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南充浩 オフィシャルブログ

最後のチャンス

2013年8月30日 未分類 0

 先日、リアルファーの小物雑貨や衣料を扱っている小さなブランドの展示会にお邪魔した。
近年、ファー小物や襟や袖口にファーをあしらった衣料への新規参入が相次ぎ、国内の商況は苦戦をしておられる。

そんな中、今年は香港で開催される合同展示会にも出展されたという。
ところが、香港には欧米からのバイヤーが多数来たそうだが、2~3年前からの動物愛護運動の高まりからリアルファーを敬遠するバイヤーも増えたそうだ。

そこで、リアルファーを完全に止めることはないものの、フェイクファーの取り扱いも始めることを決めた。

このブランドだけではなく国内外のブランドでフェイクファーの取り扱いは増えている。
国内で唯一フェイクファーを製造する産地である高野口産地に今、拡販の好機が訪れている。そしてこれが最後のチャンスかもしれない。個人的にはこれが最後のチャンスで、これを逃すと産地の消滅が待っていると思っている。

さて、それでも産地内の各企業の取り組みは今一つ勘所を掴んでいないように感じる。

そもそも高野口産地のフェイクファーは産地企業が思っているほど業界には知られていない。
もしかしたら昔は知られていたのかもしれないが、現在の業界の人々には知られていない。それが若い世代の人だけならまだしもけっこうな年配層(50歳前後)にまで知られていない。

先日も別のブランドとフェイクファーについて話していたのだが、フェイクファー=合繊の安物というイメージを持たれているようだった。
リアルファーとフェイクファーの一番の違いは手触りにある。

リアルファーは動物の毛である。動物の毛は根元が太く先に行くほど細くなっており、これが手触りの良さにつながっている。
反対にフェイクファーは合繊なので根基から毛先まで太さが均一であり、手触りが良くない。

しかし、使用する合繊を高級な物にし、毛の並び方を変えるだけでかなり手触りや見た目はリアルに近くなる。
高野口産地にある企業の大半はそのような工夫を凝らしている。
岡田織物は、短い毛と長い毛に見立てた超短のある合繊を交互に並べることで手触りを格段に改良している。もし事前にフェイクファーだという知識がなければリアルと間違うほどの手触りの良い品番もある。

さらに森井織物は、ウールやアルパカやアンゴラなどの獣毛でフェイクファーを作るから手触りだけで言えば、ほとんどリアルと区別ができない。何せ本物の毛を使っているのだから。

そのブランドにウールや獣毛のフェイクファーの話をするとことのほか興味を示し、今までそんなフェイクファーが存在していたことを知らなかったとのことだった。

このことだけでもアピールが足りなかったかということがわかる。
もちろん、産地としては出来うる限りアピールしてきたことは理解しているが、結果としてそれでも足りなかったと思わざるをえない。

さて、近年、プラダなどのラグジュアリーブランドがフェイクファーのことを「エコファー」と称するようになっている。
試しにエコファーを検索してみると、今は亡き日本繊維新聞のブログが出てくる。
2010年5月に「エコファーってなんだ?」という内容のブログが書かれているから、3年くらい前からそのような機運になっていることがわかる。

実はちょうど3年くらい前に高野口産地のプロジェクトに参加していたメンバーで「フェイクファーの名称を変えよう」という意見が出た。
中国産の見るからに安物臭い物もフェイクファーなら、先に挙げたような工夫を凝らした高額な高野口産の物もフェイクファーである。
なら、高野口産地の物は別の呼び名を作ろうじゃないかというのが意図である。

その際、30以上のネーミングアイデアが出たがその中に「エコファー」もあった。
結局、エコファーがラグジュアリーブランドの呼び名になっていることからもわかるように、名称変更はできなかったのである。
わずかに岡田織物が自社のファーを「ジャパンエコファー」と名乗っているところにその痕跡を残すのみである。

なぜ変更できなかったかというと、産地企業の総意が得られなかったからだ。

例えば「毛足が何センチ以上がファー、何センチ以下がカットパイルなので一概に○○ファーという呼び名はちょっと・・・・」とか「ワシらの産地はファーだけ作ってるわけじゃないからモゴモゴ」とかいう理由で反対の声が相次いだのである。
彼らの言うことも理解できるが、消費者や業界の大半の人にとっては「そんな細かいことはどーでもイイ」ことであり、先に大きく打ち上げて浸透してからファーとカットパイルの違いを説明すれば良い。

その時点で「高野口の○○ファー」と名称を変更すべきだったと今でも後悔している。

しかし、「オレらがありがたくも○○ファーの名称を考えてやったから明日から使えよ」と押し付けるわけにも行かない。総意が得られなければそれ以上は進まない。もしかしたらそこまで啖呵を切って押し付けるくらいの強引さが必要だったのかもしれない。

現在のフェイクファーブームは高野口産地にとって最後のチャンスだと思うので何とかそれに乗っかってもらいたいと思いつつ、こういう「失敗」事例は他の産地にも掃いて捨てるほどあるのだろうなと想像する次第である。そして、こういうところがクリアできない限りは他の産地も機運に乗ることはできないと改めて思う次第である。

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