MENU

南充浩 オフィシャルブログ

値上げしても客数を減らさなかったユニクロ

2015年2月24日 未分類 0

 先日、ユニクロが今秋冬物から再値上げを発表した。

ユニクロ2年連続値上げへ…円安や原材料高で
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150218-OYT1T50161.html

ユニクロを展開するファーストリテイリングが今年7~9月に順次発売する秋、冬物の一部で、平均5%程度値上げする方向で調整していることが分かった。

円安のほか、綿やウールなど原材料の価格高騰が要因だ。大規模な値上げは、2014年に続き2年連続となる。

 同社は14年4月の消費税率引き上げなどを受け、14年夏~秋に同社として初めて、ほぼ全商品を一斉値上げした。今回は、値上げ対象を半分以下に抑えたい考えだ。春物や夏物は原則、据え置くとみられる。

 値上げの対象は、繊維が長くて細い上質なコットンを使ったTシャツなど主力商品が中心となる見通しだ。最大1000円程度値上がりする商品もあるという。

とのことである。
値上げ対象となっているのは持って回った書き方をしているが、プレミアムコットンTシャツが中心ということだろう。半袖で1000円(税別)、長袖で1500円(税別)だったのが少し上がると考えられるのではないか。

さて、ユニクロの商品を見ていると、たしかに昨年秋物から値上がりしている。
メンズを例に出す。
ウルトラライトダウンジャケットは一昨年の秋から1000円値上がりしている。
一昨年秋は5990円だったが、昨年秋は6990円になっている。
しかし、一昨年秋は税込で5990円だったのが、昨年秋は税別6990円だから、正確には1559円値上がりしたことになる。
値上がり率は26%である。

また定番の無地スエットシャツ、いわゆる定番の無地トレーナーという商品だが、これが昨年秋まで1990円だったのが今春から2490円に値上がりしている。
500円の値上がりである。
さらに消費増税前の昨年3月までは税込1990円だったから、今春の税別2490円では約700円の値上がりであり、35・1%の値上がり率ということになる。

これに対して、暴利をむさぼっているとか、ユニクロは金持ちの普段着になってしまったという批判の声もあるが、筆者はそうは思わない。
ただ、低価格ブランドではなくなりつつあると感じている。
例えばウルトラライトダウンだが、今秋に再値上げをすると仮定すると、税別で7000円台の商品となる。
税込だと8000円台半ばということになる。

ダウンジャケットとしては低価格の部類だが、決して超低価格ではない。
ライトオンやジーンズメイトに並んでいるダウンジャケット類とほぼ同等の価格だ。
スポーツ・アウトドアブランドの中の低価格ラインとほぼ同等の価格と見ることもできる。

また見切り品を見ても値上がりしたなと痛感する。

これまでユニクロの見切り品はセーター類でも990円にまで値下がりしていた。
カシミヤはさすがに3990円で留まっていたがラムウールセーターやラムウールカーディガンは990円にまで値下がりしていたが、今は1290円である。

現在のユニクロの売り場で1000円以下の見切り品はTシャツやカットソー類のみである。

この再値上げの記事が掲載されるまえに、こんな分析をした方がおられる。

ユニクロの客単価アップに見る値下げコントロールの緻密さ
http://dwks.cocolog-nifty.com/fashion_column/2015/02/post-dcfc.html

2015年8月期 14年9月から15年1月までの既存店売上高前年比は108.4%、客数98.5%、客単価110%。 

客数をさほど落とさず客単価アップを実現したのですから、さすがユニクロ、見事なものです。

この傾向は 昨年の8月くらいからずっと続いているものです。

とある。
値上げしたが客数はほとんど減っていない。
昨年までの値上げは客数にほとんど影響していないといえる。

「金持ちしか買えないブランドになった」という声も一部であがっているが、数字を見る限りではそう思っている人は少数派ということになる。
そしてユニクロくらいの大規模ブランドになると少数派の声を拾うよりは、大多数に向けた施策を行う方が理屈に合っている。

以前にも書いたことがあるし、オチマーケティングオフィスの生地雅之さんも常々言っておられるが、
客数が10%以上減少すればそのブランドは既存顧客に見放されているといえる。
それに照らし合わせると某ジーンズチェーン店なんてとっくに見放されているといえるし、某大手セレクトショップも昨年秋から見放されつつあるともいえる。
このブログでも

一品単価が上がって客単価が上がっているわけですが、そんな時、是非、気を付けていただきたいのは、同時にどれだけ客数が減ったか見ていただきたいということです。

経験的に前年比90%を切り、85%を下回っている客数を単価のアップでカバーしている時は要注意ですね。

と指摘しておられる。

さて、今秋の再値上げではどれくらい客数減になるのだろう?
今秋の再値上げでも客数がそれほど減らないのであればユニクロの価格コントロールは大したものだといえる。

やみくもに「安くないと売れない」と口癖のように言いながら、それでいてユニクロより高い商品しか作れず、売上高を減少させ続けているブランドとは雲泥の差がある。

衣料品の最低価格が上がることについて「悪である」というような意見がチラホラと聞こえてきているように感じるのだが、日本の衣料品価格は世界的に見ても最低ランクにあるといわれている。
それが是正されつつあるのだから、個人的には悪しき傾向というよりは正常値に戻りつつあるのではないかと感じる。

もうこれ以上は工賃を叩けないのだから、どうやれば値上げしても売れるのかを各ブランドは考えるべきではないか。
「何とかの一つ覚え」みたいに安さだけを追求することは不可能な状況になっているからだ。

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ