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東京ソラマチ開業で地元商店街は苦戦。この事態は想定内では?

 5月22日、東京スカイツリーとその商業施設「東京ソラマチ」がオープンした。

これに対して、地元商店街は期待外れという状態にあるらしい。

ツリー効果想定外…地元商店街「客減った」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120529-OYT1T00229.htm

その一方で、ツリー効果を当て込んでいた周辺商店街では客足が思うように伸びないなど、「こんなはずでは……」という事態も起きている。

 ツリーと隣接の「東京ソラマチ」と合わせ、来場者は連日20万人超。100万人突破は予想より2日早く達成し、初の週末となった26日夕には初の入場規制も行った。

 一方、期待はずれなのが地元商店街。開業前は見物客で売り上げを伸ばしたが、開業後は「売り上げが減った」との声が上がる。地元商店街の土産物店の店主(61)は「ソラマチの外に人が出てこない」とこぼす。

とのことである。

うーん。何を嘆いているのかよく意味がわからない。
開業後はこうなることは予測できたのではないだろうか。
「想定外」とあるが、想定が甘すぎたのではないか。

東京ソラマチの施設概要によると、全312店舗が入店している。
テレビでも連日施設内部をレポートしていたが、飲食店もかなり充実している。
言ってみれば、この館内だけで買い物、食事、ちょっとした時間つぶしとほとんどの消費行動は完結できる。
地元商店街にわざわざ立ち寄る必要はない。
ソラマチへの行き帰りに「ちょっと缶ジュースを1本買いたい」という程度の需要以外は発生しないと、容易に想像できる。

記事中には「開業前は見物客で売り上げを伸ばしたが」とあるが、当たり前である。
スカイツリーはどこからでも見える。
建設中のスカイツリーを見物する客は、飲み食いにしろ、ちょっとした日用雑貨品を買うにしろ、地元商店街を利用するのが一番便利である。というか地元商店街で消費するしか方策がない。何しろ大型商業施設「東京ソラマチ」は開業していないのだから。

しかし「東京ソラマチ」が開業すれば地元商店街には用無しである。
この「東京ソラマチ」がもっと小規模な施設なら話は別だ。
けれども312店舗もあれば消費者のほとんどの欲求は施設内で満たすことができる。

今後、「東京ソラマチ」に何か大きな事件が起こり客足が急激に鈍らない限りは、地元商店街がその恩恵を受けることはないと考えている。

セールの早期化も案外悪くないのかも

 さて、セール開催時期を巡る混乱はまだまだ続いているようだ。

5月18日付の繊研新聞によると、大阪の「なんばパークス」が7月7日にセールをスタートさせる動きだという。
他の施設が7月1日か6月29日開始が多いので、1週間ほど遅いということになる。
数年前なら7月5日前後のスタート日が多かったので、遅らせるというよりは元に戻したというニュアンスの方が色濃いのではないか。

デニムアイテムのOEM事務所を経営する友人によると、今年は7月納品まで受注が相当数あるという。
デニムアイテムは通常、夏に弱い。冬にも弱い。
3月、4月が繁忙期で、夏は閑散期である。
その後、9月、10月と繁忙期になり、12月は閑散期というサイクルで回る場合が多い。

しかし、今年に限って言えば、セールが6月下旬から始まるので、各ブランドとも秋の立ち上がりを早める傾向にある。秋の立ち上がりと言っても、秋っぽい色で夏デザインの商品である。
このため、7月納品も例年より多くなっている。

この事務所の動きだけで業界すべてにあてはめることはいささか無理があるかもしれないが、セールが早期化するなら、早めに秋色・夏デザインの「晩夏初秋物」を投入するというのも店頭の鮮度を保つには有効な手段ではないだろうか。
とくにファッション性をアピールするブランドや施設ならなおのことである。
8月末までセール品を引っ張って、ワゴンで叩き売るのはユニクロなどの低価格SPAかイオンなどの量販店に任せば良いのではないだろうか。

友人も「セールが早期化してどうなるかと思ったが、案外と良いサイクルになるのかもしれない。もともとゴールデンウイーク以降は7月までセール待ちで売り場が動かない。なら、6月からのセールで在庫を一掃して、7月中頃から晩夏初秋企画を立ち上げる方が効率的ではないかと思い始めた」という。

このコメントには聞くべき要素が詰まっているように思える。

結局、ブランド側がセール顧客を追求するのか、新規商品を早めに立ち上げるかを決めれば良いのである。
どちらが正解かはやってみないとわからない。
しかし、不況が続いた業界だから、各社ともトップは失敗を恐れている。
失敗したくないので確実な方策を選ぼうとするのだが、往々にしてどっちつかずの中途半端な方法を選んでしまうことが多い。で、さらに売れなくなる。
悪循環スパイラルである。
セール顧客と新規顧客の両方に対応しようとするから良く分からない店作りになる。

現在の消費者は体感気温に即して衣料品を買う。
秋物を早めに立ち上げると言っても、7月中頃からぶ厚い長袖や、セーター、ヒートテックを立ち上げる必要はない。それらが実際に動くのは2カ月後である。
色柄が少し秋っぽくて、デザインや素材は夏物を投入すれば良いのである。

そこさえ間違えなければ、友人ではないが「セールの早期化も案外悪いものではない」のかもしれない。

大手新聞の入れ墨擁護は理解できない

 大阪市の橋下徹市長が職員の入れ墨を問題視している。
橋下市長の主張には首を傾げるものもあるが、この入れ墨問題に関しては賛成である。

大手新聞などは「入れ墨はファッション」として擁護する向きもあるが、この主張の意味がわからない。
自社の社員、特に花形てある新聞記者や広告営業マンが入れ墨を入れていても採用すると言い切れるのだろうか?おそらく採用面接の段階で落とすだろう。
自社が雇えない者を擁護するという感覚が理解できない。

ニュースで読んでいると、大阪市の職員に採用されてから入れ墨を入れた者が相当数存在するという。
百歩譲って学生時代や公務員採用以前に入れ墨を入れていたのなら仕方がない側面もあるが、採用されてから入れ墨を入れるというのは明らかに感覚がおかしい。
橋下市長が問題視するのも納得である。

さて、今朝のめざましテレビで入れ墨に対する各年代の意識調査を発表していた。
10代~50代までの意見をまんべんなく紹介しており、フジテレビにしては珍しくまともな結果を報道したと感じた。

10代、20代には入れ墨肯定派が半数近くいたが、30代以上になると肯定派は少なくなるという結果だった。
また民間企業31社に聞き取り調査したところ、14社が入れ墨を入れた社員は何らかの配置換えなどの措置を行っていると答えている。

もちろん、ファッションとしてのタトゥー(入れ墨)は分からないではない。
しかし、自営のファッションデザイナーとかミュージシャンとか水商売関係以外の職種で「ファッションだから」という理由で入れ墨をOKする企業は少ない。
大手新聞の噴飯物の擁護では「ファッションを規制するな」という類の物があったが、じゃあ、新聞社の広告営業マンが「ファッションだから」という理由で、Tシャツにジーンズ姿で大手クライアントに出向くことはOKなのか?
社内で規制しないのか?

新聞記者だってそうだろう。
「ファッションだから」という理由で派手な色のシャツにハーフパンツで取材に行っても良いのか?
状況によってはありかもしれないが、通常の業務内容なら大手新聞社は間違いなく規制する。

なぜ、入れ墨だけを「ファッションだから」と擁護する必要があるのかまったく理解できない。

引き合いにミュージシャンやスポーツ選手がタトゥーを入れていることを挙げることもある。
しかし、彼らと公務員や一般会社員では求められる規律が異なる。
銀行の窓口業務の女性や、外回りの営業マンがタトゥーを入れることを容認されるだろうか?

入れ墨問題に関して、大手新聞の擁護は何一つとして納得できるところがない。

衣料品展とはケタ違いの食品展の集客力

 先週、TSO(トレードショーオーガナイザーズ)主催の食品展示会にもぐりこませていただいた。
いくつかの展示会を同時開催させており、「NOODLE WORLD KANSAI 2012」「INTER-FOOD KANSAI 2012」「関西省エネ・省CO2・コスト削減対策展」「関西フランチャイズ・独立開業支援展」「全国都道府県特産物フェア」がそのラインナップである。
筆者が見て記憶に残っているのは、「NOODLE WORLD KANSAI 2012」「INTER-FOOD KANSAI 2012「全国都道府県特産物フェア」くらいである。

何故、もぐりこませてもらったかというと、TSOに知人が勤務しており、久しぶりに表敬訪問したかったためである。

会場内はものすごい入場者数である。
衣料品や生地の展示会ではこうはいかない。食品展示会の集客恐るべしである。
もちろん、主催者側の集客努力もあるが、それにしても・・・・・である。

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事前登録すると入場は無料だが、当日だと5000円が必要になる。
それでもそれなりにチケットを購入しておられる方がチラホラとおられる。

いやはや。
衣料品や生地の展示会なら入場料を300円いただいただけで入場者数は激減するだろう。
たとえIFFやroomsといった著名展示会でも入場料が必要となれば、入場者数は半減するのではないだろうか。

このTSO主催の展示会に限らず、食品系の展示会は事前登録していない来場者から入場料を徴収する場合が多い。にも関わらず、食品系の展示会はどこもがかなり賑わっている。

長らく衣料品や生地の展示会に携わってこられた方からすれば何ともうらやましい限りではないか。

食品の展示会が入場料を徴収しても大賑わいな理由をいくつか考えてみた。
食品のことは衣料品以上に素人なので抜け落ちた部分があればお許しいただきたい。

1、試食・試飲がふんだんにある。
2、外食産業の従事者が衣料品以上に多い
3、ド素人のオバちゃんでもそれなりに入場して楽しめる

くらいではないかと思う。

試食・試飲がふんだんにあり、片っ端から飲み食いすると一食分以上の量が飲み食いできる。
しかも、新製品とか地方の珍しい商材だから満足度も高い。

また衣料品や生地に関しては、ド素人のオバちゃんが見てもあまり楽しめない。
せいぜいが「あー、きれいやなー」と言えば終わりであり、どんなに広い会場でも滞在時間は20分ほどで済むだろう。
しかし、試食・試飲があるため、食品展ではド素人のオバちゃんでも何時間でも会場内に滞在することができる。

さらに、外食産業に従事する人間が衣料品よりも多いのだろう。
おそらく、飲食店は衣料品店より多いのではないか。
衣料品を半年買わなくても生活にさほどの支障はないが、飲み食いができないと健康状態に直結する。
必然的に一日に最低でも一回は飲み食いせねばならない。
そのため、飲食店は衣料品店よりも集客しやすい。
しかし、飲食店は単価が低く、粗利益も低い。このため外食産業はブラック企業化しやすい側面もある。

閑散とした衣料品展示会を見慣れた人間には、食品展の盛況ぶりはまさに別世界の感があった。

今夏のセール開始時期は実質前倒しに

 今夏のセールを7月13日に後倒しするという三越伊勢丹の取り組みだが、その他企業はセールを後倒しする気などさらさらなく、さらに前倒しする雰囲気さえ漂っている。

あるレディースアパレルによると、大手量販店は6月8日から5日間の特別セールフェアを行い、続けざまに6月中旬からプレセールに突入するという。そして、そのまま6月下旬から夏セールを開催するらしい。
このプランが実施された場合、実質6月8日からセールが始まることになる。

セール後倒しどころか、セール開催時期はさらに早まっている。

その他の百貨店やファッションビルも6月29日開始や7月1日開始がほとんどだが、テナント出店しているブランドは昨年同様6月中頃からプレセールやシークレットセールを開催するため、実質的なセールは6月中頃から始まる。

さらに大手がセール開始時期を示し合わすことは、多くの方が書いておられるように独占禁止法に抵触する恐れがあるというから、まさに打つ手なしである。

業界内からようやく「法律で開始日を定めた方が良いのではないか」との声が聞こえてきたが、たしかにこうすることが一番しっくりくるのかもしれない。

いずれにしろ、セール開始時期は実質的に早まっており、どこまでセールの夏物を販売するかは各ブランドや各ショップの品ぞろえの考え方にかかっている。
6月29日から夏物セールを開始し、7月中頃に再値下げをする。
おそらくこの7月中頃の再値下げでも商品は完売しないだろうから、このまま8月のお盆明けまで販売するのか、7月の中頃から秋色夏素材の定価品を立ち上げるのかは、各ショップの考え方一つである。

徹底的にセールハンター顧客に対応するつもりであれば、お盆明けまで再々値下げした商品を叩き売るのも良いだろう。
反対に、セールを早々に切り上げて秋色夏素材の定価品を立ち上げ、秋物へと移行するのも良い。

一番ダメなのは、安全策として、その両方を自店内でやってしまうことである。
これが100坪、200坪、300坪という超大型店ならまだしも、30坪程度の小型店で展開したのでは、セール品と定価品がごちゃ混ぜとなってしまい、ひどく分かりづらい店となってしまう。

小型店・中型店は、安全策を採ることは「二兎追う者一兎をも得ず」という結果を招いてしまうだろう。

そろそろ底打ち感が出てきた?ジーンズメイトの5月度売上速報

 恒例のライトオンとジーンズメイトの5月度売上速報が発表された。
4月21日~5月20日までの1ヶ月間である。

ライトオンは

既存店売上高が前年比10・7%増
既存店客数が同9%増
既存店客単価が同1・4%増

ジーンズメイトは

既存店売上高が前年比2・8%増
既存店客数が同2・0%減
既存店客単価が同4・9%増

だった。

ライトオンは引き続き客数が伸びており顧客の支持が集まっている。
昨秋からの復調は本格的だといえるのではないか。

ジーンズメイトもそろそろ下げ止まりではないかと考えられる。
震災の影響がある3月度の既存店売上高が1・8%増だったことは当然なので捨ておくとして、4月も6・6%減にとどまっている。
月次報告のバックナンバーを見ると、2007年から前年割れ基調が始まっている。
そこから5年間前年割れ基調が続いてきたが、ようやく底打ち感が見えてきたように感じる。

客数の減少もそろそろ下げ止まりではないか。

余談だが、某大手セレクトショップの会長も「客数」の増減には人一倍神経を尖らせていたという。
ショップ入り口には多くの場合、マットが置かれてある。
これはダスキンやそれに類した業者のレンタルであることがほとんどである。
某会長はそのダスキンやそれに類した業者に頻繁に声をかけ、「どの店の入り口マットが一番早く傷むか」を常にリサーチしていたという。
入店客数が多いほど入口マットは早く傷むからである。

同様に商業施設の清掃業者にも声をよくかけていたとか。
床ワックスの塗り替えを一番頻繁に行うテナントはどこかを尋ねていたらしい。
これも入口マットと同じ理屈で入店客数が多ければそれだけ早く床ワックスは剥げる。

この場合、彼が調べていたのは「入店客数」だが、入店客数が多ければそれだけ売上高が増える可能性が高い。ある意味で「買い上げ客数」につながる部分が大きい。

客数という項目はそれほど重要なので、売上高の増減に一喜一憂するのではなく、客数の増加につながるような施策を考えるのが最優先されるべきだろう。

東海染工の3Dプリント

 先日、毎年恒例の加工技術展「イデアトーカイ」を覗いた。
かなりマニアックなネタで申し訳ない。

東海染工が自社加工技術と協力企業の生地を展示するという展示会である。

筆者は毎年、高橋織物の高橋社長にお会いしたくてイデアトーカイを覗いている。

今回の会場で展示されていた東海染工の3Dプリントの出来栄えが素晴らしかったので写真で紹介したい。
3Dプリントと言っても3D映画のような飛び出し方ではない。
通常のプリントとは異なり、少し立体感があるため、油絵、版画、刺繍などをプリントで正確に再現できるというものである。
実際に見ていただければわかるが、なかなか凄い出来栄えである。

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(刺繍風の3Dプリント)

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(油絵風の3Dプリント)

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(版画風の3Dプリント)

これは推測だが、ズバリこのままで使用するケースはほとんどないだろう。
実際の商品に使用する場合は、簡略化したりワンポイントでの使用が主流になるのではないだろうか。
製品作りに携わったことのない筆者には、この技術を活かした商品作りがちょっと思いつかない。

生地メーカーからは、「最近のデザイナーとか企画担当者は、生地を見ただけではどんな製品を作ったら良いのか分からない。想像力がない」とよく聞く。
実際に生地の展示会でも生地そのものを掛けてあるだけでは、なかなかアパレルの企画担当者は買わないのだそうだ。
それよりも生地メーカーや生地問屋が自社の生地を使って、洋服の形に仕上げたサンプルがよく売れる。アパレルの企画担当者はズバリそのものを作ろうとするからである。

こうなってくると、アパレルの企画担当者なる職種は不要で、生地メーカーや生地問屋がサンプルを作る要領で製品をデザイン・製造すれば事足りてしまう。

この手の企画担当者が作った洋服が面白いわけもないし、売れるはずもない。
衣料品の消費低迷の一因には、企画担当者が育っていないということと、アパレルが育成しなかったということがあるのではないか。

閑話休題

3Dプリントを拝見した筆者は、技術力の高さに驚いたものの、その使用法については一切イメージが浮かんでこなかった。
生地の展示会場で「生地だけ見てもどんな製品作ったら良いのかわからなーい」と、ヌケヌケと口走るアパレルの企画担当者の気持ちが、初めて少しだけわかったような気がする。

リーマン・ショック後も売上計画を変更しなかったのは何故?

 先週、JR大阪三越伊勢丹の取材をした。
オープン1年目の売上高は334億円にとどまり、当初目標だった550億円に届かなかったことは各紙で報じられており、周知の事実である。
オープンしてからの伸び悩みを見て、350億円に目標設定を下方修正したがそれにも届かなかった。これも各紙で報じられている通りである。

今回はこのことをズバリ直接お尋ねした。

ちなみに業界紙のご担当は、JR西日本伊勢丹の総務部である。
すると、「実は550億円という売上予算は2008年のリーマン・ショックの前に立てられたもので、そのままの予算で開業したのです」と仰ったので驚いた。

まず、驚いたのはリーマン・ショック以前に立てられた売上計画そのままで開業に臨んだこと。
無謀すぎるの一言である。
リーマン・ショック後も計画を下方修正することなしに日本一の高層ビル建設を粛々と続けている「あべのハルカス」と何やら似た印象である。

次に驚いたのは、この背景を報道していた紙面が、記憶する限り無かったという点。
なぜ各紙はこの背景を報道しなかったのだろうか?

しかし、JR大阪三越伊勢丹側の考え方も良く分からない部分がある。
なぜリーマン・ショック前に作った売上計画そのままで開業することに至ったのだろうか?
「とりあえず大丈夫」だと思ったのだろうか?
リアルタイムに体験したので鮮明に覚えているが、リーマン・ショックが起きた直後はどれくらいの経済的ダメージになるかを多くの人は測りかねていた。凡庸な筆者もその一人である。
けれども、時間が経過するに従って不況感は強まるばかりで、消費も一段と低迷した。
通常の企業なら2009年の段階で売上計画を350億円とは言わないまでも、ある程度は下方修正したはずである。
それが550億円という売上計画を変更しなかったのだから、リーマン・ショックを甘く見ていたか、消費者を甘く見ていたか、自らのブランド力を過信したかのいずれかであろう。もしかするとその3つすべてが混然一体となって絶妙のハーモニーを奏でたのかもしれない。

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筆者は百貨店にも、伊勢丹にも特別な思い入れはまったくない。
ダメなら市場から退場すべきだし、縮小するならそれも自然の摂理だと考えている。
百貨店が復活するならすれば良いし、復活できないならそれも構わない。

伊勢丹が撤退することだって珍しいことではない。現に鳴り物入りでオープンした九州・小倉だって、長年親しまれたはずの吉祥寺だって閉店している。

JR大阪三越伊勢丹の初年度の不振について、同じJR西日本伊勢丹が運営するJR京都伊勢丹と比較して、今後に期待する声もある。
JR京都伊勢丹の開業は1997年。
初年度売上高は300数十億円にとどまった。
現在は売上高約650億円にまで成長している。

同じことが大阪でも起きるのではないかという期待である。

これについては未来を見通す力がないので、成長するかも知れないししないかもしれないとしか言いようがない。
ただ、JR京都伊勢丹は開業してすでに15年が経過している。
97年当時と経済環境が異なるとはいえ、やはり同じくらいの年月は必要ではないだろうか。
2~3年後、業績が急上昇するということは考えにくい。
JR大阪三越伊勢丹の業績が上向くのは、京都以上に長期戦を覚悟しなくてはならないのではないか。

ギャル風の後ろ姿にご用心

 繊維流通研究会が5月末発行予定の「ジーンズカジュアルリーダー」用として、先週、JR大阪三越伊勢丹と「あべのマーケットパーク キューズモール」(以下キューズモール)の取材をした。その際の面白かったこぼれ話をいくつか紹介したい。

昨年4月に大阪・天王寺にオープンしたキューズモールには、「シブヤ109アベノ」が出店している。
オープン前には大きな話題となったが、その後も堅調に推移しているようだ。
オープン後しばらくしてから、「阿倍野の109は購買年齢層が高いらしい」と関西の業界で取りざたされていた。
しかし、実際にこれを報道していた媒体はあまりなかったので、業界内の評判にとどまっていた。

実際に、運営する東急不動産SCマネジメントに尋ねてみると
「渋谷の109とは異なり、購買層の年齢は高いですねえ。渋谷だと10代・20代前半の女性しかいませんが、ここでは30代・40代の子連れの女性が多く見られます。50代以上でも靴などの雑貨類を買う人をチラホラと見かけます」とのことである。

やはり、「天王寺・阿倍野界隈にはギャルの服装をしたオバちゃんが相当数存在している」という噂は本当だったようだ。

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(キューズモールの109)

東急不動産SCマネジメントによると、「渋谷の109に出店しているブランドでも郊外型SCに出店しているブランドもあります。そうしたブランドを買っている人はこれまでもいたようですが、キューズモールには『109』自体が出店しています。郊外型SCで買っていた人たちの中には『阿倍野の109で買った』ということをステイタスにしている人もいるようです」という。

郊外型SCに入店しているのと109に入店しているのは同じ正規店であるのにも拘わらず、この差はちょっと笑える。
中国や韓国でブランドのコピー商品を買うのとはわけが違うと思うのだが。

こういう消費傾向は、大阪の下町である天王寺・阿倍野地区の風情をよく象徴していると思う。

天王寺・阿倍野地区でギャル風の後ろ姿を見かけてもあまり期待しないように。
前に回って顔を見たらギャルでない場合も多くあるようだ。

バーゲン後倒しをめぐる混乱

 今日の日経ビジネスオンラインに、今夏のバーゲン後倒しの展望について書かれている。
どの業界にも共通することだろうが、各社とも自社の利益を最優先に考えるため、なかなか足並みがそろわない様が描かれていて興味深い。

バーゲン「後ろ倒し」の大博打
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120514/231985/?bv_rd

三越伊勢丹とルミネが夏のバーゲン開始時期を後倒しして、7月13日ごろから開始することを決定した。
しかし、その他百貨店やファッションビルは例年通りに6月29日~7月1日くらいからのスタートとなっており、彼らと伊勢丹&ルミネのバーゲンスタートには2週間弱の差が生じる。

全方位的に商品を納めているアパレル各社は対応に苦慮しているという。
通常開始組では値引き販売されているのに、伊勢丹とルミネでは同じ商品が定価で売られることになるからだ。

その中で三陽商会は妙手(迷手?)を思いついている。

以下に引用する。

そんな中、アパレル大手の三陽商会は新たな挑戦に乗り出した。

 同社は通常よりも約2~3割価格を抑えた新商品をセール時期に投入することに決めた。この新商品は、7月初めに3割程度値引きされるセール品とほぼ同じ価格帯になる「通常品」。これならば、例年通りセールを始める店で並べても、値引き品に見劣りすることはない。そのうえ実際には値引きしていないので、セール開始前の三越伊勢丹やルミネで同じ商品を売ることもできる。

 「通常商品を値引きして売るよりも、当初から3割安い新商品の方が利益率は高い。7月の通常品販売比率を前年よりも高めて、収益を改善していきたい」と同社婦人服企画部長の加藤郁郎・執行役員は説明する。

とのことである。

三陽商会側からすると妙手だと見えるのだろうが、
筆者にはこの商品が売れるとは思えない。

これは、現在でもある意味問題となっている、「セール用商品」の製造そのものである。
セールで物色すると、本当に値下げされた物に混じって、セール向けに製造された原価の安い商品がある。
その昔だと「差し込む」程度だったのが、現在では各社ともかなり大量に投入されている。
原価が安いので、1900円とか2900円で販売しても利益が得られる仕組みである。

ご丁寧に値札にも赤文字を使って「値下げしました」感を打ち出してある場合も多い。
「値下げしました」と書くと二重価格で違反となるため、あくまでも「それっぽく」である。

この手法もなんだか釈然としない。
その釈然としない行為を大々的にやると宣言しているのだから、さらに釈然としない。

この記事で初めて知ったのだが、業界が結託してセール開催時期を決めると独占禁止法に違反する恐れがあるのだという。
法律の主旨は理解できるが、実状に沿っていないと思う。

高度成長期やバブル期ならセールを早く開催したくて「ウズウズ」している店舗やメーカーも多かったと想像するが、現在では、メーカーも小売店側もだれもセールをこれ以上早めたくない。
他社が早めるから仕方なしに自社も早めるという後ろ向きの理由で競争しているにすぎない。

一方、フランスやイタリアはセール開催時期と値引きの下限が法律で定められている。
フランスとイタリアはファッション産業が国の重要産業だと位置付けているからの保護政策だろう。

日本政府も「クールジャパン」と銘打って、ファッション産業もその根幹の一つと位置付けるなら、ある程度の保護政策も必要ではないのだろうか。

一方、業界内にも「欧米にならって6月末からセールを開始し、秋物や初秋物を早めに投入すれば良い」という声も聞こえるが、これもかなり疑問だ。
気候が異なる日本が欧米にならう必要はないし、欧米のアパレル企業や小売店では8月に長期バカンスをを取得する場合も多い。
日本のアパレル企業や小売り企業が、いくら8月は暇だからと言って、欧米並みに長期バカンスを取得できるはずもない。

消費者が洋服を買う際も体感温度に沿うようになっている。
4月でも肌寒ければ防寒や保温肌着が売れるし、10月でも暑ければ防寒は売れない。
そんな御時世に7月に初秋物や秋物を立ち上げたところで売れるとは思えない。
半袖・ノースリーブで、色柄だけが秋色程度の商品なら動くかもしれないが、季節先取りの商品が動くことはあまり期待できないだろう。

まあ、こう書いてくると打つ手なしなのだが、
個人的には夏冬のバーゲンという習慣を止めて、ユニクロやGAPのように入荷してから一定期間が過ぎた商品は自動的に値下げするというSPA方式が一番すっきりするのではないかと思う。

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