「日本製」を取り巻くお寒い環境
2015年2月25日 未分類 0
近頃、にわかに日本製衣料品が注目を集めているが、現状ではどこまでが純粋な「日本製」なのか正直にいうと疑問である。
全国の大半以上の縫製工場に中国やベトナム、フィリピンやミャンマーなどアジア諸国からの外国人研修生を雇用している。
また織布工場、染工場、洗い加工場も外国人研修生を雇用している。
先ごろ発表されたジャパンクオリティタグの定義にはこうある。
① 織り・編み、染色整理加工、縫製の3工程を国内で行った純正の日本製です
② 日本ならではの精緻な技と、無限大の豊かな想像力が注ぎ込まれています。
③ それぞれの工程でつくり手の顔が見える、安心・安全な商品です。
このうち、②について現状を鑑みるにつけても「どうなのかな~?」と疑問に感じる。
日本ならではの精緻な技というが、実際に手を動かしているのはアジアからの研修生である。
縫製なんて大半以上がそうであり、織布、染色、洗い加工の各工程でも外国人研修生が作業している場合がある。
となると、精緻な技とは外国人研修生の技ということにならないだろうか。
そう考える人がいても不思議ではないのではないか。
日本の工場で製造された物が精緻だといわれるのは、誰が手を動かしているかではなく、管理者や指導者が日本人であることが大きいのではないだろうか。
さすがに日本国内の工場で経営者や技術指導者が外国人になったという例は耳にしたことがない。
一方、中国や東南アジアの工場でも日本人が技術指導したり管理監督している工場は多々ある。
そうした場合、これらの工場が作る製品と国内で作られる製品とどう違うのかということにならないだろうか。
筆者には根本的な違いがわからない。
そしてこのことは③についても実情とそぐわないのではないかとも感じる。
つくり手の顔が見えるとあるが、そのつくり手は外国人研修生だときちんと表示するのだろうか。
一般的にジーンズ関連のアイテムは他のアイテムに比べて国産比率が高く、国産品の知名度も高い。
しかし、そのジーンズ関連の縫製工場だって外国人研修生を雇用している。織布、縫製、洗い加工とそれぞれの工程でだ。
ちなみに岡山県は全般的に外国人研修生の待遇が良いとされているが、実情は個々の企業で異なる。
平たくいうと、待遇の悪い企業もあるということである。
例えば外国人研修生の受け入れ資格を5年間停止された工場が岡山県にはあるが、そこは時給300~400円程度の待遇だったのが問題視された。
また、別の縫製工場もやはり時給300~400円待遇で10人以上の研修生が脱走したという。
平均すると待遇は良いが、中にはこういう悪待遇の企業もあるということである。
以上のようなことから、個人的には「日本製」ではなく「日本基準品質」タグの方が実情に沿っているし、普遍的ではないかと考えているが、まあ、このまま粛々と「日本製」ヨイショは続くだろう。
筆者は負け犬の遠吠えにすぎない。
こういう風潮から「日本製」というのが販促の一つの記号になりつつあると感じる。
販促の一記号化しているから勘違いした業界人も例によって増殖中である。
糸から全部国産でやりたいんだよね、なんてことを国産品に対して大した思い入れもないくせにのうのうと公言するような業界人がチラホラとあらわれている。
なら、なんで今まで国産品を使わなかったのかと失笑を禁じ得ない。
ちなみに原料にもよるが糸からすべて国産というのはかなり難しい。
先ほどのジャパンクオリティタグの定義にも原料と糸は入っていない。
原料は綿花にしろ絹にしろ羊毛にしろカシミヤにしろ麻にしろ、すべて外国からの輸入に頼っている状況である。(一部国産もあるがごく少量)
そして糸もすべてが日本製というわけでもない。
外国製の方がファンシーな意匠の糸も多い。
高級なセーターでイタリア糸使いの国産品なんていうのもある。
先日、知り合いが某展示会に出展したところ、いけ好かない風(筆者の想像)の50代くらいの男性バイヤーが訪れたという。
知り合いはネパール製の糸を使って、日本で染色、織布を行っている。
先ほどの定義に照らし合わせても日本製の認証を得る資格がある。まあ、1品番1万円も払うのがイヤだろうから認証を得ようとはしないだろうけども。
ところがこのバイヤーは「糸から国産でやりたいんだよね」と吐いて去って行ったそうだ。
如何にも薄っぺらい上っ面の業界人である。
業界にはこの手の薄っぺらい輩が掃いて捨てるほど存在する。
今後この手のペラペラに薄っぺらい上っ面の業界人はさらに増殖しそうであり、何ともウザったい話である。
国産品に注目が集まるのは喜ばしいことであるが、製造・加工の現場での慢性的な人手不足を解決しないことには、日本の繊維製造加工業はそう長くは続かない。
数年先どれだけの工場が存続しているか甚だ疑問である。
国産品ブームで浮かれていられる状態ではない。
製造・加工の現場で人手不足である最大の理由は工賃が安いからだ。
ここを解決しない限り工場は今後も減り続けるし、労働力も減り続ける。
中国の人件費高騰と円安で急速に国内工場に生産が戻りつつある。
しかし、各工場の工賃は横ばいだ。
横ばいならまだしも中にはさらに値下げするメーカーもある。
こういう状況では労働力が増えるはずもないし、工場はますます疲弊する。
何が「日本製ブーム」なのかと鼻で笑いたくなる。
まあ、これが現在の繊維・アパレル業界の実態である。