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南充浩 オフィシャルブログ

バーゲン後倒しをめぐる混乱

2012年5月18日 未分類 0

 今日の日経ビジネスオンラインに、今夏のバーゲン後倒しの展望について書かれている。
どの業界にも共通することだろうが、各社とも自社の利益を最優先に考えるため、なかなか足並みがそろわない様が描かれていて興味深い。

バーゲン「後ろ倒し」の大博打
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120514/231985/?bv_rd

三越伊勢丹とルミネが夏のバーゲン開始時期を後倒しして、7月13日ごろから開始することを決定した。
しかし、その他百貨店やファッションビルは例年通りに6月29日~7月1日くらいからのスタートとなっており、彼らと伊勢丹&ルミネのバーゲンスタートには2週間弱の差が生じる。

全方位的に商品を納めているアパレル各社は対応に苦慮しているという。
通常開始組では値引き販売されているのに、伊勢丹とルミネでは同じ商品が定価で売られることになるからだ。

その中で三陽商会は妙手(迷手?)を思いついている。

以下に引用する。

そんな中、アパレル大手の三陽商会は新たな挑戦に乗り出した。

 同社は通常よりも約2~3割価格を抑えた新商品をセール時期に投入することに決めた。この新商品は、7月初めに3割程度値引きされるセール品とほぼ同じ価格帯になる「通常品」。これならば、例年通りセールを始める店で並べても、値引き品に見劣りすることはない。そのうえ実際には値引きしていないので、セール開始前の三越伊勢丹やルミネで同じ商品を売ることもできる。

 「通常商品を値引きして売るよりも、当初から3割安い新商品の方が利益率は高い。7月の通常品販売比率を前年よりも高めて、収益を改善していきたい」と同社婦人服企画部長の加藤郁郎・執行役員は説明する。

とのことである。

三陽商会側からすると妙手だと見えるのだろうが、
筆者にはこの商品が売れるとは思えない。

これは、現在でもある意味問題となっている、「セール用商品」の製造そのものである。
セールで物色すると、本当に値下げされた物に混じって、セール向けに製造された原価の安い商品がある。
その昔だと「差し込む」程度だったのが、現在では各社ともかなり大量に投入されている。
原価が安いので、1900円とか2900円で販売しても利益が得られる仕組みである。

ご丁寧に値札にも赤文字を使って「値下げしました」感を打ち出してある場合も多い。
「値下げしました」と書くと二重価格で違反となるため、あくまでも「それっぽく」である。

この手法もなんだか釈然としない。
その釈然としない行為を大々的にやると宣言しているのだから、さらに釈然としない。

この記事で初めて知ったのだが、業界が結託してセール開催時期を決めると独占禁止法に違反する恐れがあるのだという。
法律の主旨は理解できるが、実状に沿っていないと思う。

高度成長期やバブル期ならセールを早く開催したくて「ウズウズ」している店舗やメーカーも多かったと想像するが、現在では、メーカーも小売店側もだれもセールをこれ以上早めたくない。
他社が早めるから仕方なしに自社も早めるという後ろ向きの理由で競争しているにすぎない。

一方、フランスやイタリアはセール開催時期と値引きの下限が法律で定められている。
フランスとイタリアはファッション産業が国の重要産業だと位置付けているからの保護政策だろう。

日本政府も「クールジャパン」と銘打って、ファッション産業もその根幹の一つと位置付けるなら、ある程度の保護政策も必要ではないのだろうか。

一方、業界内にも「欧米にならって6月末からセールを開始し、秋物や初秋物を早めに投入すれば良い」という声も聞こえるが、これもかなり疑問だ。
気候が異なる日本が欧米にならう必要はないし、欧米のアパレル企業や小売店では8月に長期バカンスをを取得する場合も多い。
日本のアパレル企業や小売り企業が、いくら8月は暇だからと言って、欧米並みに長期バカンスを取得できるはずもない。

消費者が洋服を買う際も体感温度に沿うようになっている。
4月でも肌寒ければ防寒や保温肌着が売れるし、10月でも暑ければ防寒は売れない。
そんな御時世に7月に初秋物や秋物を立ち上げたところで売れるとは思えない。
半袖・ノースリーブで、色柄だけが秋色程度の商品なら動くかもしれないが、季節先取りの商品が動くことはあまり期待できないだろう。

まあ、こう書いてくると打つ手なしなのだが、
個人的には夏冬のバーゲンという習慣を止めて、ユニクロやGAPのように入荷してから一定期間が過ぎた商品は自動的に値下げするというSPA方式が一番すっきりするのではないかと思う。

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