「糸」そのもののブランド化を目指してみては?
2012年5月17日 未分類 0
先日、アヤベという「ボウシメーカー」を訪問した。
ボウシといっても帽子ではなく、紡糸である。
不勉強なのであまりこの会社のことを存知上げないうえに、綾部紡績と混同してしまっていた。
手短に教えてもらうと、綾部紡績とは親戚筋だとのこと。
なるほど、両社とも社長の苗字が同じである。
工場は鹿児島にあるのだが、本社は大阪市・本町にある。
本社にはできたばかりの商談室兼ショールームがあるのだが、ここに紡績された糸が多数展示されてある。
九州の工場には4000種類の糸があるのだそうだが、大阪のショールームにも3000種類の糸が展示されているという。
アヤベのサイトで確認してもらえれば良いのだが、綿以外にも麻混、ウール・ウール混、シルク混、レーヨン混、合繊混、テンセル、モダール、パイナップル混、バンブー混など製造できる糸の種類は多岐に渡る。
大手紡績にお邪魔してもこれだけのサンプル数が展示されていることはない。
なかなか壮観である。
(3000種類の糸が展示されている大阪本社ショールーム)
「糸」を作る企業としては良い取り組みだと思う。
自社の糸をこれだけまとめて見せている企業は他にないのではないだろうか。
ただ、残念なことにこの企業がショールームを所有していること、ショールームにこれだけ多数の糸のサンプルが展示されていることが業界内にもあまり伝わっていない。
これは告知・広報が不十分なためだろう。
「糸」のメーカーなので、一部を除いて大多数のアパレルブランドに直接話してもあまり効果がない。
彼らは生地の製造にはノータッチである場合が多いからである。
それよりも織布や編み立て工場と話をする方が新しい成約につながりやすい。
最終的には、「アヤベの糸」そのものをブランド化することを目指すべきだろう。
「アヤベの糸」で編んだ靴下だとか、「アヤベの糸」で織ったデニム生地、というふうに。
生地や製品と異なり、糸そのものをブランド化するというのはなかなか難しいことではある。
しかし、海外工場を持っていない国内製造業としては大いにがんばってもらいたい。
まずは告知・広報を強化することから始めるのが先決ではないだろうか。