月別: 8月 2013 (1ページ / 2ページ)

最後のチャンス

 先日、リアルファーの小物雑貨や衣料を扱っている小さなブランドの展示会にお邪魔した。
近年、ファー小物や襟や袖口にファーをあしらった衣料への新規参入が相次ぎ、国内の商況は苦戦をしておられる。

そんな中、今年は香港で開催される合同展示会にも出展されたという。
ところが、香港には欧米からのバイヤーが多数来たそうだが、2~3年前からの動物愛護運動の高まりからリアルファーを敬遠するバイヤーも増えたそうだ。

そこで、リアルファーを完全に止めることはないものの、フェイクファーの取り扱いも始めることを決めた。

このブランドだけではなく国内外のブランドでフェイクファーの取り扱いは増えている。
国内で唯一フェイクファーを製造する産地である高野口産地に今、拡販の好機が訪れている。そしてこれが最後のチャンスかもしれない。個人的にはこれが最後のチャンスで、これを逃すと産地の消滅が待っていると思っている。

さて、それでも産地内の各企業の取り組みは今一つ勘所を掴んでいないように感じる。

そもそも高野口産地のフェイクファーは産地企業が思っているほど業界には知られていない。
もしかしたら昔は知られていたのかもしれないが、現在の業界の人々には知られていない。それが若い世代の人だけならまだしもけっこうな年配層(50歳前後)にまで知られていない。

先日も別のブランドとフェイクファーについて話していたのだが、フェイクファー=合繊の安物というイメージを持たれているようだった。
リアルファーとフェイクファーの一番の違いは手触りにある。

リアルファーは動物の毛である。動物の毛は根元が太く先に行くほど細くなっており、これが手触りの良さにつながっている。
反対にフェイクファーは合繊なので根基から毛先まで太さが均一であり、手触りが良くない。

しかし、使用する合繊を高級な物にし、毛の並び方を変えるだけでかなり手触りや見た目はリアルに近くなる。
高野口産地にある企業の大半はそのような工夫を凝らしている。
岡田織物は、短い毛と長い毛に見立てた超短のある合繊を交互に並べることで手触りを格段に改良している。もし事前にフェイクファーだという知識がなければリアルと間違うほどの手触りの良い品番もある。

さらに森井織物は、ウールやアルパカやアンゴラなどの獣毛でフェイクファーを作るから手触りだけで言えば、ほとんどリアルと区別ができない。何せ本物の毛を使っているのだから。

そのブランドにウールや獣毛のフェイクファーの話をするとことのほか興味を示し、今までそんなフェイクファーが存在していたことを知らなかったとのことだった。

このことだけでもアピールが足りなかったかということがわかる。
もちろん、産地としては出来うる限りアピールしてきたことは理解しているが、結果としてそれでも足りなかったと思わざるをえない。

さて、近年、プラダなどのラグジュアリーブランドがフェイクファーのことを「エコファー」と称するようになっている。
試しにエコファーを検索してみると、今は亡き日本繊維新聞のブログが出てくる。
2010年5月に「エコファーってなんだ?」という内容のブログが書かれているから、3年くらい前からそのような機運になっていることがわかる。

実はちょうど3年くらい前に高野口産地のプロジェクトに参加していたメンバーで「フェイクファーの名称を変えよう」という意見が出た。
中国産の見るからに安物臭い物もフェイクファーなら、先に挙げたような工夫を凝らした高額な高野口産の物もフェイクファーである。
なら、高野口産地の物は別の呼び名を作ろうじゃないかというのが意図である。

その際、30以上のネーミングアイデアが出たがその中に「エコファー」もあった。
結局、エコファーがラグジュアリーブランドの呼び名になっていることからもわかるように、名称変更はできなかったのである。
わずかに岡田織物が自社のファーを「ジャパンエコファー」と名乗っているところにその痕跡を残すのみである。

なぜ変更できなかったかというと、産地企業の総意が得られなかったからだ。

例えば「毛足が何センチ以上がファー、何センチ以下がカットパイルなので一概に○○ファーという呼び名はちょっと・・・・」とか「ワシらの産地はファーだけ作ってるわけじゃないからモゴモゴ」とかいう理由で反対の声が相次いだのである。
彼らの言うことも理解できるが、消費者や業界の大半の人にとっては「そんな細かいことはどーでもイイ」ことであり、先に大きく打ち上げて浸透してからファーとカットパイルの違いを説明すれば良い。

その時点で「高野口の○○ファー」と名称を変更すべきだったと今でも後悔している。

しかし、「オレらがありがたくも○○ファーの名称を考えてやったから明日から使えよ」と押し付けるわけにも行かない。総意が得られなければそれ以上は進まない。もしかしたらそこまで啖呵を切って押し付けるくらいの強引さが必要だったのかもしれない。

現在のフェイクファーブームは高野口産地にとって最後のチャンスだと思うので何とかそれに乗っかってもらいたいと思いつつ、こういう「失敗」事例は他の産地にも掃いて捨てるほどあるのだろうなと想像する次第である。そして、こういうところがクリアできない限りは他の産地も機運に乗ることはできないと改めて思う次第である。

何の不思議もない

 お盆のころに、タレントの若槻千夏さんが自身も創設に加わったブランド「WC」から離れるとの報道があり、一般メディアで大きな話題となった。
しかし、業界に与える影響はほとんどないに等しい。
数年後、大きな影響を与える人物として業界に復帰されるかもしれないがそれは確定した未来ではない。
そういう可能性が無きにしも非ずという話である。

メディアでは「何故?」という論調が目立ったように感じたのだが筆者が効き及ぶ範囲では、かつては好調だったが、今春夏の売れ行きは芳しくなかったと聞いている。
かつて6店舗あったが、すでに3店舗は撤退しており、8月30日で名古屋近鉄パッセ店も閉鎖となる。

実店舗は2店舗、それとネット通販のZOZOTOWNへの出店のみとなる。
売れ行きが堅調なら6店舗中の4店舗を閉鎖する必要はなかっただろう。

WCブランドは、ウィゴーの傘下である。
そして、一時期やや苦戦傾向だったウィゴーがWCとは反比例する形で今春夏は商況を盛り返している。
有名コンサルタントの小島健輔さんもブログで言及するほどの盛況ぶりである。

ウィゴーとスピンズに注目
http://www.apalog.com/kojima/archive/1202

本体の業績が盛り返せば、不調となった上に会社の経営方針にそぐわない枝葉ブランドは縮小ないし廃止となるのは、経営的には当然の流れだろう。

また、昨年秋の東京コレクションにデビューしたが、経営側は費用対効果を考えると昨年秋のみでコレクション出展をやめたがったが、若槻さん本人は続けての出展を望んでおり、その部分でも方針が異なったとも耳にしている。
東京コレクションでショーを開くためには最低でも1000万円は必要になる。
だから、ブランドの年間売上高が3000万円程度しかない若手デザイナーブランドは毎回どこから資金を工面して東京コレクションでショーを行っているのかと不思議でならない。

WCの昨年秋の東京コレクションには1000万円を遥かに越える費用がかかったと耳にしている。

若槻さんは今年1月からデザイナーではなく、ブランドアドバイザーに地位が変わっており、それに伴って有名カジュアルブランドからデザイナーを招聘したが、この新デザイナーもすでに退任している。
今後しばらく、このブランドが再成長することは難しいのではないだろうか。

ちなみにWCという商標はウィゴー側に残り、クマタンのキャラクターの版権は若槻さんが所有することになるといわれている。
自分の名前をブランド名として使えなくなるというのは何だか奇妙な感じだが、ブランドビジネスでは決して珍しいことではない。
かつて「ジル・サンダー」も企業買収されたことによって、ジル・サンダー氏のいないブランド展開が長らく続いた。
だからこそユニクロもジル・サンダー氏との契約ラインの商標を「+J」としたわけである。

以上のような状況を考慮すると、今回の事態となったことは何の不思議もない。

初年度がもっとも集客力があるのだけど・・・・・。

 少し前の話で恐縮だが、阪急百貨店うめだ本店が今年度の売上高を200億円下方修正して1900億円にすると発表した。5月の連休明けのことである。

エイチ・ツー・オーリテイリングは9日、2012年11月に増床開業した阪急うめだ本店について、目標売上高の2130億円を達成するのが、当初計画より2年遅れ、開業3年目になるとの見通しを明らかにした。現状では、今秋までの開業1年間の売上高は1900億円にとどまる見通しだという。(2013年5月10日付 日経新聞朝刊)

開業3年目には2130億円を達成させる意気込みなので下方修正したとは言え、相変わらず強気な計画である。

先日、某百貨店でそれなりの主要メンバーと目されるバイヤーとお会いする機会があった。

彼は、初年度に達成できなかった売上目標を2年後に達成するのはかなり難しいのではないかという。
その理由は簡単だ。
なぜなら初年度は集客が一番多いからである。
通常の商業施設は初年度の集客が一番多く、2年目、3年目とだんだん集客が少なくなる。
人気の商業施設は2年目以降もそれなりの客数を維持することはできるが、それでも初年度の集客を上回ることはほとんどない。

その一番集客の多い初年度で達成できなかった売上高を3年目で達成するには、相当の努力が必要である。
極端な話、毎年集客量を増やしていかねばならない。
年々集客量を増やすという作業は至難の業である。
よほどの仕掛けが必要になる。

阪急百貨店うめだ本店の売上高目標は近隣にある梅田メンズ館も含んでいる。
もしかしたら、本店の集客量と売上高を増やすよりも現在売上高が落ち込んでいるメンズ館の売上高を回復させる方が簡単かもしれない。

メンズ館の初年度売上高は当初予算を上回る270億円を達成し、その後の公式発表はないが、個人的に聞き及ぶ範囲では現在160億円内外にまで低下しているという。

これをピーク時の270億円にまで回復させることができれば100億円の売上高増は達成できる。
あとは本館で100億円を積み増しすれば良い。
一口に100億円と言うが、これはこれで大きな数字である。
筆者にやってみろと言われたら、やれる自信はまったくない。

地下の食品売り場は賑わっているが、ここの売上高を大きく伸ばすことは相当に難しい。
なぜなら食品は単価が低いからだ。
高額食品と言われているものだって洋服に比べると安い。
本館が大きく売上高を伸ばすためには、洋服も含めた高額商材の売上高を増やすことが近道である。

1万円の物品を10人に売れば10万円である。
食品の買い上げ客数を10人増やすことは比較的に簡単だが、10人分の売上高は2万円にも満たないだろう。

さて、計画通りに2年後に2130億円が達成できるだろうか。
筆者は可能性が低いと感じるが、もし達成できれば阪急百貨店うめだ本店の地力は本物だということだろう。

供給過多でダブついている

 先日の雨の影響で全国的に猛暑のピークが過ぎたようだ。
一旦涼しくなると消費者心理は、秋物を着てみようかなということになる。
例年の傾向だが、今後、気温が30度を越える日が続いたとしても、消費者は夏物の投げ売り品を購入して気分転換するという発想にはならない。

しかし、売り場には夏物の残りがダブついている。

某カジュアルチェーン店で夏物(一部に昨年冬物も混じっている)が1枚990円に値引きされて販売されている。
1枚990円だが、2枚買うともれなくもう1枚がタダでプレゼントされる。
要するに1980円で3枚買えることになる。
このチェーン店は、タダでも良いから持って行ってもらいたいほどに在庫がダブついているといえる。

夏物がダブついているのはこのチェーン店ばかりではない。
他のチェーン店だって70%オフのさらに5%オフとか、さらに20%オフなんて投げ売りを行っているし、業界の雄といわれているユニクロだって半袖Tシャツは390円とか500円にまで値引きされて販売されている。
夏物の半袖Tシャツを定価で買うのはまことにアホらしい。

さて、少し前だが日経ビジネスオンラインにこういう記事が掲載された。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130626/250261/?ST=print

私はしばらく前に、日本の衣料品における総消費量と総生産量の割合を調べたことがある。結果は30%の過剰生産だった。日本の服は、30%は捨てられる前提で生産されているということだ。街を歩いてみれば、百貨店、ファッションビル、チェーンストア、インターネットには「服」が溢れている。

加えて、日本の女性は、特に若い世代ほど服に「ブランド」間の違いを意識していない。例えば、買い物をしていて欲しいものがなければ、違うフロアで似たような服を探し、値段が高ければ、FOREVER 21やH&Mで探す。最近では、スマホやネットで探して購入する。今のアパレルビジネスは「安いモノ勝ち」である。

とのことである。
ここで挙げられている買い方は女性ばかりではない。男性だってそうだろう。
男性は女性に比べてややブランドにこだわる部分もあるが、似たような物を安く買うという作業に慣れている男性も増えている。そうでなければファストファッションブランドにメンズというジャンルは存在しないのが常道になっているはずである。

とにかく、基本的には洋服は供給過多でダブついており、安くしたからといって2枚、3枚と買うことはあり得ない。
ユニクロの390円に値下げされたMTVのTシャツはいくら安くても欲しい色と柄を1枚買うだけであり、さして自分の好みでないものをもう1枚買うという発想は消費者にはない。

このコラムの筆者の河合拓さんは、それ故に

こういう状況の中で新しい服のブランドを立ち上げることがどれほど厳しいか。水であふれかえっているコップに、さらに水をいれるようなものだ。今の日本で服など売っても儲からない。ゆえに、冒頭の相談を受けた時も、「これ以上服を作るのですか?」と問い返した。

と主張される。

個人的な体感でいうなら、売上高数億円程度の小規模ブランドなら新規を立ち上げても到達できる可能性が高いが、100億円を越えるような大型ブランドに育てるには莫大な資金が必要となる。
そして在庫がダブついている現状で、新規ブランドが100億円の売上高を稼ぐためには相当に競合他社の売上高を削る必要がある。衣料品市場はこれ以上大きくならないのだから、同業他社の売上高を奪うしかない。

コラムから引用すると

衣料品の市場規模は7兆円だとか8兆円だとか言われているが、それは市場規模という所与のものがあったのでなく、衣料品を販売している会社の売り上げを積み上げた合計が7兆円だったという話にすぎない。

わけであり、この規模は大きくなるどころかバブル崩壊後は縮小傾向にあるわけだから、なおさら同業他社の売上高を削るほかない。

さて、このコラムはアパレルが同業他社をM&Aすることの愚、アパレルが減少した売上高をカバーするために新規でファッション衣料ブランドを立ち上げる愚を説いておられるのだが、まことにその通りである。

端的にまとめると

私はアパレルブランドの経営者に対して、「もう衣料品のブランドを立ち上げても成功確率は低い。例えば、同一ブランドで女性下着、化粧品、場合によってはカフェ事業のようなサービス事業はどうか」と提案をするのだが、必ずと言って良いほど「我々は服屋だから、服しか扱えない。違う業態を組織の中にいれると経営資源が分散して失敗する」と言われてしまう。

ということになる。

まあ、個人的に長年見てきた業界状況もほぼ同じである。
そこで、

世界に目を向ければ、ヨーロッパの世界的企業であるLVMHやリシュモングループなどのブランド企業は、宝石、カバン、ジュエリー、衣料品、ワインといった異なる事業を複合的にブランディングし、足りないピースはM&Aで求め、多角化に成功している。

と主張されているわけだが、現状の国内アパレル企業ではユニクロも含めてこの形態を成功させることはできないだろうというのが個人的な意見である。
SPAブランドだけがかろうじて残ったが本社は倒産してしまった某社だって、経営破綻の要因の一つには外食産業への進出が挙げられている。

そういえば、アパレル企業やショップチェーンを買い足している商社もあるが、同業他社ばかり買い集めてどうするのだろうかと疑問に感じる。
例えば年商100億円規模の会社を5つ買って、アパレル事業部として500億円の年商規模にするというなら理屈はわからないではないが、100億円規模のも、30億円内外のも、数億円レベルのも買いそろえるというのでは、目的が良く分からない。
おそらくブランド間での相乗効果というのはあまり見込めないだろう。

「1枚990円の投げ売り品を2枚買うと自動的にもう1枚プレゼント」というキャンペーンを見て、改めて衣料品のダブつきを痛感した次第だ。

通販サイトを全面リニューアルする必要がある

 8月23日の朝日新聞にボブソンの現状が掲載された。

中身はこれまでの経緯の繰り返しだが、気になる近況が報告されている。
阪神百貨店梅田本店の自主編集レディースジーンズ売り場「ジーンズハウス」の店頭に今年4月から並んでいる。
その上で、「当面は阪神の1店舗に絞って販売するとともに、ネット通販を強化して再建をめざす」と結ばれている。

ちなみにオンラインショップはこちらだ。
http://www.bobson.jp/

一般消費者の持つイメージとは裏腹に国内百貨店でもトップクラスの売上高を誇る阪神の「ジーンズハウス」に商品が並んだことはめでたい。
決して早くも華々しくもないが、着実な成果であるといえよう。

しかし、オンラインショップの方はサイトを見る限りはなかなか難しいと感じる。

まず、断続的に拝見している限りにおいて、スタート当初より8月25日現在に至るまでずっと「Warm」商品が並んでいる。warmとは暖かいという意味だから、これはとりもなおさず保温・発熱商品であり、日本の気候に沿って考えるのであれば、これは秋冬商品と判断できる。

8か月前後も秋冬商品が並んだままというサイトも珍しい。
季節は一巡してもうすぐ保温にぴったりの季節が訪れる。

次に商品紹介文の少なさである。
少なさというより、ほぼ無いと言った方が正しい。

使用素材、サイズスペックのみで商品が売れるほどネット通販は簡単ではない。
もしそうなら今頃はどのアパレルブランドでもネット通販で一廉の売上高を稼げている。

ためしにwarmスキニー8038-52のページを見てみよう。

http://www.bobson.jp/fs/bobson/BOBSONWarm/8038-52

メインの大写しの写真の下に広大な空間が白紙で残されている。
バブル時代の広告ポスターでもあるまいに、この余白に情緒を感じる消費者などほとんど存在しない。
この部分にはこの商品の良さ、機能、製造のこだわった部分などを文章で書き込む必要がある。
それがなければ一般消費者は、ボブソンの商品の魅力をまったく理解できない。

我々が作っている商品はこの部分を工夫しましたよ。
この部分はこういう製法になっていますよ。
シルエットはこういう工夫を凝らしており、細く長く見えます。
スキニーというタイトなシルエットでの穿き心地の良さを追求するためにこういうストレッチ素材を採用しましたよ。

というようなことを書かねばならない。

もし、写真のカット数を増やすことで事足れりと考えているとしたら、それはネット販売に対応できていないと考えられる。

ところで新生ボブソンはどの程度の企業規模を目指しているのだろうか。
新社長はおそらくはかつてのような100億円単位の売上高など求めておられないと推察する。
ネット販売をもう少し改良しながら、阪神を手始めに有力店に何店舗か卸売りできれば、数億円規模にはなれるだろう。そしてこれまでの取り組みから考えると、その程度の規模を目指しておられるように見える。

これは極めて現実的な判断であるといえる。
ただ、そのためには通販サイトを全面的にリニューアルする必要性があり、それは急務であろう。

差が開いた

 恒例のライトオンとジーンズメイトの月次売上速報が発表された。
今回は8月度である。
店頭を見て回った感触では、両社ともさほど大きな違いはない。
6月半ばからセールは続いたままだし、8月に入ってさらに一段階値下げされた商品が増えている。
そういう環境下にある。

ライトオンは
既存店売上高が前期比2・9%増
既存店客数が同5・6%増
既存店客単価が同2・5%減

だった。

一方、ジーンズメイトは
既存店売上高が前期比13・5%減
既存店客数が同6・4%減
既存店客単価が同7・6%減

に終わった。

ライトオンが微増、ジーンズメイトは客数と客単価の両方が減ったことによる大幅減収である。

どちらもトレンドはさほど追いかけていないベーシックカジュアルな売り場であるのにもかかわらず差が開いてしまった。この差はどこから生じたのか。
店頭を見た感じでは価格差ではない。セール品の価格は両方とも同じくらい安くなっている。

どこから差が出たのかを考えてみると、ジーンズメイトの回復の手がかりになるはずである。

ちなみにライトオンの6月度と7月度はそれぞれ

6月度は
既存店売上高が前期比4・6%増
既存店客数が同1・0%減
既存店客単価が同5・6%増

7月度は
既存店売上高が前期比4・8%増
既存店客数が同8・6%増
既存店客単価が同3・5%減

とまずまずの実績である。

ジーンズメイトは6月は微増で堅調だったが、7月度はやや苦戦傾向で、7月度で差が開いたといえる。

6月度は
既存店売上高が前期比0・5%増
既存店客数が同1・2%減
既存店客単価が同1・8%増

7月度は
既存店売上高が前期比8・1%減
既存店客数が同3・3%減
既存店客単価が同4・9%減

となっている。

また両社で正反対となっているのが8月度商況へのコメントである。

ライトオンは「クロップドパンツや清涼素材のイージーパンツなどを中心に夏物商品の販売は堅調に推移いたしました。その他商品動向としましては、メンズはリネン素材や柄物の半袖シャツ、ウィメンズはプリントタンクトップが堅調に推移いたしました」とコメントしているのに対して、

ジーンズメイトは「帽子などの服飾雑貨類は健闘したものの、ポロシャツなどのカットソー類やショートパンツをはじめとしたボトムス類全般が苦戦した」とコメントしている。

今春夏は、ここ2,3年に輪をかけてメンズショートパンツ類が好調に動いており、コメントから推測するとライトオンにはその恩恵があったが、ジーンズメイトにはあまりなかったと受け取れる。

この差はどうして生じたのか。ここを分析することでジーンズメイトにも今後挽回のチャンスは巡ってくると思うのだが。

さて、上場企業各社の多くは月次速報を発表しているが、これは売上高・(買い上げ)客数・客単価の3つしか出ておらず、利益についてはまったく不明である。

だから、当然、売上高が前年より増えていればまずまず、減っていれば苦戦と判断せざるをえないのだが、決算として発表された場合、増収していても減益に終わっているということも珍しくない。

今更言うまでもないことだが、月次速報は目安程度に見るべきだろう。

もったいないな~

 予想外の大人気ドラマとなった「半沢直樹」だが、そのドレスシャツをシャツメーカー、フレックスジャパンが衣装提供している。きっかけはフェイスブックで(弱々しく)告知されたことで、それを基に情報がすでに拡散している。

これは告知宣伝という分野においては、至極当然の動きであるが、失礼ながらフレックスジャパンの現在の告知活動ではいささか物足りない。

ちなみに、水谷豊さん主演の刑事ドラマ「相棒」シリーズにもフレックスジャパンは衣装提供しているそうだが、こちらもあまり大々的に告知しているとは言えない状況である。

「半沢直樹」は7月から始まったドラマの中ではもっとも注目を集めており、これを活かさない手はない。
これが勢いのあるアパレルメーカーならドラマの知名度を活かして、積極的なプロモーションをかけるだろう。

「相棒」シリーズもそうである。
始まりは地味だったがジワジワと視聴率を伸ばして、現在では15%以上の視聴率を平均的に稼ぎ出す人気シリーズにまで成長した。

先日、知人と話をしていたのだが、もし自分たちがフレックスジャパンの販促だったら、半沢直樹は全10話の放送予定なので、劇中登場したドレスシャツ10枚を「半沢直樹セット」としてセット販売を企画する。
第1部・全5話の「大阪編」にちなんで5枚セットの「大阪セット」、第2部・全5話の「東京編」にちなんだ5枚セット「東京セット」なんていう販売方法でも良いかもしれない。

「相棒」シリーズを使っても同じような手法で企画できるのではないだろうか。

さて、話は20年前に戻る。
92年とか91年とかそのあたりのことである。
就職活動で、大阪・本町界隈にある老舗婦人服メーカーを何社かまわったことがある。
そのうちの何社かは当時の人気ドラマに継続的に衣装提供を行っていた。
インターネットも無い時代であるから、それを確認できるのはドラマのエンディングで流れるテロップだけである。
テロップの字は小さいし、流れる速度は速いし、社名ではなくブランド名・ブランドロゴの場合もあるから、なかなか明確に読みとれない。よほど集中して見るか、動体視力に優れていなくては無理だろう。

しかし、そうは言っても、当時は自社で自由に告知できるメディアが少なかったから、そんなテロップでも唯一の告知方法でもあった。

現在だと自社で自由に告知できる媒体としてインターネットがある。
自社サイトを更新するのはいろいろと手間があるが、ブログ、ツイッター、フェイスブックなら手軽にしかも無料で自社の情報をタイムリーに告知できる。原則的には。

「うちはドラマに衣装提供してるんですよ~。詳しくはドラマのテロップで」なんて間抜けな告知をする必要はなくなっており、それを自社サイトなり公式ブログなりツイッターなりフェイスブックなりLineなりで告知すれば効率的により多くの人へ情報が拡散できる。

残念で、しかも失礼ながらフレックスジャパンはもっと大々的に自社でインターネットを使って告知すべきではないかと思う。
「今週は堺雅人さんが当社のシャツを着ていました」とか「来週は北大路欣也さんが着用します」というようなことをこまめにブログやツイッター、フェイスブックを使って発信してみてはどうだろうか。

ついでにいうと、そういう告知ができていない老舗メーカーは数多くある。

取材などでお邪魔した際に「実はあのドラマの主人公が着用していたのは当社の製品なんですよね」とか「某グループがコンサートの時に着ていたのはうちの製品なんですよ」と聞くことはたびたびある。
もちろん、単なる製造請け負いだから自社の名前を出せない場合もある。しかし、そういう場合を除いてはもっと積極的に情報発信することを考えてみてはどうだろうか。

今回、事例としてたまたまフレックスジャパンを挙げさせていただいたが、同じような物足りなさを感じる老舗アパレル、老舗ブランドは数多くある。このあたりも国内の繊維・アパレル業界が低迷する一つの原因なのではないかと感じる。

入門へのハードルを下げるべき

 先日、こんなブログを拝読した。書かれてあることはもっともで、呉服販売店は自ら顧客を減らしていると感じた。

素人と玄人の狭間
http://otokokimono.blogspot.jp/2013/08/blog-post_5.html

問題はその後入店してきた若い男性2人と店員のやり取りです。

2人もやはり「何を探しに来たの?」と訊かれ「着物を…」と答えました。
この瞬間、あ、彼らが探してるのは着物じゃなくて浴衣なんだろうな、と感じました。
2人は大学生くらいの風貌だったし、季節柄、入店のきっかけはお祭りや花火じゃないかと予想したのです。
自信のない言葉端からも”浴衣”を”着物”と勘違いしているのでしょう。案の定「今夜お祭りがあって、そこに着て行きたいので」と続けました。

すると店員は「え?今夜?それはちょっと…それにお祭りって、それ、浴衣でしょ?」とまくしたてます。
若者たちも「そう…かな?」と戸惑うところに再び店員は「予算はおいくら?」と強く訊き、気圧された若者は「1万円くらいで…」とさらに小さな声で答えました。

普通のお店では、まともな着物が1万円で、しかも(誂えたら)その日中には買えないってことを認識したのは、僕でもまだ最近ですから、浴衣と着物を同じものだと思っている間違い無く初心者の若者にとっては仕方ないと思いますけど、初めて着る嗜好衣料品に1万円というのは妥当な予算だったとも思います。

しかし店員は「それじゃ着物は無理ですね。浴衣でも、店の表にセールで出しるものくらいしかないです。そこで選んでくださいね」と言葉面からは伝わらないぶっきらぼうさで、僕の恐れていた対応を若い二人にぶつけたのです。
二人は店に入れもせず、すごすごと外に出て行きました。

中略

なぜなら、僕ら着物初心者が、着物という世界に踏み込むのにあたって最も怖いのが「金も知識もないくせに何しに来たの?」という嘲笑と卑下の扱いだから。

とのことである。

筆者はごくたまに着物関係者とお会いすることがあるが、業界は年々縮小し続けているとのことである。
客単価の低下、客数の減少のダブルパンチである。
しかし、すべてのお店ではないにしろ、入門者に対してお店がこのような扱いをしているなら、着物着用人口は増えないだろうし、そもそも着物を着用してみようという消費者も増えない。
依然として一般人にとって着物とは「敷居が高い」というイメージのままである。

筆者の知る範囲では着物人口を増やそうと意気込みを見せる熱い業界人も多いのだが、こういう古い体質のお店や業者が相当数存在するのであれば、新しい取り組みもなかなか実らない。

筆者が懇意にしていただいている着物業界関係者の中に、ひなやの伊豆藏直人社長がおられる。
以前、伊豆藏社長に新しい取り組みに積極的な業界関係者のセミナーに連れて行ってもらったことがあるのだが、その聴講の最中に、隣の席からボソっと「業界からは異端だと批判されるかもしれませんが、ぼくは新しく着物を着てみたいと思う人がいるなら、どんな着方でも良いと思うんですよね。それが例え左前であっても」とおっしゃったので、その自由な発想に驚いた。

着物はご存知のように、左側を上にして着用するのはご法度である。
しかし、筆者も含めて着物を着用しない人はその辺りの作法に関する知識があまりない。
業界関係者としては「基本くらい抑えておいてよね~」とつい思いがちだが、それでは新しい着物ファンは増えにくい。「どんな着方でも受け入れることで着用人口を増やそう。きちんとした着方は着慣れてくればできるようになる」というのが伊豆藏社長の考えだ。

この考えは非常に正しいと感じる。

どんなジャンルにもセオリーとか作法がある。
入門したかったら先にそれらを一通り身に付けろというのではなかなかファンは増えない。
まずは入門へのハードルを下げることがファン層の拡大につながりやすい。

これは着物に限ったことではないだろう。現在不振である業界すべてに通じることではないか。

業界全体が「知覚リスク」?

 お盆が終わった。
お盆が終わると、売り場も本格的に秋物が立ち上がりつつ、まだ残っている夏物がさらに安くなって処分される。

10年くらい前だと、お盆過ぎの処分品はいくら安くなっていてもそれほど良い物は残っていなかったが、衣料品がダブついている昨今はけっこうそれなりに良い物が残っていたりする。
こういうのを見ると、何もわざわざ定価時期に買わなくても良いのではないかと思う。

同じように感じる消費者は多いのだろう。だから定価では売れず、セールでもあまり売れないのだろう。

さて、そういう消費者の「損失回避性」を含めたものを知覚リスクというのだが、商品が定価で売れない理由はマーチャンダイジングが悪いからだとか、ブランディングが下手くそだからだとか、ヴィジュアルマーチャンダイジングが云々だとか、そういう要素以外にもこの知覚リスクがあるからだ。
「待っていれば確実に安くなる」のがわかっており、また、昨今の店頭状況からその商品が定価の状態で売り切れる可能性は極めて低いことがわかっているから、消費者は待つのである。

これをブログで指摘されているのが深澤智浩さんである。

ちょっと引用させていただく。

知覚リスク
http://www.apalog.com/fukasawa/archive/701

最近、消費者が『お買い得』よりも、

買い物をする時点では、『如何に損しないか?』の方に敏感になっているという

『損失回避性』についてよく語られています。

また そのような商品行動の基となる考えや信念を

知覚リスクともいうのですが

いま まさに盛り上がりに欠けているSALE

そして、そのSALE商品なんて まさに知覚リスクの固まりのようなモノなんです。

まだ 価格が下がるかもしれないから、今買ったら損するかもしれない

せっかく安くしても、お客様にすると余計に損失を恐れる金銭的なリスクが高まったり、

在庫が沢山積まれているという事は、皆が受け入れがたいトレンドの商品であり

来年は着れないかもしれないというリスクや、着ていった先での恥ずかしい

思いをする社会的なリスクが生まれるかもしれない・・・・・

(中略)

購入する事で、お客様が、お得になれる!!

売り手が本当にそう思ってかどうかは別にしても

そんなフレーズだけで 大々的にSALE商品を販売したり

SALE開催のタイミングをヤイヤイと論じているだけでは

お客様の『損失回避性』と知覚リスクは増すばかりだよな~と思うのです。

とのことである。

こういう感覚は現在の消費者にはたしかにあると思える。
ところで、この「損失回避性」の知覚リスクだが、なにも消費者ばかりではないだろう。

アパレルやブランド、メーカーサイドにも大いに備わっているのではないだろうか。
例えば新しいシステムの導入や新しい商品開発にあまり積極的でないことも「知覚リスク」の一つだろう。
さらにいえば、商品開発においてもオリジナルよりも他社売れ筋商品のコピーを重視するのだって「知覚リスク」がその原因の一つではないだろうか。
まあ、その他社売れ筋商品だって欧米ブランドのパク・・・・・・いやコピーだったりするわけなので、孫コピー、曾孫コピーなんて世の中に溢れている。玄孫コピーだって珍しくない。

企画マンやデザイナーを雇用・契約せずに、街頭ストリートスナップと他社店頭の売れ筋商品をパク・・・・いやコピーするのだって「知覚リスク」が働いていた部分も大きいのだろう。(もちろんそれ以外の要因もある)

こう見てくると、繊維・アパレル業界は供給側もその商品を購入する消費者も総じて「知覚リスク」が過剰に働いている状態ともいえるのではないか。

消費者は色落ちにあまりこだわっていない

 先日、この数年のジーンズの不人気に対するこんな記事を発見した。

ショップ店員「デニムは臭そう」不人気の裏にある現場の空気
http://bucchinews.com/society/3604.html

事実誤認をしている部分と、ジーンズ業界人にとっては非常に参考になるのではないかと思われる部分とに別れる。

まず事実誤認の部分から見てみる。
いわゆるジーンズナショナルブランド(NB)と呼ばれる各社の現状を紹介しているのだが、

リーやラングラーは、エドウイン傘下に吸収され

とあるが、「リー」ブランドがエドウイン傘下のリー・ジャパンに移籍したのは何もこの数年の話ではない。
20年以上前からそうである。2007年以降のジーンズ不況とは何の関係もない。

リー・ジャパンは1983年にエドウインとアメリカのVFコーポレーションの合弁として設立されている。30年前の話だ。
その後、1985年12月にエドウインが発行済株式をすべて取得し、日本国内での企画・製造・販売を行うことになる。本格的に販売を開始したのが1986年からということになるので、27年前のことだ。

さらにいうならラングラーがリー・ジャパンに吸収されたのも2000年ごろのことであるから、これも13年前の話だ。ジーンズ不況とはあまり関係がない。どちらかというと「ラングラー」ブランドを日本で展開してきたラングラージャパン、VFジャパンの経営問題であろう。

また、今年春に経営体制が一新されたビッグジョンについても

日本初の国産ジーンズメーカーであるビックジョンは国内生産打ち切り

とあるが、これも正確ではない。
たしかに自社国内工場は閉鎖になったが、現在、協力工場などによって国内生産は継続している。

これらが事実誤認の部分だ。

一方、参考にすべきは文中に挙げられているセレクトショップ店員たちの声である。
ジーンズ業界に浸りきっている人たちと、一般大衆とのジーンズに対する認識がまったく異なることがわかる。
参考になるであろうと思われる声を文中から抜粋する。

「まず、最近の若者ってジーンズを履いてないですよね。ここんところずっと、ぜんぜん流行ってないです」(33歳、男性、某セレクトショップ勤務)

「とはいえ、デニムシャツとかデニムジャケットとかは着てるんですよ。でも、確かにジーンズは微妙ですね。まぁ、普通に、パンツの1アイテムとして使ったりはしますけど、チノパンや軍パンの方が、ずっと使い勝手がいいでしょう。僕らが高校生のころにいたような、年がら年中ジーンズを履いている人ってのは、あまり想像できない」(29歳、男性、某国内ブランド勤務)

この声は現在の若者層を代表しているといえるだろう。

また、

「あまり色の落ちてない生ジーンズを清潔に履いてるのって、格好いいんですけどね」(前出・31歳女)
「そうね。あれは確かに格好いいよ。でもさ、ノンウォッシュのジーンズって金がかかるんだよな。『ジーンズって育つズボンなんです』みたいなこと言うじゃない。それって正直、バリバリ色が落ちて劣化します』ってことじゃない」(前出・33歳男)

「ああ、判るかも。あれって小綺麗に保つのが難しいんですよね。小綺麗に履き続けるためには、すぐ買い替えなきゃいけないから金がかかる」(前出・29歳男)

「逆に、色落ちしたジーンズが似合う日本人なんてほぼ皆無なんですよ。よっぽど細くて脚が長くなきゃ無理。チャレンジする方が無謀」(前出・33歳男)

という声も参考になるのではないか。
ちなみにジーンズやズボンは「履く」ではなく「穿く」が正しい。「履く」のは靴やサンダル、草履などである。

また

「ちなみに機能性もかなり低い。梅雨の季節なんかに、ジーンズが雨で濡れると、なにより重くて張り付くし、冬は寒く、夏は熱い。日本の気候に合ってませんよ」(前出・33歳男)

も重要だと感じる。

これも誤字があるがそのまま引用する。正しくは「夏は暑く」である。「張り付く」ではなく「貼り付く」が正しい。

さて、これらの声を総合すると、

ジーンズはカジュアルカラーパンツの1種類に過ぎない。
色落ちにはこだわらない、というより色落ちしない方が良い。

ということになる。それは現在の店頭での売れ行きとピタリと附合する。

各店・各ブランドが口をそろえて言うには「ジーンズというより、濃紺のカラーパンツの1種類としてノンウォッシュ、ワンウォッシュのジーンズを購入する人が多い。ウォッシュで色を落としたジーンズは、水色のカラーパンツのバリエーションとして認識されているようだ」とのことである。

付け加えると機能性に関する声もその通りである。
従来の綿100%の14オンスデニムは水に濡れると重くなるし、乾くのも時間がかかる。
高密度に織られたヘビーオンスデニムは冬暖かいが夏は暑い。それに冬場、足を通した瞬間にヒヤっとするのは避けられない。

現在は、夏用としてクールマックスなどの吸水速乾素材混のクールジーンズ、冬用に保温ジーンズ、防風ジーンズなどが発売されているが、これらは季節商材として今後はそれなりのシェアを占めることが予測される。

先日、ジーンズ業界に身を置く方からご意見をいただいた。

「ぼくらが思っていたほど、消費者は色落ちにこだわらないということがわかりました」

とのことである。

ジーンズをカラーパンツの1種として見なす消費者が多いから、先に述べたように「色落ちはしない方が良い」のだが、色落ちを受け入れる場合でも、業界の人がいうような「このムラ糸によるタテ落ち感が云々」に関心を示す消費者は極めて少ない。

洗濯を繰り返すと色落ちするのは仕方が無い。しかしその場合、のっぺりとカッコ悪く色落ちするのは論外だとしても、「ムラ糸使いで凹凸感のある表面感によってタテ落ちすること」を重要だと考えているのはジーンズマニアに限られるということである。
それなりにカッコ良く見える程度であれば多くの消費者は、あまり疑問を感じずに受け入れている。

となると、現在、児島・福山地区には元ジーンズメーカーに所属していた人や、ジーンズ製造業に携わっている人が小規模ブランドを続々と立ち上げているが、色落ちや生地の風合いにこだわった彼らの商品はマスには受け入れられにくいということになる。
何度も書いているが、それらの新興ブランドが、「うちは3億円売れれば十分」と考えているなら今の路線でも構わないが、「売上高10億円を突破したい」と考えているなら今のままでは不可能である。もっとマスに向けた商品を開発する必要がある。

同じことは新興ブランドのみならず、かつてのナショナルブランド各社にも当てはまる。
色落ち云々、凹凸感のある表面感云々、タテ落ち感、武骨さといった要素は、2000年手前で終息したビンテージジーンズブームとともに顧みられなくなっている。
新興ブランドに比べて売上規模の大きいナショナルブランド各社が、売上規模を維持ないし成長させるのであればマス商品を手掛ける必要がある。そして、マスはジーンズメーカーが付加価値だと考えている要素に価値を見出していないのである。

今回、この記事を採り上げたのは、ショップ関係者の声として紹介されている意見が、まさしく大衆の声を反映していると感じたからだ。
それを取り込んだ商品開発、ブランド戦略がジーンズ業界には必要とされている。

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