その値段を本当に「買いやすい」と思っているの?
2015年6月23日 未分類 0
「買いやすい価格に設定した」
業界紙やファッション系ウェブメディアでよくこんな表現が使われるが、その大半以上はとても買いやすい価格とは思えない値段設定となっている。
ブランド側は本当にその値段が買いやすいと考えているのだろうか?
だれにとっての買いやすい値段なのだろうか?
ブランド側と消費者意識のズレを感じることが多い。
例えば、6月18日のファッションスナップドットコムに掲載された「クラネ」というブランドの記事だ。
http://www.fashionsnap.com/news/2015-06-18/clane-debut-collection/
以前から交流があるというヨシロットン(YOSHIROTTEN)のアートワークを落とし込んだスウェット(14,000円)、フーディ(16,000円)、iPhoneケース(7,900円)も発売される。価格帯はトップスが7,900円〜12,000円、ニットが13,000円〜24,000円、ボトムスが15,000円〜25,000円、アウターが39,000円〜69,000円、オリジナルの木型を使ったシューズは26,000円〜39,000円で、「普段高いものを買っている人には『このクオリティでこのプライス』と驚いてもらえて、そうでない人には頑張ったら手が届くような、使いやすくて買いやすいプライスレンジにしました。ハイプライスゾーンのアイテムにも組み合わせて着てもらえる、新しいジャンルを確立していきたいです」という。
とある。
この価格帯は果たして「買いやすい価格帯」だろうか?
低所得者たる筆者には到底そうは感じられない。
まあ、ターゲット層は筆者のような低所得者ではなく、これを安いと感じる高額所得者なのだろう。
ちなみに筆者は個人的にこの「クラネ」ブランドを否定的に見ている。
そのわけは後で述べるが、商品写真を見る限りにおいてはとてもじゃないが「新しいジャンル」とはなりえないと感じる。ありきたりなテイストのありきたりな価格帯のブランドに見える。
同じく価格帯で疑問を感じるのが、6月4日の繊研プラスに掲載されたビーミングライフストアである。
http://www.senken.co.jp/news/company-news/bminglifestore-madeinjapanline/
30代の家族を主力ターゲットにした同じSC内の他業態と差別化するため、定番のウエアや雑貨でメード・イン・ジャパンの新ラインを投入することにした。
カットソー(6900円)は大阪のメーカーで作り、スエット(1万1000~1万3000円)は和歌山のつり編み機で生産、ボタンダウンなどのシャツ(9500円)は千葉、デニムアイテム(ジャケットで1万3500~1万5000円)とチノパン(1万1000円)は岡山、ニット(9000~1万1000円)は群馬のニッターが「ホールガーメント」機で生産した。
とあるが、低価格ブランドがそろうショッピングセンターにおいて、いくら「日本製」だとはいえ、この価格帯が売れるとは考えにくい。
もちろん、有名コンサルタントが指摘するように、従来の定番品と別に「日本製ライン」と分けて陳列することで売ることは可能だろうが、ショッピングセンターで購入する層にとって、この価格帯は「高すぎる」と感じられるのではないか。
百貨店やファッションビル内ならまた話は変わるが、ショッピングセンター内ではこの価格帯はなかなか厳しい展開になるだろう。
筆者はどちらのブランドも価格設定は、自社の都合ないしは自社の自己満足に過ぎないのではないかと感じている。
果たして、実際に自分たちが消費者となったときその価格を「買いやすい」と思うのだろうか?
さて、先ほどの「クラネ」に話を戻すとなぜ否定的なのかというと、ブランドロゴと商品テイストがセリーヌに酷似しているからだ。
ブランドロゴのフォントが似ている例としては、ライトオンとハニーズが思い浮かぶが、アルファベット表記すると全く異なる。
「Light on」と「Honeys」である。
しかし、クラネの場合はカタカナ表記だと全く異なるが、アルファベット表記だと
「Clane」となり、「Celine」と類似している。その上、フォントまで似ていると、一瞬どちらか判別しにくい。
二つのブランドのロゴを並べてみる。
(クラネのロゴ)
(セリーヌのロゴ)
すでにこんなまとめもネット上にはある。
断っておくがこれは筆者がまとめたものではない。
えっ?セリーヌ? 元エモダ松本恵奈が新ブランド「クラネ」立ち上げ
http://www.margoi.com/2015/05/blog-post_44.html
早い時期からそう感じた人は多いということであろう。
商品のテイスト自体にもセリーヌっぽいという声もある。
そうなると異なるのは価格帯ということになる。
もちろん「クラネ」の方がずっと安い。
そういう思い込みを抜きにしても写真で見る商品はベーシックなカジュアルであり、そこに斬新さはない。
斬新であれば良いというわけではないが、斬新さのない商品で「新しいジャンルを作りたい」と言ってもそれは無理ではないかと思う。
人間だれしも作り手側になると、作り手の論理で価格設定してしまう。
これは別にブランドだけではなく、産地の製造加工業者だって同じだ。
産地企業の自社企画ブランドがなかなか上手く育たないのは作り手の論理のみでの構築が多すぎるからだ。
自戒も込めて、本当に気を付けなくてはならないと感じる。