セールの早期化も案外悪くないのかも
2012年5月30日 未分類 0
さて、セール開催時期を巡る混乱はまだまだ続いているようだ。
5月18日付の繊研新聞によると、大阪の「なんばパークス」が7月7日にセールをスタートさせる動きだという。
他の施設が7月1日か6月29日開始が多いので、1週間ほど遅いということになる。
数年前なら7月5日前後のスタート日が多かったので、遅らせるというよりは元に戻したというニュアンスの方が色濃いのではないか。
デニムアイテムのOEM事務所を経営する友人によると、今年は7月納品まで受注が相当数あるという。
デニムアイテムは通常、夏に弱い。冬にも弱い。
3月、4月が繁忙期で、夏は閑散期である。
その後、9月、10月と繁忙期になり、12月は閑散期というサイクルで回る場合が多い。
しかし、今年に限って言えば、セールが6月下旬から始まるので、各ブランドとも秋の立ち上がりを早める傾向にある。秋の立ち上がりと言っても、秋っぽい色で夏デザインの商品である。
このため、7月納品も例年より多くなっている。
この事務所の動きだけで業界すべてにあてはめることはいささか無理があるかもしれないが、セールが早期化するなら、早めに秋色・夏デザインの「晩夏初秋物」を投入するというのも店頭の鮮度を保つには有効な手段ではないだろうか。
とくにファッション性をアピールするブランドや施設ならなおのことである。
8月末までセール品を引っ張って、ワゴンで叩き売るのはユニクロなどの低価格SPAかイオンなどの量販店に任せば良いのではないだろうか。
友人も「セールが早期化してどうなるかと思ったが、案外と良いサイクルになるのかもしれない。もともとゴールデンウイーク以降は7月までセール待ちで売り場が動かない。なら、6月からのセールで在庫を一掃して、7月中頃から晩夏初秋企画を立ち上げる方が効率的ではないかと思い始めた」という。
このコメントには聞くべき要素が詰まっているように思える。
結局、ブランド側がセール顧客を追求するのか、新規商品を早めに立ち上げるかを決めれば良いのである。
どちらが正解かはやってみないとわからない。
しかし、不況が続いた業界だから、各社ともトップは失敗を恐れている。
失敗したくないので確実な方策を選ぼうとするのだが、往々にしてどっちつかずの中途半端な方法を選んでしまうことが多い。で、さらに売れなくなる。
悪循環スパイラルである。
セール顧客と新規顧客の両方に対応しようとするから良く分からない店作りになる。
現在の消費者は体感気温に即して衣料品を買う。
秋物を早めに立ち上げると言っても、7月中頃からぶ厚い長袖や、セーター、ヒートテックを立ち上げる必要はない。それらが実際に動くのは2カ月後である。
色柄が少し秋っぽくて、デザインや素材は夏物を投入すれば良いのである。
そこさえ間違えなければ、友人ではないが「セールの早期化も案外悪いものではない」のかもしれない。