月別: 2月 2015 (1ページ / 2ページ)

セールスポイントが製造地だけの商品は絶対に売れない

 今日はいつもよりは手短に(笑)

現在の日本において、衣料品・服飾雑貨品でもっともステイタス性の高いのは「イタリア製」を筆頭としたヨーロッパ諸国製品だろう。
また一部の商品では米国製もそれなりにステイタスは高い。

関税やら何やらがかかって、欧米からのインポート商品はすべからく高額になってしまう。

しかしステイタス性が高いから高額な商品でもみなさんは喜んで購入しておられる。

とくに有名なブランドのネームが付いていればさらに値段は跳ね上がるが、それでも愛好者は喜んで購入する。

有名ブランド品は、ブランドとしてのステイタス性があるだけではなく、商品のデザインそのものも洗練かつ工夫されているし、それを包むパッケージやブランドロゴのデザインにまで気を配っている。
また広報・販促・プロモーション活動にも力を入れている。

だから高額でも多くの人は喜んで受け入れるのである。

さて、ここにまったく無名のイタリアブランドがあるとする。
商品のデザインや野暮ったいし、パッケージもモサっとしている。
ブランドロゴのフォントもなんだかヘンテコリンである。
広報・販促・プロモーションはまったくお粗末で、商店街のバッタ屋の方がまだ気が利いている。

しかし、「イタリア製」であり、価格だけはバカ高い。

こんな商品を誰が欲しがるだろうか?
いくら舶来物に弱い日本人でもこんな「イタリア製」を誰もほしいとは思わないだろう。

国内の産地企業も下請け仕事から脱するために様々な自社製品の開発に取り組んでいる。
そういう企画を年に何度も目にする機会がある。
しかし、残念ながらデザインはパッとしないものが多い上に、広報・販促・プロモーション活動はさっぱりである。
おまけにパッケージやブランドロゴにまではまったく気が回っていない。

しかし、今流行りの「日本製」であるため、高価格である。
さらに言えばブランドの知名度はほとんどない。

さて、こんな日本製品が売れるだろうか?
普通に考えればまったく売れない。事実売れていない。

にもかかわらず、産地関係者や行政、ひいてはマスコミまでもが「日本製」だから高額でも売れるだろうと考えてしまう。
どうして彼らがそう思えてしまうのか不思議でならない。

自分がそういうイタリア製ブランド品を買うかどうかを想像してみれば容易にわかりそうなものである。

いくらイタリア製とはいえ、デザインがダメでブランド知名度が低くて、広報・販促・プロモーション活動がお粗末なブランド品なら売れない。

日本製とてこれと同じである。

「日本製」はたしかにステイタス性があるが、商品そのもののデザイン、広報・販促・プロモーション活動、パッケージデザイン、ブランドロゴデザインなどがそれなりのレベルに達していないと、外国人も自国の富裕層も到底欲しいとは思わない。

この部分が想像できない工場や産地のブランドは、あと何十年活動を続けても市場で評価されることはない。
日本製というだけの単に高い商品は売れない。

高い日本製品を売るためには何が必要なのかを考えて、今後のブランド開発に取り組んでもらいたいと切に願っている。

日本製だから高額になる。
高額になるけど日本製だから売れるだろう。

そんな理屈は国内市場でも通用しない。
ましてや海外市場に通用するはずがない。

個店こそ高く売る方策を採るべき

 最近、めっきり個人経営で元気のあるブティックや専門店が減った。
1店舗しかない個店や数店舗規模のチェーン店で「すごく売れている店がある」なんていう噂はあまり耳にしなくなった。

専門店向けのアパレルの展示会に出向いても、販路たる専門店、ブティックが元気がないから、なかなか厳しそうである。

展示会でアパレル側に聞いてみるとそういう専門店、ブティックが求めている商品が

1、少しでも安い物
2、他店でも売れている物

である。

ここで少し考えてみたい。

まず個店が過剰に安さを追求する意味があるのかどうかである。
いくら安い商品を仕入れたといってもユニクロほどではない。
多くの場合、専門店アパレルが企画製造する商品は少なくともユニクロの2倍くらいの価格になる。
別に専門店アパレルが何の努力もしていないわけではない。生産のロット数の違いによるところが大きい。
昨今ではユニクロを下回る価格の商品を販売するSPAブランドも少なくない。
ジーユー、パレモ、フォーエバー21、ハニーズあたりはそうだ。
純然たるSPAではないが価格だけをみるなら、しまむらとアベイルもそうであろう。

こうなると、安さ追求はあまり意味がない。

少々安くしたところでどうせこれらのSPAには追いつけない。
例えば9800円の商品を7800円にしましたと言ったところで、これらのSPAが同じような商品を2900円とか3900円で販売しているわけだから、安い物が欲しいお客はそちらを買う。

次に他店で売れている物だが、洋服と言うのはトレンドがあるから、ある程度人気のある商品はデザイン的に似通ってしまう。
当然、他店で売れている物が自店でも売れ筋になり易いという要素はある。
しかし、昨今の展示会で見ていると、まるでトレンドでもなんでもない商品でも、「他店で売れているから仕入れたい」という個店がけっこういる。
トレンドでもなんでもない商品はいくら他店で売れているからと言って、自店で売れるとは限らない。

他店と自店でショップコンセプトが同じなのだろうか?
顧客層や中心プライスも同じなのだろうか?
これらが同じであるなら売れるかもしれないが、これらが違うならその商品を導入したところで自店では売れない可能性の方が高い。

某大手百貨店向けアパレルの役員クラスの人間が、素材メーカーに向かって「ユニクロでバカ売れしたあれと同じ素材をくれ」と言ったことがあるらしいが、まるっきり同じ短絡的発想である。
ユニクロとそのアパレルのブランドとは店頭販売価格も顧客層もブランドコンセプトも異なる。

そこまで異なっているならいくら使用素材が同じでも、ユニクロと同じ枚数が売れるはずもない。
さすがにこの短絡的役員も同じ枚数とは思っていないだろうが、通常の販売枚数を大きく上回ることはありえない。
もし、効果がある販促をするなら、「ユニクロのアレと同じ素材を使用しました」と自社ウェブサイトや店頭のPOPで大々的に謳うことだろう。
逆にそこまでプライドを捨てられるなら大したものである。
この大手アパレルを見直す。

大手チェーン店のように何十億、何百億の売上高を作らねばならないならこれらの手法もまったくの無駄ではないが、個店や数店舗のチェーン店ならこれらの手法はまったく意味がない。

それよりも如何に自店を個性化するか、物以外の「コト」を販売するか、顧客との関係性を強化するかに力を入れるべきである。

その手法は様々あるだろう。
顧客を招いてお茶会やパーティーを定期的に開催しても良いだろうし、店長やオーナーをキャラクター化してそれをどんどん発信しても良い。
ハッチャケたブログを毎日アップするのでも良い。

価格訴求と他店の売れ筋追随よりはずっとマシである。

数百円~1000円程度だがユニクロは値上げをした。
今秋には再値上げをする計画である。

デフレの象徴とされたユニクロが値上げをした状況下において、個店が何の効果もない価格訴求に血道を挙げたところで無意味である。

今は、個店こそ「高く売る」方策を考えるべきではないか。

「日本製」を取り巻くお寒い環境

 近頃、にわかに日本製衣料品が注目を集めているが、現状ではどこまでが純粋な「日本製」なのか正直にいうと疑問である。
全国の大半以上の縫製工場に中国やベトナム、フィリピンやミャンマーなどアジア諸国からの外国人研修生を雇用している。

また織布工場、染工場、洗い加工場も外国人研修生を雇用している。

先ごろ発表されたジャパンクオリティタグの定義にはこうある。

① 織り・編み、染色整理加工、縫製の3工程を国内で行った純正の日本製です
② 日本ならではの精緻な技と、無限大の豊かな想像力が注ぎ込まれています。
③ それぞれの工程でつくり手の顔が見える、安心・安全な商品です。

このうち、②について現状を鑑みるにつけても「どうなのかな~?」と疑問に感じる。

日本ならではの精緻な技というが、実際に手を動かしているのはアジアからの研修生である。
縫製なんて大半以上がそうであり、織布、染色、洗い加工の各工程でも外国人研修生が作業している場合がある。
となると、精緻な技とは外国人研修生の技ということにならないだろうか。
そう考える人がいても不思議ではないのではないか。

日本の工場で製造された物が精緻だといわれるのは、誰が手を動かしているかではなく、管理者や指導者が日本人であることが大きいのではないだろうか。
さすがに日本国内の工場で経営者や技術指導者が外国人になったという例は耳にしたことがない。

一方、中国や東南アジアの工場でも日本人が技術指導したり管理監督している工場は多々ある。
そうした場合、これらの工場が作る製品と国内で作られる製品とどう違うのかということにならないだろうか。
筆者には根本的な違いがわからない。

そしてこのことは③についても実情とそぐわないのではないかとも感じる。

つくり手の顔が見えるとあるが、そのつくり手は外国人研修生だときちんと表示するのだろうか。

一般的にジーンズ関連のアイテムは他のアイテムに比べて国産比率が高く、国産品の知名度も高い。
しかし、そのジーンズ関連の縫製工場だって外国人研修生を雇用している。織布、縫製、洗い加工とそれぞれの工程でだ。

ちなみに岡山県は全般的に外国人研修生の待遇が良いとされているが、実情は個々の企業で異なる。
平たくいうと、待遇の悪い企業もあるということである。

例えば外国人研修生の受け入れ資格を5年間停止された工場が岡山県にはあるが、そこは時給300~400円程度の待遇だったのが問題視された。
また、別の縫製工場もやはり時給300~400円待遇で10人以上の研修生が脱走したという。

平均すると待遇は良いが、中にはこういう悪待遇の企業もあるということである。

以上のようなことから、個人的には「日本製」ではなく「日本基準品質」タグの方が実情に沿っているし、普遍的ではないかと考えているが、まあ、このまま粛々と「日本製」ヨイショは続くだろう。
筆者は負け犬の遠吠えにすぎない。

こういう風潮から「日本製」というのが販促の一つの記号になりつつあると感じる。
販促の一記号化しているから勘違いした業界人も例によって増殖中である。

糸から全部国産でやりたいんだよね、なんてことを国産品に対して大した思い入れもないくせにのうのうと公言するような業界人がチラホラとあらわれている。
なら、なんで今まで国産品を使わなかったのかと失笑を禁じ得ない。

ちなみに原料にもよるが糸からすべて国産というのはかなり難しい。
先ほどのジャパンクオリティタグの定義にも原料と糸は入っていない。
原料は綿花にしろ絹にしろ羊毛にしろカシミヤにしろ麻にしろ、すべて外国からの輸入に頼っている状況である。(一部国産もあるがごく少量)

そして糸もすべてが日本製というわけでもない。
外国製の方がファンシーな意匠の糸も多い。
高級なセーターでイタリア糸使いの国産品なんていうのもある。

先日、知り合いが某展示会に出展したところ、いけ好かない風(筆者の想像)の50代くらいの男性バイヤーが訪れたという。
知り合いはネパール製の糸を使って、日本で染色、織布を行っている。
先ほどの定義に照らし合わせても日本製の認証を得る資格がある。まあ、1品番1万円も払うのがイヤだろうから認証を得ようとはしないだろうけども。

ところがこのバイヤーは「糸から国産でやりたいんだよね」と吐いて去って行ったそうだ。

如何にも薄っぺらい上っ面の業界人である。
業界にはこの手の薄っぺらい輩が掃いて捨てるほど存在する。
今後この手のペラペラに薄っぺらい上っ面の業界人はさらに増殖しそうであり、何ともウザったい話である。

国産品に注目が集まるのは喜ばしいことであるが、製造・加工の現場での慢性的な人手不足を解決しないことには、日本の繊維製造加工業はそう長くは続かない。
数年先どれだけの工場が存続しているか甚だ疑問である。
国産品ブームで浮かれていられる状態ではない。

製造・加工の現場で人手不足である最大の理由は工賃が安いからだ。
ここを解決しない限り工場は今後も減り続けるし、労働力も減り続ける。

中国の人件費高騰と円安で急速に国内工場に生産が戻りつつある。
しかし、各工場の工賃は横ばいだ。
横ばいならまだしも中にはさらに値下げするメーカーもある。

こういう状況では労働力が増えるはずもないし、工場はますます疲弊する。
何が「日本製ブーム」なのかと鼻で笑いたくなる。

まあ、これが現在の繊維・アパレル業界の実態である。

値上げしても客数を減らさなかったユニクロ

 先日、ユニクロが今秋冬物から再値上げを発表した。

ユニクロ2年連続値上げへ…円安や原材料高で
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150218-OYT1T50161.html

ユニクロを展開するファーストリテイリングが今年7~9月に順次発売する秋、冬物の一部で、平均5%程度値上げする方向で調整していることが分かった。

円安のほか、綿やウールなど原材料の価格高騰が要因だ。大規模な値上げは、2014年に続き2年連続となる。

 同社は14年4月の消費税率引き上げなどを受け、14年夏~秋に同社として初めて、ほぼ全商品を一斉値上げした。今回は、値上げ対象を半分以下に抑えたい考えだ。春物や夏物は原則、据え置くとみられる。

 値上げの対象は、繊維が長くて細い上質なコットンを使ったTシャツなど主力商品が中心となる見通しだ。最大1000円程度値上がりする商品もあるという。

とのことである。
値上げ対象となっているのは持って回った書き方をしているが、プレミアムコットンTシャツが中心ということだろう。半袖で1000円(税別)、長袖で1500円(税別)だったのが少し上がると考えられるのではないか。

さて、ユニクロの商品を見ていると、たしかに昨年秋物から値上がりしている。
メンズを例に出す。
ウルトラライトダウンジャケットは一昨年の秋から1000円値上がりしている。
一昨年秋は5990円だったが、昨年秋は6990円になっている。
しかし、一昨年秋は税込で5990円だったのが、昨年秋は税別6990円だから、正確には1559円値上がりしたことになる。
値上がり率は26%である。

また定番の無地スエットシャツ、いわゆる定番の無地トレーナーという商品だが、これが昨年秋まで1990円だったのが今春から2490円に値上がりしている。
500円の値上がりである。
さらに消費増税前の昨年3月までは税込1990円だったから、今春の税別2490円では約700円の値上がりであり、35・1%の値上がり率ということになる。

これに対して、暴利をむさぼっているとか、ユニクロは金持ちの普段着になってしまったという批判の声もあるが、筆者はそうは思わない。
ただ、低価格ブランドではなくなりつつあると感じている。
例えばウルトラライトダウンだが、今秋に再値上げをすると仮定すると、税別で7000円台の商品となる。
税込だと8000円台半ばということになる。

ダウンジャケットとしては低価格の部類だが、決して超低価格ではない。
ライトオンやジーンズメイトに並んでいるダウンジャケット類とほぼ同等の価格だ。
スポーツ・アウトドアブランドの中の低価格ラインとほぼ同等の価格と見ることもできる。

また見切り品を見ても値上がりしたなと痛感する。

これまでユニクロの見切り品はセーター類でも990円にまで値下がりしていた。
カシミヤはさすがに3990円で留まっていたがラムウールセーターやラムウールカーディガンは990円にまで値下がりしていたが、今は1290円である。

現在のユニクロの売り場で1000円以下の見切り品はTシャツやカットソー類のみである。

この再値上げの記事が掲載されるまえに、こんな分析をした方がおられる。

ユニクロの客単価アップに見る値下げコントロールの緻密さ
http://dwks.cocolog-nifty.com/fashion_column/2015/02/post-dcfc.html

2015年8月期 14年9月から15年1月までの既存店売上高前年比は108.4%、客数98.5%、客単価110%。 

客数をさほど落とさず客単価アップを実現したのですから、さすがユニクロ、見事なものです。

この傾向は 昨年の8月くらいからずっと続いているものです。

とある。
値上げしたが客数はほとんど減っていない。
昨年までの値上げは客数にほとんど影響していないといえる。

「金持ちしか買えないブランドになった」という声も一部であがっているが、数字を見る限りではそう思っている人は少数派ということになる。
そしてユニクロくらいの大規模ブランドになると少数派の声を拾うよりは、大多数に向けた施策を行う方が理屈に合っている。

以前にも書いたことがあるし、オチマーケティングオフィスの生地雅之さんも常々言っておられるが、
客数が10%以上減少すればそのブランドは既存顧客に見放されているといえる。
それに照らし合わせると某ジーンズチェーン店なんてとっくに見放されているといえるし、某大手セレクトショップも昨年秋から見放されつつあるともいえる。
このブログでも

一品単価が上がって客単価が上がっているわけですが、そんな時、是非、気を付けていただきたいのは、同時にどれだけ客数が減ったか見ていただきたいということです。

経験的に前年比90%を切り、85%を下回っている客数を単価のアップでカバーしている時は要注意ですね。

と指摘しておられる。

さて、今秋の再値上げではどれくらい客数減になるのだろう?
今秋の再値上げでも客数がそれほど減らないのであればユニクロの価格コントロールは大したものだといえる。

やみくもに「安くないと売れない」と口癖のように言いながら、それでいてユニクロより高い商品しか作れず、売上高を減少させ続けているブランドとは雲泥の差がある。

衣料品の最低価格が上がることについて「悪である」というような意見がチラホラと聞こえてきているように感じるのだが、日本の衣料品価格は世界的に見ても最低ランクにあるといわれている。
それが是正されつつあるのだから、個人的には悪しき傾向というよりは正常値に戻りつつあるのではないかと感じる。

もうこれ以上は工賃を叩けないのだから、どうやれば値上げしても売れるのかを各ブランドは考えるべきではないか。
「何とかの一つ覚え」みたいに安さだけを追求することは不可能な状況になっているからだ。

10年後には業界が残っていない?

 給与事情が悪いと言われるアパレル・繊維業界だが、アニメーターの待遇よりはマシである。
しかし、皮肉なことに福利厚生が薄いこの2つの業種を国はクールジャパンの代表例として捉えている。

ベテランの女性アニメーターに神村幸子さんという方がおられる。
筆者はテレビアニメ「シティーハンター」のキャラクターデザインを担当された方として記憶している。
週刊少年ジャンプに掲載された「シティーハンター」のアニメ版である。
その後、劇場版アニメとオリジナルビデオアニメ「アルスラーン戦記」のキャラクターデザインも務められた。

「シティーハンター」は原作漫画があるので、それに似せてキャラクターデザインをされたが、「アルスラーン戦記」はファンタジー歴史小説なので絵柄に制約がない。
そのため、おそらく「アルスラーン戦記」の方が彼女自身のオリジナルな絵柄に近かったのではないかと推測している。

その神村さんが自身のブログで、アニメーターの待遇改善を訴えておられる。

新人アニメーターは時給120円  という現実
http://yaneurablog.blogspot.jp/2015/02/blog-post_33.html

新人アニメーターを、せめて契約社員か固定給契約で採用して下さい。

新人アニメーターを、3万円で月250時間働かせるのはあまりにも酷です。いつもおなかを空かせていて、だんだんやせていく新人アニメーターを見ていると、もうなんといっていいかわからないほどつらい。悲しすぎる。

学校出たての新人が、いきなりプロ水準の仕事で食べていけるわけ、ないじゃありませんか。あまりに無茶な設定です。

3ヶ月程度たてば800枚描けて16万円くらい稼げるようになる、なんて書いてあるサイトもありますが、そんなのは20年前の話です。
現実とかけ離れすぎています。

どれほどキャリアのある優秀な動画検査でも、今風の絵柄の作品で、1ヶ月に動画を800枚描くことは不可能です。
動画の仕事は、昔と違い、とても繊細で丁寧な仕事に変わってきているんです。品質水準の要求が、年を追うごとに、どんどん高くなってきているんです。

能力の高い人が、睡眠時間を削り、休日なしで最大限働いても、1ヶ月に500枚の動画を描くのがやっとです。

せめて固定給10万円以上で、新人アニメーターを採用してあげてもらえませんか。
彼女ら彼らは9時~5時以上に働くはずです。

不採算なのはわかっています。でも不採算になる原因は、あり得ない予算配分と単価設定のためであり、新人アニメーターの働きが悪いためではありません。

とある。

酷い待遇である。
昔からアニメーター(ベテランも含む)の待遇が劣悪なことは有名であった。
が、その劣悪さはさらに増しているといえる。

待遇が悪いと言われているアパレル・繊維業界でもここまでではないだろう。
販売員も給与が低いといわれているがここまでではない。これほどの悪環境なら求人応募がない。
現在は、労働力不足による売り手市場だから好んでそんな劣悪な環境で働く必要もなくなっている。

20年くらい前からだろうか、アニメ番組のエンディングテロップで表示されるアニメーターにやたらと外国人が増えたのは。
動画や作画に南米系、中国系、韓国系の名前が多く表示されるようになった。
作品によっては動画や作画がほとんど外国人というのも少なくない。

あまりにも人件費が低いので外国人を使用するようになったのであり、そのあたりは縫製や織布、加工場が外国人研修生を使っているアパレル・繊維業界と同じ構造だといえる。

新人アニメーターと同じレベルの待遇はアパレル・繊維業界だとスタイリストのアシスタントくらいしかないだろう。そのほかの職種はもう少し給料が高い。

しかし、スタイリストは人気職種(意味が分からないけど)であるから志望する若者はそれなりに多いし、大規模産業でもないので、少人数が生き残ればそれで何とかなる業種でもあるが、製造業・加工業はそんなわけには行かない。
アニメーターも同じで圧倒的に労働集約的な産業である。
それはコンピューターグラフィックに置き換わっても同じだろうと考えられる。

アパレル製品では「日本製」が注目されているが、織布工場、加工場、縫製工場には多数のアジア人研修生が働いており、日本製の多くはメイドバイアジアンなのである。
理由は工賃が安すぎるからである。
アジア人研修生制度を廃止すれば全国の縫製工場の半数以上が倒産すると言われている。

この根本を解決しない限り、いくら「日本製」の花火を打ち上げたところで、10年後には多くの工場が廃業か倒産しているだろう。
縫製だけでなく織布も加工も。

アニメも同じである。
20年ほど前から動画の多くは外国人が請け負っているわけだから、いずれ外国にアニメの水準が追いつかれてしまう。
もしかしたらあまり知られていないだけで追いつかれているのかもしれない。

あとどれくらい「日本アニメ」がステイタス性を維持できるのだろうか。
そう長くはないような気がする。

クールジャパンの2枚看板がそろって同じような状況に置かれているということには失笑を禁じ得ない。

「ファッション」を販売するということ

 筆者のファッション感度は悪い。それは自覚している。
だからこそ着る物はある程度のトレンドは考慮するが、それよりも機能性と経済効率優先である。
あと自分にとって不必要なトレンドなら断固無視である。

例えば、穴が開いて素肌が見えるようなクラッシュジーンズはいくら流行していても真冬には着用しない。
なぜならば寒いからだ。
穴から体温が流出して非常に寒い。
反対にあんまり流行していなくても真夏なら着用する。涼しいからだ。

今春夏は穴が開いたクラッシュジーンズ、それを再度リペアしたリペアジーンズがようやく流行しそうだが、気の早い人たちはすでに昨年12月くらいから日常で着用している。

穴をふさいだリペア加工ジーンズならわからないではないが、穴から素肌が見えているクラッシュジーンズを着用している人は寒くないのだろうかと他人事ながら心配になる。
正月のことである。両方の膝小僧が丸見えになるくらい大きく破れたクラッシュさせすぎジーンズを穿いていた若い男性がいた。
あれはとてつもなく寒いと思うが、彼としてはトレンド先取りだったのだろう。
まあ、筆者には理解できない感覚である。

そういう人間だが価格訴求力ではなく、機能性最優先でもない洋服を売るというファッションビジネスについて真面目に考えてみることがある。

普通の販売、営業的感覚では非常に売りにくいと感じる。

社内マニュアルで書かれてあるような表現では、はっきり言って嘘くさいとすら感じる。

先日、何人かのフェイスブック友達がシェアしていた洋服店のブログを読んで、
漠然とながらファッションを売るというのはこういうことなのかと初めて感じることができた。

ちなみに、筆者もこの店は知っている。数えきれないくらいこの店の前を通っている。
大阪の南船場にあるお店だ。
それからこのブログ主も一応知人の紹介でごあいさつくらいはしたことがあるような気がする。
が、ブログ主は忘れておられるだろう。本当にチラっと挨拶した程度だったから。

2年通い続けてくれた決して買わないお客さん
http://ameblo.jp/cera-una/entry-11986869552.html

ブログ主は接客するときに、相手のライフスタイルを知ることから始めるそうである。
そして、今度〇〇へ行くならこういう服装が良いのではないですか?(本文では大阪弁)と提案する。

で、その上で、2年間毎週週末になるとやってきていろいろと商品は手に取るけども決して買わないお客がいたという。

低価格品ばかりだが筆者も販売職をやったことがあるので、毎週くるけれどあんまり買わないお客というのはたしかに存在するということは実体験として知っている。
何店舗かでそんなお客が幾人かいた。

筆者の場合は顔を見たら挨拶はするし、話しかけられれば答える。
一応、向こう主導で雑談も多少はする。
けれどもそこに向けて直感は働かない。

このブログ主は直感が働いてそのお客と雑談をするようにしていたそうである。
すると、ある日、

先日

「今日おにいさんからスーツ作りたいんです、ハインリッヒも買います」

「え~~~~~~~~っ??」

「ずっとヒヤカシなのに一回も嫌な顔もされず
気さくに話してくださって本当にありがとう
僕は裕福ではないので
ずっとお兄さんから買いたいと思って
たんですがキッカケがなかなか無くて
4月に結婚式あるんで
そのタイミングに・・・・・・」
「そうだったんですか・・・・・」
「ここの店なんか落ち着くんですよ」
・・・・・・・・
感無量である
この仕事してて良かったと一億%思える瞬間である
2年も通ってくださって本当に感謝です!

というやりとりがあったそうだ。

ちなみに会話中の「ハインリッヒ」とはこの店を運営する会社が輸入している靴ブランド「ハインリッヒ・ディンケラッカー」のことだろう。
その上でブログ主はこう続けている。

人には見えない触覚がある
態度にだしてなくても

「うわ、こいつ怒ってる」と勘が働く事ありますよね?

現場もそう「どうせ買わんやろ」
これ
必ずお客さんに伝わってますよ

気つけるんやでい笑

「これ着てドコイコ」

そう思ってもらわねば

ネットに負けるぞ笑

と。

ショールミングガーとかオムニチャンネルガーとか叫んでいる人は老若男女多いが、販売方法がすべてネットに置き換わるわけではない。
またネット販売をやってりゃ安泰なわけではない。

某携帯オンライン通販会社が赤字決算を続けた上、某社の子会社化されたことを見てもそれは明らかだろう。

また、ユニクロガーとかカカクソキュウガーとかデフレガーと嘆いているお店はこういう努力をしたのだろうか?
「ユニクロなんて安物はファッションじゃないですよ」というなら、ブログ主的なファッション販売を行ったのだろうか?

業界人が「ファッション愛好家が少なくなった」とか「可処分所得の減少が」なんて言い訳をしているが、じゃあファッション愛好家に向けた販売姿勢だったのか?ファッション愛好家を増やすような取り組みをしていたのか?と問いかけたい。
だからこそユニクロや外資ファストファッション、低価格SPAにやられたのではないのか。

自らにはない要素なのでこのブログは非常に勉強になった。
いわゆる「ファッションを売る」とはこういうことなのかと理解できた。

が、筆者は今後も経済効率と機能性最優先で投げ売り価格の洋服を買い続けることだろう。

相当な金持ちになることがあったとしてもこういうお店で買うことはないだろうと思う。

リーバイスの中間価格帯は成功するか否か

 リーバイス、家族向け6500円発売
http://www.senken.co.jp/news/levis-lowerpriceline/

プレミアム戦略は継続するが、ジーンズカジュアルチェーン店など郊外型マーケットに向けて、6500円以上の中価格帯のジーンズのテスト販売を3月から開始する」ことを明らかにした。テスト販売の結果が良好なら、15年秋物から本格展開する計画だ。

とある。

実はこの記事の全文を読んでも今一つ共感できないでいる。

リーバイスは数年前に5900円という中間価格帯の「オレンジタブ」を廃止している。
筆者には今回の打ち出しがオレンジタブの復活というように見えて仕方がない。
(実際にタブがオレンジになるかどうかは記事からは分からない)
今、復活させるならなぜ当時それを廃止してしまったのか不思議でならない。

「オレンジタブ」ラインが作られた当時は、ユニクロの大躍進と不況から低価格ブームが起きたころである。
9800円以上の商品のみでは戦えないという判断があった。
実際はもっと低価格のイオンとのシグニチャーモデルも発売したことがあるが、その出来栄えは到底良いものとは思えなかった。
ある程度のリーバイスらしい品質と見た目を保っていたのは「オレンジタブ」である。

リーバイス伝統の赤タブをオレンジにし、価格帯を分けるというのは買う側からすると分かり易い施策であったと感じる。

リーバイス・ストラウス・ジャパン社の特徴は、社長が交代するたびにめまぐるしく施策が変わることである。
そして筆者が傍目から見ていると、それは一貫性に欠けると感じる。

今回の低価格商品問題は社長が交代するたびに、廃止と創設を繰り返している。
もう一つの施策は世界統一企画の導入と廃止に繰り返しである。
その裏返しとして日本独自企画の復活と廃止がある。

経営施策は時代に応じて柔軟に対応しなくてはならない反面、ブランド作りというのは一貫性がなければならない部分がある。
一貫性を保ちつつ柔軟に対応しなくてはならないのだから、これはなかなか難しい作業である。
この難しい作業ができなければブランド作りなんてものはできないから、実際はアパレル業というのは大変に難しい業種だといえる。

好きこそ物の上手とはいうものの、「服好き」だけではどうにもならないのがアパレル業だとも思う。

めまぐるしく数年おきに方針が変わるリーバイ・ストラウス・ジャパンに対して、「柔軟に対応している」と評価することもできるが、筆者の目には一貫性に欠けると映る。

経営的に考えるなら「ダメなものは早期に廃止すること」は良いが、ブランド作りという観点からいうなら、短期間で止めてしまえば定着させることは難しいともいえる。

オレンジタブを廃止して、今更また中間価格帯の復活というのは果たして効果があるのか、筆者には疑問である。
低価格志向は現在は幾分弱まりつつある。

誤解してもらいたくないが、低価格衣料品はなくならない。
しかし、低価格品だけを欲しがる風潮ではなくなりつつあると感じられるということである。

この風潮が出始めた時期にわざわざ低価格品を新たに作るというのはちょっとタイミング的に疑問を感じてしまうわけである。

例えば郊外店に限らず、ジーンズチェーン店には期末になると30%程度割り引かれた廃盤のリーバイスが並ぶ。
だいたい7000円弱くらいになるから今回創設される中間価格帯とほぼ同等ということになる。
どちらを買うかというと、筆者なら割り引かれた方を買う。
元々、1万円前後の定価で販売されていた物だから割安感がある。

そう考えると新ラインもなかなか売り方が難しいのではないかとも思う。

その一方で、ジーンズというアイテムに関しては、アパレル業界人からも「ユニクロの次の価格帯が1万円を越える。その中間価格帯がない」という嘆きの声も聴かれる。
実際のところはその中間価格帯の商品もあるのだが、業界人にすらあまり認知されていないといえる。

そこに向けての需要はあるだろうからリーバイスの新商品もそれなりの需要はあるのではないかとも感じる。

ただし、昨今は郊外型ジーンズチェーン店でも自主企画商品を製造販売しているから、6500円という価格帯はチェーン店の自主企画商品と競合する価格帯でもある。

筆者程度の知識では今回の取り組みが上手く行くかどうかは皆目見当がつかない。
いろいろと書いてきてアレだが(笑)、上手く行くことを願っている。
こんな感じでお茶を濁しておこう。

廃れる分野から転身するのは当然

 先日、東郷隆さんの著書「本朝甲冑奇談」(文春文庫)を読んだ。
甲冑にまつわる短編小説集であるが、その中の「甲試し」は長曾禰虎徹を扱っている。

虎徹というと新撰組局長、近藤勇の愛刀として知られているが、それは偽物とも言われているようだ。

で、この虎徹はもともと江戸時代初期の甲冑師として大成していた人である。
その虎徹が加賀藩に住んでいたころ、虎徹の作った甲(かぶと)を他の刀匠が打った刀で斬らせるという「甲試し」があり、そこではかろうじて虎徹の面目は保ったものの、納得のいかない虎徹は加賀を去って甲冑師をやめてしまう。

この本によると、大聖寺や彦根などを転々としつつ、さまざまな雑具や刀の鍔を打って、修業し、そして刀鍛冶になって江戸に出たとされている。

で、この短編の中にこんな一節がある。
虎徹が弟子に刀鍛冶へ転身する理由を話しているのだが

「大坂御両陣以来、戦のタネは絶えたが、侍の数は変わらぬ。甲冑の注文は少のうなっても、刀の求めは絶えまい」

と。

純粋な娯楽として歴史小説を読むのが常だが、この一節を読んだとき、すぐさまマーケティング論を思い浮かべた。

戦がなくなれば、鎧を着る人も減る。
当然、新規の甲冑の注文は少なくなる。
メンテナンス、修繕の注文も頻繁にはない。

しかし、武士は明治の廃刀令まで刀を腰に差し続けた。
戦闘時でなくても刀は常に腰間にある。
となると需要は減らない。

だから虎徹は「ワシは今後も需要が見込める刀鍛冶に転身する」と言っているわけである。
この当時、虎徹は50歳前後。一節には50歳をはるかに越えていたと言われている。

現在に至るまでになくなった技術がさまざまある。
また現在は、そういう技術を残そうと補助金や助成金などが支給され、保存会などの団体も作られている。

古い技術を伝承するということも非常に重要だとは思うが、それを捨て去って新しい職種に就く人がいることは決して否定できない。
なぜならば彼らにも生活があるからだ。

ビジネスとして捉えた場合、縮小する市場に多数のプレーヤーが残るのは得策ではない。
わざわざ好き好んでレッドオーシャンにとどまる必要はなく、他に成長分野があるならそちらに移る方が得策であり、それが自然な流れといえる。

だから伝統工芸とか伝統産業に携わる人が減るのはそれはそれで仕方がないのかなとも思う。
もちろん、残そうとする努力は立派だと思うが、需要が減少する分野に多数の人をつなぎとめておくことは不可能であり、ナンセンスだとも思う。

国内の繊維製造・加工業も倒産・廃業が相次いでいる。
産地を守ろうという取り組みもわかるし、各業者が何とか踏ん張ろうとするのもわかる。
しかし、需要が減少している分野にしがみついていても仕方がないから、倒産・廃業させることも当然であるとも思う。

衰退産業にとどまる側の気持ちも離れる側の気持ちも両方ともに理解できるだけに、これはなかなか難しい問題である。

もし、仮に虎徹が「甲冑作りは衰退するけどワシは甲冑作りの技術伝承のために、この分野にとどまる」と言っていれば、名刀虎徹はこの世に生まれなかったことになる。

無理なくその分野を残そうとするなら、その分野の売上高を拡大し続けることである。
そのためには十年一日が如く、同じデザインの同じ製品を作り続けていて良いのかということにもなる。
従来版製品の製造ノウハウを維持しつつそれとは別に、そのノウハウを生かした新商品を開発することが求められるのではないか。
もちろん、新たな売り場開拓、販路拡大も必要となることは言うまでもない。

言うは易く行うは難しということはわかっているが、従来製品を旧態依然と墨守したまま補助金、助成金で支え続けるというのは無理があるだろう。

個人的には、伝統産業と言われる分野の人々にも虎徹的マーケティング論が必要ではないかと考える次第である。

高額なだけの商品では富裕層にも海外市場にも売れない

 何を書こうかな~と思っていたら、こんな記事の一節を目にした。
これまで何度も国内繊維産地の会合で目にした光景で思わず、デジャヴに襲われた。
デジャヴにひどく心をゆすぶられたので是非とも紹介したいと思ってしまった。

特産品で地方創生ができるという「幻想」

自治体がからむプロジェクトは失敗だらけ
http://toyokeizai.net/articles/-/60862

もうこのタイトルだけで十分に伝わる内容だが、個人的にはここでいう自治体には「国」も含まれていると感じる。
以下に、デジャヴ満載の箇所を引用する。

小売店の売り場をみればわかる通り、特産品だけでなく、さまざまなメーカーの商品が競合になります。そのため、商品を作ったはいいが、「全く売れない」どころか、「そもそも売り場さえ確保できない」ということも、ごく普通に起こります。

そうそう。売り先を確保する前から商品開発が始まる。
何社かの創業も間近で見て来たから売り場を確保するというのは、大変な作業であることは承知している。
簡単に確保できるものではない。
しかし、ターゲットとする売り場設定さえせずに商品作りを行うのは疑問だ。
産地の人が、「漠然と百貨店」「漠然とセレクトショップ」ということは耳にするが、じゃあその百貨店は阪急なのか伊勢丹なのか高島屋なのか大丸なのか。
その何階売り場なのか。

セレクトショップにしても同じである。
ビームスとユナイテッドアローズとトゥモローランドとジャーナルスタンダードとナノユニバースとパーマネントエイジではそれぞれ違う。
どこを想定しているかによって商品づくりは自ずと変わる。

とくに既視感にあふれるのは以下の一節である。

では、どうしてこのような商品が、次から次へと出てくるのでしょうか。背景には、特産品開発が、「地方の生産者」「加工者」「公務員」が中心となった「協議会組織」が中心となっていて、肝心の消費地の販売者や消費者の関与が希薄、という大きな構造問題があります。

つまり、基本が「作ってから売りに行く」という流れのため、初期の段階では販売者・消費者は、あまり声をかけられません。

そのため、価格を決める場合も、原材料費、加工費、流通費等を計算し、生産者や加工者がほしい利益を上乗せして割り出す、「コスト積み上げ型」であることが多く見られます。結果として、平気で「超高価格」になったりします。

もちろん、合理的な理由で高価格になっていれば良いのです。しかし、経費の積み上げだけで高価格になっただけというのは、「作り手」の勝手な都合であって、売ってくれる側や、買う消費者側にとっては受け入れられない話です。販売者も消費者も不在のままです。

そうすると、なんと、商品が高価格になったときの解決方法として「東京や、海外にいる富裕層に販売しよう」という話になったりします。ウソのような本当の話です。商品自体が富裕層に向けたものではない特産品を、単純に高値にするだけで「目の肥えた富裕層」に、売れるはずはありませんよね。

とのことで、昨今の繊維業界が盛んに唱える「富裕層に」「海外市場に」とまったく一致する。
国内販売価格2万円の小規模メーカーの「こだわりジーンズ」とやらを「海外富裕層」に現地価格数万円以上で販売しようという試みもこれと同列である。

何で目の肥えた海外富裕層が無名外国ブランドの数万円のジーンズを買うと思うのか。
同等価格のラグジュアリーブランドのジーンズを買うのが普通ではないのか。

2000年代後半には当時経済成長が著しかった中国市場へ売ろうという試みも多くあった。
じゃあ、中国人の好みはリサーチしているのか?というとそうではない。
製造原価が高すぎて国内では売れないから、経済成長の激しい中国なら売れるだろうという思いこみに過ぎなかった。

なら工程を簡略化して国内市場で売れる価格設定にするべきではないのか?
もしくはその高価格で売れるような商品デザインに仕上げ、プロモーション・販促・広報を展開するべきではないのか?

現在なら欧米、数年前なら中国市場を彼らが狙った理由は一つしかなかった。
「超高額だけど日本製なら売れるだろう」という思いこみだけである。
しかし、残念ながら、商品デザインも陳腐なもので、プロモーション・販促・広報がお粗末であれば、いくら「日本製」と言えども売れない。

反対に日本の消費者に尋ねてみたいが、衣料品、靴、バッグなどでステイタス性が高いのがイタリア製だが、商品デザインが良くなくて、プロモーション・販促・広報がお粗末だけども高品質で超高額な無名イタリアブランドの商品を買うだろうか?
筆者は多くの人が買わないと思う。

これと同じことである。

国内繊維産地のオリジナル製品作りはこれからもまだまだ始まると思うが、始まる前にもう一度先に述べたことを考え直してもらいたい。

アパレル業界のパクリ合い

 先日、山田耕史さんがブログでGUESSとグッチの商標権訴訟を取り上げておられた。
平たくいうとGUESSがグッチの意匠をパクったと訴えられたわけである。
紹介されている写真を見ると、なるほどれっきとしたパクりに見える。

ブランド商標権訴訟、GUCCIvsGUESSチキチキロゴ対決!
http://t-f-n.blogspot.jp/2015/02/gucciguess.html

一番ひどいと感じたのは靴である。
写真を見てもらえばわかると思うがほとんどデザインは同じ。
アッパーの側面のカラー帯の色のみが違うが、これだって、グッチの靴の別色展開と言われれば納得してしまうレベルの差異にすぎない。

2015y02m04d_112640777

その昔、GUESSというのはアメリカ西海岸テイストのカジュアルブランドだったと認識していたのだが、日本から一時撤退していた間にテイストを変更したのだろうか。

現在、アパレル業界でパクリ問題というと中国・韓国がその例に挙げられる。
これは事実その通りなのだが、GUESSの例のように欧米ブランドだってけっこうえげつないことをやっている。

また日本でもパクりは多い。
最近だと非常に巧妙に事件にならないようにパクっているが、それでも現在でも国内ブランド同士でのパクリ問題は後を絶たない。

その昔と言ってもほんの10数年前くらいまでは、展示会に出展したブランドの商品を写真撮影して、それを短納期で仕上げて、本家よりも早く店頭投入するというパクリ屋が国内にも横行していた。
多分、今でも絶滅はしていないと思われる。
だから、合同展示会へ出展することを極度に嫌がる製造系企業が今でもある。
その当時のトラウマがいまだに消えないのだろう。

筆者は以前、某大型展示会主催企業に3年間勤務したことがある。
その当時の先輩から聞いた昔話である。

パジャマ類の某会社が年に何度か定期的に業界誌に広告を出稿していたそうだ。
単なる企業のイメージ広告ではなく、毎シーズンの販促も兼ねているので、広告にはそのシーズンの商品写真を掲載していたそうだ。

すると、この企業の特定の同業他社が必ず類似品を製造して本家よりも早くに店頭に納入していた。
本家企業はついに堪忍袋の緒が切れて、業界誌にクレームを出し、業界誌の担当者がパクリ企業に対して交渉に出向いたところ、「たしかにいつもパクってるけど何が悪いの?」と開き直られたそうである。

これだけだと、ちょっと後味が悪いが、そのパクリ企業は何年か後に倒産していたというから因果応報といえるだろう。

また、これはつい先日も経験したことである。

ストッキング類の卸売り型大手製造メーカーは数社に絞られている。
そのためシェア争いが厳しいが、すごく伸びる市場ではないため、パイの奪い合いという風に見える。

通常、展示会では3か月先か半年先の商品を展示する。
ストッキング類の展示会は半年先の商品を展示する。

洋服や肌着では考えられないことだが、ストッキング類では展示会を取材しても掲載するのは店頭投入直前まで待たされる。写真掲載もそのころまで待たねばならない。

パイの奪い合いが激しい業界だから、できるだけ直前まで手の内を競合他社に見せたくないということだろう。
もしかしたら、類似品も出回り易いのかもしれない。

山田さんもブログに書いておられるように、先日、米国のコンバースが「定番」とみなされていたスニーカー、オールスターの意匠権で多数の他社ブランドを訴えた。
その結果、そのデザインの商品を廃盤にしたブランドがいくつかある。

この流れが強化されると我が国でも状況は異なってくるだろう。

ただ、アパレル業界は日本に限らず欧米でもパクリ合いで発展したような部分もあるから、規制が強化されることで逆に何らかのデメリットも発生するのではないかとも思うが、まあ、そうなったらそうなったで仕方がないと言わざるをえない。

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