月別: 6月 2015 (1ページ / 3ページ)

「モード」に興味を持てる方が少数派では?

 今日で6月が終わりである。
早いもので半年が終わることになる。
年末を大晦日というが、昔は半年が終わる6月末日も水無月晦日と呼んで大祓が行われた。

そんなわけで雑感でも。

先日、繊研プラスにこんなコラムが掲載された。
ファッションスナップドットコムには「モードに関心のない専門学校生」」と改題されて掲載された。

http://www.senken.co.jp/column/eye/sacai0623/

 某ファッション専門学校での出来事だ。就職活動まっただ中の3年生200人に「サカイ」のデザイナーを聞いてみたところ、知っている学生は一人だけだった。クリエーションが世界で認められ、ビジネスも上り調子を続けるデザイナー阿部千登勢を知らないとは。ファッション専門学校生のモードへの関心は、想像以上に低くなっているようだ。

 彼らはきちんと学んできたまじめな学生たちだ。みんな今っぽい服装だったので、ファッションやトレンドには興味があるのだろう。ただ、モードにはあまり関心がない。ファストファッション全盛の今、時代を引っ張るデザイナーのことを知らなくても、今っぽいファッションは手軽に楽しめる。背伸びをしないと手が届かないデザイナーの服に興味を持つ必要はなかったのかもしれない。

 だが、いいものを知らないと目は養われない。時代を引っ張るデザイナーのクリエーションには、デザインが持つ力がある。それを知ることはファッションを生業(なりわい)にする人間の目を必ず育てる。一朝一夕には手に入れることができない目を、ファッション業界を担う次の世代にも育んでほしい。

とのことであり、短文なので全文を引用した。

まあ、言わんとすることは理解できる。
専門学校生の中にはいわゆるコレクションブランドに興味、関心のない生徒が実際に多くいる。

ちなみにモードってなんだろう?と思って意味を検索してみた。すると、

現代の「モード系」という
言葉の意味は、

①常に一歩先、最新であること。
トレンドを取り入れていること。

②モノトーンはもちろん、シンプル。
シルエットやバランスで評価される。

③ブランドよりデザイナーで
服を選ぶ。

が一般的なようです。

ただ時代の移り変わりによって
「モード」の意味は変遷を遂げています。

とのことであり、さっぱり要領を得ない。
実際のところ、筆者にしたって「これがモードだ」という定義がわからないのだから、他人に説明するとしたらこんな内容になってしまう。

このコラムで使われている「モード」という言葉は、文脈から推察すると、いわゆる「デザイナーズブランド」「コレクションブランド」と同義で使われているようだ。

デザイナーズブランド、コレクションブランドと限定すると、我が国の専門学校生が関心を持たないのは当然だといえる。
デザイナーズブランド、コレクションブランドで広く一般的に知られるほど大成功をおさめたブランドが「コム・デ・ギャルソン」くらいしかないからだ。
「ケンゾー」「イッセイミヤケ」「ヨウジヤマモト」あたりまで加えてもそれほど多くないだろう。

このコラムで例示されている「サカイ」や、「ミナペルホネン」などのブランドは成功を収めつつあるように見えるが、ファッションに興味のない人たちに認知されているほどの知名度ではない。

高校から専門学校へ進学した生徒たちが知らなかったり、関心を持たなかったりするのは当然ではないかと思う。

また、これらのブランドの直営店もあまりないし、これらを仕入れて販売している専門店も現在では数少なくなっている。

実は筆者だってこれらのブランドについて関心がまったくない。
仕事柄知識としては知っているが、それ以上に親しみたいとは思わない。

なぜなら、日常生活においても仕事においても全く接点がなかったし、今後もないだろうからだ。

今の専門学校生だって同じではないか。

高校を卒業するまでの過程で、日常生活においてこれらへの接点はほとんどなかっただろう。
接点のないものに興味を持つのはよほどマニアックな人である。
また専門学校に入ってからも接点はないだろうし、就職活動においてもあまり接点はないだろう。
ファッション専門学校の就職先としては、大手アパレル、中小・零細アパレル、生地問屋や商社の製品事業部、OEM/ODM企業がほとんどであり、それ以外は販売員である。

その販売員だって、大手チェーン店が圧倒的数を採用するから、わざわざデザイナーズブランドの直営店へ販売員として就職する人は少数派だ。
また、国内のデザイナーズブランドの多くは直営店を持てないか、持てたとしてもほんの1,2店から数店規模が大半以上を占める。
専門学校生の就職活動先としてはそんなに魅力ある先ではない。

デザイナーズブランドやコレクションブランドに興味を持てるとするなら、育つ過程においてそういうものに触れ合える機会が多かった人に限られるのではないかと思う。もしくは独自に興味を持つマニアックな人かである。
我が国の現状においてそういう人はどう考えても少数派ではないか。

社会環境がそうではないのだから、それを専門学校生に求めるのはない物ねだりなのではないかとも思う。

筆者は個人的に、そういう物は知識として知っておくに越したことはないが、それよりも現状のアパレル企業やその他の製品化事業部のある企業へ就職することに集中する方が専門学校生としては賢明ではないかと考える。

デザイナーズブランド、コレクションブランドが通常のアパレル企業並みに「ビジネスとして」成り立たっていない状況において、学生にそれを過剰に志向させるのは却って若者を経済的貧困に追い込むのではないかとも思う。
職業人として知っておくに越したことはないが。(大事なことなので2回繰り返しました)

幸か不幸か、我が国においてそういうブランドは一握りを除いて、ビジネスとして成り立っていない。
国が悪いとか社会が悪いとか言う話ではない。
環境は全企業同じである。同じ環境下において、ビジネスとして成り立っている企業もある。
成り立たせられないのは事業主の組み立て方に問題があると考えるべきだろう。

逆に言えば、今後、大成功を収めるデザイナーズブランドが次々と輩出されるようになれば(かなり確率は低いと思うが)、専門学校生も自ずと興味や関心を持つだろう。

ユニクロ対ZARA
齊藤 孝浩
日本経済新聞出版社
2014-11-20




アパレルには商品力の向上が不可欠

 もうご存知の方も多いと思うが、ワールドが40歳以上の本社社員500人のリストラを発表した。
9月末でこの500人は退職することになる。

ワールドが500人の早期退職実施 本社社員の4分の1削減
http://www.wwdjapan.com/business/2015/06/27/00017041.html

である。

1975年生まれが今年40歳だが、10月~12月が誕生日の人は今回のリストラ対象ではなかったということになるのだろうか?

まあ、どんな事柄にも線引きは必要だし、その線引きが必ずしも万全でないことは多い。
わずか誕生日が1日違いで残れなかったという人もいるに違いない。
その人はショックを受けているのだろうか?それとも新しいことにチャレンジできる機会だととらえているのだろうか?

以前のブログで本社社員は最低200人はリストラされると書いたが、発表は500人だった。
店舗は最大500店の閉鎖だが、一斉閉鎖ではなく順次閉鎖だから解雇も順次ということになるだろう。
店舗スタッフは1500人くらいの解雇になるのではないかと個人的には推測している。
合計で2000人である。

さて、その原因だが、様々あると思う。
しかし、筆者が個人的にワールドで一番の原因だと思うのは、商品開発力がなくなったことである。
97年に業界紙に入社し、定期的に展示会や新規店舗オープンを取材した。
新聞記事ではワールドの苦戦は2008年夏のリーマンショック以降だと書かれてあるが、商品開発力はそのころにはとっくになくなっていた。
ワールドの商品開発力は2008年までに終わっていたというのが個人的な意見である。

2005年の上場廃止の理由の一つとして「短期的な利益にとらわれずブランドを開発・育成するため」だったと記憶しているが、この10年間で開発・育成に成功したブランドはほとんどない。
100歩譲ってあるとするなら、評価がまだ定められないオペークくらいだろうか。

90年代後半のワールドの各ブランドの商品開発力は大手総合アパレルの中で群を抜いていた。
オゾックを皮切りにインディヴィ、ボイコット、タケオキクチ、アンタイトルなど、同業他社の中でも頭抜けた企画力があった。
また商品の品質も高かった。

98年か99年ごろだったと記憶しているが、何を思ったか筆者はタケオキクチの冬物ジャケットを購入している。
圧縮フェルトの切りっぱなし、フロントがジッパーとマジックテープのジャケットである。
この下にセーターを着込めばコートなしで過ごせる。
このジャケット、今でも冬には着用している。

写真11

(大枚をはたいて(笑)買ったタケオキクチのジャケット)

定価が40000円くらいでそれを4割引きの24000円くらいで買ったと記憶しているが、今の格安商品から見れば考えられないような高額品である。
「あのとき、俺はカネ持ってたんだな~(笑)」と今から思うと笑えてくる。

しかし、このジャケットは買って本当に良かったと思っている。
何せ15年以上着続けているのだから十分に元は取っている。

また高品質というだけでなく、シルエットも細身なので変わらず今も着続けられている。

こういう高品質でデザイン的にも優れていて、それでいてコート要らずという機能性まで付加した商品を98年ごろのワールドは作っていたということである。

今のワールドはどうか?

経営陣のマーケット分析の結果もあってかやたらと低価格志向が目立つ。
しかし、単に価格を安くしただけでユニクロに近づくことができるのだろうか?ユニクロの商品品質は高い。
H&Mのトレンド性に対抗できるのだろうか?
そしてなおかつ価格でその2ブランドと同等にまでなっているのだろうか?

価格がそれらより高く、品質がユニクロより低く、トレンド性がH&Mよりも低いなら、そんなブランド群に勝ち目はあるのだろうか?
そこにそれ以外の切り口のエンターテイメント性やステイタス性があればまだ勝負はできるが、それらもあるとは思えない。

商品開発力の低下の原因は、POSとQRへの過剰な信頼と、コスト削減を目的に安易なOEM&ODMを多用したことだろう。
そしてこれは何もワールドだけの問題ではなく、今、経営危機に瀕している大手総合アパレル各社に共通した問題でもある。
大量閉店しているTSIホールディングス、とくにその中でもサンエーインターナショナルの各ブランドなんて同じ原因で商品開発力を低下させている。

アパレルにとって金融的な取り組みやシステム構築は重要だが、それと同等に商品力も重要である。
商品が悪ければ業績は回復しない。
利益を改善することはできるが、少なくとも売上高を伸ばすことはできない。

いくらリストラをしたところで残存店舗の売上高を回復させるためには商品力の向上が不可欠である。

そして今の大手総合アパレル各社にその商品力は著しく欠如しているように見える。
商品力を向上させない限りは、永遠にリストラをし続けて経費を削減するほかはない。

さて、ワールドを始め、その他大手総合アパレルの商品力はこれから向上できるのだろうか?
筆者はちょっと否定的に見ているが。

知り合いの知り合いとか、知り合いとか、ワールドの関係者からこんなうわさを聞くことがある。
ワールドの寺井秀蔵会長は今回のリストラが一段落したら3年後ぐらいには社長に復帰するのではないかと。
まあ、これはちょっとありえないだろう。
あくまでもうわさにすぎないと思う。

優れた経営者のお一人だからそんなバカな真似はされないと確信している。

2万%ない(笑)と思うが、もし社長に復帰されることがあるならその時は心底軽蔑する。
まず、2005年での上場廃止の株主への責任を取っていないこと、
次に今回の大量解雇の責任を取っていないこと、
以上、2点の責任があるためだ。

まあ、そんな事態は起きないだろうけど。

[公式]Reflect/リフレクトワッフルツィードノーカラージャケット(ネイビー(093))201441w Ladies レディース WORLD ONLINE STORE ワールドオンラインストア
[公式]Reflect/リフレクトワッフルツィードノーカラージャケット(ネイビー(093))201441w Ladies レディース WORLD ONLINE STORE ワールドオンラインストア

【送料無料】TAKEO KIKUCHI パイルジャージジャケット タケオキクチ
【送料無料】TAKEO KIKUCHI パイルジャージジャケット タケオキクチ

【送料無料】TAKEO KIKUCHI クールマックスカノコシルケットポロシャツ タケオキクチ
【送料無料】TAKEO KIKUCHI クールマックスカノコシルケットポロシャツ タケオキクチ

アパレル業界の実店舗偏重は非論理的

 実店舗での買い物というのは実物を触れるというメリットがあるが、そこまでわざわざ時間をかけて出かけなくてはならないというデメリットもある。また自転車か徒歩で行く以外は何某かの費用が発生する。
交通費なりガソリン代なりである。

実物を触れないというデメリットがある反面、インターネット通販は移動の時間と交通費が不要である。
送料が必要なところと不要なところがあるが、送料不要なら買い物客側とすればありがたい。

洋服を買う場合、筆者はあまりインターネット通販を使わない。
生地が触れないのと試着できないからである。
ただし、一度試着した商品をときどきインターネット通販で買う場合がある。
時間がなくて実店舗へわざわざ出向けないためだ。

実店舗で買う割合の方が高いとはいえ、そんな感じで使い分けている。

Aというブランドからすると、筆者がネットで買おうが実店舗で買おうが同じである。
どちらで買ってもAというブランドの売上高になるからだ。
理屈で考えるとそうなる。
しかし、理屈と感情は異なる。
繊維・アパレル業界は理屈よりも感情や情緒が優先されることが多い。
だから業界の体質はまったく嫌いである。

そんな業界だから情緒的に実店舗を優先してしまう。
ネットで売れようが、実店舗で売れようが社としての売上高は同じだろうに、なぜか実店舗を優先したがる企業が多い。

例えば、筆者が値下がりしたユニクロのTシャツ990円を実店舗で買おうがネット通販で買おうが、ユニクロには990円のお金が入る。
それだけのことである。筆者が経営者ならどちらで売れたってかまわない。
にもかかわらず、アパレル企業の中には実店舗を「主」、ネット通販を「従」として考えているところが少なくない。
ネット通販での売上高が増えることに対して批判的な企業すらある。
これはまったく理解できない。まさしく単なる情緒論であり、考慮する必要すらない。

先日、WWDにこんなコラムが掲載された。
ワールドやTSIホールディングスの大量閉店についてである。
内容的には全てとは言わないがそれなりに正しい。

大手アパレル相次ぐリストラ、大量出店戦略は曲がり角に?
http://www.wwdjapan.com/focus/column/business/2015-06-21/6219

この文末で、ワールドがネット通販強化を打ち出したことに触れている。

ワールドは店舗を減らす一方でEC事業に注力する。「“WWW.300(ワールドワイドウェッブ300)”を合言葉に、現状の2倍の300億円の売上高目標を立てる。全ブランドを集約した現在のオンラインストアの回遊性を高めるだけでなく、各ブランドの公式サイトを入口にしたEC事業を強化する。EC主導のブランド立ち上げも視野に入れている」と上山社長。

とある。
これはすでに発表された内容だし、そういう施策は間違いではない。
ところが最後はこう結ばれている。

ただEC化率を上げれば、コストが抑制され、収益力アップにつながるが、リアル店舗のショールミング化が進み、店頭の活気やスタッフのモチベーションが下がるというデメリットもある。真のオムニチャネル化により、店頭とECの双方向性を高めることが求められる。

とのことだが、ショールーミング化が進むのがなぜデメリットなのだろうか?
この理屈が理解できない。

ワールドからすればリアル店舗で売れようが、ネット通販で売れようが同じ自社の売り上げである。
店頭の活気というのはなんだろうか?ネット通販がなければリアル店舗の店頭が活気づくのだろうか?
そんなことはあるまい。そのブランドが不振ならネット通販があろうがなかろうが店頭には活気がない。
スタッフのモチベーションが下がるのは社内の教育が間違っているかそのスタッフが正しく考える能力がないかのどちらかである。
もしくはその両方だろう。

正しく考える能力が欠如したスタッフに対して間違った教育を施したという場合もある。

ちょっと持ち上げすぎのきらいもあるが、ヨドバシカメラのネット通販が好調なのだそうだ。
年間売上高は650億円に上り、現在成長中だという。

ヨドバシの通販がアマゾンを超える?「来店客にネットで買わせる」巧みな戦術で急成長
http://biz-journal.jp/2015/05/post_9959.html

「ヨドバシ」の方向性はそれとも違う。リアルからバーチャルに誘導する、つまり「実店舗に来たお客さんに、ネットで買ってもらう」という戦略だ。売り場で見た商品をネットで買われたとしても、ヨドバシカメラ全体として売り上げが上がるのであれば、それでかまわないということである。

とのことである。

これはまことに理論的な考え方である。
どちらで売れようがヨドバシカメラの売上高である。

なぜアパレル企業はこう考えられないのだろうか。
また繊維業界紙記者はこう考えられないのだろうか。

理論的な思考ができる企業はやはり売り上げ規模を拡大しやすい。
アパレル業界が衰退しているのは理論的な思考ができない企業や人が多すぎるためだろう。

今の情緒論丸出しのアパレル業界は、家電量販店にも遠く及ばない。
衰退すべくして衰退したとしか言いようがない。

【50%OFF】【送料無料】UNTITLED ストレッチツイルシングルジャケット アンタイトル【RBA_S】【RBA_E】
【50%OFF】【送料無料】UNTITLED ストレッチツイルシングルジャケット アンタイトル【RBA_S】【RBA_E】

【SALE セール】[公式]UNTITLED/アンタイトルカラーレスジャケット(ホワイト(003))201507w Ladies レディース WORLD ONLINE STORE ワールドオンラインストア
【SALE セール】[公式]UNTITLED/アンタイトルカラーレスジャケット(ホワイト(003))201507w Ladies レディース WORLD ONLINE STORE ワールドオンラインストア

【50%OFF】【送料無料】UNTITLED [L]ジャージテーラードジャケット アンタイトル【RBA_S】【RBA_E】
【50%OFF】【送料無料】UNTITLED [L]ジャージテーラードジャケット アンタイトル【RBA_S】【RBA_E】

低価格ブランドにこそ「色落ちしないジーンズ」の需要がありそう

 昨日、60歳前後と思しき女性(俗にいう大阪のオバハン)が、「ジーンズを買って穿いたら、ほかの衣服への移染がひどかった」と嘆いていたことを書いたが、たまたま、ニュースサイトにこんな記事がアップされていた。

【疑問】ユニクロで買った2990円のジーパンがダサいとこっそり言われたんだけどやっぱりダサいと思う?
http://rocketnews24.com/2015/06/24/599526/

unicrog4

ユニクロで淡色のジーンズを買ったら、「昔のケミカルウォッシュみたいでダサい」と言われたそうだ。
で、なぜ淡色のジーンズを買ったのかというと、

正直に告白する。実は買うときにちょっと色が浅いなとは思っていた。だが、それを買わずにいられなかった。というのも、以前買った安物の濃い色のジーパンが、色が落ちまくったからである。次は薄い色にしようと決めていた。

のだそうだ。

60代女性もこのニュースの男性も誤解しているのだが、ジーンズが安いから色落ちするのではない。
高いジーンズだって濃色はハゲシク色落ちする。
デニム生地とは元来、色落ちするものだからである。

これだけ多くの人がジーンズを穿くようになってもまだこのことが周知されていないことに驚く。
また、周知されず、デメリットを感じる人が多くいながらも、毎年少なくない一定数量が販売されるジーンズというアイテムの人気の底堅さにも驚かされる。

色落ちを少なくしようと思えば生地に何らかの加工を施さねばならない。
そういう加工を施していないデニム生地は高かろうが安かろうが濃色であれば激しく色落ちする。
そういうものである。

下手をすると高いジーンズの方が「色落ちを楽しんでいただくため」にハゲシク色落ちするかもしれない。

で、今回のジーンズがダサいと言われた理由は、2つある。
まず、淡色にビンテージジーンズ風のヒゲ加工がなされており、淡色でありながらメリハリのある色の濃淡がある。これが、ケミカルウォッシュ風に見えてしまった。

次に、ジーンズのシルエットである。お腹周りに合わせたのか太目のダボっとしたシルエットである。
現在のメンズジーンズの主流は細身のストレートか、細身のテイパードシルエット(裾に向かって細くなる)である。
もっと細身のジーンズにすれば良かったのではないか。

この2つが絶妙に相まって「ダサく」見えたのだと思う。

もし、このジーンズが濃紺のワンウォッシュだったらそこまでダサくは見えなかっただろう。
あと、トップスに色あせた黒っぽいTシャツを合わせているのもダサく見えたのかもしれない。
たとえば白いTシャツとかもっと濃色の黒のTシャツ、濃紺のTシャツならマシだったのではないだろうか。

あと、布帛のシャツやポロシャツにした方がよりすっきりと見えてダサくなかったのではないか。
まあ、それでも色柄の選択は重要だが。

こういう嘆きを見ていると、色落ちしないデニム、色落ちしにくいデニムというのも必要ではないかと感じてくる。
エドウインが色落ちしにくいデニム生地を使ったシリーズ「キープブルー」という商品を発売したが、残念ながら今秋以降は生産を継続しないようだ。
すでにジーンズメイトで5900円に値下げして販売されていた。
廃盤になるまでに2本くらい買っておきたいと考えている。

もっと大々的に、それこそユニクロくらいが「色落ちしないジーンズ」のキャンペーンを仕掛けて打ち出せば飛ぶように売れるのではないかと想像してしまう。
ちょうど、昨日書いた年配女性も、このニュースの男性もユニクロと同等価格のブランドかユニクロで買っているのだから、ターゲットとしてはぴったりだ。
むしろ、洋服にこだわりの少ない低価格志向の消費者には大歓迎されるのではないか。

ユニクロに限らず、しまむらとか無印良品とかハニーズとかでもありだろう。
もしかしたら「トップバリュ」とか「PBI」「グッディ」などの量販店のプライベートブランドでも良いかもしれない。
そういう低価格ブランドが一斉に仕掛けたら面白いと思うのだが。




「本物」への過剰なこだわりはイノベーションを生まない

 先日、バッタ屋の店頭に立っていたとき、60代と思しき女性(俗にいう大阪のオバハン)がストレッチパンツを購入した。
ポリエステル主体の組成の生地でモカ茶色である。

で、その女性が

「ニイチャン(筆者は見るからにオッサンだが、大阪のオバハンは大概のオッサンにもこう呼びかける)、聞いてえな。こないだ他店でジーパン買って穿いたら、上に着てたシャツの裾とかに真っ青に色移りしてん!そんな商品どない思う?」

と先日、他店で購入したジーンズから色移りしたことに大層お怒りだった。

インディゴ染料で染められた糸で織ったデニム生地は、移染する。
ワンウォッシュくらいの濃紺のデニム生地を洗濯機で洗えば、水は真っ青になる。
これは常識である。
だから販売の際にはかならずそういう説明をせねばならない。

そういう意味ではデニム生地はめんどくさい生地である。
イージーケアとは言いにくい。

どんな店でその女性が購入したのかしらないが、おそらく販売員が「色移りする可能性がありますよ」という説明をしなかったのだろう。
やっぱりそういう説明は大事である。

一方、生地の展示会では、折からのデニムトレンドを背景に、「デニム調」生地の提案が多い。
ただし、インディゴ染料で染めているものばかりではない。
どちらかというとそれは少数派である。

生地の展示会で提案されている「デニム調」生地は、インディゴ以外の染料で濃紺から薄ブルーに染められているものが多い。
担当者にその理由を尋ねたところ「さまざまな理由はあるけど、移染しない・しにくいという理由もあります」とのことだった。

現在はジーンズというアイテムが年配層にまで愛用されるようになったが、まだこのような移染に激怒する人というのも相当数存在する。

となると、反応染料で紺色に染めた色移りしにくいデニム調生地を使ったジーンズという商品を考えても良いのではないか。
その際「洗濯で色移りしにくいイージーケアジーンズ」みたいな打ち出しにするなら効果があるのではないか。

日本のジーンズメーカー、デニム生地メーカーから久しく斬新な商材が生まれていないのは、いわゆる「本物」にこだわり過ぎているからではないか。
「本物」の存在は重要ではあるが、不便な「本物」よりも便利な「偽物」を好む消費者も少なくない。

各メーカーが、「うちの売上高はずっと5億円のままで構いません」というなら「本物」にこだわった商品を作り続ければ良い。しかし、そうではなくて「うちは拡大再生産を続けて、売上高を伸ばし続けたいです」というなら、そういう利便性のある「偽物」商品の開発も必要ではないか。
「本物」にこだわり過ぎるのはかえって足を引っ張るのではないか。

即完売!亀の子束子が生んだすごいスポンジ
抗菌とデザインにかける執念
http://toyokeizai.net/articles/-/73987

この記事を読むとさらにその思いを強くする。

歴史ある亀の子束子のメーカーが、機能的なスポンジを開発したという内容である。
これが繊維・衣料品メーカー的思考なら、束子にこだわって、今までよりもさらに素材と製法にこだわった「究極の本物」の束子を開発してしまうところであろう。

「創業当時に使われていたこだわりの〇〇という材料を、これまた創業当時のこだわりの〇〇という製法で仕上げました。その究極の本物の束子をどうぞ。その代わり価格はバカ高いです」

なんてことをやらかしそうである。

しかし、亀の子束子は定番として継続しつつ、新商品としてスポンジを開発したのである。
老舗にしてこの柔軟な姿勢は敬服せざるを得ない。

ビンテージだ、本物だ、伝統の技法だ、に過度にこだわっているうちは国内ジーンズブランドが再浮上することは難しいだろう。

【送料無料】岡山 児島発デニム ETERNAL オリジナルタイトストレートワンウォッシュ/ETERNAL 883【日本製 エターナル ジーンズ ワンウォッシュ ヴィンテージジーンズ】
【送料無料】岡山 児島発デニム ETERNAL オリジナルタイトストレートワンウォッシュ/ETERNAL 883【日本製 エターナル ジーンズ ワンウォッシュ ヴィンテージジーンズ】

【送料無料】岡山 児島発デニム ETERNAL セルビッチ5ポケットストレートジーンズ(ワンウォッシュ)/ETERNAL 811【日本製 エターナル ジーンズ ワンウォッシュ ヴィンテージジーンズ】【楽ギフ_包装】【楽ギフ_メッセ入力】
【送料無料】岡山 児島発デニム ETERNAL セルビッチ5ポケットストレートジーンズ(ワンウォッシュ)/ETERNAL 811【日本製 エターナル ジーンズ ワンウォッシュ ヴィンテージジーンズ】【楽ギフ_包装】【楽ギフ_メッセ入力】

【送料無料・米国製】リーバイス LEVI'S 551ZXX 1962年ジッパーモデル コーンミルズ セルビッジデニム リジッド LEVI'S VINTAGE CLOTHING 19621-0001 復刻版 ヴィンテージジーンズ【smtb-tk】
【送料無料・米国製】リーバイス LEVI’S 551ZXX 1962年ジッパーモデル コーンミルズ セルビッジデニム リジッド LEVI’S VINTAGE CLOTHING 19621-0001 復刻版 ヴィンテージジーンズ【smtb-tk】

その値段を本当に「買いやすい」と思っているの?

 「買いやすい価格に設定した」

業界紙やファッション系ウェブメディアでよくこんな表現が使われるが、その大半以上はとても買いやすい価格とは思えない値段設定となっている。

ブランド側は本当にその値段が買いやすいと考えているのだろうか?
だれにとっての買いやすい値段なのだろうか?

ブランド側と消費者意識のズレを感じることが多い。

例えば、6月18日のファッションスナップドットコムに掲載された「クラネ」というブランドの記事だ。

http://www.fashionsnap.com/news/2015-06-18/clane-debut-collection/

以前から交流があるというヨシロットン(YOSHIROTTEN)のアートワークを落とし込んだスウェット(14,000円)、フーディ(16,000円)、iPhoneケース(7,900円)も発売される。価格帯はトップスが7,900円〜12,000円、ニットが13,000円〜24,000円、ボトムスが15,000円〜25,000円、アウターが39,000円〜69,000円、オリジナルの木型を使ったシューズは26,000円〜39,000円で、「普段高いものを買っている人には『このクオリティでこのプライス』と驚いてもらえて、そうでない人には頑張ったら手が届くような、使いやすくて買いやすいプライスレンジにしました。ハイプライスゾーンのアイテムにも組み合わせて着てもらえる、新しいジャンルを確立していきたいです」という。

とある。

この価格帯は果たして「買いやすい価格帯」だろうか?
低所得者たる筆者には到底そうは感じられない。
まあ、ターゲット層は筆者のような低所得者ではなく、これを安いと感じる高額所得者なのだろう。

ちなみに筆者は個人的にこの「クラネ」ブランドを否定的に見ている。
そのわけは後で述べるが、商品写真を見る限りにおいてはとてもじゃないが「新しいジャンル」とはなりえないと感じる。ありきたりなテイストのありきたりな価格帯のブランドに見える。

同じく価格帯で疑問を感じるのが、6月4日の繊研プラスに掲載されたビーミングライフストアである。

http://www.senken.co.jp/news/company-news/bminglifestore-madeinjapanline/

30代の家族を主力ターゲットにした同じSC内の他業態と差別化するため、定番のウエアや雑貨でメード・イン・ジャパンの新ラインを投入することにした。

カットソー(6900円)は大阪のメーカーで作り、スエット(1万1000~1万3000円)は和歌山のつり編み機で生産、ボタンダウンなどのシャツ(9500円)は千葉、デニムアイテム(ジャケットで1万3500~1万5000円)とチノパン(1万1000円)は岡山、ニット(9000~1万1000円)は群馬のニッターが「ホールガーメント」機で生産した。

とあるが、低価格ブランドがそろうショッピングセンターにおいて、いくら「日本製」だとはいえ、この価格帯が売れるとは考えにくい。
もちろん、有名コンサルタントが指摘するように、従来の定番品と別に「日本製ライン」と分けて陳列することで売ることは可能だろうが、ショッピングセンターで購入する層にとって、この価格帯は「高すぎる」と感じられるのではないか。

百貨店やファッションビル内ならまた話は変わるが、ショッピングセンター内ではこの価格帯はなかなか厳しい展開になるだろう。

筆者はどちらのブランドも価格設定は、自社の都合ないしは自社の自己満足に過ぎないのではないかと感じている。

果たして、実際に自分たちが消費者となったときその価格を「買いやすい」と思うのだろうか?

さて、先ほどの「クラネ」に話を戻すとなぜ否定的なのかというと、ブランドロゴと商品テイストがセリーヌに酷似しているからだ。
ブランドロゴのフォントが似ている例としては、ライトオンとハニーズが思い浮かぶが、アルファベット表記すると全く異なる。
「Light on」と「Honeys」である。

しかし、クラネの場合はカタカナ表記だと全く異なるが、アルファベット表記だと
「Clane」となり、「Celine」と類似している。その上、フォントまで似ていると、一瞬どちらか判別しにくい。
二つのブランドのロゴを並べてみる。

11208056_645632928904957_954151277_n

(クラネのロゴ)

CELINE

(セリーヌのロゴ)

すでにこんなまとめもネット上にはある。
断っておくがこれは筆者がまとめたものではない。

えっ?セリーヌ? 元エモダ松本恵奈が新ブランド「クラネ」立ち上げ
http://www.margoi.com/2015/05/blog-post_44.html

早い時期からそう感じた人は多いということであろう。

商品のテイスト自体にもセリーヌっぽいという声もある。
そうなると異なるのは価格帯ということになる。
もちろん「クラネ」の方がずっと安い。
そういう思い込みを抜きにしても写真で見る商品はベーシックなカジュアルであり、そこに斬新さはない。
斬新であれば良いというわけではないが、斬新さのない商品で「新しいジャンルを作りたい」と言ってもそれは無理ではないかと思う。

人間だれしも作り手側になると、作り手の論理で価格設定してしまう。
これは別にブランドだけではなく、産地の製造加工業者だって同じだ。
産地企業の自社企画ブランドがなかなか上手く育たないのは作り手の論理のみでの構築が多すぎるからだ。

自戒も込めて、本当に気を付けなくてはならないと感じる。




小規模ブランド、個人商店ほど毎日ブログを書くべき

 今日はちょっとというか、かなーりお気楽に。

筆者はもともとそんなに趣味がない。
読書したりテレビでアニメや特撮を見たりすることが多いが、それは趣味といえるのだろうか。
趣味というともっとかっこいいものではないのかと思う。

これも趣味と言えるかどうかわからないが、何年か前から月に1度くらいガンダムのプラモデルを作る。
色を塗ったり、削ったりパテで埋めたりなんていうのは面倒くさいのでほとんどしていない。
説明書通りに組み立て(これを素組みという)、せいぜい、筋彫りに沿って黒のマーカーを走らせる程度である。

保管場所に困るのと価格が高いので、大き目の100分の1サイズはあまり買わない。
価格が安くて小さ目の144分の1サイズをもっぱら買う。

35年くらい前のガンダムブームのころにプラモデルを買っていたが、当時のプラモデルというのはほとんど可動域がゼロだった。
早い話が動かせない。もちろん、劇中のポーズなんて取らせられるはずもなかった。

今のプラモデルは本当にすごい。
色なんて塗らなくてもほぼアニメの設定画通りの立ち姿だし、関節の可動域も広がっており、劇中のポーズ通りに動かせる。

そんなわけで10年くらい前から再び作るようになった。

おもちゃメーカーの陰謀なのか、ガンダムのプラモデルは毎月新商品が何種類か発売される。
全部買っていたら破産してしまうのでその中から取捨選択を行う。

人によってこだわるポイントが異なるが、筆者の場合は、立ち姿が設定画にどれだけ近いか、あとはどれだけ可動域が広いかである。
発売と同時に買ってはみたものの、思っていたほどの出来ではなかったという場合も何度かあった。

5年ほど前から、ウェブでレビューを見てから買うようになった。
当初はアマゾンなどの通販サイトに書かれているレビューを読んでいたが、3年ほど前からは幾人かのモデラーさんのレビューブログを読み比べてから買うようにしている。

定期的に5~6人のモデラーさんのブログを拝読しているが、その中でもっとも参考になるのは、自分の評価をきちんと書いてくれている人である。
たまに、やけに辛口な評価を書いている場合もあるが、そこには明確な基準がある。
逆にすべての商品を褒めているブロガーさんはあまり参考にしない。
なぜなら、正直に書いているとは思えないからだ。

そんなわけで、今月18日に発売されたHGUCガンキャノンを買った。
HGUCシリーズにはガンキャノンがすでにあるが、99年の発売以来、16年が経過しており、その間にプラモデルの製造技術も長足の進歩を遂げている。現在からすると99年モデルは可動域が狭すぎる。
そこでリバイブシリーズと称して、古いキットの改良版が発売されることになった。
ガンキャノンはその第1弾である。

これがその写真である。

写真 11

こんな動きまでできちゃう。( ̄ー ̄)ニヤリッ

写真 22

で、何が言いたいかというと、発信においてブログはやっぱり重要だということである。

同じ日にディジェという機体のプラモデルも発売されたが、こちらはレビューブログを読んで購入をやめた。
デザイン的な制約もあるのだが、下半身の可動域が著しく狭かったためだ。

今回はガンプラの話を書いているが、これって衣料品でも同じではないだろうか?
衣料品以外の商材でも同じではないか?

新しい商品が発売された、新しいブランドが立ち上がった、その時、消費者はレビューやブログを参考にして購入を決めるのではないか。
とくに高額品であればあるほどそうするのではないか?

以前にも書いたが、筆者なんてユニクロの値下がり品を買うときですら、ユニクロの通販サイトからレビューを読んでから決める。

店頭での雰囲気が、とか、並べたときの世界観が、だとか、店作りやディスプレイの美しさ・見事さ、だとかだけで勝負するというのは無謀にすぎるだろう。
それで商品がバカ売れするなら、だれも販促・広報活動などする必要がない。

零細・小規模ブランド、個人経営の商店ほどブログを書くべきである。
なぜなら、大手新聞、雑誌はもとより業界紙にすらあまり掲載されないからだ。
掲載されないなら自分で発信するほかない。

「何を書いたら良いかわからない」という声を耳にすることがあるが、それは書く内容があるのに気が付いていないだけである。

そのうちに「ブログの書き方講座」でも開催してみようかな。(笑)




アパレル業には4つの側面が求められる

 繊維・アパレル業界というのは、多面的である。
少なくとも4つくらいの面があり、それぞれの一面だけを実現しても成功しない場合が多い。
まれに一面だけで成功するブランドや企業もあるが、その成功は概ね長くは続かない。

まず、製造するという意味での工業的側面
次に販売するということでの商業的側面
トレンドに則ったファッション性がなければ売れないからファッション的側面
そして、金融的・経済学的側面

である。

人によってはもっと違う側面を発見するかもしれない。

少なくともこの4つがある程度噛み合わないことにはそのブランドなり企業は成功できない。

しかし、繊維・衣料品業界に属する人間の多くは筆者も含めて4面すべてに精通していない。
とくに金融的・経済学的側面が苦手である。

ただし、工業的側面・商業的側面・ファッション的側面の3つがクリアできれば中規模ブランドくらいまでには成長できる。

現実的に筆者がかかわった人たちを思い返すと、その多くは、どれか一つだけを持って現状を打破しようとして失敗している。

失敗は言い過ぎかもしれないが、それは事業の成長には結びついていない。

産地のおっさん連中は工業的側面だけで何とかしようとしている。
しかし、商業面とファッション性が伴っていないので、そんな商品は売れるはずもない。
衣料品とは物性面だけでは購買動機にはならないからだ。

グローバルSPAとして有名なZARAは自社縫製工場を所有している。
工場からの出発が原点であるから、我が国の国内製造業者だってZARAのようになろうと思えばなれる可能性はゼロではない。
ある有名な業界のコンサルタントが「国内業者さんからZARAのようなブランドが生まれることを期待します」と書いておられたことがあったが、筆者には単なるリップサービスとしか感じられなかった。

国内製造業者がそうなれるチャンスは過去に何度かあったがそれをモノにできたところは少ない。
これまでできなかったことが今後急速にできるようになるとは考えられないからだ。
それこそ経営者が更迭されるくらいでなければ。

閑話休題

衣料品ブランドに多いのが商業的側面かファッション性側面のどちらか、もしくはその両方で事業拡大を模索することである。

売ることとファッション性に長けていれば、当初はそれなりに売れる。
けれども商品が売れれば、必ず追加生産が生じるし、次シーズンにはまた一からの商品生産が必要になる。
このときに工業的側面が理解できなければ、追加生産も次シーズンの新商品も満足に生産できなくなる。

最近ではこれを知らなくても商社の製品事業部やOEM・ODM企業が掃いて捨てるほどあるから、金を出して彼らに頼めば商品は生産できるようになっている。
しかし、ブランド側がそれを理解しないまま依頼するから、わけのわからないオーダーが増えている。

例えば
「1ミリの縫製のズレも許さない」とか
「生地から別注生産したいが納期は1カ月後だ」とか
「ジーンズにウォッシュ加工を施しても少しの色ブレもダメだ」とか

そういう類の無理難題である。

少しでも生産のことを知っていればこんなお馬鹿な発言は出てこないはずである。

生産のことを知りすぎてはいけないというが、生産のことを知らなさ過ぎてもそれは害悪である。

さて、4つ目の金融的側面である。

良い物を作って上手く売っていても、それだけではなかなか事業は拡大できない。
そこから得られる利益なんていうのはたかが知れているし、その利益をいくら貯めてもなかなか事業に仕えるほどの額までには至らない。

そうすると、卸売り業態にしろ、SPA業態にしろ、小売店にしろ、大規模に拡大するためには金融の力が必要になる。
そしてそこの知識が筆者も含めて業界人のほとんどが無知である。
無知だから、「こんなカッコイイ商品を作っているブランドがどうして倒産するんだ?」みたいな情緒感しかないコメントが方々で湧き出すのである。

金融を活用できたブランドだけが大規模に成長できている。
そういえば、某セレクトショップは金融系の人間を副社長に引っ張ってきて、大手総合商社のバックアップを受け2000年代前半の上場を目指していたが、結局は非上場のままグダグダしながら、先ごろ大手グループに入った。
これなどは、金融を活用する気はあったが経営者自身がそれに適合できなかった例だろう。

最近ではそんな野心を持つ業界人も少なくなったが、もし、大規模に事業を成長させたいと考えるなら金融や経済学の勉強と知識は不可欠である。

大学では経済学部はあるが、ファッション専門学校にはない。
本来は専門学校でも教えるべきだと思うが、ファッション専門学校に進学する生徒を見ていると、こういうことにはまったく興味がなさそうである。

そういう意味では業界の求める人材と、業界に入りたい人たちの持つ性質とは著しく合致しないといえる。

ユニクロ対ZARA
齊藤 孝浩
日本経済新聞出版社
2014-11-20



高価格品の少量販売というモデルは主流にならない

 ユニクロをはじめとする低価格グローバルSPAブランドの成長を背景として、
「低価格はグローバルSPAに任せて、アパレルブランドは良い物を高く少量で売るモデルを目指すべきではないか。良い物を何年も修理して使うような消費活動が主流になるのではないか」
という意見を耳にすることがある。

我が国は経済活動の自由が認められている国であり、今後、そういうブランドが起業される可能性はある。
またそういう性質のブランドが多数生まれる可能性もある。

しかし、グローバルSPAブランド以外のブランドすべてがそうなるということはありえないだろう。
もしそうなったとしたら、国内の繊維産業・アパレル産業は今以上に衰退する。

このモデルの代表例として挙げられるのが気仙沼ニットである。
被災地復興のビジネスとしてはたしかに一定の成果を上げたといえる。
しかし、これを現在のアパレルブランドに当てはめて事業転換させることは不可能であるし、もし、させてしまえばアパレル産業はさらに衰退するし、アパレルに原料を提供する産地製造業もさらに衰退してしまう。

なぜなら気仙沼ニットは単価も高いが生産数量が少ない。
1年間の生産量は一説によると150枚~200枚程度だといわれている。
商品の価格が仮に20万円だとしても150枚なら年間売上高は3000万円である。
それでどれだけの人数が生活できるのかということになる。

そしてこの手のブランドが主流になれば、低所得者はさらにグローバルSPAしか買えなくなるし、減少しつつある中間所得層もグローバルSPAブランドしか買えなくなるだろう。
少数の富裕層のみがそういうブランドで買うことになるが、その手のブランドが増えすぎれば今度は顧客の奪い合いが始まる。
無制限に高級品を買えるような富裕層はほとんどいないに等しいし、日本の富裕層は低価格ブランドだって購入するからだ。

低所得者・中間所得者は低価格のグローバルSPAブランドを買い、少数の富裕層だけが高級ブランドを買う。
これは社会格差の激しい欧米と同じ構図であり、そういう社会を望んでいるのだろうか。

また、グローバルSPAブランド以外はすべて少量生産ブランドになってしまうと、ブランドへ生地を納入したり、縫製を行うような産地製造業は今以上に衰退する。

生地製造業も染色加工業も縫製業もアジアの工場と比べるとロットは小さいが、量産が基本なのである。
だからこそミニマムロットが設定されている。

例えば、デニム生地でいえば、ロープ染色で別注色を染めてもらった生地を作ろうとすると、最低でも5000メートルくらいのミニマムロットが必要になる。
これは何も製造業側が楽をしたいから言っているわけではない。
原価とか物性の安定性からそういう数字をはじき出しているのである。

縫製業だってアイテムによって少しずつ異なるがミニマムロットはある。
1型3サイズ別(各サイズ約30枚ずつ)で100枚というのがだいたいの国内工場の相場であり、1型サイズ込みで20枚とか30枚という枚数は嫌がられるし、工賃も高くなる。
またあまりに少量だと縫製の物性も安定しない。

生地メーカーは10メートルだけの特注生地を織るよりも、最低でも1反(50メートル)は織りたい。
できれば数反は織りたい。

そして工場は毎日、毎月稼働し続けなくてはならない。
少数でも従業員がいる工場はとくにそうだ。
稀に家族だけで動かしている工場がある。
暇なときは止めて、仕事が入れば動かすということができるのはこういう工場である。

年に何度かしか服が売れないようなブランドばかりになると、工場は従業員を雇えない。
家族だけでの運営ということになるだろうから、雇用に対しても悪影響を及ぼす。

またアパレル側でもそういうブランドは年間に売れる枚数が決まっているから売上高はほぼ横ばいである。
となると、従業員の昇給はほぼ永遠にないということになる。

ただでさえ若者に不人気職種となりつつあるアパレルだが、昇給が望めないとなるとさらに業界への就職を希望する若者は減る。
就職希望者のない業種は間違いなく衰退する。

こういう高額商品を少量販売するブランドというのは、皮肉だが、大量生産・大量販売のブランドに囲まれているからこそ存在価値があり、そういうブランドばかり増えると逆に業界は疲弊してしまう。

即座に消えてしまう飲食物と、よほどのことがない限り存在し続ける衣料品とではさまざまな面が異なるが、同様に考えらえる部分もある。
大量生産・大量販売モデルの崩壊の例としてマクドナルドが挙げられる。
日本だけでなく米国本国でもマクドナルドは苦戦中だ。
一方、日本では同じハンバーガーでも少しだけ高額なモスバーガーは好調だとされる。

しかし、不調だとはいえ、日本マクドナルドの売上高は2200億円強だが、モスバーガーの売上高は660億円程度であり、4倍近い開きがある。

http://biz-journal.jp/2015/06/post_10399_2.html

さらにここから引用すると、

同じように、米国で高級グルメバーガーとして人気を呼ぶファストカジュアル・チェーン店であるシェイク・シャックは、自然の環境で放し飼いの牛の肉を使うことで急成長しているといわれる。しかし、14年度の売上高は1億1900万ドル、一方のマクドナルドは減少傾向とはいえ、まだ270億ドルの売上高を記録している。

とあり、1ドル=100円とするとシェイク・シャックは100億円、マクドナルドは2兆7000億円である。
これほどの開きがある。

この売り上げ規模の差は衣料品でも同じだろうし、逆に飲食でもモスバーガーが2200億円にまで、シャック・シェイクが2兆7000億円まで成長することはあり得ないだろう。

ただし、消費者のムードというか気分が変わっているのも事実である。

その消費者ムードに合わせて「高付加価値少量生産を建前、見せ球」としながら、ある程度の量産販売ができるブランドが今後は成長が可能ではないか。もちろん、価格は超高価格ではない。

言葉は悪いがきれいごとを建前・見せ球にしつつ、実際のところはそれを中価格で量産販売につなげることができるブランドが成長できるだろう。ただし、それはユニクロほどの売り上げ規模ではないことを蛇足ながら付け加えておきたい。

ウェブメディア活用をためらう国内繊維産業の滑稽さ

 アパレル企業の「ファッション雑誌偏重」は相変わらずだ。
アパレル企業を対象にしている広告代理店にもファッション雑誌偏重のところも多い。

ファッション雑誌の部数と影響力が一部を除いては格段に低下しているというのは常に指摘されているし、身を持って体感しているブランドも多いはずなのだが、それでも長年の習性というのは恐ろしいものでそれを改める気はないらしい。

実現可能なのかどうかわからないが、先日、雑談程度にこんな相談を受けた。
合繊メーカーとタイアップをしてレディースのフォーマルを発売するとしたらどんな媒体が良いのかと。

ここでいう媒体とはどうやらファッション雑誌を指しているらしい。
ちなみにこのときのレディースのフォーマルというのは、女性用の喪服みたいなのをイメージしていたようだ。

これが適合するファッション雑誌というのはちょっと思いつかない。
まあ、情報誌の方が良いのだろうかと思った。

そこで、ウェブ系のニュースメディアはどうかと提案してみたが、予想通り「担当者がウェブをやりたがらない」という答えが返ってきた。
アパレルの変わらぬ頭の古さに可笑しくなった。

実際にその商品が発売されるのかどうかは知らないが、ファッション雑誌がもっとも扱いにくい商材を持って「それでもファッション雑誌とやりたい」というのは、最早、滑稽であり笑い話の類である。

仮にこの構想が本当だとすると、大手企業である合繊メーカーと大手アパレルが共同開発する商材なのだから、一般紙や経済誌、そしてそれに類するウェブメディアが最も適切な媒体である。
そんなことも理解できないのがプレスや広報担当者なら、それは売上高が伸びなくても当然であろう。
適切な媒体が何かということすら判断ができないのだから。

「ウェブはちょっと・・・・」

という反応はアパレルだけではない。大手紡績・合繊メーカーも変わらない。

大手紡績の今秋冬向け展示会なんていう記事が掲載されるとしたらどんな媒体だろうか。
まずは業界紙である。
その次はまあ、ほとんどない。
まさかファッション雑誌には絶対に掲載されないし、掲載できない。
大手一般紙や経済誌が扱うネタでもない。
よほどの画期的な機能性素材が開発されていれば話は別だが、「〇〇綿を使って風合いをさらに良くしました」という程度のネタでは大手一般紙も経済誌も掲載するはずもない。
そんなことは過去何十年かの付き合いで分かっているはずだろう。

となると、業界紙以外に掲載してもらいたいのであればウェブメディアしか残っていない。

しかし、広報担当者や事業担当者の反応は「ウェブはちょっと・・・」である。

何をためらっているのかさっぱり理解できない。

そういう彼らは、出張が決まれば、電車の乗り換えや運賃を検索する。
飲み会が決まれば、ふさわしい店を検索するし、その店が初めてであるなら、その店のレビューを何件か読む。

そう、全部ウェブを使っているのである。

彼ら自身がウェブをこれほど使っているのに、それを認識していないのだろうか。

とくに飲食店を探す場合、そしてそこが行ったことのない店なら、絶対に食べログなどのサイトのレビューを何件か読んで判断を下す。
もちろん、食べログには「サクラ」みたいなヨイショレビューも多いし、反対に怨恨か何かで異様に低評価のレビューも多々ある。だからすべてを鵜呑みにする人間は少ないとは思うが、その中でも中庸のレビュー何件かを参考にする。

通販だってそうだろう。
アマゾンでも楽天でも購入する前にはその商品のレビューを何件か読んで判断材料の一つにするはずだ。
筆者はユニクロの通販サイトのレビューだって参考にする。

そして多分、毎日Yahoo!のトップページでニュースを読んでいるはずだ。

じゃあ、これを自社の業務に当てはめたらどうなるだろうか?

ウェブのどこにも出てこない新素材とかフォーマルウェアなんてどうだろうか?
もし、自身がバイヤーだったらそういう商材を何とか探し当てたいと考えるだろうか?

おそらくほぼ100%の人間がそこまでして、その新素材とかフォーマルウェアを探し当てたいとは思わないだろう。
ウェブ検索で出てくる新素材やフォーマルウェアの中から候補をいくつかに絞り込むだろう。

自身がウェブをこれほど使っているのに、他者はそうではないとよく考えられるものだと驚く。

こんな人たちが、ある程度の決定権を持つ管理職を務めていられるのだから、国内アパレル企業・国内の素材メーカーの業績が低迷するのもまったく不思議ではない。

Amazonアプリ
Amazon.com
2011-03-22



1 / 3ページ

©Style Picks Co., Ltd.