ウェブメディア活用をためらう国内繊維産業の滑稽さ
2015年6月17日 未分類 0
アパレル企業の「ファッション雑誌偏重」は相変わらずだ。
アパレル企業を対象にしている広告代理店にもファッション雑誌偏重のところも多い。
ファッション雑誌の部数と影響力が一部を除いては格段に低下しているというのは常に指摘されているし、身を持って体感しているブランドも多いはずなのだが、それでも長年の習性というのは恐ろしいものでそれを改める気はないらしい。
実現可能なのかどうかわからないが、先日、雑談程度にこんな相談を受けた。
合繊メーカーとタイアップをしてレディースのフォーマルを発売するとしたらどんな媒体が良いのかと。
ここでいう媒体とはどうやらファッション雑誌を指しているらしい。
ちなみにこのときのレディースのフォーマルというのは、女性用の喪服みたいなのをイメージしていたようだ。
これが適合するファッション雑誌というのはちょっと思いつかない。
まあ、情報誌の方が良いのだろうかと思った。
そこで、ウェブ系のニュースメディアはどうかと提案してみたが、予想通り「担当者がウェブをやりたがらない」という答えが返ってきた。
アパレルの変わらぬ頭の古さに可笑しくなった。
実際にその商品が発売されるのかどうかは知らないが、ファッション雑誌がもっとも扱いにくい商材を持って「それでもファッション雑誌とやりたい」というのは、最早、滑稽であり笑い話の類である。
仮にこの構想が本当だとすると、大手企業である合繊メーカーと大手アパレルが共同開発する商材なのだから、一般紙や経済誌、そしてそれに類するウェブメディアが最も適切な媒体である。
そんなことも理解できないのがプレスや広報担当者なら、それは売上高が伸びなくても当然であろう。
適切な媒体が何かということすら判断ができないのだから。
「ウェブはちょっと・・・・」
という反応はアパレルだけではない。大手紡績・合繊メーカーも変わらない。
大手紡績の今秋冬向け展示会なんていう記事が掲載されるとしたらどんな媒体だろうか。
まずは業界紙である。
その次はまあ、ほとんどない。
まさかファッション雑誌には絶対に掲載されないし、掲載できない。
大手一般紙や経済誌が扱うネタでもない。
よほどの画期的な機能性素材が開発されていれば話は別だが、「〇〇綿を使って風合いをさらに良くしました」という程度のネタでは大手一般紙も経済誌も掲載するはずもない。
そんなことは過去何十年かの付き合いで分かっているはずだろう。
となると、業界紙以外に掲載してもらいたいのであればウェブメディアしか残っていない。
しかし、広報担当者や事業担当者の反応は「ウェブはちょっと・・・」である。
何をためらっているのかさっぱり理解できない。
そういう彼らは、出張が決まれば、電車の乗り換えや運賃を検索する。
飲み会が決まれば、ふさわしい店を検索するし、その店が初めてであるなら、その店のレビューを何件か読む。
そう、全部ウェブを使っているのである。
彼ら自身がウェブをこれほど使っているのに、それを認識していないのだろうか。
とくに飲食店を探す場合、そしてそこが行ったことのない店なら、絶対に食べログなどのサイトのレビューを何件か読んで判断を下す。
もちろん、食べログには「サクラ」みたいなヨイショレビューも多いし、反対に怨恨か何かで異様に低評価のレビューも多々ある。だからすべてを鵜呑みにする人間は少ないとは思うが、その中でも中庸のレビュー何件かを参考にする。
通販だってそうだろう。
アマゾンでも楽天でも購入する前にはその商品のレビューを何件か読んで判断材料の一つにするはずだ。
筆者はユニクロの通販サイトのレビューだって参考にする。
そして多分、毎日Yahoo!のトップページでニュースを読んでいるはずだ。
じゃあ、これを自社の業務に当てはめたらどうなるだろうか?
ウェブのどこにも出てこない新素材とかフォーマルウェアなんてどうだろうか?
もし、自身がバイヤーだったらそういう商材を何とか探し当てたいと考えるだろうか?
おそらくほぼ100%の人間がそこまでして、その新素材とかフォーマルウェアを探し当てたいとは思わないだろう。
ウェブ検索で出てくる新素材やフォーマルウェアの中から候補をいくつかに絞り込むだろう。
自身がウェブをこれほど使っているのに、他者はそうではないとよく考えられるものだと驚く。
こんな人たちが、ある程度の決定権を持つ管理職を務めていられるのだから、国内アパレル企業・国内の素材メーカーの業績が低迷するのもまったく不思議ではない。