこの店舗閉鎖の裏側も語られるだろうから、楽しみである。

それにしてもこの業界で取材を続けていると「新ブランド開始」「新ショップオープン」という事象は、あまり真面目に報道すべきものではないと感じる。
ラウレアサニーサイドストアではないが、たった1年やそこらで廃止になるブランド、閉鎖になる店舗が多すぎる。
オープン報道は華々しかったがしばらくメディアには露出せず、気が付いたらブランド自体なくなっていた。そんなことの繰り返しである。

メディアはブランド、ショップ、イベントすべての事象において「新規オープン」「新規立ち上げ」に報道価値を見出しており、「2回目」とか「3店舗目」とかは小さく扱われるか、まったく扱われないかである。

けれどもこの業界において中期的に続くブランドやショップの方が少数派である。
オープン報道が華々しければ華々しいほど、廃止はひっそりと伝えられる。
もっとも大手になれば廃止・撤退・縮小報道も華々しい。

まあ、何はともあれ、ブログ主には、ラウレアサニーサイドストア閉鎖にいたるまでの事態をところどころ伏字を使いつつ、あますところなく伝えてもらいたいと思う。

きれいな広告と売れる広告は別物

 久しぶりの連載再開で楽しみに読んだ。

イメージ広告では効果測定が無理?それは広告業界の思惑だ!
“費用対効果”を見ないで投資される広告費は無駄遣い!
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140311/260940/?n_cid=nbpnbo_rank_y

この記事である。
いささか長文だが広告に関して興味のある方は必読である。

筆者にも広告代理店に勤務する知り合いが何人か存在する。
横道にそれるが、広告代理店の業務にはいわゆる「広告」に関すること以外に、ノベルティグッズの手配とかイベントの主催なんていうのもある。
企業によってそれぞれ得意分野が違うから、広告代理店であっても「広告」をほとんど扱わずにイベントの主催ばかりやっているなんていうところもある。
また、ノベルティグッズの手配ばかりやっている広告代理店もある。

閑話休題

で、幾人か存在する代理店の営業マンはほぼ全員が「広告の枠」を提示するのみの能力しかない。

どういうことかというと、「人気ファッション雑誌○○の3月号で1P広告がキャンセルになったので、格安料金で出稿しませんか?」というような「枠」の提示である。
正確にいうと「枠」と「金額」の提示である。
「3月号の雑誌○○なら1Pあたり50万円で掲載できますよ」という提示のみに終始している。
広告の出稿効果をきちんと説明してシミュレーションできる営業マンなんてお目にかかったことがない。

彼らの多くがどうやって契約を得るかというと、相手企業の社長や広報担当者との「付き合い」である。

筆者は以前、1年間だけ今は亡きTシャツメーカーの広報を務めたことがある。
ピーク時の売上高が8億円程度しかなかった弱小メーカーだったが、何の気まぐれか、テレビCMを2週間放送したことがある。
早朝、深夜枠でテレビ東京系列のみの放送で、製作費を含めて総額3500万円ほど費やしたと記憶している。

で、テレビCMの効果というのは体感としてほぼゼロだった。

上の記事で示されているような出稿効果の測定は行わなかった。
上の記事でどんな測定がされているかをご紹介する。

広告キャンペーンのTVCMのGRPや新聞の投下段数などを日別にグラフ化。商品の出荷台数も日別にグラフ化する

本当に効果ある広告キャンペーンであれば、広告投下量に比例し、必ず商品の出荷台数も上がる

とある。

筆者の体感ではTVCMが流れている期間も取り立ててTシャツ類の出荷枚数は増えていなかった。
はっきりいうと効果がなかった。

ここまで読まれた方の中には「うちのブランドのCMはそんなことないよ。クリエイティブな作りだし、人気タレントの××を起用しているから」と反論される方もおられるだろうが、一度、自社でも検証してみられれば良い。
おそらく多くのブランドの広告は売れ行きに関してあまり効果がないはずである。

アパレルの広告というのは非常に難しい。
商品はシーズンごとに変わるし、ブランド名を連呼したところでそれがすぐに消費者に浸透するわけではない。

リーバイス501のような定番品ならやりやすいが、その手の商品以外は非常に広告として打ち出しにくい。
カッコイイ、カワイイモデルちゃんに洋服を着せて、スナップ写真のような広告を雑誌に出稿する場合もあるが、あれを見て「あ、このブランドのこのジャケットが欲しい」なんて思う消費者はあまりいないだろう。
「きれいなイメージ写真やな~」程度にしか多くの消費者は見ていないと感じる。少なくとも筆者はそうである。

はっきり言うと、「きれいなイメージ広告」なんてあまり商品の売れ行きに効果がない。
見栄えは悪いけれども手書きのチラシのような広告の方が効果があることが多い。

それはこの記事の中でも触れられている。

「話題になった広告」と「売れた広告」は全く別物

ということである。

そしてこの記事では、「効果のないクリエイティブな広告」が蔓延する理由を広告賞にあるとしている。
まあ、これはどこの業界でも同じで、○○賞を受賞した商品やブランドが必ずしも売れるとは限らない。

個人的な体感だが、アパレル業界で効果があったTVCMは98年ごろのユニクロのフリースのCMと、2010年のクロスカンパニーのCMくらいではないだろうか。

逆に効果のなかった広告活動ならアパレル業界には掃いて捨てるほどある。
もしかしたら、アパレル業界は広告代理店のカモネギなのかもしれないと思うほどである。

某ジーンズメーカーが、超大手の某広告代理店を10数年間使い続けたことがある。
毎年1億円くらいはその代理店に出稿していた。後半業容が厳しくなって年間5000万円前後に縮小したとも聞いているが、支出総額は10億円を超えているだろう。

で、その結果どうなったかというと、このメーカーは売上高がピーク時の7分の1にまで縮小し、経営再建が課題となってしまった。まさしくドブに金を捨てたようなものである。

「金額と枠」しか提示できない広告営業マン、「きれいな広告」「クリエイティブな広告」を作りたがる広告代理店の甘言には気を付けた方が賢明である。

すべての国内生地工場の技術力が高いわけではない

 普段、筆者は日本の繊維製造業を応援する心情でいる。(そうは見えないかもしれないが)

昨今のメイドインジャパンブームの盛り上がりにも功罪あるが、それでも功の部分が大きいとも考えている。
しかし、当たり前のことだが、日本の繊維製造業社すべてが高品質な物を作っているかというとそうではない。
日本の繊維製造業社すべてに高い技術があるかというとそうでもない。

先日、某生地工場の話を伺った。
その生地工場によると、先代社長が亡くなり、代替わりをしたとたんにこれまでの協力工場が仕事を受けてくれなくなったという。
なぜ機屋が機屋に仕事を出すのかというと、当時、その工場にはシャトル織機がなかった。協力工場にはシャトル織機がふんだんにあった。シャトル織機でしか織れないオーダーが入ったので、協力工場に仕事を依頼したというわけである。

協力工場の対応に業を煮やしたその生地工場は、自社にシャトル織機を大量に仕入れ、自社での製造を開始した。何ともすさまじい決断である。
その結果、わずか10日ほどで自社でシャトル織機を使いこなすことに成功したという。

生地工場の社長は「古いシャトル織機職人は自分たちの技術を鼻にかけていたが、実はその技術は大したものではなかったことがわかった。10日ほどでマスターできる程度の技術だったというのが実情でした」と語る。

この生地工場と協力工場の関係性が悪かったのは言うまでもない。
どちらに原因があったのかは筆者の立場ではわからない。
おそらく両方に相応の原因があったのだろう。

通常、報道では「シャトル織機で織りあげた生地が云々」なんて言葉が散乱している。
さも希少価値があるといわんばかりの決まり文句である。

しかし、シャトル織機を使っているから必ずしも希少価値のある生地とはいえない。
またシャトル織機を動かしている職人が必ずしも高い技術力を有しているわけではない。

織機の違いはあれど、同じ機屋という素養があったとはいえ、今までシャトル織機を動かしたこともない生地工場が10日程度でマスターできる技術力しか持っていない工場もあるということである。

生地工場からすると「協力工場の職人はこれまで本当に技術を磨いていたのか?」という疑問を抱いても当然である。

メイドインジャパン、日本製に注目が集まるのは喜ばしいことではあるが、日本製がすべて素晴らしい物とは限らないということは冷静に認識しておく必要がある。

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