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南充浩 オフィシャルブログ

価値が正しく伝わっていない

2014年3月26日 未分類 0

 先週の日経ビジネスオンラインで伊藤忠によるエドウインの経営支援問題について書いた。

伊藤忠の支援で、国産最後の砦「エドウイン」は甦る
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140317/261293/?n_cid=nbpnbo_leaf_bn

思うところはあらかたそこに書いたので付け加えることはあまりない。

総額500億円強といわれる投資損失に対して、銀行団が200億円債権放棄し、伊藤忠商事が300億円投資することで決着が付いた。

もともとエドウインは商品が売れなくて経営危機に陥ったのではない。
損失が明るみに出た後もメンズの「エドウイン」、レディースの「サムシング」、子会社リー・ジャパンの「リー」は好調を維持している。
損失さえ切り離せば再建は容易である。

この3ブランドを欲しいという企業はいくらでもあっただろう。

2012年8月下旬に損失がスクープされて以降、筆者にもエドウインについて週刊誌から何度か取材があった。
そのたびにライターや記者と話をしたが、上のようなエドウインの実態は驚くほど伝わっていなかった。

ほとんどのライターや記者は「エドウインは売れ行き不振」と思い込んでいたし、「エドウインよりリーバイスの方が大手」だと思っていた。

こういう状況を見るにつけても「エドウインはもったいないな~。実力が世間にあまり伝わっていない」と感じずにはいられなかった。

記事でも書いたが、原因の一端はエドウイン側にある。
これまでほとんど適切な情報開示をしてこなかったからである。
非上場の会社なのでその義務はないが、決算発表も行われたことがない。
もちろん、他にも決算未公開の企業は多数ある。
しかし、最近の風潮からすると売上高と営業利益程度は発表するケースが増えたと感じる。

たしかに決算を発表すれば、減収になれば「今期減収減益」と報じられる。
経営者の性格にもよるだろうが、これが我慢できないという人も相当数いるにちがいない。
これはエドウインだけに限らず、上場を果たしているリーバイ・ストラウス・ジャパンを除く、ジーンズ専業メーカー、ジーンズ専業ブランドに共通した風土である。

「外野からごちゃごちゃ言われたくない」という心情は理解できる。

それでも筆者はジーンズ専業メーカー各社はある程度の情報開示はすべきだったと考えている。

エドウインに話を戻すと、開示してこなかったからこそ、「売れ行きが堅調であること」「国内最大手の専業メーカーであること」は正しく世間に伝わっていなかった。

そして、エドウインの最大の付加価値である東北地方に13もの自家工場があることも伝わっていない。

この自家工場があるからこそ、エドウインは8000円台で純日本製のジーンズを生産することができる。
デザインの好き嫌いは別としてエドウインのジーンズは間違いなくコストパフォーマンスが高い。
このことは繊維・ファッション業界の人間にも伝わっていない。何とももったいない話ではないか。

繊維・ファッション業界の人間からこういう意見を言われることがある。

「ジーンズに関しての不満は、ユニクロ以外のブランドを買おうとすると1万円を軽く越えること。3990円の次が1万円越えというのはちょっと不便」

というものである。
彼らに対して、8000円台の純日本製ジーンズがあるという情報がまったく伝わっていない。

大手専業ジーンズメーカー各社の広報戦略はこれまで「いかに人気タレントと契約するか」に終始していた。
しかし、それが消費者に対して効果を発揮したのはせいぜい2000年代前半までである。
2000年代半ば以降は生産背景を伝える方が効果がある。

現在、アパレルブランドは数だけは掃いて捨てるほどある。
実際に半分くらいは掃いて捨てた方がすっきりするのではないかと思うほどに数だけは多い。

その中で、国内自家工場を持っているアパレルブランドが一体いくつあるのか。
自家工場を所有するアパレルブランドはかなりの少数派である。
その中でも国内に工場を構えるのはさらに少数派である。
その希少価値を伝えずに、他のファブレスアパレルと同じ土俵でイメージ競争をしたところで、何の効果もない。
エドウインも含めて専業ジーンズメーカーはそこを伝えるべきだったが、時すでに遅しである。
専業メーカーの中には国内自家工場を手放したところもあるし、ひどく縮小してしまったところもある。

しかし、エドウインを始め、ブルーウェイ、ドミンゴ、ジョンブル、ベティスミスはまだ一定の規模で国内自家工場を維持している。
今からはそこをアピールすべきである。

極言するならMこみちやBラッド・ピットなんてタレントとの契約はまったく必要ない。

新生エドウインには自社の価値がどこにあるのかを見極め、その価値を正しく伝えることに期待したい。

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