個店こそ高く売る方策を採るべき
2015年2月26日 未分類 0
最近、めっきり個人経営で元気のあるブティックや専門店が減った。
1店舗しかない個店や数店舗規模のチェーン店で「すごく売れている店がある」なんていう噂はあまり耳にしなくなった。
専門店向けのアパレルの展示会に出向いても、販路たる専門店、ブティックが元気がないから、なかなか厳しそうである。
展示会でアパレル側に聞いてみるとそういう専門店、ブティックが求めている商品が
1、少しでも安い物
2、他店でも売れている物
である。
ここで少し考えてみたい。
まず個店が過剰に安さを追求する意味があるのかどうかである。
いくら安い商品を仕入れたといってもユニクロほどではない。
多くの場合、専門店アパレルが企画製造する商品は少なくともユニクロの2倍くらいの価格になる。
別に専門店アパレルが何の努力もしていないわけではない。生産のロット数の違いによるところが大きい。
昨今ではユニクロを下回る価格の商品を販売するSPAブランドも少なくない。
ジーユー、パレモ、フォーエバー21、ハニーズあたりはそうだ。
純然たるSPAではないが価格だけをみるなら、しまむらとアベイルもそうであろう。
こうなると、安さ追求はあまり意味がない。
少々安くしたところでどうせこれらのSPAには追いつけない。
例えば9800円の商品を7800円にしましたと言ったところで、これらのSPAが同じような商品を2900円とか3900円で販売しているわけだから、安い物が欲しいお客はそちらを買う。
次に他店で売れている物だが、洋服と言うのはトレンドがあるから、ある程度人気のある商品はデザイン的に似通ってしまう。
当然、他店で売れている物が自店でも売れ筋になり易いという要素はある。
しかし、昨今の展示会で見ていると、まるでトレンドでもなんでもない商品でも、「他店で売れているから仕入れたい」という個店がけっこういる。
トレンドでもなんでもない商品はいくら他店で売れているからと言って、自店で売れるとは限らない。
他店と自店でショップコンセプトが同じなのだろうか?
顧客層や中心プライスも同じなのだろうか?
これらが同じであるなら売れるかもしれないが、これらが違うならその商品を導入したところで自店では売れない可能性の方が高い。
某大手百貨店向けアパレルの役員クラスの人間が、素材メーカーに向かって「ユニクロでバカ売れしたあれと同じ素材をくれ」と言ったことがあるらしいが、まるっきり同じ短絡的発想である。
ユニクロとそのアパレルのブランドとは店頭販売価格も顧客層もブランドコンセプトも異なる。
そこまで異なっているならいくら使用素材が同じでも、ユニクロと同じ枚数が売れるはずもない。
さすがにこの短絡的役員も同じ枚数とは思っていないだろうが、通常の販売枚数を大きく上回ることはありえない。
もし、効果がある販促をするなら、「ユニクロのアレと同じ素材を使用しました」と自社ウェブサイトや店頭のPOPで大々的に謳うことだろう。
逆にそこまでプライドを捨てられるなら大したものである。
この大手アパレルを見直す。
大手チェーン店のように何十億、何百億の売上高を作らねばならないならこれらの手法もまったくの無駄ではないが、個店や数店舗のチェーン店ならこれらの手法はまったく意味がない。
それよりも如何に自店を個性化するか、物以外の「コト」を販売するか、顧客との関係性を強化するかに力を入れるべきである。
その手法は様々あるだろう。
顧客を招いてお茶会やパーティーを定期的に開催しても良いだろうし、店長やオーナーをキャラクター化してそれをどんどん発信しても良い。
ハッチャケたブログを毎日アップするのでも良い。
価格訴求と他店の売れ筋追随よりはずっとマシである。
数百円~1000円程度だがユニクロは値上げをした。
今秋には再値上げをする計画である。
デフレの象徴とされたユニクロが値上げをした状況下において、個店が何の効果もない価格訴求に血道を挙げたところで無意味である。
今は、個店こそ「高く売る」方策を考えるべきではないか。